1.ベトナムの化粧品市場の概要

世界経済の回復が不透明な状況の中、2010年のベトナムの経済成長率は、当初の目標値である6.5%を上回り6.78%を達成した。四半期ベースで見ても、全ての期において前年の数字を上回っており、ベトナム経済の危機からの順調な回復を示している。ベトナム政府は、2011年の経済成長率の目標を77.5%としている。

 

ベトナムの2010年の経済成長は、日本や中国などと異なり、1次産業、2次産業、3次産業とバランス良く成長しているという特徴がある。以下は、2000年から2010年における産業別GDPの成長率の推移である。

 

人材コンサルティングの米タワーズ・ワトソンによると、2010年度のベトナムにおける企業の平均賃金は前年比12.8%上昇と、過去7年間で最も大幅に上昇したとしている。こういった、ベトナムの賃金上昇にともない、国民の消費行動にも変化が見られる。

 

これまで贅沢品とされていた化粧品も、日用品となりつつあり、ベトナムでは化粧品の売上が年々増加を続けている。ホーチミン市化粧品協会によると、2005年の化粧品売上高は前年比1214%増の約3兆ドン(2億ドル)であったが、2009年度は約5兆ドン(約3.5億ドル)まで増加し、2010年度の売上高は約6兆(約4.2億ドル)を見込んでいるという。

 

ベトナムの化粧品市場には、多くの化粧品メーカーが参入しており、中国、トルコとともに最も注目されている3市場のひとつといわれている。

 

米国の化粧品メーカーL’Oreal Parisの研究報告によると、ベトナム人女性の美容ニーズは急成長しており、25歳以上の女性がブランド品を使用する傾向が強いという。個人の平均的購入頻度はスキンケア用品が3カ月に1回、メイクアップ用品が半年に1回となっている。

 

2005年度には、ハノイやホーチミンといった大都市に住む女性の10人中スキンケアを使用していたのは1.2人の割合であったが、2009年度には2.8人の割合へと増加している。ベトナムのスキンケア用品市場は、今後数年で爆発的に成長するだろうと見られており、すでに参入しているブランド以外でもベトナムでのビジネスチャンスを探っている。

 

また、大都市だけではなく、ベトナムの人口約70%を占める他の都市においても、化粧品の使用数量とともに販売高が上昇している。

 

現在、世界の有名化粧品メーカーは、ベトナムに代理店や支社を置く。さらには、生産工場を持つ企業も存在する。ベトナムのローカル化粧品メーカーも、手頃な価格の商品を提供することにより、シェア拡大を図っている。

2.化粧品市場シェアおよび位置付け

2005年度におけるベトナム化粧品市場は、韓国製化粧品が35%、日本製化粧品が23%、そしてベトナムローカル製化粧品が23%を占めた。2009年には、ベトナムローカル製化粧品30%、韓国製化粧品28%、日本製化粧品20%と変化し、欧州の化粧品メーカーもベトナム化粧品市場への参入を拡大している。

 

ベトナム化粧品市場では、2005年から2009年まで韓国化粧品および日本化粧品で市場の50%のシェアを占めている。これは、韓国および日本の文化ブーム、音楽、映画の影響によるもの、さらには韓国や日本からの観光客の影響もある。

 

これは、ベトナムでは昔から色白は美人の条件のひとつとされており白い肌への憧れが強いためである。近年、韓国や日本から多くの観光客がベトナムを訪れており、韓国や日本人女性の白い肌を目にする機会も多い。

 

人種的に欧米より近い東アジアの女性の肌に良いとされる化粧品は、ベトナム人の肌にも良いと考えることは当然と言える。また、ベトナムでは東アジアの女性の方が欧米人より、肌が柔らかく、きめが細かいと考えられている。

 

現在ベトナムにはEstée LauderLolita LempickaShiseidoCliniqueLaneigeGuerlainKoseKaneboYSLLancômeChristain DiorBiothermなど外国有名ブランドが参入しているこれらの外国有名ブランドは、ベトナムでは高級化粧品として位置づけされている。

 

Shiseido1997年に現地代理店を通じてベトナムでの化粧品販売を開始し、デパートや専門店で高級化粧品を中心に展開しており、着実にブランドイメージが浸透している。

 

現在、ベトナムでは、ShiseidoLancomeBiotherm、およびEstée Lauderが肩を並べており、どこかのブランドが新商品を出せば別のブランドもすぐに対抗し新商品を発売するという状況である。

