ishigaki001


秀吉の軍師として有名な軍師官兵衛こと黒田如水。秀吉に警戒されるほどのかなりの策士ということで、何事も計算づくのようなイメージが(自分には)あるのですが、彼も人間。悩みはございます。

そんな彼のお悩み…それは!

「自分で決断したことに後悔することが多い。」
これです。そして、このお悩みを解決した名カウンセラーは、かの毛利両川・小早川隆景公であらせられます!


■黒田如水も悩む

如水が剃髪して号を如水円清としたちょうどその頃、如水が同僚の武将と酒を酌み交わす機会があった。ひとしきり雑談し、話に一段落ついたところで、如水がおもむろにため息をついた。
「はぁ…。」
「?黒田どのがそのようなため息を漏らすとはお珍しい。何か心配事でもござりまするか。」
同僚が軽い気持ちでそう聞くと、如水は再びため息を漏らして言った。

「いやなに、わしの性格…どうにかならぬものかと思うてな。」
「は?性格…でござるか?」
「そうよ。わしはな、思いついたことをぽんぽん口に出したり、思案半ばにして結論を出したりして後悔することが多い。」
そう言うと、如水は頭巾をはずした。そして、丸めた自らの頭をつるりとなでると、
「これもそうよ。朝鮮の役において、わしのやり方が治部(石田三成)めらによって殿下(豊臣秀吉)に讒訴されたこともこうなった一因。治部めは鼻持ちならぬヤツだが、わしに今ひとつ深慮があれば、讒訴されるようなこともなかったかもしれぬ…。」
と言った。

「な、なるほど…。黒田どのでも悩むことがあるのですな。」
「…当たり前じゃ…。」
如水は、この話をした後から急に愚痴ばかり言うようになり、一緒に飲んでいた同僚は、少々うんざりしながら如水の愚痴を聞いていた…。


■隆景流!お悩み解決講座

後日、如水と酒を酌み交わした同僚が、小早川隆景に会って話しをする機会があった。その時、隆景が「領内の普請のことで試行錯誤をしている」という話をした。そこで、この同僚が酒の席での如水の話を思い出し、隆景に話した。

「黒田どのは、思案半ばにして結論を出すがゆえに後悔してしまい悩んでいると申しておりました。小早川様は、そのようなことはございませぬか。」
すると、隆景はこう言った。
「ははは、黒田殿は才気溢れるお方だ。そうでなくては、のちに悔いることがあるにしろ、すばやく決断することなどできぬ。引き換え、わしは愚鈍な男ゆえ、思案に思案を重ねなければ然るべき答えが見えぬのよ。まあその代わりに我が決断に後悔したことはほとんどござらぬがな。」

これを聞いて、如水の同僚は、どうすれば後悔のない思案ができるかということを隆景に尋ねてみた。むろんあとで如水に教えようというつもりで聞いたのだが、個人的にも聞いておきたいと思ったのである。

隆景は、腕を組んで「ふむ…」と首をかしげたが、顔は微笑をつくりながら言った。
「ま…、何事もしばし思案いたすようになさればよろしいのではござらぬかな?…されどな、単純に損得だけで考えてはいかぬな。」
「損得…。」
「さよう。物事には必ずと言っていいほど、人が関わってくるものよ。結論というのは、そういう"人の心情"を踏まえて出さねばならぬものだ。そも黒田殿が結論に後悔するは、ひとえにその"人の心情"という点においてであろうと思うぞ。」
「な、なるほど…。」

如水の同僚は、わかったようなわからないような複雑な顔をしてうなずいた。隆景はその様子に気づいたが、あえて何も言わずこう続けた。
「どれ、黒田殿にお伝えあれかし。他人に対する仁愛を深慮して出した結論には後悔すること、少しもござらぬ。黒田殿も一考してみてはいかがですかな。」
隆景はそう言うと薄く笑った。

如水の同僚は、次に如水に会った時に、隆景の言を如水に伝えた。如水は、すぐに隆景の言葉の意味を理解して、ポンと手を叩くと、
「なるほど、さすがは小早川様じゃ。これからは何ごとにも仁愛を、と胸に刻もう。」
と、明るい顔で張り切って言った。

如水には、捕らえた罪人をも簡単には斬らず、むしろ充分反省すれば、一度は許してやるなどの裁き方をしたという逸話もある(⇒「深慮の如水裁き!」「黒田如水の罪人の裁き方」参照)。そういった逸話に見られる如水の情け深い面は、隆景の言葉が影響しているのであろうか。

※この記事は、『名将言行録』収録の話をいくらか改造して作り出したものですので、場面設定などはフィクションです。(だから「如水の同僚」は名無し…(汗)。)


■まとめ&おまけ

自分のことではなく、他人のことを第一に考えて決断を下すべきで、それには"人の心"を無視してはいけないということですね。ことに判断には「正論」であるかどうかを意識してしまうことがありますが、それは人が動く理由にはならないんですね。

しかし、あの恐るべき策士・黒田如水の悩みを解決するなんて…小早川隆景様ってステキ!
隆景は、秀吉にも大変気に入られていた武将です。文武両道にして、父・毛利元就譲りの智の才もあり、しかも約すれば誠実。
秀吉は、隆景を評して「平重盛(平安時代の武将。平清盛の長男)はわが国の聖人と言われるが、それをしても小早川には及ぶまいて」と言ったという話もあるそうです。最期までとことん「毛利本家のために」を貫き通したというのもイイ!

水も滴るいい紳士…。


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