あなたが私の家の事を気にしてくれて、送ってくれる気持ちは凄く嬉しい。
けれど、まだとどまっていたい。
あなたの送ってくれる世界は、現実だけれどどこか曖昧で自分の居場所なのかわからない時がある。
だから、あなたのその導きに逆らってしまいたくなる時がある。
あなたに送られてしまったら、私はあなたをも見失ってしまいそうで。
あなたの息遣いも、顔も、声も遠くなってしまう。
あなたの肌の温度もわからなくなってしまうの。

だから、まだ私を連れ出さないで。
まだ、今は私をあなたの船でいさせて欲しい。
そうすれば、あなたが舵をきる方向に私を自由自在にしてもらえる。
今、私はシャワーを浴びて立ち込める湯気が、船の周りにはった霧みたいに感じる。
こんなんじゃ、私は航路を見失ってしまう。
シャワーの栓を止めて浴室から出た私は、大きな鏡に裸を映してみる。
あなたが付けたキスマークが胸やお腹に見える。
あなたが付けてくれた所有印。
私は指でそっとなぞりながら、バスルームからあなたがいるベッドルームへ向かう。
あなたは着替えの途中だった。
私はバスタオルも巻かず、あなたの前に裸のまま進み寄る。
私はそっと抱きついて、あなたの首筋に口づけをした。
あなたが乗っている船はまだ帆も張らず、止まったまま。