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Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.11

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.11

~集光型太陽光発電システムの将来性~

2012/3/30

 

先日、東京電力が定期検査のため柏崎刈羽原発6号機の発電を停止したことで、東電の原発17基の運転が完全に停止しました。福島第一原発事故の影響により、国内54基の原子力発電所で20123月末時点稼働しているのは、北海道電力泊原発3号機1基のみとなり、今夏の全国的な電力不足がすでに懸念されています。また、そもそも原発の安全性に大きな疑問が唱えられたことから、原子力に頼らない電力の確保が全世界的な課題となっています。

 

このような議論で必ずと言っていいほど出てくるキーワードが「太陽光発電」です。近年の技術革新のスピード、市場競争の激化という点では、他に比類ない分野ではないでしょうか。太陽光発電に関連する企業は現在、エネルギー変換効率の向上と生産コストの低減という大きな課題に直面し、果敢に開発競争を繰り広げています。

 

そんな中、昨年ごろからにわかに注目を集めている太陽光発電システムがあります。それが今回のコラムのテーマである「集光型太陽光発電システム(CPVConcentrating Photo Voltaic system)です。

 

太陽光発電システムと言えば、黒い平面ガラスが空に向かってたくさん設置されている光景を思い浮かべる方が多いと思いますが、このCPVは少し趣きが異なります。簡単に言うと、レンズによって太陽光を集中させ、より効率よく発電する、というシステムです。透明な凸レンズが一つのパネルにいくつも並んでおり、見た目はスタジアムの照明に少し似ています。

 

現在、米国のアモニクスや日本の大同特殊鋼など数社がCPVを製造しており、公的研究機関や国との共同の実証実験をおこない、徐々に実際の発電現場にも採用されつつあります。

 

このうち、世界シェアの70%を占めると言われているのが米国アモニクスです。201110月には、同社のCPV84基が、北米最大の集光型太陽光発電所である「ハッチ・ソーラー・センター」(ニューメキシコ州ハッチ)に設置され、試運転を開始しました。

 

一方、日本勢も徐々にその存在感をあらわしています。たとえば、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)はEUと共同でセル変換効率45%以上を目指した集光型太陽電池の開発に着手していますし、産総研太陽光発電研究センターもNREL(米国国立再生可能エネルギー研究所)と日米両国で同一のCPVを使った実証実験を20111月より5年間の予定で開始しています。

 

日本の主力メーカーである大同特殊鋼によると、CPVの一番のメリットは太陽電池の数を減らすことができる点にあります。一つのレンズが太陽光を550倍に集光して発電素子(セル)に照射するため、理論上はセルを550分の1に減らすことができます。太陽光発電システムでもっとも低コスト化が難しい発電素子を減らすことで全体的な発電コストを削減することができるのです。これにより、政府の補助がなくても、原子力や石炭エネルギーなどとコスト競争ができる可能性があります。

 

また、太陽光を追尾することができるため、真夏の消費電力のピーク時でも十分な電力を供給できます。この追尾の動力は電力ですが、「スイッチを一日オンにしていても蛍光灯1本程度の消費電力」(大同特殊鋼担当者)で済みます。

 

このように、CPVはまさに夢のようなエネルギーシステムですが、実はひとつ問題があります。直達光の強さに比例して発電能力が上がるという特性から、雨が多く、また日光の強さもそれほどではない日本の気候条件には向かないとする意見があるのです。

 

では、どのような地域に向いているかというと、直達日射が強く、ほぼ晴天という気候条件の地域です。たとえば、砂漠地帯では非常に有望な発電システムと言われています。また、南欧の沿岸地域やアメリカの中西部などもCPV発電所の有力な候補地となります。

 

現在、日本では集光レンズや多接合型高効率セルといった様々な技術分野でCPV向け製品の開発がおこなわれています。たとえば、日本のクラレでは集光レンズの開発を進め、米国アモニクスに提供しています。また、大同特殊鋼ではさらなる効率向上を目指して豊田工業大学と共同研究を進めています。

 

CPVが将来、エネルギーシステムの要となるか否かは、日本企業の技術開発にかかっていると言っても過言ではないでしょう。逆に言えば、CPVは日本の高い技術力を海外に輸出する大きなチャンスを秘めているのです。

 

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.10

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.10

~機能性フィルムの可能性~

2012/1/31

 

東日本大震災の被災地では、津波による塩害で農地が使い物にならなくなった地域が多いそうです。そこである地域では、塩害に遭った農家が、国の支援を受けながら、共同で「野菜工場」を立ち上げ、養液栽培による新たな農業を開始した、という記事が先日ある新聞に掲載されていました。

