本日久方ぶりに封印を解き放ち、筆を思うがままに走らせたるは、先日の終電模様。
今日も1日しっかりな、と背中を押すのが始発ならば、終電は今日も1日お疲れさま、と優しく家路に運んでくれる。
例えるなら前者は、一家の大黒柱として威厳を振り撒き、しかめっ面を基本装備しながらも、実は毎日母親に子供の様子を聞く照れ屋な父親、かたや後者は慈愛という言葉が相応しい、全てを優しく包み込む母親といったところか。
果たしてこの例えが必要だったかは全くの疑問だが、ひとまず先日乗った終電での出来事について話すとしよう。
俺は居酒屋でバイトをしている。
そこでのバイト歴は1年半を少し過ぎたくらいだ。
ようやく色々な仕事を任せてもらうようになり、その仕事は自分の事のみに留まらない。
バイトのことなので詳しくは書かないが、まぁ様々なことを考えながら動かなければならない。
そして何より。
この店は忙しすぎる。
山陰で一番忙しい居酒屋といってもあながち嘘ではないのではなかろうか。
連日ピーク時の満席は当たり前、空席待ちは平日でも日常茶飯事、22時だろうが23時だろうが閉店5分前だろうが土日平日問わず客が訪れる。
バイトの終盤は毎回体力を消耗しきっているので、いらっしゃいませ、ありがとうございましたの声すら出せないもんだから、
「せー」(いらっしゃいませの略)
「たー」(ありがとうございましたの略)
と言っているが、他のスタッフの声の語尾に あたかもカメレオンのように同一化している為おそらく誰も気づいていないはずだ。
もちろんこの声出しの簡略化は手抜きかもしれない。
がしかし、ピーク時の俺の行動速度はおそらく人類最速を誇り、「居酒屋界のボルト」、「ドリンクのファンタジスタ」と俺の脳内で様々な称号を欲しいままにしているのもまた事実だ。
そのあまりの速さゆえ、一部のスタッフからは
「島田さんかと思って話しかけたら残像でした」
とか、
「島田さんにドリンク頼もうとしたんですけど、島田さんが5人位いたんでどの島田さんに言えばいいか分かりませんでした」
とか、
「千手観音像かと思ってよく見たら島田さんでした」
など、各地で波紋が広がっている昨今だ。
とまあ凄まじいエネルギーをピーク時に費やすもんだから、バイトが終わった後の俺は灰人と化しているわけだ。
そんな灰人は翌日松江だか出雲だかでギグがあったので、松江行きの終電前に上がらせてもらい、その身をほぼ無人と化した山陰本線をひた走る電車のシートに委ねた。
冒頭でも述べたように、終電は云わば母親であり、その胎内に身を委ねる行為は、かつて俺がまだ細胞だった頃、羊水にプカプカ揺られるあの心地よさを呼び起こさせる。
後天的な気持ちよさではなく、遺伝子レベルで組み込まれた より強力な、云わば快楽に抗う術などあるはずもなく、俺は今一度母の胎内で眠りに落ちた。
ガクンッ!!
「どうしたマイマザー!!!!」
羊水内に大きめの振動を感じ、俺は眠りから覚めた。
気がつけば右肩に口からこぼれ落ちた聖水が染みを作っており、目は半分くらいしか開かなかった。
しかしその薄目は、はっきりと捉えたのだ。
「玉造温泉駅」
の5文字が闇の中でしっかりと記されているのを。
松江近郊にお住まいの方以外には距離感が分かりづらいだろうから捕捉すると。
まぁ「絶望」の2文字がチラつくくらいの距離だ。
歩いて帰る気には到底ならないし、何より終電でここまで来たのだから折り返しの電車もあるはずもない。
事態を認識した俺は、
「ふぇぁ」
と謎の奇声を発しながら電車を降りた。
そのままその電車に乗り続けるのは死を意味するからだ。
どうしようかとホームで悩み出したその刹那、車掌が勢いよく終電から飛び降り、俺の元に足早に近付いてきた。
「切符を拝見します」
ほぼ無人の山陰本線、下車する人間は用意に確認できる。
おそらく「ふぇぁ」と謎の奇声を発しながら降りた俺は間違いなく怪しさ満点だったんだろう。
俺は事情を説明した。
すると車掌はこう言い放ったんだ。
「あぁーそうですか、分かりました。ちょっと待ってくださいね。」
マ!ジ!か!!
さすがJR、一人の不審な乗客にもこの優しさ!
俺には分からない裏道的な打開策を知っているに違いない!!!!
