女子水泳部25

「どうして、わかんないの。」
 突然、美佳のヒステリックな声と同時に、由歩の視界が上下 に振動した。
 美佳が、つかんだ両肩をゆらしたのだ。動きが激しくて、胸 を隠す腕がぶれないように、目一杯の力で硬直させなければならないほどだ った。
「すみません。」
「どうしてわかんないの。由歩、由歩。」
 身体とともに、心までゆりうごかされていく。
 望まぬことを強いられてきた悔しさ、悲しさ、情けなさ。
 これらの屈辱的な感情を、由歩は、胸の奥にしまいこみ、こ れまで目をそらしてきた。
 だが、もう耐えられない。
 目に涙がたまっている。まぶたを閉じればこぼれてしまいそ う。
 もういい。ここまでよくがんばった。
 由歩は、自分に泣くことを許した。
 なにもかも無理やりさせられていることが、あきらかになっ てしまうだろう。
 それに、同級生の教子もいるこの場で泣くのは、とてもつら い。
 でも、もういい。弱さをさらけだせばいいんだ。
「私、わかりません。」
 大粒の涙が、ぽたりと落ちた。
 つづけざまに、ぽたり、ぽたりとほおに当たった。
 鼻を通る息が、小刻みに震える。
 由歩の異変に気づいた部員たちの顔がひきつる。なんだか涙 に抗議の意味が感じられて、ばつが悪いのか、由歩から目をそ らす。
 由歩に、涙に頼って窮地を逃れるつもりはなかったが、部員 たちのあいだに、ここまで責めなくてもいいのではといった空気が流れた 。
 だが、美佳はそんなに甘くなかった。
「勘違いもいいかげんにしな。泣いてもいいのは、がんばった のにできなかったときだけだよ。がんばってもいない由歩に、 泣く資格なんてあるわけがないじゃない。」
「はい。」
 泣くことさえ、許されないなんて。
 泣いたことを責められ、自分はなんて弱いんだろうと、情け なくなってくる。
 美佳の言葉とは裏腹に、涙がとまらない。
 部員たちの脳裏には、上級生たちに幾度も泣かされてきた記 憶がよみがえっていた。
 たしかに、自分たちも泣いたからといって手加減をしてはもら えなかった。むしろ叱られることになるので、どんなにつらく ても涙をこらえるようになった。
 彼らは、由歩に同情しそうになったのを、美佳に戒められた ような気がした。
「こういうときどうするのか、教えてやるよ。いっとくけど、こんな常識から 教えてもらわないといけないなんて、恥ずかしいことなんだか らね。」
「すみません、お願いします。」
 再び、肩をつかむ美佳の手に、力が入る。
 うしろに引き寄せられていた由歩の上半身が、今度は前に押 し倒される。
 あらがうすべもなく、部員たちにお辞儀をする姿勢になっ た。
 角度は、上級生に挨拶するときの四十五度より深く、ほぼ直 角まで曲げられた。
 S字にカールした髪が、ぱさりと肩から落ちて垂れ下がる。
 顔はまっすぐに下を向き、コンクリートの床と、裸足のつ ま先しか見えない。
 お尻が無防備に突き出される。見られるのは背後の美佳にだけとは いえ、恥ずかしい。
 前からの視線を意識して、胸もとに隙間ができないように、さらに腕をこわばらせる。
「ここにいる全員に、いまから教えるとおりにお詫びするんだ。一度しか言わないから、よく聞きな。」
「わかりました。」
 美佳は、由歩の肩からようやく手を離し、横にまわって、耳もとに口を寄せた。
「わがままいって、すみませんでした。さあ、言ってみな。」
 本当に自分がわがままなのか、本当に自分が謝らなければな らないのか、もう考えられなかった。考えるとよけいにつらくなる気がした。
「はい。わがままいって、すみませんでした。」
 深く頭を垂れたまま、つぶやくように謝った。
 ぱしん。
 由歩の全身が、驚きにふるえた。
 軽くではあったが、お尻を叩かれたのだ。
 痛みはなくても、むきだしのお尻を叩かれること自体が屈辱 だった。部活動の粗雑さに慣れない由歩にとって、精神的な衝 撃は大きい。
「あんた、そんな声で全員に聞こえると思ってんの。」
「いえ。すみません。」
「聞こえないと意味がないじゃない。できるまで、何度でも言わせるよ。さあ、もう一度。」
 中途半端では、認めてもらえそうにない。
 覚悟を決めて声を出す。
「わがままいって、すみませんでした。」
 ぱしん。
 はっきりした声を出したつもりだったのに、さっきより強く お尻を叩かれてしまう。
「だめ。もう一度。」
 お尻は身体の中でも性的な部分である。由歩の思いとしては、でき るだけ慎重に扱ってほしいところだが、美佳は、気合づけのつもりなのだろうか、叩くのに躊躇がない。いかにも、新入部員には気づかい無用といった態度だ。
