朝鮮半島の核問題やミサイル問題、拉致問題、過去の植民地支配の清算の問題など、日本と北朝鮮との間に横たわる諸々の問題の一括解決に努力を尽くし、両国の国交正常化への道筋を開くことが東アジアの平和と繁栄・友好に大きな展望を開く。
それゆえ、両国の間に存在する諸懸案を解決して、一刻も早く日本と金正日政権下の北朝鮮との国交正常化を実現すべきだ。
このような考え方を根拠に日朝国交正常化を急ぐべしと主張する論者や政治勢力は数多いが、はたして、現在の日朝関係をめぐる複雑な国際環境の下で両国の国交正常化が実行可能であり、なおかつ現実的な選択したり得るのか?
日朝間の国交正常化を急ぐべきでない理由
筆者は現在の国際環境のもとでの日朝国交正常化は現実的でないと思うが、その理由として次にかかげる二つの問題の存在を挙げたい。
第一に米国と北朝鮮との間で朝鮮戦争は終結しておらず、たんなる休戦状態に留まり法的には戦争状態の真っ只中にあるため、このなかに日本がノコノコ入っていき一方の当事国である北朝鮮に植民地支配の賠償金として多額の金を渡すことをアメリカが見過ごすはずもなく、韓国も穏やかならぬ話として猛烈に反対することだ。
ましてや、日本は安保条約によって外交と軍事という国の根幹を米国に握られた自主外交のできない半従属国にすぎず、朝鮮半島での日本の自主的な判断や行動は事実上不可能な状態におかれている。
それゆえ、従属的な日米安保条約を破棄して日本の自主性を確立し、そのうえでアメリカと北朝鮮を説得して朝鮮戦争を終わらせる平和条約を締結する橋渡し役を果たし、その後に日朝国交正常化をおこない南北と等距離の関係を作っていく。
この方向にしか打開の道はなく、現状の日米関係と米国の朝鮮政策を前提にするかぎりは日朝国交正常化は“砂上の楼閣”である。
第二は、かりそめにも国交正常化という大問題をうんぬんする以上は相手を良く見きわめねばならず、仮に対米従属という障害がなくても、金正日政権が相手では相手が悪すぎるということだ。
1989年に東欧の旧社会主義諸国が長年にわたり反国民的な悪政を積み重ねてきた報いから次々と崩壊していった。
まずポーランドで反政府組織「連帯」が勝利し、東西ドイツを隔てていたベルリンの壁は取り壊され、同年の12月25日にはルーマニアの独裁者チャウシェスクが蜂起した民衆によって逮捕され翌日に銃殺されるが、このことが金正日に自国の崩壊も間近なことを予感させ、金日成・金正日親子をはじめとした北朝鮮社会の特権階層たちは民衆蜂起による報復の恐怖に怯えはじめる。
なぜなら、北朝鮮社会は人間の尊厳や自由や権利はおろか、一番基本的な衣食住さえ保障されない未開社会であり、民衆弾圧により数十万の政治囚が強制収容所にとじこめられた暗黒社会であって、それを作り出したのが金日成・金正日親子による比類のない独裁と圧制だったからである。
また、ソ連の崩壊により北朝鮮にとって生命線であった大量の食料とエネルギーの供給がストップしたことも彼らの懸念と恐怖に拍車をかけた.