 

この「野菜工場」ですが、どんなものかというと、「カゴメ」などの大手企業が運営している植物工場のような最新鋭の工場だそうです。野菜は温湿度管理が行き届いた工場内で衛生的に栽培され、生産者は天候などの自然環境に左右されることなく安定的に収穫することができます。農地が海水につかってしまった農家が農業を継続するには、土を使わない工場栽培しかありません。

 

ただし、ひとつだけ問題があります。それはコストです。工場を新たに建設するには莫大なコストがかかりますし、温湿度管理に必要な光熱費や空調費も、それこそ工業製品の工場並みに必要となるでしょう。太陽光を利用すれば光熱費はある程度抑えられますが、生産効率を考えると、自然の力への依存は最小限に抑える必要があると思われます。

 

いずれにせよ、現在見られる野菜工場は、「大手企業が採算性をクリアしたうえで運営するもの」か、冒頭のような「不可避的な事象からの復旧復興のため国や自治体の支援を受けながら運営するもの」に限られます。つまり、合理的だから、天候に左右されないからといった理由だけで、農家が気軽に始められるものではありません。それにそもそも、あちこちで農地が工場化されたら、少し味気ない気もします。

 

先日、ある機能性フィルムメーカーの開発担当者と話をしました。機能性フィルムとは、主に薬剤を塗布することでさまざまな機能を持たせたフィルムのことです。現在、液晶テレビ・スマートフォンなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)向けの反射防止フィルムやハードコートフィルムなどの分野で、各社が苛烈な開発競争を展開しています。

 

彼によると、「他社と同じ機能や同じスペックの製品では競争には勝てない。フィルム業界は顧客のピンポイントなニーズにいかに応えるかがとても重要」なのだそうです。実際、反射防止フィルムひとつとってみても、ある課題に対応する反射防止機能を付加したフィルムではA社の製品がシェア90%を誇るとか、ある状況下での反射防止についてはB社の製品が市場を独占しているとか、それぞれのニーズに合致したオンリーワン製品が数多く存在します。

 

また、生活分野においても、窓ガラスに貼付して使用する「熱を逃がさないフィルム」やコートなどの防寒着の副資材として使われる「透湿保温フィルム」などがあり、機能性フィルムは工業製品に組み込まれるだけにはとどまらなくなっています。では、これを農業分野に応用するというのはどうでしょうか。

 

当然、高い機能性を持たせたフィルムなので、一般の農業用シートなどに比べ、コストはかなりかかるでしょう。しかし、それでも、工場建設に比べたら圧倒的に安く済むはずです。莫大なコストをかけなくても、自然環境から受ける影響を最小限にとどめ、作物を安定的に収穫することができるとなれば、農業の姿が大きく変わる可能性があります。さらに、日本だけでなく、過酷な気象状況のもとにある海外の農業国(そして、その多くは最貧国です)にODAを通じて供給されることになれば、これらの国で農業経済が確立し、ひいては世界の食糧事情に良い結果を生むことにもつながります。

 

実は現在、機能性フィルムはすでに農業分野に応用されています。たとえば、ハウスの保温力を強化するフィルムや紫外線をカットするフィルム、地面を直接被覆して地温の異常向上と雑草の発育を制御するフィルムなど、さまざまな機能を持たせたフィルムが流通しています。しかし、プレイヤーが限られているためか、各社がこぞって開発にしのぎを削る光学用や半導体製造用の高機能フィルム業界のような活発さは感じられません。

 

農業用の機能性フィルム業界に新規参入する企業が増え、たとえば塩害を受けた土壌から塩分は通さずに養分と水分のみを通すフィルムといった、さまざまな局面を解決する機能性フィルムが続々と開発されるようになれば、農業はもっと合理的な産業となる可能性があります(ただし、開発の前提には、政府の産業支援策といった後ろ盾が必要なのは言うまでもありませんが)。

 

農業が合理的な産業となれば、後継者も含め担い手の数も増え、有力な産業に成長します。そして、雇用を生み出し、なによりも食糧事情の充実に大きく寄与することになるでしょう。産業のコメと言われる半導体や今後コメになるであろうFPDに注力するだけでなく、本物のコメにも目を向けると、そこには大きなビジネスチャンスが広がっているかもしれません。

 

 

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.9

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.9

~耐震シェルターについて~

2011/11/30

 

