Global IBIS最新ビジネスコラム Vol.8

~「温かみのある便利さ」

総合生活コンシェルジュの可能性~

2011/9/30

 

今回は少し夢のようなお話をしたいと思います。

 

先日、ある大手印刷会社のパッケージデザイナーと話をする機会がありました。彼は主に食品やトイレタリー商品のパッケージ開発をおこなっています。彼に最近のデザインのキーワードは「エコ」以外に何があるのかと尋ねたところ、「実はエコではなくユニバーサルデザインなのだ」との回答が返ってきました。

 

彼曰く、「Co2をいかに排出させないか、ごみの量をいかに低減させるか、などはもうすでにさんざん議論され、新しいデザインが開発された。新素材が開発されない限り、これ以上の進展は難しい」そうです。それよりも今は「ユニバーサルデザインがパッケージ開発のカギ」だというのです。

 

周知のとおり、ユニバーサルデザインとは、運動機能などに障害がある人からお年寄り、子供、それに健康な大人まで、どんな人でも公平に、簡単に、危険なく使えることを念頭に置いた製品や施設、情報を設計することです。と言うと、とても特別なことに感じますが、「実は便利さ、快適さを追求することはすべてユニバーサルデザインなのだ」と彼は言います。

 

具体的には、誰もが軽い力で、簡単に、どの位置からも、道具などを使わずに開けられる調味料パックとか、誰もが軽い力で、安全に使うことができるはさみとか、すでに私たちの日常でも馴染みのある製品や商品です。

 

そのような製品の底には、大変温かい人間的な信念というか、こころざしがあるのを感じます。一昔前なら「便利さ、快適さを追求する」という言葉はハイテクを駆使した製品やサービスの開発につながっていたでしょう。しかし、これからは、いわば「温かみのある便利さの追求」がビジネスのある一つのモチベーションとなるように思えます。

 

それではこの「温かみのある便利さの追求」がどんな方向に向かえば私たち消費者はもっとハッピーになれるのでしょうか。その一つには、私たちの生活に関するさまざまなサービスがあげられると思います。

 

たとえば、最近では、近隣にスーパーなどのない地域に向けて大手コンビニ各社が移動販売事業を開始しました。また、なかなか買い物に行けない高齢者を対象にした食材宅配や食事宅配事業を展開する企業もあります。

 

しかし、こういった特定の環境に置かれている消費者のための特定のサービスにとどまらず、一般の人々でも気軽に利用できるような、加えてもっと包括的なサービスがあれば、私たちの生活はもっと便利に、快適になるのではないでしょうか。また、このようなサービスが産業として確立されれば、新たな雇用も創出されます。

 

では、「もっと包括的なサービス」とは何か、ですが、たとえばあらゆる家事を代行することも可能な、いわば「生活コンシェルジュ」のようなサービスはどうでしょうか。企業における専属の経営コンサルテントのような立場で、必要に応じて各家庭におけるいろいろな問題を解決、とまではいかないにしろ、さまざまな手助けをするサービスです。

 

古くからある家政婦にも通じるところはありますが、炊事・洗濯・掃除にとどまらず、簡単な買い物や送迎、チケットの手配、はたまた家計や資産運用の相談など、生活のさまざまなシーンで出てくる「誰か頼める人がいれば・・・」というケースに対応するサービスです。

 

もちろん、単なる便利屋にならないよう、サービスは年間契約制にし、且つ業務範囲を厳密に規定するなどの工夫が必要です。また、利用者と事業者、担当者との間でいかに信頼関係を構築できるかがこのサービスのカギとなります。

 

しかし、いったん信頼関係が構築できれば、利用者はまさに「温かみのある便利さ」を実感できるのではないでしょうか。何か困ったときにちょっと手助けしてくれる。そんな頼りになる隣人がいれば私たちの生活はもっと便利に、快適になるはずです。

 

以上、夢のようなお話でしたが、少子高齢化が進む中、サービス産業のユニバーサルデザインの極みのような「総合生活コンシェルジュ」が受け入れられる可能性は、実は工夫次第で十分にあるのではないでしょうか。