 

これら高級化粧品会社は、Diamond PalazaParksonなどの高級デパートに販売ブースを置き、またその他に自社ショールームを持っているメーカーもある。

 

高級デパートの販売ブースの位置は、購入者の化粧品選択の際の重要なアピールポイントになる。このため、各化粧品メーカー間のデパートでのより好位置の販売ブース獲得競争は熾烈なものとなっている。

 

Shiseidoはベトナム市場へ早々に参入したため、高級ブランド品を販売するDiamond Plazaでは最高とされる場所に販売ブースを持っている。一方、Estée Lauderはベトナム市場への参入こそShiseidoより遅れをとっているが、ベトナムの高級デパートParkson内では最も目立つ場所に販売ブースを持つ。

 

一般向化粧品市場にはRevlonL’Oreal ParisNiveaMaybelineBioréEssancePondsなどが参入している。

 

これら一般向け化粧品は、スーパーマーケット、個人小売店などで販売されている。良質でも手頃な価格を謳い、テレビや新聞での広告やマーケッティング手法でシェアを確保している。

 

ベトナムで低価格化粧品メーカーとして認識されている主な化粧品メーカーは、OriflameAvonMisshaThe Face ShopGreen Bなどである。

 

低価格化粧品市場は、重要な競争要素が価格であるため、これら低価格化粧品メーカーは、価格を抑えるため以下のような企業努力を実施している。

・ベトナム現地に工場を建て、現地で生産および販売を行う。

・マルチレベルマーケッティング(MLM)による販売方法を実施し、広告費、マーケッティング費を大幅に削減する。これは、製品の流通を人的ネットワークのみによって行うビジネスである。

・一般消費者への直接販売:卸業者を通さず、直接自社ショップで販売し、できるだけ価格を抑える。たとえば、韓国のMisshaは、今後3年間で100店を開く計画である。

 

ベトナム国民は、高級デパートで販売されている化粧品が高級ブランドであると認識しており、販売されている店舗の格により化粧品の高級度ランクを判断する。

 

例えば、Diamond PlazaParksonなどのデパートに陳列され販売されている化粧品は高級ブランドであり、化粧品を安売り販売しているAn Dong Plazaなどに置かれている化粧品は一般向け、あるいは低価格化粧だと認識する。

 

もし、安売り販売のAn Dong Plazaに高級ブランド化粧品を置いたとしても、ベトナム人は中国製の偽物であると判断してしまう傾向が強い。

 

3.模倣品販売

2007年以前には、ベトナム化粧品市場では模倣品が多く出回っていた。そのほとんどは中国から仕入れされたものである。

 

現在でも、特に、LancômeChanelなどの海外有名ブランド製品の偽物は多く、見た目が同じでも定価の20%程で販売されている。これら模倣品には、なぜ価格がこれほど安いのかという様々な理由付けがされているが、あまりにも安いため信頼を得られず、敢えて定価販売する小売店もある。

 

しかし、たとえどんなに安くても信用のおけない小売店で購入するより、高くてもデパートで本物のブランド品を購入した方がよいという消費者の意識の変化により、有名ブランドの模倣品販売は、今後近い将来にはなくなるだろうと思われる。

 

以下は、有名ブランドメーカーの模倣品の販売状況である。定価の半額などと謳って、消費者の購入意識を煽っている。

 

4.美容サービス

ベトナム女性の間では、せっかく有名ブランドの化粧品を購入しても、メイクアップができないという女性も多い。このため、現在のベトナム女性にとっては、メイクアップ技術の情報や提供への要求が高まっている。

 

しかしながら、現存の美容室は、メイクアップサービスを実施しているものの、メイクアップ技術の伝授までは行っていない。また、ベトナムにも美容学校は存在するが、美容師の養成を目的としており、一般消費者へのメイクアップ教室などは実施していない。

 

現在、ベトナムでは美肌ケアなどのサービスを提供するスパの開店が加速しており、2007年から2009年において、ホーチミン市のスパ数は2倍に増加している。

 

ベトナムの化粧品市場に参入している各化粧品メーカーは商品の販売に注力しており、こういった美容サービスの分野には未だ参入していない。各化粧品メーカーが、スパなどの美容サービス分野に参入し、一般消費者へのメイクアップ教室などを展開すると、飛躍的な伸びも期待できるだろう。