〇今回の「イスラム国」人質事件への政府の対応は「人命第一」だったか!
今回の事件で殺害された湯川さんが「イスラム国」に拘束されたことを政府が把握したのが昨年の8月のこと。この頃から米英による「イスラム国」への空爆が始まって、それへの報復として米国人や英国人の人質が次々と殺害された。にもかかわらず日本政府は米軍などの「有志連合」による空爆への支持を表明した。この政府の対応が「人命第一」だったとは言えないだろう。
人質の人命より「有志連合」の仲間に入って世界の列強と肩を並べたいという思惑が優先したとしか思えない。
〇「イスラム国」と闘う国々への2億ドル支援表明について!
首相は中東訪問時のカイロで「イスラム国」とたたかう周辺各国に2億ドルを支援すると表明した。だがインタ−ネットで「イスラム国」による人質殺害警告がでると2億ドルは「人道支援」だと言い繕った。しかし国際原則でも人道支援には公平的・中立的であるという要件が必要。だから「イスラム国」とたたかう諸国への支援が「人道支援」になるはずがない。本当の人道支援なら赤十字など国際人道支援団体を通じて行うのが筋だろう。
またイスラエルにおいても「軍事協力強化」を図ると首相が表明したが、これは余りにも不用意な発言であり、それが災いの種となった。
〇「邦人救出」に便乗した自衛隊海外派兵体制づくりについて!
先のアジア太平洋戦争も、最初は中国国内での「紛争」に巻き込まれた日本人を守る(居留民保護)との名目で軍隊を大陸に派兵したことが最初のきっかけだった。
そこから中国の問題に足を突っ込みだした大日本帝国は柳条湖や盧溝橋などの事件を引き起こして、引き返し不可能な流れを作ってしまった。これが泥沼の中国侵略や米国や英国との抜き差しならぬ対立へとエスカレートしたのである。
「邦人救出」のための自衛隊派兵などはこの歴史の教訓から考えても不可だ。
(補足)
海外での「邦人救出」とは軍事オペレーションに自衛隊が参加することであり、まさに憲法9条の禁ずる「武力行使」だ。そして軍隊を投入したら人質が救出される可能性は低下するだろう。そもそも在外邦人が人質とならないように外交政策の国際的信頼性を高めることが政府の第一の責務だ。危なくなったら軍隊の派遣では本末転倒だ
〇「テロリストに気配りする必要なし」との首相暴言について!
「(イスラム国)とたたかう周辺各国に2億ドル支援を約束する」と、日本人二人が拘束されていることを承知しながらエジプトで演説した安倍首相。国会質問で「演説で二人に危険が及ぶという認識がなかったのか」と質問を受け、「テロリストに過度に気配りをする必要はない」と言ってのけた。
おいおい「テロに屈しない」からといって「慎重に言葉を選ぶ」必要はないのか。さらに自分を批判する言説に逆上し、”テロには屈しない“との暴言を口にしたため、国会の議事が止まり、一時騒然となった。
安倍首相は「テロに屈しない」のスローガンを言論封じのために利用している。テロではなく安倍に屈してはならないのである。
〇安倍政権による日本人人質事件への対応には厳しい検証が必要!
「イスラム国」人質事件は日本人二人の殺害という最悪の結果に終わった。またヨルダンは人質のパイロットの残虐な殺害に対し、リシャウイ死刑囚の死刑執行で報復した。今後の血の報復連鎖が心配だ。これらの結末から考えても安倍政権の今回の事件への対応には厳しい検証が必要だろう。