2014年04月09日

チームを引っ張るのは「天才」か「凡人」か。 『弱虫ペダル』33巻(渡辺航)


『弱虫ペダル』33巻が発売されました。12月、1月と2カ月連続の単行本発売があったためずいぶん長く開いたような感じがしてしまいます。
今回の表紙は…完全に単行本しか読んでない方にとっては、「誰?新キャラ?」と思われるのかもしれませんな!わたしは…わたしはこのお方の活躍を待ち続けておりましたよ!!


一年生ウェルカムレースで鏑木が優勝し、公約通りインターハイメンバーに入る事が確定したため6人のメンバーが決定。総北高校自転車競技部には今年もあの過酷な1000㎞合宿のシーズンがやって来ました。
昨年の坂道、今泉、鳴子がマシンにしかけをされたように、鏑木も細工を施された状態で1000㎞走破を目指すことになります。鏑木に施されたその「しかけ」とは…昔から鏑木をよく知り、支えてくれる相方のような存在である段竹と10mより近づかないよう、警告音の鳴るメーターを着けながら走る事。自分の事を熟知し、鼓舞してくれる存在である段竹を失うという事は鏑木にとってはマシンに細工をされるよりも辛い事です。一度はたった一人で1000kmを走り抜くという過酷さ(しかもインターハイメンバーは6位以内で、という条件まで)に自信家であるはずの鏑木も挫けそうになりますが、走行途中に出逢った段竹の言葉に背中を押され再度自信を取り戻します。彼は落ち込むときも激しいですが、自信を取り戻したときの分かりやすさも良いですね。そして共に走っていなくても落ち込んだ鏑木のアゲかたを的確に知っている段竹もさすがです。


一年生新レギュラーの鏑木が早くも挫折しかかったり復活したり…とせわしなく動いてるその頃、今年もバス酔いで到着を遅らせていたメンバーの姿が…そう、坂道です。IH一位という輝かしい成績を残そうとも、こういう部分では本当に変わらなくてある意味で安心させてくれます。
そんな坂道はバスの後から来た寒咲先輩のワゴン車に乗り込みますが、車内にはもう一人のチームメイトの姿がありました。3年生の古賀先輩です。
昨年の合宿には参加しておらず、普段の部活でも穏やかにメカ弄りをする様子しか見られない謎多き先輩。しかし物知りで優しく語りかけてくれる古賀先輩とは未だ人見知りのきらいがある坂道もすっかり打ち解け、和やかなムードで合宿場に追いつきます。


しかし…坂道は深く考えていませんでした。古賀先輩がここに来た意味。昨年不参加の意味を。
古賀先輩は実は2年前、1年生の時の合宿を980kmと惜しくも完走は出来ずも、特例としてインターハイのメンバーに選ばれ広島大会に出場していました。先輩の期待も一身に受けていた天才肌の将来有望株。しかし天才であるがゆえ、期待されていたがゆえに無我夢中になりすぎた彼は、そのインターハイ広島大会で取り返しのつかない事態を引き起こしてしまいます。その時負った怪我で選手として自転車に乗ることが長い間出来ないまま高校生活を過ごし、最後のチャンスとしてこの合宿に臨むことにしたのです。
そして古賀先輩は自分が再びインターハイメンバー入りを果たすため、新キャプテンに就きながらも選手としての実績も実力も不十分な「凡人」手嶋をこの合宿でその座から引き摺り下ろし、自分が新たなキャプテンとなることを宣言。一方で宣告を受けた手嶋先輩は、6人のインターハイメンバーの中で実は自分だけは決まっていなかった…と後輩たちの前で告白し、改めて自分が本当のインターハイメンバー、そして真のキャプテンとなるために真っ向から勝負を受けます。


「天才」VS「凡人」。
昨年も坂道ら1年生と戦い、敗北した「凡人」手嶋先輩。しかも昨年共に戦った相方の青八木先輩とは、鏑木・段竹と同様今年は一緒に走れないという条件つき。凡人主将がたった一人で最強の同級生を相手にすることになります。
『弱虫ペダル』の主人公小野田坂道が天性の素質を持っている初心者ということを考えれば、その真逆の立ち位置にいるのが手嶋先輩といっても間違いはないと思います。相方の青八木先輩を勝たせることはあっても自分自身は一度もレースで一位を獲ったことはなく、どちらかというと実力よりも策略家。しかし今回の相手はチマチマとした計算が通用するような相手ではない正真正銘の「天才」。ブランクはあるにしても、古賀先輩のその走りは寧ろ計算など必要ないほど自然と速さを知っているような動きを見せつけます。去年坂道たちに負けた手嶋先輩がインターハイに行くためには絶対に倒さなければならない相手です。


3年生となったことで手嶋先輩が新部長に指名されたのは自然な流れではあったのですが、坂道たちに負けっぱなしのままである違和感はどこか感じていました。それを払拭するためにはこれからまた坂道たちと闘って…というのではさすがに威厳も何もない。そういう意味では、手嶋先輩が「倒すべき相手」として同級生であり(坂道たちにとっては)未知の強敵でもある古賀先輩は最も適した相手だと思います。
また古賀先輩というキャラがこのままモブで終わるのでは…と戦々恐々としたファンとしては、何か夢を見ているような感じすらあります。ゆ、夢じゃない。おそらく「一年生の時にインターハイに出場していた」という設定自体は舞台版からの逆輸入設定だと思われます。舞台には原作の設定と矛盾しない程度のオリジナル設定が幾つか存在していて、「昨年(金城・田所・巻島が2年生の頃)のインターハイ回想」中に古賀先輩が出場していたとされた場面がほんの少しだけですが登場したことがありました。そこに古賀先輩の名前を登場させる、ある意味では原作ファンへのサービスシーンのようなものだったと思うのですが、その設定をこういう形で消化してくるとは…。外部からの影響を思わせる部分があったとしても、作品への消化の仕方が実に渡辺先生らしいなと感じます。


「体力バカ」という古賀先輩の異名は作中でいままでたった一度だけ言われていたフレーズですが、その異名がどうやって定着していたのか。古賀先輩自身の思い…そんなところもしっかり描写されています。個人的には、古賀先輩が金城前主将に対して抱いている尊敬の念の強さがひじょうに嬉しかったり。いままで、実はハッキリと金城さんをリスペクトしている後輩っていなかった気がするんですよね。田所先輩はその面倒見の良さで手嶋・青八木コンビや鳴子君に大きな影響を与えていますし、坂道が巻島先輩に対して抱く敬愛の念は作中でもよく描かれています。金城主将は全員のことをしっかり見ていたしどの選手からも尊敬はされていたと思いますが、こうやって金城さん個人からの影響を強く受けていた選手は…エースを継いだ今泉君もちょっと違うタイプの影響だったと思いますし、居なかったと思います。なのでちょっと嬉しいのです。


2年前のインターハイの事故から同級生である彼らもぎくしゃくしてしまったまま。消せない過去を埋める為、自分自身が今より先へ進むために天才と凡人が初めて正面からぶつかり合います。どちらも応援したい気持ちでいっぱいで心苦しいくらいですが…必ず勝負が決まる時は来る。決着は、次巻!




manganou at 01:40コメント(0)トラックバック(0)弱虫ペダル | 渡辺航 
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