2012年10月05日

デジタルハリウッド大学公開講座 週刊少年チャンピオンの沢編集長の講座を聞きに行ってきました!

週刊少年チャンピオンのさわやか沢様こと沢考史編集長がデジタルハリウッド大学で公開講座ですってぇー!?誤解じゃなく事実だぞ美華さん!
デジタルハリウッド大学公開講座:大ヒット連載『ドカベン』『グラップラー刃牙』を生んだ沢考史編集長が語る、『週刊少年チャンピオン』というユートピア|デジタルハリウッド株式会社のプレスリリース
…、というわけで勢い余って速攻申し込んでしまったわたくしササナミでございます。大学の講座ということなので学生さんたちが殆どでしたが一般参加者もそこそこいたようです。わー!!沢様及びチャンピオン大人気!
90分の講座内容をみっちりメモってきましたので極力シンプルにまとめてみようと思います。沢編集長が語った内容に私の解釈を交えてまとめていますので、実際に語られた言葉とは一致しない場合があります。最低限、沢編集長の考えや意見をゆがめないようにお伝えすることに努めますが多少の誤差が生じる可能性もありますのでその点はご了承願います。こういう感じの事を言っていたよ、程度に受け止めていただけると助かります。。


大学の准教授の方の司会進行でスタート。沢編集長はブルーの半袖シャツに身を包んだ爽やかないでたちで登場。スリースターズのイベントで拝見した時より随分落ち着いた印象でした。相当あの時は舞い上がっていらしたのでしょう(笑)。
変わった経歴…と紹介された沢編集長は東大の農学部ご出身だそうです。の…農学部とは初耳でした。何がどうなって秋田書店でまんが雑誌の編集をするようになられたのかは語られませんでしたが…今はチャンピオン編集長という立場で日本の漫画界を耕していらっしゃるのですね(←あまりうまくない言い回し)。現在は週刊少年チャンピオンと別冊少年チャンピオンの2誌の編集長を勤められているということですが週チャンは「50万部」別チャンは「25万部」と紹介されていました。…週チャンのほうはたまにネットで見かけつつも印刷証明が付いていないとかでネタにされることもありますが、別チャンの25万部は初耳です。



雑誌のコンセプトや編集の仕事などについて様々な濃いお話を伺えましたので以下は箇条書きでお送りします。

・やはり「少年誌」ということは小学生くらいがターゲットなのか
「少年」チャンピオンとついているだけあってやはりメインターゲットは少年。過度に性的すぎるものなどは載せていないし、漫画の台詞にはルビ付きで作られている。
少年といっても園児くらいからの低年齢層はイメージしづらいところで、「厨二病」などという言葉もあるが面白いものが気になり始める中学2年生くらいからの年齢層がメイン。
とはいえ40年の長寿連載『ドカベン』がいまでも高い人気を誇るように、40~50代の昔からの読者も大事にしているとのこと。
沢編集長ご自身が47歳とまさにその年齢層にあてはまるわけですが、そのくらいの年齢の方も夢がある少年漫画というものは今でも好きな方が多い、と。
別冊もコンセプト自体は同じですがより長いページ数で読める作品なども載せたい、という気持ちが強かったということでした。


・「イカ娘」がここまでヒットすることは予想されていたか
まず受講者の学生さんたちに「チャンピオンで一番皆さんが知っているキャラはおそらく」と前置きされた上で紹介されたのがイカ娘だったことにちょっと驚きました。
メジャーどころでいえばやはりバキ、ドカベン、浦安という作品群ですが(秋葉原にある大学の若い学生さんたちが対象ということもありますが)イカ娘はそれらに匹敵するほどのメジャーなキャラクターになりつつあるのかもしれませんね。
沢編集長曰く「可愛いキャラだと思ったらタイトルが”イカ娘”だったのがバカバカしくて面白かったから載せてみた」というなんとも軽いニュアンス(笑)。
その後は特徴的なイカ娘語を編集部員たちが「メシ食いにいくでゲソ」「眠いじゃなイカ!」等と使い流行り始めたため長期連載になったという…なんだか適当っぽい話でびっくりですが!それだけ週チャン編集部の「面白いもの」への嗅覚は確かだともいえる…かな?
…沢編集長のイカ娘語が聞けたのは非常にレアでした。なかなかサマになってるじゃなイカ!


