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2006年03月17日

トヨタはモータースポーツの何たるかを理解していない (マイク・ローレンス)

ヒストリック・モータースポーツイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」でも活躍しているモータースポーツ・ジャーナリストのマイク・ローレンス氏がトヨタを痛烈に批判しています。

マイク・ローレンス
「わたしは個人的に、トヨタにはF1から出て行ってほしい。スポーツにトヨタの居場所はない。トヨタはスポーツの何たるかを理解していない」
「トヨタは市場では不正をしないが、スポーツになるといんちきをする」

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文化
Culture: Pitpass
もしあなたがグッドウッドロード・レーシングクラブに加入していれば、「フェスティバル・オブ・スピード」や「リバイバル・ミーティング」に参加する特権を与えられる。そして、クラブ会員限定のいろいろなイベントが年間を通して用意されている。会員には年鑑が配布される。これは高級紙に印刷された薄型の美しい本で、外箱もついている。その本の半分を書いたわたしもちょうど1冊受け取ったところである。

毎年わたしが「フェスティバル」の紹介記事を書き、ダグ・ナイが「リバイバル・ミーティング」を紹介している。本の後ろの方には、小さい活字で印刷されたわたしたちの名前が載っている。このふたつの仕事は全く異なるものだ。ダグはレース・シリーズを記録するが、レースのそれぞれには結果がある。わたしの仕事は、今やごく少数の人間しか競技しない3日間のイベントを思い起こすことだ。かつてはマクラーレンとウィリアムズがコースレコードを狙って激しく競り合い、マルク・スレールやミシェル・モートンがそのあとを追いかけていた。当時、ほとんどのドライバーはタイムを競うよりはマシンを「見せること」を選んでいた。

数年前、ジョニー・ハーバートが、ジャガーF1マシンに乗って登場した。彼は上り坂で最遅タイムを記録した。おそらくビクトリア女王時代の蒸気機関車よりも遅かっただろう。ジョニーは、コースの重要なポイントでマシンを停め、観客のためにドーナッツ・スピンを披露した。群集は当然やんやの大喝采である。そして彼は車を正しい方向に向け、エンジンの回転数を上げてタイヤを焦がしつつ、レースさながらのスタートを切った。

ジョニーはおそらく最も遅いタイムを記録したが、誰も気にとめなかった。誰もがジョニー・ハーバートはなんてすごい奴なんだと思いながら家路についたことだろう。それも同然のことだ、ジョニーは天才で好感の持てる男なのだから。

「フェスティバル」のことを思い出して書いていると、ときどき問題が発生する。最初や2回目なら特に印象に残ることがあるだろう。でもわたしは毎回出席しているのだ。毎年新しい視点を探そうとしているのだが、いつも簡単というわけではない。今回のGRCC年鑑には、その視点がある。

「フェスティバル」には毎年テーマがあり、それを思いつくのはたいていダグ・ナイの方だ。ほとんどの場合テーマはたいして意味を持たない。これに注目しているのは、公式アーティスト以外ではわたしくらいのものだろう。しかし、2005年のテーマは、各国のレーシング文化を重視したものであり、わたしは大いに注目した。

あらゆる車のデザインは、政治、経済、地勢、気候、多くの外部因子に影響を受ける。日本の自動車メーカーはすべて、非常に小さい車(軽自動車)を製造しているが、日本国外で見かけることはほとんどない。日本は島国であり、そのために住みにくい国である。例えば、東京で車を買おうとすれば、まず駐車場を持っていることを証明しなければならない。そこで軽自動車の出番となる。

英国の自動車は、ロング・ストローク・エンジンを使ってきたが、これは主に政府が自動車に課税する方法のせいだった。オースティン・セブンは、実際のエンジンが生み出す馬力に関わらず、課税用に7馬力として分類されていた。4.5リッターのスーパーチャージャー・ベントレーは18馬力、2.6リッターのフォードV8は30馬力。エンジン設計に人為的歪曲をもたらすこのばかばかしいシステムは1945年まで続いた。

