2ヶ月連続刊行、第2弾の32巻。表紙は激走の杉元と鏑木…!す、杉元が単行本の表紙になる日が来るだなんて誰が予想していたというのでしょうか(涙)。もちろん中身にも、表紙に描かれるに相応しい杉元の成長が描かれています。
(今回の感想はネタバレ避けられないので未読の方は念の為ご注意を…)


特例として2年生でありながら1年生ウェルカムレースに参加し、総北メンバーの「6人目」を目指す杉元。対する1年生の鏑木と段竹は既に社会人を含めたチームで活躍している実力者たちです。独りで走り、一度は鏑木らに引き離された杉元でしたが、”兄と一緒に走るため”だけに追いついてきた杉元弟・定時と驚異のシンクロを見せ始め、再びトップ争いに喰らいついていきます。


坂道や杉元たちが進級する前、中学生当時の定時が自転車競技部を訪れて一緒に走ったときはまだヘロヘロだった兄の走りに同期してしまい目も当てられないような状態でしたが、その頃から定時の”シンクロ能力”は未知の可能性を感じさせるものがありました。しかし当時は杉元がこんなにも成長を見せるとはまるで予想できませんでしたし、なんなら兄は非実力派なまま弟が今後実力を開花させていくのだろうか…?とすら思っていました。それがまさか、覚悟を決めて地道に練習し続け実力をつけた兄とのシンクロという形で実ることになるとは!


誰よりも強い覚悟でこのレースに臨む杉元と、その杉元はヘボだと見下す鏑木。世間一般的に見るところの「フラグ」が立ったとしか思えない展開。しかし…。
『弱虫ペダル』を単行本30巻以上になるまで読み続けてきて、こんなにも残酷な場面は初めて見たかもしれません。少なくとも、こんなにも胸締め付けられるような気持ちになったのは、自分は初めてでした…。しかし、「望んだ展開にならなかった」ことで失望するどころかますます『弱虫ペダル』を好きになりました。それぞれのキャラの心情、表情の描かれ方がとにかく真摯で。
皆の前では今まで通りの軽薄そうな自分を演じる杉元の笑顔が余計に涙を誘います。もはや今までの彼ではないことは、誰もがその走りを見ればわかっているというのに。


そしてその姿にある意味で一番強い影響を受けたのはトップ争いをした鏑木でしょう。
レース中は完全に自分のほうが上だと、こいつはヘボだと見下していた鏑木が実際自分が勝利した上で杉元への見方を改めています。自分が勝ったのだから”やっぱりヘボだった”と益々調子に乗ってもおかしくない場面であったはずです。しかし杉元の本気は伝わった。自分は敗けても尚、総北のレギュラーメンバー6人目として名を刻む後輩に強い意識と自覚を抱かせた。ここでも確かに、受け継がれていく総北の魂というものは存在していたんです。結果だけ見れば1年生レースに参加して勝てなかった2年生。それでも、それ以上の意味を杉元は残したと思います。


他にも各キャラの変化や成長など触れるべき部分は山ほどある32巻なんですが、杉元のことだけでいっぱいいっぱいで申し訳ございません…!いえ杉元のことだけでもまだ語り切れていないくらいですが。この巻に関しては、杉元が主人公といっても過言ではなかったよ…。
インターハイ以後のペダルが本当に面白くて嬉しいです…。どこまで凄くなるんだろうこの作品は!




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