「シェルター」というと、みなさんは何を想像されますか? 「核シェルター」、あるいは「ノアの方舟」的な、ある種キワモノを想像される方も多いのではないでしょうか。

 

今回、このコラムで取り上げるのは「耐震シェルター」です。今回は少し提言めいたことを書いてみようと思います。偉そうなことを言いますが、しばしお付き合いをいただければ幸いです。

 

先の東日本大震災では、犠牲者の方の多くが津波によるものでしたが、1995年の阪神・淡路大震災では、古い木造住宅を中心に建物の倒壊とその後の火災によって就寝中の多くの方が命を落としたことはまだ記憶に新しいと思います。しかし、のど元過ぎれば・・・、ではないですが、変化の激しい日常を生きていると、大災害の記憶もつい遠くになりがちで、当時抱いた危機感を持続させるのはなかなか難しいことです。

 

さて、東日本大震災の直後、ニュース報道や新聞・雑誌では、「耐震シェルター」がたびたび取り上げられていました。耐震シェルターとは、既存の住宅の、特に寝室部分を鉄骨などで耐震補強し、住民の安全を確保するというものです。大きく分けて、ベッドを安全空間にするシェルターとひとつの部屋を安全にするシェルターの2種類があります*。設置費用はおおむね30万円前後から200万円ほどと種類によって幅があります。

*出典:東京都耐震ポータルサイトより

URLhttp://www.taishin.metro.tokyo.jp/learn/ploof/04.html

 

ところが最近はあまり報道もされませんし、住宅メーカーやシェルターメーカー(多くは中小規模の建設会社や工務店)が普及に力を入れているといった感じもありません。これとは対照的に、ハイブリッドカーや太陽光パネル、家庭用バックアップ電源の側面も持つEVといった環境・エネルギー分野の新技術や新製品は、政府の支援もあって、国民の認知度が格段に増しています。また、実際かなり普及している製品もあります。しかし、このような製品群にくらべ、耐震シェルターの認知度はいまひとつと言わざるを得ません。

 

冒頭で「キワモノ」と断じてしまいましたが、「核シェルター」に関して言うと、実は欧米では普及率が非常に高く、スイスではほぼ100%、ノルウェーで98%、米国では82%の普及率を誇るそうです*。中でもスイスの高い普及率は、すべての住宅に核シェルターの設置を義務付けるという政府の強い姿勢の成せる技です。ちなみに、この規制は今年20114月まで効力があったもので、設置者と政府が設置費用を折半するというものでした。

*出典:NPO法人日本核シェルター協会ウェブサイトより、普及率は全人口に対し何%の人を収容できるシェルターが存在するかを基準に算出

URLhttp://www.j-shelter.com/

 

周知の通り、スイスは永世中立国です。したがって、自国の身は自国で守らねばならず、軍事防衛力で鉄壁な防衛策を講じる必要があります。「核シェルターの義務化」が、国民に自分の身は自分で守るという意識を否応なしに植えつけたであろうことは想像に難くありません。

 

翻って日本はどうでしょうか。核の危険はともかく、日本は世界有数の地震国です。住宅が倒壊する危険性が非常に高い国です。戦争とは異なり、地震は予測することができません。言うまでもなく同盟国が守ってくれるというものでもありません。自国の身は自国で守るしかないのです。

 

つまり、核シェルターを義務付けたスイス政府のように、日本も政府主導で耐震シェルターの普及を強力に推進する必要があるということです。EVもいいですが、その前に、国の財産である国民の命を守る耐震シェルターの普及に政府は全力を傾ける必要があると私は考えます。

 

現状では耐震シェルター設置の助成は各自治体に委ねられているようです。それも高齢者・障害者世帯や低所得世帯のみを対象にした助成制度も多くみられます。また、助成制度ですから、設置を考えている人がわざわざ申請しなくてはいけません。これではなかなか普及は進まないでしょう。

 

もし大都市圏で深夜・早朝に大地震が発生し、就寝中の働き盛り世代が住宅の倒壊やその後の火災により数千人、数万人規模で命を落としたとしたら、日本の経済にとって非常に大きな打撃となるでしょう。人は国の宝です。日本の経済力、ひいては国力を維持させるためにも、地震国である日本の政府は耐震シェルターの普及に本腰を入れるべきだと思います。

 

また、大手住宅メーカーやゼネコン、エンジニアリング会社のみなさんも、力を集めて、政府にもっと働きかけてみてはいかがでしょうか。耐震シェルターが一つの産業となれば、当然雇用も生み出すでしょうし、各企業にとっても得るものは大きいのではないでしょうか。