1950年代になると、ジャガーは、XK120とXK129をオプション品の長いリストつきの標準製品として売り出した。これらオプション品のひとつが、高い圧縮比をもつ「高性能」エンジンであり、これはかなり普通のことになった。大部分の人間が知らないことに、違いを求める顧客用にジャガーは通常よりも圧縮比の低い「ブッシュ」エンジンも提供していた。しかし、地元のガソリンスタンドはありきたりのガソリンしか売っていなかった。

1951年にフランス政府は、福祉政策と年金の資金調達のために48%の雇用税を課した。つまり、ジャン・ピエールに100フランの賃金を支払えば、政府にさらに48フラン収めなければなかなかったのだ。このおかげでフランスの高級自動車メーカーや車体製造メーカーはすべて倒産した。1930年代、フランスは自動車中心のライフスタイルを真っ先に目指していた。新しい税金が導入されてからの数年間、フランスの車体製造メーカーはほとんど営業していなかった。車体の注文製造は労働集約的であり、職人に払っていた100フランは、政府に支払う時点では148フランになっていた。

1951年以降、税金の関係でフランス車で3,000ccを越えるものは多くなかった。自動車は時間と場所を必要とする製品であり、前後関係を理解しなければ、自動車を理解することはできない。

ホンダは「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」の長年のスポンサーである。ホンダはほぼ常にすべてを正しく行うので、わたしはホンダに甘い。ただし、シビックは大惨事になるところだったが。最新のGRRC年鑑は、わたしがホンダを褒めるスペースを与えてくれた。というのも、わたしの記事のテーマは、本質的にはモーターレーシングに関わる人々の文化であり、ワールド・チャンピオンシップの初優勝以来40年目ということでホンダを特集したからである。

わたしがホンダのバイクを初めて目にしたは、1962年キャドウェル・パークのホイット・マンデー・ミーティングのことだった。わたしはそこまでの25マイルを自転車で行った。そしてジム・レッドマンが250ccの4気筒に乗って走るのを見た。トラックの「マウンテン」セクションは完成したばかりで(マウンテン? リンカンシャー州で? 笑いものになったに違いない)、ホンダが高音を出し、そのあとに250ccの単気筒や2気筒に乗ったライダーのうなりが続いていた。その音はまるでピクニックのときの蜜蜂の出す音のようだった。彼らは1周するごとにレッドマンから4秒ずつ遅れていった。そのとき未来を垣間見たような気がした。そしてその将来は英国のバイク産業にとってはあまり明るいものではなかった。

ホンダの創業者である本田宗一郎氏は、非常に賢明な人であった。最初から、息子には無限エンジンという別会社を与えている。そして、日本の有望な若手エンジニアが聞かされているように、社長が息子をその立場に据えなかったので、誰でもトップに立てる会社になった。わたしがロン・トーランスの伝記を執筆しているとき、ホンダの2代目、3代目社長ふたりにインタビューしたことがある。それは久米是志氏と川本信彦氏であり、ふたりとも屋根から雨漏りする納屋で作業していたことを話してくれた。

本田氏が、ワイル・E・コヨーテのような計略を使ったこともあっただろう。下を見なければ、断崖絶壁の端を駆け抜け、走り続けることができるのだ。

本田氏がF1参戦を決断したとき、ホンダはバイクの輸出を始めて3年しかたっていなかった。同社は約20週間前に小型のスポーツカーを製造し始めたところだった。本田氏は、エンジニアにとってモーターレーシングは習得過程になると考え、すぐに決断してほしかったので、翌週の火曜日に予定されていた役員会を待たなかった。そしてホンダはフル参戦した最初のF1シーズンにグランプリで優勝した。素晴らしい偉業である。

