政府首脳によるTPP推進論の“底の浅さ”について!
かって小泉内閣がすすめた「国民対話」は、後に参加者や質問者の偽装が発覚して税金の無駄使いとの厳しい批判を浴びた。
だが、ここにきて菅内閣がTPP(環太平洋連携協定)のPRのために始めた公開討論会「開国フォーラム」も税金の無駄使いとの批判が出そうだ。

TPPの問題は政府与党内部でも意見が分かれており、そもそもそのような問題で税金を使って世論を一方的に誘導すること自体に問題があるが、フォーラムの内容自体についても何か胡散臭さを感ずる。TPPの旗振り役の玄葉国家戦略担当大臣が語る日本のTPP参加の意義を簡単に要約すれば次のようになるからだ。

「日本の人口の減少はすすむ一方だから、国内でモノがだんだん売れなくなる。
だが、その半面でアジアの個人消費は10年後に日本の4.5倍に達し、米国を追い抜く。このアジアの成長市場に日本の品物をたくさん売り込むためにも関税撤廃などの約束事をTPPであらかじめに決めておく。すると輸出が増えて日本の企業がガッポリ儲かって国内の雇用も増える。また、企業がガッポリ儲かれば税金もたくさん入ってくるから、入った税金で農産物の輸入が増えて立ち行かなくなった農家を補償し、社会保障も充実させる。…‥
ゆえにTPP参加は「開国」の恩恵を分配するシステムであり、これへの参加で日本の未来はバラ色である」

ところで現在、TPPに参加しているのは米、豪、ペルー、チリ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、ニュージーランド、ブルネイの9カ国にすぎず「アジアの成長市場を取り組む」といっても肝心の中国や韓国は入っていない。
今後この両国とどのような交渉を進めていくのかのハッキリした見通しなど持っているわけでもない。

また、多国籍企業化した日本企業は安い労働力を求めて海外にその生産拠点を次々に移しており、仮にTPPで輸出が増えたとしても日本国内の雇用がいまさら飛躍的に増えることなどありえない。
そして、「国際競争力」を名目に財界やマスコミなどが法人税の引き下げを従来から主張しており、今後この流れが続く限りは税収が飛躍的に増えることなど考えにくく、企業の内部留保が激増する中で、働くものの給料が下がり続ける現状では国民の生活に「開国」の恩恵が広く及ぶことなど期待できないだろう。

また、TPPで関税が撤廃されても米国は輸出を増やすために「円高・ドル安」へと意図的に誘導することはミエミエであり、関税撤廃で無防備となったところにドル安でいっそう安くなった米国の農産物がどっと押し寄せるだろう。
そして、その半面で日本からの輸出は思惑通りには増えず、安い米国品の流入でデフレがさらにすすむだけとなるだろう。

TPPによる低賃金労働力の大量流入と国民皆保険制度の崩壊!
ところで大手民間企業の労働組合を中心とする「連合」はTPPへの日本の参加に賛成しているのだが、この政府の「上手い話」を真に受けての賛成だとすればこれほど間の抜けた話はない。
国と国との貿易は物品に限らず、現在ではサービス貿易が大きな比重を占めており、TPPのもとではサービス貿易の完全自由化は避けられない。
そうなると人や資本の自由な移動が不可欠となり、国民生活に広範な範囲を与える。

特にTPPによって入管手続きが撤廃され、労働力が自由に国境を超えて行き来できるようになれば、ベトナム人などの低賃金労働力の大量流入がおこる。
ベトナムは低賃金労働の国であり、一ヶ月の平均賃金が1万5千円に満たないと言われているが、そうなると周辺国と均衡するまで日本国内の賃金水準が下がり続けることとなり、国内の雇用は圧迫され、大量失業の時代の到来も避けられない。
これでも「連合」はTPPへの日本の参加に賛成するとでも言うのだろうか。

また、日本医師会は「TPPへの参加によって日本の医療に市場原理主義が持ち込まれ、最終的には国民皆保険の崩壊に繋がりかねない」との懸念を表明している。
TPPは外資への日本の医療市場の開放を要求しており、外国人医師や外資の参入を受け入れるとなると日本の公的医療保険では診療報酬が決まっており、営利を目的とする企業や高額報酬を目的とする人には魅力がない。よって病院は必然的に高額の自由診療を目指すことになる。
そうなるとお金のない人は高額の自由診療を受けることができなくなり、高額の報酬を期待できる主に都市を中心とした自由診療の病院に医師などの人材も集中する。
すると公的医療保険で診療する地方の公立病院などは医師がいなくなり、地域医療は立ち行かなくなる。最終的にはこれらの問題をとおして国民皆保険制度が崩壊しかねない。

地域経済などにも重大な影響を与えるTPPの脅威!
さらにTPPのもとでは「政府調達」の解放という名目で国の公共事業のみならず、市町村レベルでの公共事業や物品の納入にも外国資本が自由に参入することが求められるという。
たとえば銚子市役所で市道の整備をおこなう際にも、地元や国内の業者ばかりではなく、外国業者にも入札の機会を均等に保障するために銚子市のホームページに入札の公告を英語でおこなわなければならなくなる。
そうなると米国はおろか、バングラデシュあたりの業者が地元業者の5分の1や10分の1の価格で工事を落札することとなりかねず、地元業者は完全に仕事を奪われることとなる。
こうして農業の崩壊とともに地域経済の崩壊にも拍車がかかりかねない。

imagesCARLT2Q8さて、これらはTPPによってもたらされる災厄のごく一部であり、TPPは多くの分野でほとんどの情報が開示されてはいない。
しかも、菅首相をはじめ政府首脳は「詳しい情報は参加表明してみないとわからない」とまともに質問にも答えられない体たらくである。
TPP交渉の秘密主義は参加国のニュージーランドなどでも問題になっており、情報開示は急務であろう。