と俺は一転して歓喜にうち震えた。
俺のJR株が跳ね上がったのは言うまでもない。
買いだ!買いだ!
JRの株を買い占めろぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!!
とテンション急上昇真冬の恋状態の俺に車掌はこう言ったんだ。
「あぁー、終電ももうないですねー」
知ってるわぁぁぁぁぁぁあああこのボケナスがぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!!!!
テンションの急激なアップダウンは体力を大幅に消耗する。
分かりました…と小声で告げ、より一層灰度を増した俺はトボトボと歩き出した。
「あっ、お客さん!」
どうした車掌!!!!
何か閃いたのか!!!!??
「松江までの切符ですので乗り過ごしの料金を頂きますね」
俺はもうこの車掌を人には見れなくなっていた。
車掌、今が平成の世で良かったな。
時が江戸なら、俺裁判により市中引きずり回しの上打ち首獄門だぞ。
と内心で悪態をつきながら小銭を丁寧に掌に渡すと、間もなく終電は眼前から消えていった。
途方に暮れた俺はとりあえず待ち合い室に行ったが、誰と待ち合うわけもなく、そこには小虫くらいしか居なかった。
外に出てみると、山陰有数の温泉街にも関わらず、そこに広がるのはただの漆黒の闇だった。
もちろん俺は絶望していた。
いや、かつての俺は、と言ったほうが正しい。
今や俺はhommeのベーシスト、俺以外は車持ちのバンドのベーシストなのだよ!!!!
と意気込んで秋山の番号にTEL!!!!
しかしDoCoMoお留守番サービス!!!!
ならば秋葉!!!!
しかしSoftbankお留守番サービス!!!!
俺の望みは人魚の泡のように弾け飛んだ。
機械的なアナウンスを鳴らす携帯を閉じ、眼前の景色はより一層漆黒に見えた。
俺は正真正銘、途方に暮れた。
寒さが厳しく、体と相まって心も冷えきってたもんだから、とりあえず暖を取ろうとホットキャフェオッレを買った。
手にした温もりはほんの少しだけ俺の気持ちを安らかに、立ち上る湯気は眼前の漆黒を少し優しくしてくれた。
そして一口飲み込んだ。
盛大にむせた。
人生上で最もむせた。
一滴も余すことなく全てがダイレクトに気管に流れ込んだもんだから、ぶっ壊れたマーライオンの如く噴射した。
と同時に手からホットキャフェオッレがこぼれ落ち、半分以上が床に茶色い水溜まりを作った。
ガッフン!ガッフン!
と激しくむせながら大慌てで漆黒に潜む漆黒トイレから漆黒ペーパーを漆黒し、床を漆黒した。
俺は何故26にもなってこんな無人の駅で己のホットキャフェオッレをトイレットペーパーで拭かねばならないのだろうかと人生を嘆いた。
床を拭き終わり、俺は携帯の電話帳を凄まじい形相でスクロールした。
車持ちの誰かに助けを求める為だ。
そこで目に止まったのがサークルの後輩だ。
俺が大学時代、とてもかわいがっていた後輩だ。
俺は発信ボタンを押した。
「はいもしもし」
「あの…大変申し訳ないんですが…」
「何?迎え?」
さすがだ。
エスパーかお前は。
こうして後輩がバイト上がりそのままに迎えに来てくれたわけだが、漆黒の中にカバンを持って申し訳なさそうにはにかむ俺は、まるで何かのモニュメントのようでひどく滑稽だったという。
がしかし、俺は後輩に感謝し、優しい気持ちでライブに臨むことができた。
そんな俺の優しいベースが鳴り響くhommeのワンマンライブ、ぜひとも観に来てくれ。
12月18日(土)だ。
車持ちの二人と若干の溝を感じるかもしれないが、それは気のせいだろう。
最後に。
終電は母の胎内を思わせるほど心地よい快楽が睡魔を呼ぶが、赤ずきんのそれのように、ひと度気を許せば狼となって襲いかかってくる、極悪のトラップだということを心に刻み込め。
アディドス!!!!