・「グラップラー刃牙」誕生秘話
当時面白い漫画を生み出したい…と思いながら新宿の本屋で立ち読みしていた沢編集長の目に留まったのが板垣恵介先生の『メイキャッパー』。
それが非常に面白く、この人に会ってみたい!と思い会社の先輩に相談したところ連絡先を調べてくれて、実際に会ったところ「格闘技を描きたい」という話になり週チャンへ…となんともいきあたりばったりお話!
面白いものを生み出すときっていうのは勢いも大切なのかもしれませんが…。そんな成り行きで週チャンの看板漫画が生まれていたとは驚きです。


・作家の発掘方法
上記のように実際に会ってみる、という他に作家を見つける方法といえばやはり毎回行われている新人賞。
今回行われている別チャン創刊記念の新人賞では百数十本の作品が送られてきていて現在も編集の方々が休日出勤や深夜まで残って作品に目を通しているとのこと。
大まかな流れとしては、幾つかに作品を絞り、編集部全員で目を通しさらに絞った作品を審査員の先生方に持って行く…という感じ。
面白い作品・気になる作家を見つけた編集者がこの作家を担当したいと立候補して会いに行くというパターンがあり、
一次選考で落ちてしまうような作品であっても一人の編集者が惚れ込んで何度も作品を描いていくうちに凄いものが生まれる…ということは珍しいことではないそうです。
『浦安』でいまや週チャンになくてはならない存在である浜岡賢次先生なども月例賞の選考が終わった作品の束を箱に入れて持って行こうとしたところ、気になった編集さんがふと目を通し、その中から発掘して当時高校生だった浜岡先生を呼んだのが始まり…とのことでした。
月刊少年チャンピオンなどで読切や連載を繰り返してもなかなかヒットが生まれなかったものの、ついに『浦安』で大ヒットを飛ばすことになった…という良いお話。編集者さんも浜岡先生も諦めなかった結果生まれたヒットだったのですね。
雑誌としての作家発掘の話に戻ると、プロにこちらから声をかけることもありやはり出逢いの場を作ることが大事、ということでした。
また、編集者側がこういう漫画を作りたいとか、原作者側の先生がいて描き手を探しているということも。
編集者側が…というのは最近でいえば『バイオハザード』や『琉神マブヤー』のよな企画モノも含まれるのかもしれませんね。
後者の場合は現在連載中の『バーサスアース』はベテラン作家の一智和智先生の原作を新人の渡辺義彦先生が描かれているようなケースのことかなと。


・面白いものであれば年齢制限のつくような性描写や暴力描写以外は何でもアリか
基本的には何でもアリ…の姿勢に近いようです。
性的なものや暴力にしても、「この世にあるもの」なので全く載せないわけではなく、扱い方や子どもの目線で耐えられるものの見せ方に気を付けている。
たとえば、おもちゃをひっぱったり叩いたりしても「壊して」はいけない。
物の分別がついている大人が見るものならばそういった表現があっても良いがあくまで少年がターゲットなのでそういった線引きをしている…という。
また、そういった部分が抑えられたもののほうが誰にでも読みやすいので、幅広く読める物を目指しているとのことでした。