 

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.8

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.8

~「温かみのある便利さ」

総合生活コンシェルジュの可能性~

2011/9/30

 

今回は少し夢のようなお話をしたいと思います。

 

先日、ある大手印刷会社のパッケージデザイナーと話をする機会がありました。彼は主に食品やトイレタリー商品のパッケージ開発をおこなっています。彼に最近のデザインのキーワードは「エコ」以外に何があるのかと尋ねたところ、「実はエコではなくユニバーサルデザインなのだ」との回答が返ってきました。

 

彼曰く、「Co2をいかに排出させないか、ごみの量をいかに低減させるか、などはもうすでにさんざん議論され、新しいデザインが開発された。新素材が開発されない限り、これ以上の進展は難しい」そうです。それよりも今は「ユニバーサルデザインがパッケージ開発のカギ」だというのです。

 

周知のとおり、ユニバーサルデザインとは、運動機能などに障害がある人からお年寄り、子供、それに健康な大人まで、どんな人でも公平に、簡単に、危険なく使えることを念頭に置いた製品や施設、情報を設計することです。と言うと、とても特別なことに感じますが、「実は便利さ、快適さを追求することはすべてユニバーサルデザインなのだ」と彼は言います。

 

具体的には、誰もが軽い力で、簡単に、どの位置からも、道具などを使わずに開けられる調味料パックとか、誰もが軽い力で、安全に使うことができるはさみとか、すでに私たちの日常でも馴染みのある製品や商品です。

 

そのような製品の底には、大変温かい人間的な信念というか、こころざしがあるのを感じます。一昔前なら「便利さ、快適さを追求する」という言葉はハイテクを駆使した製品やサービスの開発につながっていたでしょう。しかし、これからは、いわば「温かみのある便利さの追求」がビジネスのある一つのモチベーションとなるように思えます。

 

それではこの「温かみのある便利さの追求」がどんな方向に向かえば私たち消費者はもっとハッピーになれるのでしょうか。その一つには、私たちの生活に関するさまざまなサービスがあげられると思います。

 

たとえば、最近では、近隣にスーパーなどのない地域に向けて大手コンビニ各社が移動販売事業を開始しました。また、なかなか買い物に行けない高齢者を対象にした食材宅配や食事宅配事業を展開する企業もあります。

 

しかし、こういった特定の環境に置かれている消費者のための特定のサービスにとどまらず、一般の人々でも気軽に利用できるような、加えてもっと包括的なサービスがあれば、私たちの生活はもっと便利に、快適になるのではないでしょうか。また、このようなサービスが産業として確立されれば、新たな雇用も創出されます。

 

では、「もっと包括的なサービス」とは何か、ですが、たとえばあらゆる家事を代行することも可能な、いわば「生活コンシェルジュ」のようなサービスはどうでしょうか。企業における専属の経営コンサルテントのような立場で、必要に応じて各家庭におけるいろいろな問題を解決、とまではいかないにしろ、さまざまな手助けをするサービスです。

 

古くからある家政婦にも通じるところはありますが、炊事・洗濯・掃除にとどまらず、簡単な買い物や送迎、チケットの手配、はたまた家計や資産運用の相談など、生活のさまざまなシーンで出てくる「誰か頼める人がいれば・・・」というケースに対応するサービスです。

 

もちろん、単なる便利屋にならないよう、サービスは年間契約制にし、且つ業務範囲を厳密に規定するなどの工夫が必要です。また、利用者と事業者、担当者との間でいかに信頼関係を構築できるかがこのサービスのカギとなります。

 

しかし、いったん信頼関係が構築できれば、利用者はまさに「温かみのある便利さ」を実感できるのではないでしょうか。何か困ったときにちょっと手助けしてくれる。そんな頼りになる隣人がいれば私たちの生活はもっと便利に、快適になるはずです。

 

以上、夢のようなお話でしたが、少子高齢化が進む中、サービス産業のユニバーサルデザインの極みのような「総合生活コンシェルジュ」が受け入れられる可能性は、実は工夫次第で十分にあるのではないでしょうか。

 

 

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.7

Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.7

~異文化ビジネスについて~

2011/7/29

 

日本国内の消費が低迷する中、海外市場に活路を見出そうとする日本企業は多いと思います。そうした活動の中で往々にして直面するのが、異文化の壁です。商習慣や国民性の違いによって、日本ではスムーズに事が進むことが海外ではうまく行かなかったり、事業が軌道に乗るまで乗り越えなくてはならないハードルがいくつも存在したりと、この文化の違いというものはなかなか厄介な代物です。