どれほど素晴らしいのか知りたいなら、トヨタに聞いてみるといい。この会社は貧しい国10ヶ国分くらいのGNPを使って、それでもまだ優勝できないでいる。

ホンダもそれなりに間違いを犯しているが、わたしはホンダは基本的に正直な会社だと信じている。同時に、トヨタは芯まで腐っていると個人的に考えている。

いくつかの理由で、トヨタ・モータースポーツの人間はわたしを嫌っている。申し訳ないが、これからみなさんに、トヨタがWRCから排除されたことを思い出させるつもりだ。この一件を見れば、フェラーリからの盗難疑惑がどのように決着するかが予想できるはずである。現在も明らかに司法取引が進行中である。トヨタの代理を務める弁護士は、盗まれたソフトウェアは返却すべできではない、なぜならトヨタがオリジナルを改良したからだと主張している。では、誰かがあなたの車を盗んでも、泥棒がかっこいいタイヤに付け替えていたら車を返してもらえないのだろうか。

トヨタの弁護士はそう言っているわけだ。法律事務所からマスコミに向けに出される声明は告白と見なすことはできないが、わたしには告白に聞こえる。まるで責任逃れ(duck=アヒル)である。彼らに水かきがあってガーガー鳴いて泳ぐようなら、確かにアヒルだろう。

わたしはまだトヨタ・モータースポーツに在籍している4番目の男の名前を知っているが、彼は眠れない夜を過ごしているだろう。彼は、2003年5月にフェラーリの資料をすべて破壊したというメールを全社員に送った男である。わたしはこれを事実として知っている。しかし証明はできない。それは情報源を裏切ることになるからだ。ジャーナリストはそんなことをするくらいなら刑務所に入るだろう。わたしは決して情報源を裏切らない。

わたしが刑務所に行くようなことがあれば、それはどういうことか? それは、ジャーナリストとしての信用があるということだ。ものすごい点数を稼ぐことになるだろう。

以前、わたしはトヨタが日本の整備士技能検定で不正を働いたという記事を伝えた。このような試験が日本でどのように受け止められているのか、わたしにはわからないが、基本的に、試験担当官になったトヨタ人間が、トヨタのディーラーで働く整備工にインターネットを通じて全ての解答を教えたのだ。この試験が全体像の中でどれほど重要なのかはわからないが、わたしがこれまで受けた試験やテストは、当時のわたしにとっては重要なものだった。サイクリング技能テストも、水泳認定試験も、当時のわたしにとっては重要だった。

日本では自動車整備工に対して年1回試験があるのだが、トヨタはどうしたか? トヨタはズルをしたのだ。トヨタは、主義として不正行為を働いているようだ。

トヨタは世界ナンバー・ワンの自動車メーカーである。自動車メーカーとしてはかなり昔にジェネラル・モータース(米国でのGMの事業の60%はトラックである)を抜き去った。トヨタはよい製品を作るので、その地位を手に入れたのである。

トヨタはNASCARでいかさまを企んでいた。ビル・デイヴィス・レーシングがNASCARのネクステル・カップのダッジ・イントレピッズを走らせる契約がありながら、2007年のNASCARクラフツマン・トラックシリーズのトヨタ・タンドラトラックを開発したのである。ダイムラー-クライスラーがビル・デイヴィス・レーシングを告訴し、勝って6,500万ドルを手にした。

現在、控訴手続きが行われている。わたしのヤンキーの友人たちはわたしと同じくらい懐疑的かもしれないが、わたしたちはトヨタが費用を支払うものと考えている。その金額はわたしにとってはとんでもない額だろうが、トヨタは1時間ごとにそれくらいの利益を上げている。

不正がトヨタの企業文化に特有のものであったとしても、なぜ彼らが不正をするのかわたしには理解できない。トヨタは問題になるような場所、市場では不正をしないのだ。トヨタは低価格で優れた製品を提供しており、成功するのも当然なのである。