今日も1日しっかりな、と背中を押すのが始発ならば、終電は今日も1日お疲れさま、と優しく家路に運んでくれる。
例えるなら前者は、一家の大黒柱として威厳を振り撒き、しかめっ面を基本装備しながらも、実は毎日母親に子供の様子を聞く照れ屋な父親、かたや後者は慈愛という言葉が相応しい、全てを優しく包み込む母親といったところか。
果たしてこの例えが必要だったかは全くの疑問だが、ひとまず先日乗った終電での出来事について話すとしよう。
俺は居酒屋でバイトをしている。
そこでのバイト歴は1年半を少し過ぎたくらいだ。
ようやく色々な仕事を任せてもらうようになり、その仕事は自分の事のみに留まらない。
バイトのことなので詳しくは書かないが、まぁ様々なことを考えながら動かなければならない。
そして何より。
この店は忙しすぎる。
山陰で一番忙しい居酒屋といってもあながち嘘ではないのではなかろうか。
連日ピーク時の満席は当たり前、空席待ちは平日でも日常茶飯事、22時だろうが23時だろうが閉店5分前だろうが土日平日問わず客が訪れる。
バイトの終盤は毎回体力を消耗しきっているので、いらっしゃいませ、ありがとうございましたの声すら出せないもんだから、
「せー」(いらっしゃいませの略)
「たー」(ありがとうございましたの略)
と言っているが、他のスタッフの声の語尾に あたかもカメレオンのように同一化している為おそらく誰も気づいていないはずだ。
もちろんこの声出しの簡略化は手抜きかもしれない。
がしかし、ピーク時の俺の行動速度はおそらく人類最速を誇り、「居酒屋界のボルト」、「ドリンクのファンタジスタ」と俺の脳内で様々な称号を欲しいままにしているのもまた事実だ。
そのあまりの速さゆえ、一部のスタッフからは
「島田さんかと思って話しかけたら残像でした」
とか、
「島田さんにドリンク頼もうとしたんですけど、島田さんが5人位いたんでどの島田さんに言えばいいか分かりませんでした」
とか、
「千手観音像かと思ってよく見たら島田さんでした」
など、各地で波紋が広がっている昨今だ。
とまあ凄まじいエネルギーをピーク時に費やすもんだから、バイトが終わった後の俺は灰人と化しているわけだ。
そんな灰人は翌日松江だか出雲だかでギグがあったので、松江行きの終電前に上がらせてもらい、その身をほぼ無人と化した山陰本線をひた走る電車のシートに委ねた。
冒頭でも述べたように、終電は云わば母親であり、その胎内に身を委ねる行為は、かつて俺がまだ細胞だった頃、羊水にプカプカ揺られるあの心地よさを呼び起こさせる。
後天的な気持ちよさではなく、遺伝子レベルで組み込まれた より強力な、云わば快楽に抗う術などあるはずもなく、俺は今一度母の胎内で眠りに落ちた。
ガクンッ!!
「どうしたマイマザー!!!!」
羊水内に大きめの振動を感じ、俺は眠りから覚めた。
気がつけば右肩に口からこぼれ落ちた聖水が染みを作っており、目は半分くらいしか開かなかった。
しかしその薄目は、はっきりと捉えたのだ。
「玉造温泉駅」
の5文字が闇の中でしっかりと記されているのを。
松江近郊にお住まいの方以外には距離感が分かりづらいだろうから捕捉すると。
まぁ「絶望」の2文字がチラつくくらいの距離だ。
歩いて帰る気には到底ならないし、何より終電でここまで来たのだから折り返しの電車もあるはずもない。
事態を認識した俺は、
「ふぇぁ」
と謎の奇声を発しながら電車を降りた。
そのままその電車に乗り続けるのは死を意味するからだ。
どうしようかとホームで悩み出したその刹那、車掌が勢いよく終電から飛び降り、俺の元に足早に近付いてきた。
「切符を拝見します」
ほぼ無人の山陰本線、下車する人間は用意に確認できる。
おそらく「ふぇぁ」と謎の奇声を発しながら降りた俺は間違いなく怪しさ満点だったんだろう。
俺は事情を説明した。
すると車掌はこう言い放ったんだ。
「あぁーそうですか、分かりました。ちょっと待ってくださいね。」
マ!ジ!か!!
さすがJR、一人の不審な乗客にもこの優しさ!
俺には分からない裏道的な打開策を知っているに違いない!!!!
と俺は一転して歓喜にうち震えた。
俺のJR株が跳ね上がったのは言うまでもない。
買いだ!買いだ!
JRの株を買い占めろぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!!
とテンション急上昇真冬の恋状態の俺に車掌はこう言ったんだ。
「あぁー、終電ももうないですねー」
知ってるわぁぁぁぁぁぁあああこのボケナスがぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!!!!
テンションの急激なアップダウンは体力を大幅に消耗する。
分かりました…と小声で告げ、より一層灰度を増した俺はトボトボと歩き出した。
「あっ、お客さん!」
どうした車掌!!!!
