※これは2009年12月31日付けのブログより続く「大橋封鎖」シリーズの完結編ブログです。

構想より実に2年以上。
やっと完結です。

今回のブログを読む前にシリーズをおさらいしてから読むことをおすすめします。

大変お待たせしました。

完結編、お楽しみ下さい。























【最終章】



ガス欠の小汚ないトッポは、カッチカッチとハザードを鳴らしていた。



青年の混乱した頭の中とは裏腹に、実に機械的で等間隔にリズムを刻んでいる。



とりあえず青年は今すべきことは何か、と混沌とした頭で考えた。



弾き出した答えは、何よりもまず



「落ち着くこと」



だろう、と青年は考え、先ほどからカッチカッチと等間隔で鳴り続けるハザードをドラムに見立て、脳内セッションを開始した。


















もうこのあたりが落ち着いていない何よりの証拠だと今なら思う。



しかし窮地に陥った人間に冷静な判断力は備わらないものである。










カッチ、カッチ、カッチ、カッチ、カッチ、カッチ…
















ドゥッ、パ、ドゥッ、パ、ドゥッドド、パ、パンパパンパッパッパッパパドドン…
























ドゥパァンドゥパァンズッズパダラララララララララララララララララララララララララララララララララララララスパァァァァァァーキィィィィン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!









パッパー!!



ビクゥ!!!?