しかしモータースポーツになると、トヨタは大事なものを全部窓から投げ捨ててしまう。わたしのような年寄りが世界最大の自動車メーカーに立ち向かう場合は、しっかりした地面に立っていなければならない。これまでのところわたしの立っている地面はかなり固い。だからトヨタにわたしを好きな人間はいないし、正直に言って、わたしも全然気にしていない。

トヨタは、自動車整備工の国家試験不正問題を認めている。ビル・デイヴィス・レーシングは、ダイムラー-クライスラーとの契約がありながら、トヨタのために車両を開発した件で、アメリカの法廷において6,500万ドルの罰金を科せられた。トヨタ・モータースポーツは不正行為のためワールドラリー・チャンピオンシップから追放された。

わたしは個人的に、トヨタにはF1から出て行ってほしい。スポーツにトヨタの居場所はない。トヨタはスポーツの何たるかを理解していない。

トヨタがスポーツを利用して製品を売るというのはばかげた話だ。優れた自動車をつくって低価格で販売しているから、史上最も成功した自動車メーカーになったのだ。トヨタは市場では不正をしないが、スポーツになるといんちきをする。

トヨタがあなたを欺いている限り、あなたはPitpassで「トヨタは不正行為をしている」という記事を読むことになるだろう。

マイク・ローレンス/Mike Lawrence





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        コメント

        1. Posted by キミノコト   2006年03月18日 03:04
        NASCARの話は初耳ですが、F1で最初に疑惑が持ち上がったときには、WRCのことが頭をよぎりましたね、確かに。
        2. Posted by sky   2006年03月18日 10:46
        トヨタのF-1での不正の内容は何ですか?…WRCと同じ問題なんですか?単に金を掛けすぎているのが問題?
        3. Posted by このコメントは削除されました   2006年03月18日 13:06
        このコメントは削除されました
        4. Posted by さくら   2006年03月18日 16:07
        ニモさん、私も感情としては似たような意見ですが、しかし、模倣と剽窃(窃盗)は明らかに次元の違う問題と認識しないといけません。外観からアイデアを拝借し、自分なりに再現するのが模倣ですが、これが犯罪と認定されるかどうかはケースバイケースです。しかし剽窃・窃盗(例えば設計図を盗む等)は100%犯罪行為です。今回のトヨタの嫌疑は後者ですから、「パクリなんて誰でもやっていること」というF1内のステロタイプな意見で甘やかすのはやめたほうがいいと思います。
        5. Posted by うどん   2006年03月18日 18:24
        昨年のチャンピオンマシンを模倣するのよくある話ですが
        その時点で未発表のF2003GAにもそっくりだって話だったからねぇ
        スタイリングだけじゃなくて
        ラジエーターの配置やノーズコーンの傾斜角、バージボードなど
        6. Posted by たかはし   2006年03月26日 14:49
        盗んだソフトを改造したから返すべきでない?

        すさまじい論理だ。トヨタ1兆円のシナリオここにあり。お家芸の『カイゼン』とはそういう意味だったのか。恐ろしいですね。

        私、個人的にトヨタにこの件を質問しようと思います。
        「お宅は本当にそういう会社なのですか?」と。

        Yesの場合、その事実を出来るだけ多くの人に知ってもらうため、合う人合う人に伝えていこうと思いますが、法的リスクを負わないための良い方法も考えないと。

        ただし、「改造したソフトはオリジナルを含めすべて削除し、査察を受ける。」という但書が付かないのだとしたら、ですが。
        7. Posted by ton   2006年04月07日 16:20
        一連の評価が直ちに、スポーツの世界では、’トヨタだけ’が不正をする企業である。ということにはならない。他はもっと上手くやっているだけで、トヨタが上手くやれていないだけなのだ。すぐにバレるような稚拙な手法の提案者を安く雇い入れ、もっと巧妙にヤレる人間(その高額な対価を求める人間)を重く用いようとしない、そのこと自体がこの世界での振る舞いに長けていないことを如実に表している。

        彼等は金持ちになったのにも関わらず、相変わらずケチでウブな田舎者でしかないのだ。

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