 悔しくて、また涙が込み上げてくる。
「わがままいって、すみませんでした。」
 昼下がりのプールサイドに、由歩のうわずった声が響く。
 ぱしん。
 衝撃が強くて、思わずお尻を引き気味にしてしまう。つられて身 体が起きあがりそうになる。
 そのとき、無防備なおなかに、美佳の手が伸びた。
 下半身に、緊張が走る。
 股間を隠している手の、すぐ上に美佳の手のひらが差し込まれた。
 びくっと、今度は腰が引ける。起き上がりかけた身体 が、逆に前に屈するようになる。
 とまどう由歩にかまわず、美佳の手のひらは、おへその下あた りの腹筋をなで、その具合をたしかめていた。
「挨拶でも、練習でも、新入部員が一 番大きな声を出していかないといけないのに、こんなのでどう するんだよ。ほら、下腹に力を入れてみな。」
「はい。」
 いわれたとおり、おなかの奥に精一杯の力を込める。
「じゃあ、ここから声を出すようにして、言ってみな。」
 精神的にも、肉体的にも追いつめられ、ためらっていられる 状況ではなかった。
「わがままいって、すみませんでした。」
 普段にはない、低く太い声が出た。由歩自身が、自分の声で はないような気がするほどだった。
「それが、精一杯の声だっていうの。もっと出せるのに、出し惜しみするんじゃないよ。」
 ぱしん。
 衝撃が尾てい骨に響くくらいに強く、お尻がたたかれた。
 この美佳の気合いが、由歩の気持ちの殻を破る。
 自分を、捨ててしまおう。
 私なんかが、格好つけてどうするの。なりふりかまわず叫ばなきゃいけないのよ。
 人前で身を屈して、いいようにお尻をたたかれる自分。何度 も同じことを言わされている自分。みっともないと思う。心の奥底ま で、卑屈になっている自分がいた。
「わがままいって、すみませんでした。」
 迷子が母を探して声を張り上げているかのような、軍隊で教 練をはじめて受けた若者のような、由歩の限界の叫びだった。
 涙声がまじっていて、真剣にお詫びしたいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
 部員たちの中にいた教子は、教室ではおとなしい印象の由歩 が、水泳部に来て美佳の手にかかると、ここまで自分をさらけ出せるようになるものかと、深く感心させられた。
「これで終わりじゃないよ。反省することよりも、そのあとを どうするかのほうが大事なんだ。」
「はい。」
 美佳は、再び由歩の耳もとに口を寄せてささやく。
「だから、こう言いな。今からでも、いわれたとおりにさせてくださいって。」
「えっ。」
 由歩の全身から、さっと血の気が引いた。
「このまま裸で練習させてください。お願いしますって言うんだ。」

女子水泳部24

 由歩の顔が、みるみるうちに真っ赤に染まった。
「無理です。無理です。」
 髪が描くSの字がゆれるくらい、大きく首をふった。
 由歩は、信じられなかった。
 同じ学校に通う生徒たちのいる場所で、全裸で泳げというの だ。
 そんなこと、できるはずがない。
「あんた、なんなの。一人前に身体を隠しそうとしてさ。新入 部員が自分の意志なんて持つんじゃないよ。なにも考えないで 、先輩の言うことをきいてりゃいいんだ。」
 新入部員って、こんなこと言われる存在なんだ。
 もういやだ。みじめ過ぎる。
 由歩は、美佳のことはもちろん、こんな理不尽が許される水 泳部そのものに、心から嫌気がさした。
 今まで必死になって胸と股間を隠してきたのは、なんだった のか。自分を殺して美佳の指示に従ってきたことが、愚かに思われてくる。
 怒りで、おなかの底が熱い。
 ぶるぶるっと断続的なふるえが、身体の下から上に波のよう に襲ってくる。
 無理やりさせられていると思われたくないから、なにを言わ れても逃げずに耐えてきた。だが、もうそんな見栄になんか、こだわっていられない。
 両親からもらった大切な身体を、こんなことでさらしものに してはならないと、はじめて自分をいとおしく思う。
 この手のひらにふれる胸の先、この手のひらが包む股間。い ずれも弱々しくやわらかい。自分の身体は自分で守らなければ 、誰も守ってくれない。
「とても、できません。」
 ありったけの勇気を振り絞って、美佳に逆らった。
 両肩を押さえられながらも、ぎゅっと自分を抱きしめ、できるだけ前かがみになって、肌の露出を抑える。姿勢も心もかたくなにして、私はこの胸と股間をさらすつもりはありませんと、拒絶の意志を態度でもあらわすのだ。
 それでも背後の美佳には、背中からお尻まで、一糸まとわぬ 無防備なありさまをさらしているのだから頼りない。