・本ができるまで
ここで『侵略!イカ娘』のネームや原稿のレプリカを用いた説明が!しかも次週掲載分とのことで何だか得した気分でした(笑)。←ネームを持ってきてほしいとのことだったので担当さんの机にあったのを適当に持ってきたそうで…。
原稿の別紙に編集さんがチェックを入れたりロゴの置き場を考えたり、柱の文章を考えたりして原稿と指定の紙を印刷所に持って行き最終的には印刷所のオペレーターがデジタルスキャン→文字入れをして印刷するための原稿が完成するという手順の説明。
編集さんも担当を多い人で5本くらい持っていると月に20本くらいそういった作業が必要なので「ちょっとおかしくなる」そうです…過酷!
原稿を上げる時間やアシスタントさんの数は先生によってまちまち。
板垣先生は10人くらいのアシスタントさんがいて20ページを2日くらいであげてしまうとか。
また、『みつどもえ』の桜井のりお先生は週8ページでも一人での作業で、その方が能率的とご本人も仰っているそうですが通常は週刊連載の場合はアシスタントは3~4人が必要。
アシスタントの紹介は編集側からすることが多いけれど先生自身が集める人もいる。在宅でメールやスカイプのやりとりだけで作業するデジタルアシスタントも最近は増えている、ということです。

編集さんの担当作品数は理想は2本程度。5~6本になると他の人が手伝ったり、引き継いだりすることも。
多くの連載を抱えていた方が思い切ったことを考えられるようになるので良いという場合もあれば、1作品をじっくりやるのが向いている人もいるということで編集さんのやり方も人によって千差万別なのですね。


・雑誌の掲載順は人気のある順番なのか?
読者としてはこれは気になる話題ですが。
やはり雑誌は頭から読むので面白いものや勢いのあるもの・評判のいいものをもってくるというのは当然の事として、アンケートや売上も勿論関わってくるが完全にアンケートの順位のとおりかというとそういうわけでもないとのこと。


・グラビアについて
やはりこれは売り上げに関わる大きな部分のようです。その時に人気のある人や前回採用したときの実績などを踏まえて考えているとのこと。
「グラビア班」が4人いるそうですが当然それ専門ではなく漫画の編集が兼ねていて、たとえば今回などは『バイオハザード』を推したいということでコラボグラビアが決定したので「グラビアと漫画」の情報共有は大事なことだそうです。


・同人誌の世界から作家を引っ張ってくることは
編集部員にもコミケに行く人はいるし、コミティアにもよく行っている(コミティアには出張編集部もありますしね)。気になる作家に声をかけることもある。
ただし「同人誌」で作品を作っている人はその表現のパイプを持っているので「商業」のやり方に踏ん切りをつけてくれる人でないといけない。それでもやりたいという人はやはり沢山いるとのことです。


・連載が終わる時
連載の開始・終了の権限は編集長にあります。
連載を終わらせるのは当然作家さんにとってもつらいことではあるけれど、売れていないものを描き続けるのは…と言葉にするときついですが商業誌の世界では仕方ない部分でもあります。
ヒットしなかった要因はもしかしたら週チャンという場が悪いのかもしれないし、仕切り直ししてヒットが生まれたことも何度もある(前述の『浦安』の事例や、桜井のりお先生の『みつどもえ』についてもその例として挙げられました)。
ただ単行本の売上は当然大きいけれど、編集部の意向で「この作品は続けたい」と売上度外視で続行されることもあるとか。


・漫画家を目指す人へ
今はネットで描いて発表したり、そこで商売として成立していることもある。
自分で「何になりたいのか」を決めること。
絵を描いて、楽しいことをやって生きていくことは簡単じゃない。
自分の能力をプロデュースすること、失敗も当然あるが諦めないということが必要。
学生さんたちでもし作品を見てもらいたい人がいたら持ってきても良いか?との問いに「編集部に電話してもらって沢を名指しで指名して講演を聞いたと言ってくれれば私が見ます」とはっきり仰られていたのが恰好良かったです…!