 

また、ビジネス上の事柄だけではなく、ご存知の通り、日本の常識や生活習慣がそのまま海外で通じることもあまり多くありません。

 

たとえば、身近なところで言えば、食文化や食習慣があります。調味料ひとつをとっても、日本の味噌やしょうゆに相当する、その国で独自に発展し定着したものがある国は多いですし、食習慣でいえば、昼食に2時間もかける国もあれば、朝食は外食が基本という国もあります。

 

このような文化や習慣を日本製品で「変えてみせる」のではなく、文化・習慣にうまくマッチさせた製品やビジネスモデルを創造することで海外市場での成功を目指すことが、日本企業のみならず、外国に進出する企業に求められるのではないでしょうか。

 

最近では、一部ネットでも話題になりましたが、TOTOがインド市場で本格的に温水洗浄便座(TOTOの商標は「ウォシュレット」)の販売に着手しました。同社では以前からインドに事務所をかまえていましたが、今年(2011年)になってTOTOインドを設立し、本格的にインド市場の開拓に打って出たようです。

 

インドではトイレで紙を使わず、水で洗浄するという習慣があります。もともとある習慣にうまく寄り添いながら、利用者に「手で洗う」から「便座が洗ってくれる」というちょっとした発想の転換を促すことで、インド独自の生活習慣にマッチした製品を販売する。これこそ、「異文化ビジネス」の際たるものだと思います。

 

インドの生活文化面でいうと、ビジネスのヒントとなるような異文化の例が他にもまだたくさんあります。以下に列挙してみます。

 

・調理の熱源は、都市ガスや電気ではなく、LPガスが主流。

・高所得者層だけではなく、中間層でも使用人を雇うことが一般的。料理や掃除は使用人が担当する。

・住宅の床材はタイルや大理石などの石材がほとんど。木材や塩ビ由来の床材、カーペットなどはまず見られない。

 

この他にも、たとえばベトナムを考えてみると、電力事情の悪さから、家庭用の小型バックアップ発電機が日本の白物家電並みに普及していたり、大衆薬(いわゆるOTC薬品)は一箱単位ではなく、中身の「錠」単位や「袋」単位で販売されていたりといった、日本では見られないような文化や商習慣があります。

 

また、欧米では、就職や転職活動の際に、前職の企業名・役職名をSNS上で公開し、自分の職歴や能力をアピールすることが広く普及しています。たとえば「Linkedin」というサービスです。限られたコミュニティ内とはいえ、こうしたいわば職務履歴書が流通するというのは、個人情報保護の意識が高い日本ではなかなか考えられないことです。

 

世界のボーダーレス化やインターネットの普及による高度情報化が進むにつれ、その国独自の文化や習慣などは徐々に薄れつつあるといいます。しかし、歴史的背景や宗教的背景から形作られた文化の根幹は今後も揺らぐことはないでしょう。

 

こうした文化の根幹から発生したその国独自の商習慣や事情というものを無理に変えようとするのではなく、同じ方向を向き、それに寄り添いながら、日本独自の技術やノウハウを投入することが、今後日本企業にとってますます重要になってくるのではないでしょうか。

 

新たな国や地域に進出する、あるいは特定の国や地域に向けて新商品を開発するといった際には、事前に当該国や当該地域の状況を体感することが重要です。そうすれば、日本人の感覚では考えてもみなかったビジネスチャンスが広がっていることが見えてくるかもしれません。

 

 

 



ロシアにおけるアスベスト市場の現状

1.世界のアスベスト市場の概況

アスベスト(石綿は、天然の繊維系酸塩鉱物の総称である。アスベストは、角閃石(かくせんせき)系と蛇紋石系に大別される。角閃石系のアスベスト繊維としては クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アクチノライト(陽起石綿)、トレモライト(透角閃石綿)、アンソフィライト(直閃石綿)の5種類があり、蛇紋石系にはクリソタイル(白石綿) がある。

 

200511、ヨーロッパではアスベストの使用が全面禁止された。日本では19759月に吹き付けアスベストの使用が禁止され、2004年にアスベストを1%以上含む製品の出荷が原則として禁止となり、そして2006年には、アスベストの含有率0.1%以上の製品の出荷が原則として禁止となった。現在、世界の30か国において、種類にかかわらずアスベストの使用が全面的に禁止されている。

 

一方、米国を含む65か国においてはクリソタイルの使用が認められている。例えば、米国では、アスベストを吹き付けた厚紙・波状紙の使用は禁止されているが、それ以外のクリソタイルの使用は認められている。