 由歩は、美佳に逆らったものの、なにを言われるかとびくびくしながら、ただ コンクリートの床を見ていた。背後の表情がうかがいしれないだけ に、沈黙が続けば続くほど、うすら恐ろしくなってくる。
 どんどんと、鼓動が激しくて心臓が破裂しそうだ。
 ぴったりとしめた脇から、汗のしずくが一筋、むきだしの腰のほうへと肌 を流れていった。
「もういいよ。」
 由歩は、耳を疑った。
 これまでに聞いたこともないような、美佳のやさしい声だっ た。
「えっ、いいんですか。」
 そうはいっても、バスタオルの件では、借りてもいいと由歩 に言っておきながら、部員たちには貸さないように説得した美 佳である。決して信用はできない。
「一日で水泳部のことを理解して、一人前の部員として認めて もらうなんて、やっぱり大変だろ。部活動は甘くないってこと 、少しはわかったんじゃない。」
「そうですね。」
 美佳は、背後から、静かな口調で教え諭す。つぶれた低い声 が、妙に説得力がある。
「由歩ったら、必死になっちゃってさ。ほら、こんなに身体に 力が入ってるよ。」
「あっ、はい。」
 美佳は、肩からくびすじのこわばりを、手でもみほぐすよう になでた。
「こんな体つきで、肌も生白いし、部活動したことなんかなさ そうだよね。」
「はい、ありません。」
 美佳は、由歩の左右の丸い肩を手のひらで包んだ。筋肉質の 部員たちとの体格差を、たしかめているかのようだった。
 由歩の身体を丁寧に取り扱おうとしているのが、むしろ気味 が悪い。
「すごい優等生なんだってね。完璧にノートをとっているらし いじゃない。」
「そんなこと、ないです。」
 由歩は、高校受験で志望校を断念させられた挫折感に、いま だにとらわれている。謙遜でなく、本当に自分が優等生だとは 思っていなかった。希望する大学に入れるように、しっかり勉 強しなければという気持ちが強く、それがノートのとりかたに あらわれているだけだった。
 ほめられてもうれしくはない。むしろ、そんな情報まで美佳 の耳に届いていることが、なにもかも調べ上げられているよう で不気味だった。
「由歩にすれば、水泳部なんて馬鹿の集まりなんだろうね。な にも考えないで、先輩の言うことをきいてりゃいいだなんて、 いかにも頭を使わなさそうだもんね。」
 気をつけなければならない。口調は静かでも、美佳の言葉に は、わなが潜んでいるかもしれない。不用意に誘導に乗れば、 どう陥れられるかわからない。
「いえ、そんなふうには思いません。」
「でも、実際に体験して、馬鹿になるのも難しいって思ってい るんじゃないの。」
「馬鹿だなんて、本当に思ってません。」
 部員たちを前にして、馬鹿だとは口が裂けても言えない。
 それに、穏やかな性格の由歩は、水泳部に自分とは異質なも のを感じてはいても、決して見下すような意識はなかった。
「だから、わかってないっていうんだよ。」
「えっ。」
 突然、すごむ美佳。背後からの、どすの利いた声のせいで、 お尻からうなじまで硬直してしまう。
 由歩の怯えが、びくっとふるえた肩から、美佳の手のひらに 伝わってしまう。
「馬鹿でいいんだって。新入生は、馬鹿になってもらわないと 困るんだよ。」
「馬鹿に、なるんですか。」
「馬鹿になるっていうのは、なんにも考えずに、なんでも言われた とおりにすることだよ。それが部活動の基本なのに、由歩は、 それができないんだ。」
「すみません。」
 部活動の基本といわれれば、経験のない由歩には、返す言葉 がない。
「部活動で、それぞれが勝手なことしていたら、なにもできな くなっちゃうじゃない。だから、指示に納得できなくても従わ なきゃいけないんだよ。馬鹿になれない新入生が一人でもいる と、まわりが困るんだよね。」
「はい。」
「先輩方も、理不尽なことに耐えていらしたんだ。その目の前 で、私は馬鹿なことはできませんだなんて、失礼だと思わない の。」
「思います。」
 ふうっと、美佳はいかにもあきれはてたといった感じで、ため息をついた。
「最初からこれじゃ、先が思いやられるね。一日だけなんだか ら、もっと積極的でなきゃいけないのに。」
 全裸で泳ぐことを拒んだ代償として、由歩の立場は絶望的に 不利になろうとしていた。
 部員達の前に立たされた由歩を、背後の美佳が、部活動を軽 視していると決めつけて、おとしめる。
 両肩を押さえられて、自由を制限された裸体が痛々しかった。まるで、とらわれて罪を追求されているかのようである。
 由歩には、部員たちから浴びせられる視線が、どんどん冷や やかになっていくような気がした。少なくとも、救い の手が差し伸べられそうな雰囲気ではなくなっている。