脳内セッションも最高潮の頃、再びけたたましいクラクションが鳴り響き、青年は我に帰った。



呑気にドゥパドゥパいっている間に、青年の後ろはおびただしい台数の車が列をなしていた。



それはUSJでいうところの、「スパイダーマン」や「スペースファンタジー」といった人気アトラクションを彷彿とさせる行列だった。



閑古鳥が泣き、いつでも待ち時間5分で乗れる「ジョーズ」とは訳が違う。



とにかく、その行列を目の当たりにした青年は、ある事実に気付いたのだった。























「そうか、俺はリズムセッションを楽しんでいる場合じゃないんだ…」



こうしてやっと落ち着きを取り戻した青年は、ガソリンを入手する術を考えた。



彼がとった手段、それは後輩に電話をすることだった。











プゥルルル…



プゥルルル…



ガチャ



後「はいもしもし」



青「あ、お疲れ。あのさ、今くにびき大橋でガス欠になっちゃって車動かんのだわ。ごめんのだけどガソリン買ってきてくれないかな?」























後「…はい?」



無理もない。



いくら彼が後輩といえど、先輩からガソリンのお使いを頼まれた経験は未だかつてないだろう。



青「いやホントにごめんのだけど、片側車線封鎖しちゃってて渋滞もヤバくてさ。マジ申し訳ない。」



後「はぁ…わかりました、じゃあ行きます。」



青「いや、ホントにごめ…」



ブツッ、ツーツーツー



青「ふぅ…」





とにもかくにも心優しい後輩のお陰で、何とかガソリンを入手できる。



彼が到着すればこの公開処刑から脱出することができる。



さっきまではモノクロに見えていた青年の世界が、色を取り戻した。



もう俺は一人じゃない、そう考えると周りにの視線も気にならなくなっていた。



誤解のないように言っておくが、人間とはかくも単純なものではない。



彼があまりに単純なだけなのだ。





















待つこと数十分、後輩が現場に到着した。



後輩は中央分離帯にいる青年から見て対岸にポリタンクを持ち、何とも言えない表情でこちらを見ながら立っている。



図に表すと以下のような感じだ。



    ○←後輩
―――――――――――
□ □ □ □ □←車
―――――――――――
□ □ ■←現場
―――――――――――
    ●←青年



車の間隙を抜い、後輩は青年の元へと駆け寄ってきた。



と同時に現場横に停まっていた車のブサイクなゴマアザラシみたいな親子が吹き出した。



DNAの悪戯か、そっくりな顔をしたゴマアザラシ2頭は「なんだよガス欠かよ(笑)」とでも言わんばかりに笑っていやがる。



これを踏まえ、先ほどの図を訂正すると、



    
―――――――――――
□ □ □←ゴマ □
―――――――――――
□ □ ■←現場
―――――――――――
   ○●←青年&後輩



ということになる。



もちろん赤の他人をブサイクなゴマアザラシ呼ばわりすることは誉められたことではない。



しかし窮地に立った人を見て爆笑するゴマアザラシと、心身共に衰弱しきったロンリーガイ、どちらに情状酌量の余地があるだろうか。



俺はそんなゴマ野郎は同じ哺乳類とは断じて認めない。



「早くガソリンついで行きましょう!!」



そうだ、もうゴールテープは目の前だ!!!!



ガソリンさえ入れれば全てが終わるんだ!!!!



そう思った瞬間、さらなる壁が青年の前に立ち塞がった。




















青年の小汚ないトッポの給油口は車体の左側についている。



これすなわち、小汚ないトッポと左側車線をビュンビュン行き交う車の隙間に入り込んで給油作業を行わなければならない、ということだ。



ジーザス。



ファッキンジーザスだ神よ。



試練とはそんなにも固まって与えられるものなのでしょうか。



意を決した俺、もとい青年はポリタンクを片手にゴマアザラシとトッポの間に歩み寄った。



哺乳類くずれにも多少の罪悪感はあったのだろうか、近寄るとうつむきながら目線を逸らした。



人を嘲笑するのにその程度の覚悟でいたのかと思い、この時点でこいつらは爬虫類のカテゴリーに確定した。



そんなニシキヘビ共を尻目に、俺はポリタンクにセッティングされたノズルを給油口に差し込んだ。



左側車線も流れ始め、ニシキヘビは消え去り、ビュンビュンと背中側を車が走り去っていく。



これはキツイ。



ここにきて最大限のキツさだ。



先ほどまでは、ハザードをたいて停まっていたため、事故か何かと勘違いしてくれていた部分もあったかもしれない。



しかしながら、ポリタンクが登場した瞬間、ただのガス欠という事実が知れ渡ってしまった。



したがって、ビュンビュン行き交う車の車内では、「クリスマスにこんなところでガス欠ってww」といった会話がなされていることは容易に想像がついた。



焦った俺は、一秒でも早くガソリンを入れたいが為に、ノズルをガシャガシャ揺すった。



そして悲劇は起こった。





















ポキンッ





















ビシャビシャビシャビシャビシャビシャビシビシャビシャビシャビシャビシャビシャビシャ!!!!!!!!!!!!





ノズルが外れ、クリスマスの真っ昼間、松江の中心の橋で、盛大にガソリンをぶちまいた。



一人の若きカリスマ過激犯の誕生である。



あなたは見たことがあるだろうか。



クリスマスの幸せムードの中、ポリタンクのガソリンをぶちまける人物を。



まずないだろう。



もしこれが街中で行われていれば即通報からの逮捕は確実だ。



残念ながら日本の司法制度はそんなに優しくできてはいない。


慌ててノズルを拾い、給油を終わらせた青年は、逃げ出すようにその場を立ち去った。



辺りにはガソリンの香りだけが残されていた。



以上を踏まえ、最終的な現場の見取図は以下のようになる。








    
―――――――――――
□ □ □ □ □←車
―――――――――――
□ □ ■←残留思念□
―――――――――――
   中央分離帯  


















後日談だが、青年はその後輩を引き連れて漫画喫茶に行った。



その帰り道。



悲劇は再び繰り返された。















そう、ガス欠アゲイン。



学習能力の皆無さからみると、俺もあの爬虫類と同レベルかもしれない。



「ホントに…島田と書いて愚か者と読みますね…」



あの時の後輩の言葉は今でも忘れない。



読者のあなたもガス欠には最大限の注意を払い、こまめな給油をおすすめするぜ。



アディドス!!!!