 

また、中国においても、角閃石系のアスベストの使用は禁止されているが、クリソタイルに関しては使用が認められている。アジアでは、中国市場においてもっとも積極的にアスベストが使用されており、中国では毎年約35万トンのアスベストが生産され、さらに15万トンをロシアとカザフスタンから輸入している。

 

2004年にヨーロッパ共同体とチリがクリソタイルを禁止するという提案をおこなったが、ロシアをはじめとして、ウクライナ、カナダ、キルギス、カザフスタン、イラン、インド、ジンバブウェ、インドネシア、ペルー、イラク、ベラルーシ、及びメキシコの13か国が反対した。

 

クリソタイル協会*よると、クリソタイルは以下のような理由で使用され続けているのだという。

・アスベスト代替品は高価格である(アスベストの3倍以上)。

60年以上前からアスベスト代替品の開発がおこなわれているが、いまだにアスベストと同等の性質を有する代替品が開発されていない。

・アスベスト代替品の製造には相応のコストや技術力が要求されるため、これらに対応する力がなく、アスベストに頼らざるを得ない国も存在する。

・アスベスト代替品の中には、製造過程で環境に悪影響を及ぼす例もある(世界遺産であるバイカル湖を汚染させているセルロース工場など)。

・スウェーデンではアスベスト代替品によるアレルギー症候群が問題になっている。また、ドイツでもアスベスト代替品の製造工場で健康問題が起こっている。

・発展途上国では、コスト面や技術面においてまだアスベスト代替品を使用するだけの力がなく、アスベストを使用することが経済の維持発展に寄与している側面もある。

*クリソタイル協会とはクリソタイル・セメント業界に関連する企業30社以上が加盟する非営利団体で、1997年にロシア連邦中央部のスウェルドロフスク州アスベスト市にて設立された。

 

このように、アスベストは発展途上国にとっては必要不可欠な素材であり、特に前述のとおり屋根用建材に多く使用されている。

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ドイツの鍼灸針市場

1.鍼灸治療の変遷

鍼灸治療は、古代中国の石器時代(BC100004000年)までさかのぼる。当時は、石で造られた石針(ヘイ石刀:34cm細く鋭く研いた石刀)を患部に刺したり当てあてたりすることにより、排膿や瀉血を行っていたといわれている。その後、動物の骨で造られた「骨針」、竹で造られた「竹針」、陶器の破片でできた「陶針」などへ変化していく。

 

鍼灸治療が西洋で用いられるようになったのは1819世紀初頭である。ドイツでは、1970年代頃から本格的に導入されており、鍼灸治療はドイツの医学には欠かせない重要な医療のひとつとなっている。

 

鍼灸治療は欧米では代替医療に分類されており、 「毫鍼(ごうしん)」または「微鍼」と呼ばれるステンレス・銀・金などによって作られた細い針を用いる外科的でない技術であると考えられている。欧米では”Acupunctura” と呼ばれており、英語では”Acupuncture”、フランス語では”Acuponcture”、ドイツ語では”Akupunktur”という語が用いられている。

 

ドイツで鍼灸針治療を行うには、Ärzte医師)あるいはH e i l p r a k t i k e rハイルプラティカー:自然療法士)と呼ばれる針治療などの補完代替医療(CAM)を行う国家資格を必要とする。

 

H e i l p r a k t i k e rはドイツのみに存在する制度である。これは、1939年にナチスドイツによって「治療の自由」の廃止を目的として制定された。独立開業権が認められ、鍼灸治療だけではなく、ホメオパシー、神経セラピー、オゾン・酸素療法など各種自然療法を行うことが許可される。

 

患者の症状に対し、実施可能な治療オプションの中より、各々で治療法を選択するという治療が行われる。針治療はその内の選択肢の一つであり、全てのH e i l p r a k t i k e rが針治療を実施しているわけではない。H e i l p r a k t i k e rは非常に技術的なレベルが高く、体質改善、慢性病、疾病の予防の面で優れていると言われている。

 

H e i l p r a k t i k e rの国家資格を取得するには、以下条件の証明が必要である。

25歳以上であること

・最低学歴がHauptschuleであること(日本の中学卒業に相当する)

・犯罪歴がないこと

・感染症、中毒症がないこと

・外国人の場合、ドイツでのビザが必要

 