 心細い。なにも頼るものがなく、自分が孤立していることを ひしひしと感じる。
 由歩は、生真面目なだけに、厳しい言葉をまともに受け取っ てしまうところがあった。自分を見失いそうになっている状態で、認識の甘さ をなじられたりすると、たまらない。
 自分は部活動の上下関係や集団行動のルールにうといのだ から、なにも考えずにいわれたとおりにしていればいいのだと、本当に思って しまいそうになる。
「がんばるつもりです。」
 いまさら意欲がないとは言えない。
 由歩の心の中には、望んで体験入部しているのではないとい う被害者意識がある。だが、それを声にするわけにはいかない 。美佳に不誠実さをどれだけ責められるかわからないし、自分 の意志をまげていたと告白するようなもので、あまりにも屈辱 的だからだ。
「本当にがんばるつもりかな。由歩の態度を見ていると、信用 できないんだよね。」
 由歩が嘘つきであるかのような、蔑みのこもった口調だった 。
「大丈夫ですから。」
 そのとき、両肩をつかむ手に、ぎゅっと力が入った。
 美佳は、由歩の両肩を、うしろに引き寄せる。
 前かがみだった由歩の背筋が、ぴんと伸ばされた。部員たちの正面にむかって、胸からおなかまで張り出した姿勢になる。
「がんばるつもりがないから、まだそうやって必死に身体を隠 して、突っ立ってるんじゃないの。」
「えっ、でも。」
 はなしが、違う。
 もう全裸で泳がなくてもいいと言ったのは、ほかならぬ美佳だったはずだ。
「あんた。もういいよって私が言ったから、しなくていいって 思ってるんだ。」
「あっ、はい。」
「もういいって言われるのは、見放されたってことなんだよ。 あんた、見放されたままでもいいの。」
「いえ。」
「こういうふうに叱られたときって、素直に反省できないのか な。」
「反省、ですか。」
 反省とは、なにを意味しているのか。怖くて考えられなかっ た。

女子水泳部23

 もう、左手だけしか使えない。右手は、胸を隠すためにふさがっている。
 スカートが不意に落ちてしまわないように、手のひらで腰のあたりを押さえながら、指でファスナーを下ろし、慎重にホックをはずす。
 ふっと、胴回りがゆるむ。
 数センチメートル、スカートがずり下がった。
 ファスナーが左右に開いて、紺色の布地に亀裂が入り、隠れていた腰の白い肌がのぞき出る。下になにも履いていないことを、見るものに鮮烈に伝える。
 スカートが落ちてしまってはならない。手で押さえているだけでは心もとないので、少しでも安定するようにと、脚を肩幅まで開く。
 すでにブラウスもショーツも脱いでいるため、スカートの裏地は直接肌にふれている。そのおかげで、腰のあたりに汗による摩擦がはたらいて、落ちにくくなっていた。
 仁王立ちの姿勢は、一見勇ましく見える。
 だが、由歩の心中は、不安と緊張で、限界にまで追い詰められていた。
 スカートは腰に引っかかっているものの、なにか強い力が加われば、すぐに落ちてしまうだろう。
 もし背後の美佳に、一気に引き下ろされでもしたら、あらがいようがない。
 いくらなんでも、そこまでひどいことはしないだろうと思いはしても、これまでの経緯から、由歩は美佳の行動に疑心暗鬼になっている。決して心安らかではない。
 いつ帰ってきてもおかしくない奈津子のこともある。早くしなければと気ばかりがあせる。
 由歩は、スカートを押さえている左手をすべらせて、身体の前面、おなかの上まで移動させた。
 親指でスカートの布地をぎゅっとつかんで落ちないようにして、残った四本の指を内側に差し入れる。
 おなかのやわらかさと、汗によるわずかな湿り気が、手のひらに生々しい。
 そのまま股間に向かって四本の指を伸ばして、一杯になったら、今度は親指の位置を下げる。芋虫が見せるような屈伸運動の繰り返しだ。
 やがて、指先に大切なところを守る細い繊毛たちがふれる。
 幼い顔立ちの由歩だったが、高校一年生ともなれば、ヘアは生えている。ただ体質なのか、あまり濃くはない。
 由歩は、スカートを落とす前に、手のひらからヘアがはみ出ないように、覆っておかなければならなかった。
 上からスカートの中をのぞきこんでも、奥の暗がりまでは見えない。もぞもぞという指先の感触だけを頼りに、ヘアが広がっている範囲をたしかめながら、手のひらの位置を調整する。
 股間は、わずかにふくらんでいて、とてもやわらかい。真ん中に、女性にとって最も大切な部分の入り口である、縦の切れこみが入っている。
 最も奥まで入り込んだ中指が、その切れこみに潜む、敏感なひだにふれた。