とくに小心な金正日はチャウシェスク型の処刑の恐怖に怯え、生き残りのために彼に反感を持つ大量の人民の殲滅(抹殺)を計り、彼らへの食糧配給の全面中断を断行して民衆反乱の温床となる人々を根絶やししようとした疑惑がぬぐえない。
こうして金正日が食料の配給停止という手段を使い、“敵対階層”抹殺を狙った“銃弾なき戦争”を人民に仕掛けたことが三百万人以上ともいわれる北朝鮮の大量餓死の本当の原因であり、北朝鮮の大飢饉は自然災害によるものではなく金正日による大量殺人の結果として意図的につくられたものであるという説が有力なものとなっている。
また、北朝鮮では人民のいっさいの食糧が政府の配給に依存しており、人民は移動の自由までも奪われ、戦時中の日本のように都市住民が衣類などを背負って農村を回り食料の買出しをするといった自給策も封じられた社会だったことが金正日の餓死による大量殺人を可能にしたという。
カンボジアのポルポトは何百万人の人民を鍬や鉄パイプなどで撲殺したが、このようなやり方ではたちまち明るみに出て国際社会の強い非難を受けるために、いっさいの武器を使わず音も無く何百万人の人民を抹殺する方法として食料の配給停止というきわめて巧妙な手段を思いついたのが金正日であり、このことは彼の狡猾さと残虐さを物語っている。
このように金正日は自分の身の安全と体制の維持のために数百万もの自国人民を殺した殺人者であって、ジェノサイド条約により国際法廷に引き出されるべき大量殺人犯である可能性が極めて高く、さらには自分で作り出した飢餓を口実にして国際社会から人道援助の食料をだまし取っては換金し、核兵器とミサイルの開発につぎ込んでいた人物である。
自国の大量の人民を平気で殺害し、虚偽宣伝で国際社会からモノとカネをだましとる金正日政権にたいし、国交正常化により巨額の賠償金を渡せばどのような結果となるかは火を見るよりも明らかだ。
日本人拉致問題解決と60年代に北へ渡った在日同胞の帰国実現を急ぐべきこと
以上の二つの理由により、日朝国交正常化は少なくとも金正日政権が存続する限りは急いでおこなうべきではなく、現状ではポスト金正日における民主的な政権の成立を待つべきであり、さらには日米安保条約に縛られた日本が“宗主国”であるアメリカの意に反する日朝国交正常化をすんなりおこなえると考えることは幻想であり、米国の北朝鮮政策に劇的な変化がないかぎりは国交正常化は机上の空論でしかない。
ゆえに、いま日本国民が政府に要求すべきことは国交正常化ではなく日本人拉致問題の全面解決であり、拉致被害者の全員送還と拉致実行者やその責任者への厳しい処罰、および遺族への賠償と遺骨や遺品の返還であり、遺族による自由な墓参の保証である。
また、1960年代に北朝鮮当局と朝鮮総連による「地上の楽園」という甘言にだまされて北に渡った在日朝鮮人帰国者10万人とそれに従った日本人妻1300人余の日本への里帰りと永住帰国への道を開くことであり、将来の国交正常化に向けて対米従属から抜け出して、自主自立の日本外交へと転換するために努力を払うことである。
それゆえ、両国の間に存在する諸懸案を解決して、一刻も早く日本と金正日政権下の北朝鮮との国交正常化を実現すべきだ。
このような考え方を根拠に日朝国交正常化を急ぐべしと主張する論者や政治勢力は数多いが、はたして、現在の日朝関係をめぐる複雑な国際環境の下で両国の国交正常化が実行可能であり、なおかつ現実的な選択したり得るのか?
日朝間の国交正常化を急ぐべきでない理由
筆者は現在の国際環境のもとでの日朝国交正常化は現実的でないと思うが、その理由として次にかかげる二つの問題の存在を挙げたい。
第一に米国と北朝鮮との間で朝鮮戦争は終結しておらず、たんなる休戦状態に留まり法的には戦争状態の真っ只中にあるため、このなかに日本がノコノコ入っていき一方の当事国である北朝鮮に植民地支配の賠償金として多額の金を渡すことをアメリカが見過ごすはずもなく、韓国も穏やかならぬ話として猛烈に反対することだ。
ましてや、日本は安保条約によって外交と軍事という国の根幹を米国に握られた自主外交のできない半従属国にすぎず、朝鮮半島での日本の自主的な判断や行動は事実上不可能な状態におかれている。
それゆえ、従属的な日米安保条約を破棄して日本の自主性を確立し、そのうえでアメリカと北朝鮮を説得して朝鮮戦争を終わらせる平和条約を締結する橋渡し役を果たし、その後に日朝国交正常化をおこない南北と等距離の関係を作っていく。
この方向にしか打開の道はなく、現状の日米関係と米国の朝鮮政策を前提にするかぎりは日朝国交正常化は“砂上の楼閣”である。
第二は、かりそめにも国交正常化という大問題をうんぬんする以上は相手を良く見きわめねばならず、仮に対米従属という障害がなくても、金正日政権が相手では相手が悪すぎるということだ。
1989年に東欧の旧社会主義諸国が長年にわたり反国民的な悪政を積み重ねてきた報いから次々と崩壊していった。
まずポーランドで反政府組織「連帯」が勝利し、東西ドイツを隔てていたベルリンの壁は取り壊され、同年の12月25日にはルーマニアの独裁者チャウシェスクが蜂起した民衆によって逮捕され翌日に銃殺されるが、このことが金正日に自国の崩壊も間近なことを予感させ、金日成・金正日親子をはじめとした北朝鮮社会の特権階層たちは民衆蜂起による報復の恐怖に怯えはじめる。
なぜなら、北朝鮮社会は人間の尊厳や自由や権利はおろか、一番基本的な衣食住さえ保障されない未開社会であり、民衆弾圧により数十万の政治囚が強制収容所にとじこめられた暗黒社会であって、それを作り出したのが金日成・金正日親子による比類のない独裁と圧制だったからである。
また、ソ連の崩壊により北朝鮮にとって生命線であった大量の食料とエネルギーの供給がストップしたことも彼らの懸念と恐怖に拍車をかけた.