2008年度現在、ドイツにおいて針治療を行う医師が所属する大手団体「DÄGfA(Deutsche Ärztegesellschaft für Akupunktur)ドイツ鍼医師協会」には、約10,000 名が所属している。ドイツの医師数は、2005年現在で306435人(歯科医などは除く)であり、DÄGfAでは、ドイツに20,00030,000 人の医師が針治療に従事しているとしている。

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ベトナムの化粧品市場

1.ベトナムの化粧品市場の概要

世界経済の回復が不透明な状況の中、2010年のベトナムの経済成長率は、当初の目標値である6.5%を上回り6.78%を達成した。四半期ベースで見ても、全ての期において前年の数字を上回っており、ベトナム経済の危機からの順調な回復を示している。ベトナム政府は、2011年の経済成長率の目標を77.5%としている。

 

ベトナムの2010年の経済成長は、日本や中国などと異なり、1次産業、2次産業、3次産業とバランス良く成長しているという特徴がある。以下は、2000年から2010年における産業別GDPの成長率の推移である。

 

人材コンサルティングの米タワーズ・ワトソンによると、2010年度のベトナムにおける企業の平均賃金は前年比12.8%上昇と、過去7年間で最も大幅に上昇したとしている。こういった、ベトナムの賃金上昇にともない、国民の消費行動にも変化が見られる。

 

これまで贅沢品とされていた化粧品も、日用品となりつつあり、ベトナムでは化粧品の売上が年々増加を続けている。ホーチミン市化粧品協会によると、2005年の化粧品売上高は前年比1214%増の約3兆ドン(2億ドル)であったが、2009年度は約5兆ドン(約3.5億ドル)まで増加し、2010年度の売上高は約6兆(約4.2億ドル)を見込んでいるという。

 

ベトナムの化粧品市場には、多くの化粧品メーカーが参入しており、中国、トルコとともに最も注目されている3市場のひとつといわれている。

 

米国の化粧品メーカーL’Oreal Parisの研究報告によると、ベトナム人女性の美容ニーズは急成長しており、25歳以上の女性がブランド品を使用する傾向が強いという。個人の平均的購入頻度はスキンケア用品が3カ月に1回、メイクアップ用品が半年に1回となっている。

 

2005年度には、ハノイやホーチミンといった大都市に住む女性の10人中スキンケアを使用していたのは1.2人の割合であったが、2009年度には2.8人の割合へと増加している。ベトナムのスキンケア用品市場は、今後数年で爆発的に成長するだろうと見られており、すでに参入しているブランド以外でもベトナムでのビジネスチャンスを探っている。

 

また、大都市だけではなく、ベトナムの人口約70%を占める他の都市においても、化粧品の使用数量とともに販売高が上昇している。

 

現在、世界の有名化粧品メーカーは、ベトナムに代理店や支社を置く。さらには、生産工場を持つ企業も存在する。ベトナムのローカル化粧品メーカーも、手頃な価格の商品を提供することにより、シェア拡大を図っている。

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スリランカの浄水器市場

1.はじめに

セーシェルやモルディブとならび「インド洋の真珠」と称されるスリランカは、美しい自然とおだやかな国民性で知られる。20095月、26年間続いたシンハラ人とタミル人との民族対立による内戦が終結し、現在では様々な国の企業から注目を集める新興国のひとつである。

 

国土は北海道の80%程度の広さであり、約2,000万人が暮らしている。GDP(国民総生産)は2010年予測値で482億ドル、2009年の実質GDP成長率は3.5%と安定した経済成長を遂げている。また、UNESCO20095月に公表した国民の識字率は約91*と、近隣諸国の中では高い識字率**を誇っている。これは、東南アジアの工業国であるインドネシアやマレーシアとほぼ同じ水準である。

 

内戦が終結してから2年、スリランカは今まさに復興の真っただ中にある。こうした状況下でまずなされるべきは、社会インフラの確立である。社会インフラの代表的なものといえば、電力、水道、交通、ごみ処理などが挙げられる。本レポートでは水道、中でも普及率が低い上水道に関する市場である一般家庭用浄水器市場の現状とビジネスとしての展望について述べる。

 

上述の通り、スリランカの上水道普及率は約34%と低く、特に東部の州における上水道普及率は約27%とさらに低い。また、上水道が整備されている地域でも給水時間に制限があり、十分な水の供給がなされていないという。

 

2.スリランカにおける家庭用浄水器の市場規模

スリランカの気候や地理状況を考えると、浄水器市場が拡大する可能性は高い。スリランカは四方を海に囲まれた島国であるため、海面から水蒸気の供給を受けやすく、そのためモンスーンによって強い雨季がもたらされる。この強い雨季の影響でしばしば洪水が発生し、主に井戸水に頼っている市民の飲用水は不衛生な環境にさらされることが多い。

