2005年08月13日

山田詠美・風味絶佳

若い頃はユーミンの歌が好きだった。
年をとるにつれて、ゆーみんの歌から離れ、
若い時に寄り付かなかったみゆきさん(中島)の歌に心酔していった。
ゆーみんの歌のディティールが、恋をする現役の女の子にのみ通じる言葉に思えて来たからかもしれない。
 
初めて山田詠美の「ベットタイムアイズ」を読んだ時、サガンの「悲しみよこんにちは」を読んだ時の感動に似たすごさを感じた。
日本にこんなにもピュアな恋愛を描ける作家がいるんだと思い、
以来彼女の小説を読み捲くった。
でも、何冊か読んでいくうちに、少しずつ詠美さんの世界から離れていった。ゆーみんの歌から離れていったように・・・
 
でも彼女の存在はいつも気になっていて、全部ではないけど、新刊が出る度に読んではいたものの、「ベットタイムアイズ」程の感銘は受けられなかった・・・私が年をとったからなのか?
それとも彼女が永遠のシスターだからなのか?
 
ファンとしてはせこい手を(図書館で借りた)使って久久に「風味絶佳」を読んだ。「AtoZ」では得られなかった感銘を受けた。
彼女はちゃんと純粋な「大人の不良」になっていた。
図書館で借りてしまった事を激しく後悔させる、詠美さんらしい小憎らしさ。
久久に「ベットタイムアイズ」以来の感動を受けた。
 
間食・・・とび職の男が主人公のこの話は、多分、一般的には多少受け入れられがたい話かもしれない。
でもいくつものピュアな恋をしてきた詠美さんだから許される人間の奥底にある感情に思えた。
 
夕餉・・・「彼の身体は私が作るんだ・・・」自分の居場所を見つけた人妻が、居場所である男に夕餉を用意しながら様々な心模様を描いた話。以前何かのインタビューで食事のシーンが美味しそうな作家はすごいような事を彼女が語っていたけど、これはまさにその描写力のうまさを見せ付けられる。参った。常日頃、私の中でも「食が一番大事」(こんなふうに描くとすごくありきたりで自分のボキャブラリーの貧困さに落ち込む)だと言う思いがあるのだけど、まさにその想いが文学になったと言う感じ。
 
風味絶佳・・・この話は一番シナリオに起しやすそうな話だと思う。でも難しいかな・・・おばあちゃんのキャラがいい。私はこういうハイカラな女の人が好きだ。女は生涯現役でいるべきだ。話のディティールは一番、詠美さんらしいと思う。こんな時「なぜ私は九州に産まれてしまったのだろう?」と思う。
 
海の庭・・・離婚を機に、母と母の昔の同級生との微妙な恋心を、娘の視点から描いた話。こいういテイストの話を描く作家は多いけど、たいていいやらしいオヤジの視線のような結末に終わっている。
身体と心の一体感を熟知している詠美さんだからこそ、セックス描写なしでこういう淫靡さを出せるんだと思う。感動!
 
アトリエ・・・これもまさに、恋愛の先にあるものは子供だと思っていない(だからと言ってそういう人を否定しているわけでもなく)詠美さんのピュアさが色濃く出ている作品で私は好き。
でも嫌いな人は・・・と言うより、わからない人はわからないだろうな。
北朝鮮と日本の文化の違いのようなものだ。
 
春眠・・・こういう「向田邦子」タッチのものを書くなんてやはり詠美さんはすごい。でもちゃんと詠美さんの文章なのだ。
 
明菜ちゃん、ジュリー、ゆーみん・・・かつての女王だったり、時代を代表する人であったりして好きだったけど、生涯現役で(その年齢の)いて欲しかった人たち。年齢に見合うかっこよさを見せて欲しかったけど、見せてくれなかった人たち・・・詠美さんだけが私の期待を裏切らなかった。
風味絶佳を今日買いに行こう・・・
 
 

風味絶佳
maririn0014 at 08:12│Comments(2)TrackBack(1)読書 

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1. 『風味絶佳』(山田詠美著)  [ ゆっくり歩け、たっぷり水を飲め_元Tennis Boy の読後感 ]   2005年08月21日 18:40
山田詠美を読むのは、『ぼくは勉強ができない』に続いてこれが二作目。 高橋源一郎が書評で絶賛していたこともあり手にとってみました。 ぼくが「この作家はすごい(=うまい・好きだ)」と感じるかどうかは、 その人独自の世界を持っているかどうか、に掛かっている。

この記事へのコメント

1. Posted by 元Tennis Boy   2005年08月21日 18:41
はじめまして。楽しく拝見しました。

しゅーさんの記事を読んで、『ベットタイムアイズ』読みたくなりました。

TBさせてください。
2. Posted by しゅー   2005年08月22日 23:26
元Tennis Boy さん、トラックバックありがとうございます。
今朝私も元Tennis Boy さんの所にお邪魔しました。
「僕は勉強ができない」もよかったですよね。
ベットタイムアイズ、ぜひ読んでみてください。
これがデビュー作と言うのですから、すごいです。

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