 びくっと、由歩の背筋に悪寒が走る。
 こんなところを、人前でさわっているなんて。
 私って、はしたないんだ。
 由歩は、自分がとてもいやらしいことをしているような気がした。
 部員たちには、スカートの中に腕をつっこみ、股間をまさぐっているかのごとく見えるはずだ。
 あっちを隠し、こっちを隠しとこぜわしく手を動かして、まるで道化かあやつり人形ではないか。
 恥ずかしいところを見られまいと精一杯がんばっているのに、必死になればなるほど、情けない自分をさらけだしている。
 だからといって、堂々と脱いでなにもかも見せてしまえるほど、豪胆ではない。
 由歩は、自分があわれに思われてきて、切なくて、胸がきゅんとなった。
 肩幅に開いていた両足を閉じ、股間に差し入れた指先を、太ももではさみこんだ。ぴたっと隙間なく隠れるようにしたわけだ。
 あとは親指でつかんでいる布地をはなして、スカートを振り落とすだけである。
 由歩は、半べそをかいたような表情で、コンクリートの床を見つめていた。
 胸にあてた指に、どくんどくんと鼓動が響く。
 緊張のせいで、身体に力が入らない。息することさえままならない。
 もはや、最後の衣服であるスカートを失うのを、ためらうだけの気力もなかった。
 親指が布地をはなすと、スカートがわずかにずれ下がった。
 まだ腰に引っかかっていて、このままでは落ちそうにない。
 少し揺らして、スカートを振り落とそうとした。
 だが、汗で摩擦が働いて、すんなりとは落ちてくれない。
 もっと、激しく動かさなければならない。
 意を決して、由歩が腰を左右に振りはじるや否や、部員たちのおおっというどよめきが沸き起こった。
 その中に好奇の声が入り混じっていたことから、由歩は、思わず動きをとめた。
 視線が怖くて、ずっと前を見られなかった由歩だったが、彼らの様子が気になってしかたないので、一瞬だけ目をむける。
 皆が、じっとこちらを見ていた。目が離せないといった雰囲気だ。
 部員たちの目に映ったのは、胸と股間を手で押さえて、なまめかしく腰を振る由歩の姿だった。
 これまで、由歩を粛々と見守っていた彼らも、扇情的で滑稽な光景に緊張の糸が切れてしまっていた。
 男子部員は、とまどいながらもなんだか嬉しそう。
 それよりも同性の女子の反応が気になる。彼女たちが、心配で同情しているような表情を見せながらも、侮蔑の笑みをかすかに浮かべているように見えるのは、由歩の思い過ごしだろうか。
 彼らの多くは、会話を交わしていた。なにを話しているのかまでは聞こえない。おそらくは、憶測や偏見が乱れ飛んでいるのだろう。自分の行為や身体が揶揄されているのではないかと考えると、気が気でない。
 少なくとも、誰もが、この状況を否定しようとはしていなかった。
 由歩は、逃げることが許されないという現実を知る。
 もう、やけっぱちだ。
 興味本位で見るなら見ればいい。はしたない女と蔑むなら蔑めばいい。
 ぶるぶると、思い切りよく腰を振った。
 おへそが、かわいくゆれる。
 あれよあれよという間に、おなかの下、やわらかなふくらみを帯びた白い肌が、むき出しになっていく。
 スカートが、足もとの濡れたコンクリートの床に、ばさっと落ちた。
 少し涼しげな風が、由歩の全身をなでて過ぎていった。
 ぞおっと、背筋を悪寒が通り過ぎる。
 私、本当にやっちゃった。
 頭の中が、ぼうっとしてきた。
 体温が急上昇している。
 人前でなにも身につけないって、こんなに不安なことなんだ。
 刹那の間、由歩は部員たちに、少しびっくりしたような表情を見せた。我ながら、あまりの無防備さに驚いたのだ。
 自分のしたことが、恥ずかしくなる。情けない。信じられない。
 だが、もうあともどりはできない。
 由歩は、同じ学校に通う生徒たちの目の前で、ついに全裸になってしまった。
 大切なところだけは手で隠しているものの、肌のほとんどを露出している。
 胸のふくらみも、おへそも、下腹も、太ももの付け根も、見物し放題である。
 この姿は、高校生である部員たちには刺激が強すぎた。
 今度は、好奇の声はない。純粋に驚きと興奮のどよめきが起こっていた。
 ときおり遠くに聞こえる、期末試験が終わった開放感にひたる生徒たちの嬌声が、由歩の耳にはむなしかった。

 校門付近の人影は、まばらになっていた。
 部活動のある生徒たちは、練習に励んでいたし、そうでないものは、すでに帰宅していた。
 そろそろ、かな。
 奈津子は、便所の窓から、ぼんやりと校門を眺めていた。
 ふうっと息を吐くと、すえた臭いのする空間に、白い煙がたちのぼる。
 水泳用具の入ったビニールバッグを、無造作に肩にぶら下げた。