とくに小心な金正日はチャウシェスク型の処刑の恐怖に怯え、生き残りのために彼に反感を持つ大量の人民の殲滅(抹殺)を計り、彼らへの食糧配給の全面中断を断行して民衆反乱の温床となる人々を根絶やししようとした疑惑がぬぐえない。
こうして金正日が食料の配給停止という手段を使い、“敵対階層”抹殺を狙った“銃弾なき戦争”を人民に仕掛けたことが三百万人以上ともいわれる北朝鮮の大量餓死の本当の原因であり、北朝鮮の大飢饉は自然災害によるものではなく金正日による大量殺人の結果として意図的につくられたものであるという説が有力なものとなっている。
また、北朝鮮では人民のいっさいの食糧が政府の配給に依存しており、人民は移動の自由までも奪われ、戦時中の日本のように都市住民が衣類などを背負って農村を回り食料の買出しをするといった自給策も封じられた社会だったことが金正日の餓死による大量殺人を可能にしたという。
カンボジアのポルポトは何百万人の人民を鍬や鉄パイプなどで撲殺したが、このようなやり方ではたちまち明るみに出て国際社会の強い非難を受けるために、いっさいの武器を使わず音も無く何百万人の人民を抹殺する方法として食料の配給停止というきわめて巧妙な手段を思いついたのが金正日であり、このことは彼の狡猾さと残虐さを物語っている。
このように金正日は自分の身の安全と体制の維持のために数百万もの自国人民を殺した殺人者であって、ジェノサイド条約により国際法廷に引き出されるべき大量殺人犯である可能性が極めて高く、さらには自分で作り出した飢餓を口実にして国際社会から人道援助の食料をだまし取っては換金し、核兵器とミサイルの開発につぎ込んでいた人物である。
自国の大量の人民を平気で殺害し、虚偽宣伝で国際社会からモノとカネをだましとる金正日政権にたいし、国交正常化により巨額の賠償金を渡せばどのような結果となるかは火を見るよりも明らかだ。
日本人拉致問題解決と60年代に北へ渡った在日同胞の帰国実現を急ぐべきこと
以上の二つの理由により、日朝国交正常化は少なくとも金正日政権が存続する限りは急いでおこなうべきではなく、現状ではポスト金正日における民主的な政権の成立を待つべきであり、さらには日米安保条約に縛られた日本が“宗主国”であるアメリカの意に反する日朝国交正常化をすんなりおこなえると考えることは幻想であり、米国の北朝鮮政策に劇的な変化がないかぎりは国交正常化は机上の空論でしかない。
ゆえに、いま日本国民が政府に要求すべきことは国交正常化ではなく日本人拉致問題の全面解決であり、拉致被害者の全員送還と拉致実行者やその責任者への厳しい処罰、および遺族への賠償と遺骨や遺品の返還であり、遺族による自由な墓参の保証である。
また、1960年代に北朝鮮当局と朝鮮総連による「地上の楽園」という甘言にだまされて北に渡った在日朝鮮人帰国者10万人とそれに従った日本人妻1300人余の日本への里帰りと永住帰国への道を開くことであり、将来の国交正常化に向けて対米従属から抜け出して、自主自立の日本外交へと転換するために努力を払うことである。