何か閃いたのか!!!!??
「松江までの切符ですので乗り過ごしの料金を頂きますね」
俺はもうこの車掌を人には見れなくなっていた。
車掌、今が平成の世で良かったな。
時が江戸なら、俺裁判により市中引きずり回しの上打ち首獄門だぞ。
と内心で悪態をつきながら小銭を丁寧に掌に渡すと、間もなく終電は眼前から消えていった。
途方に暮れた俺はとりあえず待ち合い室に行ったが、誰と待ち合うわけもなく、そこには小虫くらいしか居なかった。
外に出てみると、山陰有数の温泉街にも関わらず、そこに広がるのはただの漆黒の闇だった。
もちろん俺は絶望していた。
いや、かつての俺は、と言ったほうが正しい。
今や俺はhommeのベーシスト、俺以外は車持ちのバンドのベーシストなのだよ!!!!
と意気込んで秋山の番号にTEL!!!!
しかしDoCoMoお留守番サービス!!!!
ならば秋葉!!!!
しかしSoftbankお留守番サービス!!!!
俺の望みは人魚の泡のように弾け飛んだ。
機械的なアナウンスを鳴らす携帯を閉じ、眼前の景色はより一層漆黒に見えた。
俺は正真正銘、途方に暮れた。
寒さが厳しく、体と相まって心も冷えきってたもんだから、とりあえず暖を取ろうとホットキャフェオッレを買った。
手にした温もりはほんの少しだけ俺の気持ちを安らかに、立ち上る湯気は眼前の漆黒を少し優しくしてくれた。
そして一口飲み込んだ。
盛大にむせた。
人生上で最もむせた。
一滴も余すことなく全てがダイレクトに気管に流れ込んだもんだから、ぶっ壊れたマーライオンの如く噴射した。
と同時に手からホットキャフェオッレがこぼれ落ち、半分以上が床に茶色い水溜まりを作った。
ガッフン!ガッフン!
と激しくむせながら大慌てで漆黒に潜む漆黒トイレから漆黒ペーパーを漆黒し、床を漆黒した。
俺は何故26にもなってこんな無人の駅で己のホットキャフェオッレをトイレットペーパーで拭かねばならないのだろうかと人生を嘆いた。
床を拭き終わり、俺は携帯の電話帳を凄まじい形相でスクロールした。
車持ちの誰かに助けを求める為だ。
そこで目に止まったのがサークルの後輩だ。
俺が大学時代、とてもかわいがっていた後輩だ。
俺は発信ボタンを押した。
「はいもしもし」
「あの…大変申し訳ないんですが…」
「何?迎え?」
さすがだ。
エスパーかお前は。
こうして後輩がバイト上がりそのままに迎えに来てくれたわけだが、漆黒の中にカバンを持って申し訳なさそうにはにかむ俺は、まるで何かのモニュメントのようでひどく滑稽だったという。
がしかし、俺は後輩に感謝し、優しい気持ちでライブに臨むことができた。
そんな俺の優しいベースが鳴り響くhommeのワンマンライブ、ぜひとも観に来てくれ。
12月18日(土)だ。
車持ちの二人と若干の溝を感じるかもしれないが、それは気のせいだろう。
最後に。
終電は母の胎内を思わせるほど心地よい快楽が睡魔を呼ぶが、赤ずきんのそれのように、ひと度気を許せば狼となって襲いかかってくる、極悪のトラップだということを心に刻み込め。
アディドス!!!!
コメント
コメント一覧 (10)
野宿にならなくてよかったですね(*^^*)
漆黒の中のモニュメント
かわいいー♪
しまんちゅさんは
アホなんですね☆
ブログを本にして物販で売りましょーo(^∀^*)o
コメントはこれだけで十分でしょう☆
では、mixiボイスとツイッターで宣伝しときますねー♪
そう!
せっかく買ったホットキャフェオッレがほとんど床に散乱したのがポイントなんです!
さすがですね!笑
しんじ>
ためらわずにもう一本買うんだよ。
そう、俺のように・・・
ますもどきさん>
ありがとうございます笑
askaさん>
そこはぜひ噴出していただければ・・・
かわいくないでしょ笑
ゆきまつ>
いまさら?笑
mamiさん>
そうすねー
いつか物販に出版したいですねー
・・・買う人がいれば!!笑
ハヅルさん>
宣伝あざーす!!
mixiのライブレポ、いつもありがとです!
その情報、確かにインプットしたぜ!!