 足もとの便器に落とされた煙草の吸殻は、ごおっという水の音とともに、流れて消えていった。

 炎天下のプールサイド、真っ黒に日焼けした水着の部員たちを前にして、全裸で立たされている色白の一年生。
 無慈悲に肌を炙る光線に、ほんのりと赤く染まった全身。
 少しでも股間が隠れるようにと、身を絞り、前かがみになっている姿勢が、怯えきっているようで痛々しい。
 線の細い肩から胸もと、やわらかい起伏を見せるおなか、際立って白い腰、はりのある太もも、ひきしまった脚。すべてがびっしょりと汗の粒に覆われていた。
 Sの字を描く黒い髪は乱れて肌にはりつき、もともと薄めの化粧はすでに流れ落ちていた。それでも、真剣な表情が、バランスのいい顔だちを、むしろ際立たせていた。
 その目は、じっと入り口のほうを見ている。
 由歩は、待っていた。
 ただひたすら、消えてしまいたいほどの恥ずかしさに耐えながら、奈津子の帰りを待っていた。
 全身が震え、胸が破裂しそうなくらいの強い鼓動を、心臓が打っている。
 かたわらで紺色のスカートが、美佳の手により掲げられていた。床に落ちたために水気にふれて、まだらに染みがついていた。それだけのことで、汚れた感じがしてしまう。まるでこの由歩を象徴してようでもあった。
 もう、いや。
 こんな姿を見られるの、耐えられない。
 奈津子が帰ってくれば、さらしものの境遇から解放されるという希望だけが救いだった。それがなければ、地獄の業火に焼かれているかのようなつらい時間に、とても身を置いていられなかった。
「奈津子ったら、なかなか帰ってこないね。」
 背後の美佳は、戦利品のスカートを部員たちに披露するのにあきたのか、これまで由歩が脱いだ衣服を、たたみはじめていた。
「そう、ですね。」
 話しかけられたくなかった。なんでもない石ころのように扱ってほしかった。だから、できるだけ気のない返事をしたつもりだった。
 だが、主導権を持つものを、やり過ごすことなどできない。
 突然、由歩の肩を、美佳の手がつかんだ。
 部員全員に聞こえるくらい大きな声で、美佳が大胆な提案をした。
「待ってられないよね。水着が来るまで、このままで泳いじゃおう。」

女子水泳部22

 由歩は、今度は自分から、ブラジャーを美佳に渡した。
 これまでは、人目に触れないように身につけていたものをかたづけようとしても、必ず美佳に取り上げられて、部員たちに見せびらかせられた。
 だから、どうせ取り上げられるなら、はじめから渡したほうが惨めな思いをせずにすむと考えたのだ。実のところ、片腕が胸にとられているので、文字通り手にあまり、美佳に引き取ってもらうしかないという事情もあった。
 由歩にしてみれば、これまでの苦い経験があるので、自発的にブラジャーを渡しただけだったが、部員たちの目には、これが、どうぞ私の恥ずかしい下着をさらしものにしてくださいといったような、積極的な態度に映った。
 美佳が見せびらかすのをわかっていて、自分からブラジャーを渡したのだから、そう思われてもしかたがない。
 これは、由歩が絶対に消極的なのではないという誤った印象を、部員たちに与えてしまった。
 部員たちは、自分たちが傍観しているのは、もしかしたら一方的なしごきの現場ではないかという一抹の不安を、和らげることができたのである。

 午後三時を告げるチャイムが、プールに鳴り響いた。
 少しだけ涼しい風が吹き、すっかり静まっていた水面に、うっすらと波を立てる。
 真っ黒に日焼けした部員たちの目の中で、真っ白なブラジャーが、青い空を泳いでいた。
 美佳はふざけて、由歩の頭上で、ブラジャーをくるくると振り回していた。
 由歩は、背後での美佳の戯れに気づいていたが、とても、そんなことにかまってはいられなかった。
 無邪気な笑顔を見せる美佳とは対照的に、真剣な表情の由歩。その頭の中は、これから自分がしなければならない困難な課題のことでいっぱいだった。
 スカートを、脱ぐ。
 スカートの下には、なにもはいていない。自分の最も恥ずかしい部分が、むき出しになっている。
 右腕は、胸を隠すためにふさがっている。
 自由に使えるのは、左手だけ。この手でスカートを脱いで、股間も隠さなければならない。
 上手にしなければ、見られてはならないところが見られてしまうかもしれない。
 由歩は、どうすれば最も安全なのか、必死で考えた。
 まず、スカートがずり落ちてしまわないくらいまで、ファスナーを下ろそう。
 次に、スカートの内側に、慎重に手を差し入れて、見られてはならない部分を覆うのだ。落ちそうになったら、親指で布地をつかんでおこう。
