米国は08年のリーマンショックに端を発した深刻な経済危機からの活路を輸出拡大に求めており、オバマ政権は5年間で輸出を倍増する「戦略」を打ち出して、日本をその大きなターゲットにしています。
そして、オバマ政権がこの「戦略」の実行のためにおこなっているのが経常収支の赤字の縮小のための輸入の抑制であり、為替をめぐってのドル安、円高の容認、誘導です。
ちなみに円の対ドルルートは3年前と比べても20%〜30%も高くなり史上最高値を更新しています。

さて、今日の異常円高に加えて、米国が日本への大幅な輸出の拡大のための決め手として目論んでいるのがTPPであり、TPPによって日本の制度を米国企業の都合のいいように変えようというのです。
米国は日本への大幅な輸出の拡大のためには関税のみならず、金融、医療、保険、流通などあらゆる分野の「非関税障壁」の撤廃を目指しており、その最大の武器がISD(投資家対国家紛争仲裁)条項とよばれる投資家と国家間の紛争解決のための秘密裁判の制度です。
米国企業が日本の規制(労働、環境、安全基準)などのせいで「公正な競争が阻害された」とこの制度に訴えれば、「日本国民の福祉」などはいっさい問われないために日本政府に勝ち目はありません。

北米自由協定とよばれる米国、カナダ、メキシコの3国で結ばれた自由貿易協定にはすでにISD条項が盛り込まれており、その結果、国家主権が侵される事態がつぎつぎとひきおこされました。
カナダ政府がある神経性物質の燃料への混入を禁止していたことにたいし、米国のある燃料企業がこの規制で不利益を蒙ったとしてカナダ政府を訴えました。その結果、カナダ政府は敗訴し巨額な賠償金を払ったうえに、この規制を撤廃せざるをえなくなりました。
また、メキシコで地方自治体が米国企業による有害物質の埋め立て計画の危険性を考慮してその許可を取り消したのに対し、米国企業が提訴したところ、この企業は1670万ドルの賠償金を獲得に成功したといいます。
要するにISD条項とは各国が自国民の安全、健康、環境などを自分たちの基準で決められなくしてしまう「治外法権」規定にも等しいものなのです。

また、TPPによって工業製品の関税が撤廃されたとしても米国の工業製品に対する関税はすでに低く、乗用車では2.5%、電気・電子機器では1.7%にしかすぎません。工業製品の関税の撤廃など異常な円高で消し飛んでしまいます。
だが、その一方で関税が撤廃されれば価格競争力の高まった米国などの農産物が日本国内にノーガードで入り込み、日本の食物自給率が現在の40%から13%へと急落していきます。
そして、米国企業に不利な日本の国内法はISD条項などの「毒素条項」によって次々に破棄されていき、日本の経済・社会は取り返しのつかない大きな被害を受けます。

乗ってはならない「バス」のTPP、すくなくても乗り急ぐものではありません!
ところで、TPPはよく「バス」に例えられますが、このバスの運転手は米国であり、乗客もまばらで中国や韓国、タイなどは乗っていません。
そして、TPPがどんなものかよく知らされないまま、野田政権はこのバスの運転手にせかされて乗り込もうとしていますが、いったん乗り込んだら途中下車はできません。
また、このバスは乗り遅れるともう乗れないバスではなく、日本政府が乗車しない限りは発車できないバスでもあります。
これがTPPというバスの実態ですが、本来は乗ってはならないバスであり、少なくて絶対に乗り急ぐべきバスではありません。