・編集者になりたい人へ
当たり前の事だが、出版社に就職すること。編集プロダクションに所属するという手もある。
もし沢編集長が採用担当だったらどんな人がいいか?の問いには、「やりたいことをはっきり口にする人」と。
自分の出来る範囲で編集をしてみるとか、実践経験や武器を持ってくる人がもっといてもいいけれどあまりいないということでした。
確かに、漫画家を目指すのであれば作品を沢山作るのは当たり前のように思えるのに編集者を目指す人が編集経験を積む…という話はあまり聞いたことがないです。
漫画や雑誌作りに限らず自分で考えて実践してみる、という姿勢は大切かもしれませんね…。



以上で講義内容は終了。
最後に質疑応答コーナーがありました。
質問は一般の参加者及び学生さん、回答が沢編集長です。

Q.アンケートで男性アイドルのグラビアについての質問がありましたが女性読者を意識しているのでしょうか?
A.かっこいい男に憧れて男が買うのはおかしいでしょうか(笑)
勿論、女性にも読んでいただきたいですよ!
以前『クローズZERO』のコラボで小栗旬さんが表紙のときは非常に売れました。男性から見ても恰好良い男性に憧れることはあると思います。

Q.『ぶかつどう』が単行本化されないのは原稿をなくしたという説がありますが…
A.原稿をなくしたわけじゃないですよ(笑)
担当はいまだに「あのとき単行本化していれば…」とグチグチ言っています。
しかし評判が良いからといっても単行本化すると痛い目を見るときもあります。それで赤字というのは大変につらいことなんです。
1万6千出して1万2千返ってくるということも…
(↑正直生々しすぎて辛い数字でした…どの作品かはわかりませんがさすがの私も簡単に単行本出せとは言いづらくなる数字。どうにかならないものか…)

Q.単行本しか買わない人間に作品をアピールする方法
A.オーラ?を出すこと、やはり帯がいちばん。帯もただめちゃくちゃ書くのではなく著名な方からコメントを貰うなど…。
おもしろそうだと思えるカバーデザインを作るのも大事。
ちなみに『空が灰色だから』のカバーに関しては阿部共実先生の強い主張でポップかつ毒々しい水玉模様が採用されたというこれまた貴重なお話。
かなり頑固に阿部先生側が引かなかったということですが、結果作品の空気を見事に表した特徴的なカバーになった好例ですね。

Q.ネットの活用、試し読みや作品概要などを設置することについて
A.検討中!ということで(笑)
(時間が少なくなってきたので一言で、という指定の回答でした)

Q.ネット上での画像等の無断使用についてはどう考えるか。
A.勝手に動かすのはアウト、という目線。宣伝になるからいいじゃないかという考え方では作家との信頼にも関わる。
こういう時代だからこそ、著作権保護に気を付けていきたい。
(この問題はブログで画像をお借りしている自分としても耳が痛いですね…)

Q.編集長の年収は?
A.子供1人と不機嫌な女房を食わせていくくらいはもらっています(笑)

Q.ロゴなどのデザインの仕事をやりたいと思っているが、どういった形で繋がりを持って行けば良いか
A.やはり出逢いが大切。こちらも探している。
しっかりやってくれて、早い時間でお金のこともしっかりとできるビジネスパートナーが理想的。
『グラップラー刃牙』の単行本のデザインは板垣先生が会社員時代に出逢った人で、どうしてもこの人にということで決まった。
デザイン会社は沢山あるのでそういった場所で経験を積んで打ち合わせをしていく。
現在の週チャン表紙デザインは、沢編集長がヤンチャン編集部時代に仕事をしていたデザイン会社の人で、現在は独立していて一緒に仕事をしている。


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以上、大体の内容は詰め込みました!
沢編集長の漫画に対する姿勢や信念や熱意が伝わってくる素晴らしい講座だったのでその一端でもお伝えできていれば…と思います。
やっぱり私の愛する雑誌を作る編集長は熱い人なんだと分かって嬉しかったです!またこういった機会があるといいなあ。



manganou at 02:14コメント(2)トラックバック(0)レポート   このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント一覧

1. Posted by R   2012年10月07日 05:06
お疲れ様でした!
内容、ざっと読んだのですがマンガを愛するものとして、けっこう興味深いですねー。
時間のあるときに改めて読み返してみます!
2. Posted by ササナミ   2012年10月10日 22:48
読んでいただき、ありがとうございます~
どれも削るには惜しい内容だったので詰め込んだら長くなってしまいました。
お時間あるときにゆっくり読んでいただけると嬉しいです。

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