 

また、沿岸地域の地下水には海水が混ざりこんでいることが多く、そのままでは飲用水として利用できないケースも多い。スリランカでは、病気で死亡する人の6人に1人が、このような不衛生な生活用水環境に起因する病気がもとで亡くなっているという調査結果も発表されている。

 

このような状況にもかかわらず、資金と技術力不足のため、スリランカのローカル企業で浄水器を開発・製造している企業は今のところ存在していない。スリランカの国内企業は、政府が貧困層を中心に一般家庭に無料で配布している濾過フィルターを製造しているのみである。スリランカで家庭用浄水器を市場展開している主なプレイヤーは、近隣のアジア諸国、とくにインドの浄水器メーカーという現状である。

 

韓国の聯合ニュース(Yonhap News)が2011413日に報じたところによると、隣の大国インドの浄水器市場規模は年間3億ドル(約252億円)で、毎年20%以上成長しているという。単純に人口比で言えばインドの1/60であるスリランカの浄水器市場規模も、インドと同様に経済成長が著しく、且つ飲用水事情が悪いことを考えると、数億円レベルにのぼると見られる。

 

なお、スリランカの浄水器市場に日本企業が参入した、あるいは参入する予定であるという例は本レポート作成時点においては見られない。東レ株式会社、三菱レイヨン・クリンスイ株式会社、タカギ株式会社といった日本の大手浄水器メーカーにインタビューをおこなったが、いずれの企業も今のところスリランカの浄水器市場を静観している模様である。

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カンボジアの発電機需要

1.カンボジアの電力事情

インドシナ半島の中央に位置するカンボジアは、タイ、ベトナム、ラオスと隣接し、大河メコンと東南アジア最大の湖トンレサップ湖の自然の恵みに支えられている。アンコールワットをはじめとしたかつてインドシナ半島を支配したアンコール王朝の栄華をしのばせる数々の貴重な遺跡群は世界遺産としても知られている。

 

1953年、カンボジアはフランス統治から独立し、半世紀にも及ぶ混乱期を乗り越え、目覚ましい復興を遂げてきた。しかし、基本的なインフラ改善の面では近隣諸国に比べるとまだ十分なレベルには達していない。

 

現在、カンボジア電力公社(EDC)がカンボジア国内全土の基幹発送電、給配電を担っている。また、電気事業法で定められている義務を実行する独立規制機関としてカンボジア電力庁が設置されている。

 

カンボジア政府は国内外からの投資誘致のために、長期法人税免除をはじめ、投資保証(多国間・二国間投資協定)、特定事業の関税免除等といった投資環境整備を行ってきた。その結果、主要都市では近年の政治的安定、有利な投資政策、非熟練労働力供給等の好条件を背景に、エネルギー供給が十分でない環境下でも外国直接投資(FDI)の誘致に成功している。

 

近年続く持続的な経済成長の結果、都市住民の生活水準は劇的に向上し、人口も社会経済の安定を背景に持続的に増加している。こういった生活水準向上に伴う電力への急速な需要拡大によって、ピーク時の電力需要は発電能力を大きく上回る。このため、政府のエネルギーインフラ開発の推進活動にも関わらず、カンボジア電力供給公社(EDC)の電力網では停電が多発していた。

 

2007年末における電力供給は、一般事業者による卸電力事業IPPIndependent Power Producer)からの購入電力量が全体の85%を占め、カンボジア電力供給公社(EDC)所有の発電所での発電電力量は全体の13%に留まり、残りはタイ、ベトナムからの電力輸入で賄っていた。

 

しかしながら、1998 年と比較すると、電力供給は、都市供給電力に加え、発電機、バッテリーの活用により40ポイント以上の増となっており、大幅に改善されつつある。

カンボジア国民は、不規則に起こる停電を前提に生活が組み立てられており、停電になっても特にあわてることはない。各家庭では夜中の停電に備えてどこの家にもロウソクとライターが常備されており、充電式のランタンもかなり普及している。

 

2.電力供給源としての発電機

カンボジアの首都プノンペンの一般家庭では、停電時間の減少により自家発電機の使用頻度は低下している。現在、プノンペンにおいて自家発電機は、富裕層向けの停電対策、あるいは農業用として販売されている。農業用としての発電機は、放水、ポンプ、送風等のモータと組み合わされて利用される。

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