 きちんと隠れたら、スカートを振り落とそう。
 こうすれば、最も恥ずかしい部分は見られないはずだ。
 この方法しかない。
 失敗して見られてしまう恐怖は、胸の場合よりも桁違いに大きい。それなのに、こちらのほうがより困難で危険だ。
 だが、ためらっている時間はない。
 いつ奈津子が帰ってきても、おかしくないのだ。
 美佳との約束では、奈津子が帰ってきてしまったら、由歩は全裸で泳がなければならなくなる。
 はじめのうちは待ち望んでいた奈津子の帰りが、いまは脅威となっていた。
 由歩は、伏目がちに、部員たちの様子をうかがった。
 予想はしていたことだが、これまで以上に、全員が自分に注目している。
 自らの姿を省みて、身をよじり、手を使い、大切なところだけでも、なんとか隠そうとしているさまが、我ながら痛々しい。
 見るものに弱さをさらけ出しているようなものだ。
 部活動になじんでいない由歩には、屈強で精悍な部員たちが目の前に並んでいるだけで、かなりの迫力を感じる。
 由歩は、自分が弱虫だとは思いたくなかったが、ここまで無防備になると気力が萎えてしまう。ただ彼らの存在の強さに圧倒されるばかりだ。
 自分の息が、震えていることに気づく。
 すうっと胸の奥深くまで、塩素くさい空気を吸い込む。
 ふうっと息を吐き出すと、瞬間、頭がふらっときて、目がくらみそうになる。
 どんどん、どんどんと、胸にあてた右手に、これまでになかったほど激しい心臓の鼓動が伝わってくる。
 上手く、いきますように。
 由歩は、祈るような目で、一瞬だけ遠くを見たあと、しっかりと前を見て、口もとをきりりとひきしめた。

女子水泳部21

 上半身は、ブラジャー一枚きり。あとは肌がむき出しになっている。
 下半身は、紺色のスカートをはいているが、その内側にはなにも着けていない。
 これから由歩は、わずかに残されたこの二枚を、自分の意志で脱ぐのだ。
 どくん、どくんと、心臓の鼓動が全身に響く。
 歯を食いしばった。かちかち震えるのを、ぐっと噛みしめて抑えた。
 口は凛々しく真一文字だが、目はうつろに焦点も定まらず、まるで、この世界ではない、どこかの一点を見つめているようである。
 極限の緊張に加えて、プールの水面から立ち上る塩素臭に慣れず、胸がつかえて息苦しい。
 由歩の色白の顔は、上気して赤く染まっていた。高ぶりが、ここに見えた。
 Sの字を描く黒い髪が、むき出しの鎖骨をなでる。
 強い日ざしのせいで、肩や首すじ、胸もとの白い肌が、赤く腫れていて痛々しい。
 部員たちと比べれば、由歩に筋肉はついていない。それでも、やせているという印象はなく、高校一年生にふさわしい程度の、女性らしい丸みがある。
 特に胸もとには、幼さを残しながらも、大人としてのふくらみが見られる。
 由歩の乳房は、決してグラマーとはいえない大きさだが、先がつんと上を向いていて、ブラジャーの上からでもわかるほど、とてもかわいらしいかたちをしている。
 ブラジャーをはずせば、夏の強烈な日ざしが、この純情な乳房のすべてを照らし出そうと、襲い掛かってくるだろう。
 由歩は、片腕だけで乳房を守らなければならない。もう一方の腕は、スカートを下ろすときに必要になるからだ。
 唾をごくんと飲み込む。ひたいから首すじまでを、びっしょりと汗の粒が覆う。
 一瞬だけ、前を見た。
 部員たちのすべての視線が、自分一人に集まっている。見られていることを、強く意識させられる。
 注目されるだけでも恥ずかしいのに、ここでこれからすることを思うと、気が遠くなってしまいそうになる。
 もう、前を見たくない。現実を見たくない。プールサイドの、ざらざらとしたコンクリート床に視線を落とす。

 由歩は、ブラジャーのホックをはずそうと、右手を背中にまわした。
 念のために、空いている左手を胸のブラジャーにあてて、ホックをはずしてもずれ落ちないようにした。
 このとき、由歩の肩をつかんでいた美佳が、その手を離した。
 これは、由歩がブラジャーをはずしやすいようにするためであって、決して、部員たちの視線から身をそらすことを、美佳が認めたからではない。
 すでに屈服させた由歩なのだから、しつこく肩を押さえていなくても、意に逆らわれるはずがないという、美佳の自信のあらわれだった。
 由歩は、背中のホックをはずすのに少し手間取った。いつもとちがって、指が震えて思うように動いてくれない。背後の美佳は手伝おうとはしなかったし、手伝ってほしくもない。
 右手がホックをはずすと肩ひもがゆるみ、ブラジャーのしまりがなくなった。
 不安定になったブラジャーを左手でおさえている姿が、なんともなまめかしい。
 由歩は、ホックをはずした右手を、今度は左胸に伸ばし、ブラジャーの下側のへりから、肌とのあいだに指を差し入れた。
 胸の表面に乗っかっている、白い薄手のブラジャーがふわりと浮き上がる。
 ブラジャーの中は、少し汗ばんでいた。
 潜った指が、左の乳房を登り、先っぽにある乳首を探しあてる。
 敏感な部分からの刺激に、由歩の胸が、一瞬びくりと震える。
 つまめばつぶれてしまいそうなほどやわらかく、あまりにもかよわい乳首の突起。粘膜が持っているような湿り気を、わずかに含んでいる。
 この乳首を、人差し指、中指、薬指、小指を揃えて、しっかりと覆う。
 これで、ブラジャーをはずして乳房をあらわにしても、左の乳首は見えないはずだ。
 だが由歩は、この右腕一本で、もう一方の乳首も隠さなければならない。
 それには、手首からひじにかけての部分を、目隠しとして上手に使う必要がある。
 左の乳首を押さえたままで、腕を胸の高さまであげようとすれば、わきを締め、手首やひじをへの字に曲げなければならない。
 必然的に、への字の頂点になる手の甲が、ブラジャーを押し上げていく。
 部員たちの目からは、こういったしぐさは、由歩が自分の乳房を弄んでいるように見えて、少しいやらしい感じがする。
 それでいて、ついこのあいだまで中学生だった由歩の顔には、いやらしさとは無縁の、こどもの面影が残っている。
 そのせいで、彼らは由歩に、幼い少女が背伸びして、扇情的なふるまいをしているようなちくはぐさを感じていた。禁忌を犯す妖しさが、ここにあった。
 やがて、腕が乳首のすぐ下にまで至る。
 ここから、さらにブラジャーを押し上げて、腕で乳首を隠さなければならない。
 その際、なにかのはずみで腕とブラジャーのあいだに隙間ができて、乳首が見えてしまわないとは限らない。
 由歩は、念のため、この乳房の前面を左手で覆って、視線をさえぎっておく。
 こうしておいてから、手の甲で慎重にブラジャーを押し上げていく。
 かよわい乳首は腕との摩擦で、もみくちゃになる。
 そして、ついに手の甲がブラジャーを乳房の上まで押し上げた。かわりに、腕がじかに乳首を隠すようになる。
 乳首が腕の後ろに間違いなく隠れたことをたしかめた由歩は、そろりそろりと、この乳房の前面を覆っていた左手を離す。
 もう、ブラジャーをはずしても、部員たちに乳首を見られることはないはずだ。
 だが、その勇気が出てこない。絶対に大丈夫と自分に言い聞かせても、怖い。安心できない。
 もう一度、上から覗いて、乳首が隠れていることをたしかめる。自分の胸のにおいが、ほのかに香る。
 ふと、あまり何度もたしかめていると、自意識過剰に思われるおそれがあることに気づく。
 美佳の「あんたの裸なんて、誰も見たいと思ってないのにさ。」という屈辱的な言葉が、脳裏によみがえる。あんなことは、二度と言われたくない。
 どうしても逃れられないのなら、悩まずに素直にしよう。そのほうがつらくない。葛藤すればするだけ、つらくなっていく。
 由歩は、そうやって割り切ろうと思った。
 だらしなく崩れかかっているブラジャーに、手をかける。
 左の乳房を覆っていたブラジャーの半分は、腕から肩ひもを抜くと、あまりにもあっけなく、はらりとはずれた。
 左の乳房が、あらわになる。乳首だけが、指先で覆われて隠れている。
 まだ、ブラジャーの右半分がまとわりついている。ほとんど身体からはずれているが、肩ひもだけは、左右の乳首を隠している右腕から抜き取らなければならない。
 慎重に、本当に慎重に、肩ひもを引き抜いていく。
 腕がぶれて、乳首が見えてしまわないように、石のようにかたく力を込める。
 かたちのよい乳房のふくらみが、ぎゅっと押しつけられた腕の下で、つぶされてしまっていた。
 肩ひもが乳首のところを通るとき、突起にひっかかってしまう。無理に引き抜こうとするので、引っ張られてずきんと刺激が走るが、かまってはいられない。
 とうとう、由歩のブラジャーは、完全に胸からはずれた。
 白いふくらみのほとんどが、強い日ざしの下にあらわになった。隠されているのは、右の指先と腕に覆われた、わずかな部分だけでしかない。実際にふれなくても、乳房の質感が伝わってくるほどの存在感がある。
 特に男子部員たちは、若さゆえの張りと、幼さゆえのやわらかさが同居した由歩の乳房の魅力に、思わず見とれてしまった。
 彼らは、表情にこそ出さないものの、心臓の鼓動が頭にがんがん響くほど興奮していた。
 同性の胸など見慣れているはずの女子部員たちでさえ、多数の異性の前で全裸になろうとしている由歩の気持ちを想像すると、少なからず高ぶりを感じる。