トップ | レース結果 | コメント | 技術解説 | チーム分析 | サーキット・ガイド | 動画 | コラム | インタビュー | データ | レース動画 | タイヤ | レース写真 | GP恋人写真 | マシン写真動画 | 特集 | ヘルメット | テスト

2007年11月29日

バーニー・エクレストン:独占インタビュー

Exclusive interview with Bernie Ecclestone

トラック上のスリル、トラック外での物議、ハラハラドキドキの大詰め、2007年シーズンにはすべてがあった。事態が収拾され、キミ・ライコネンのワールドチャンピオンとしての君臨が始まった今、やっと今年を振り返るときが来た。

今年を振り返るのに、フォーミュラワン・マネージメント(FOM)のCEOバーニー・エクレストンよりふさわしい人物がいるだろうか? 我々は独占インタビューで、今シーズンに、現在も進行中の法廷でのドラマ、F1の将来に対する彼のユニークな見解を聞いた…

Q:2007年シーズンをどのように振り返りますか?
バーニー・エクレストン:素晴らしかったよ。雨のときもあり、晴れのときもあった。しかしまじめな話、今シーズンは非常に興味深かった。競争が激しかったので、ここ何年もなかったほどよい反応があった。

Q:キミ・ライコネンがチャンピオンになったことに満足していますか? それともルイス・ハミルトンがタイトルを獲得したほうがよかったのでしょうか?
バーニー・エクレストン:この結果はかなりよかったよ。ハミルトンはマスコミ露出が多く、これは彼にとってもF1にとっても素晴らしいことだった。最初キミは少し影が薄かったが、ルイスを相手に6回優勝したからね。彼はワールドチャンピオンにふさわしいだろう。

Q:ハミルトンはあなたがご覧になった中で最高のルーキーでしょうか
バーニー・エクレストン:そう思うよ。だから答えはイエスだ。彼は傑出している。

Q:22歳の新人がすぐに競争力を持ち、ミハエル・シューマッハが1年間の休暇のあとの最初のテストで誰よりも速いという事実は、F1のレーシングはあまりに簡単だということになりませんか?
バーニー・エクレストン:誰よりもって? テストでは比べようがないだろう。でもレーシングでははっきりしている。ルイスは他のドライバー全員と争った。彼は才能があるんだ。彼はとてもいいマシンに乗っていたし、同じレベルのマシンはフェラーリだけだった。このふたつがあったから、彼は優勝できた。

Q:でも最後の2戦で17ポイント差を逆転されましたね?
バーニー・エクレストン:フェラーリがチャンピオンシップで優勝したというより、マクラーレンが逃したんだ。最後の2戦で逃したわけだ。上海でマクラーレンが1周早くルイスをピットに呼んでいたら、順位は2〜3番下がったかもしれないが、チャンピオンシップで勝っていただろう。ブラジルでのミスは、明らかにギアボックス・トラブルだったと思う。しかしその後、彼の作戦を3ストップに変え、ソフト・タイヤに交換したのも間違いだった。彼はそのためにかなりのタイムをロスしたが、これはわたしの意見に過ぎない。

Q:問題をかかえたままでシーズンが終わりました。法廷で顔を合わすことが多すぎませんか?
バーニー・エクレストン:古きよき時代のことをよく話しているが、当時は古きよき時代ではなかったのかもしれない。でも少なくとも当時は自分たちで問題を解決していた。今はどのチームも弁護士を5人、医師を3人、マッサージ師2人、心理学者1人を雇っているし、みんな仕事熱心だ。だからトラブルを起こすチャンスがあれば、彼らはトラブルを起こすことができる。こういったスタッフがいなければチームは訴訟することもないし、我々は内部で問題を解決していただろう。

Q:最終結果がわかるまで1日おきに夜9時まで待たされるのは、F1にとってよくないことですか?
バーニー・エクレストン:もちろんだ。スチュワードが仕事をするのになぜあれほど時間をかけるのかわからないよ。こういったことを解決するのに時間制限を設けるべきだ。異議申し立てをするのに1時間、スチュワードが決定を下すのに1時間という制限はどうだろう。

Q:マクラーレンのスパイ事件があり、ルノーの別の事件もありそうです。これはF1レーシングの新しい病気でしょうか?
バーニー・エクレストン:わたしがF1に関わるようになってからスパイ行為は常にあった。これはF1の構造に伴う問題だ。しかし以前よりは少し複雑になっている。かつては、あるチームが誰かを雇うとき、その誰かは情報を持ち出すことがあった。これはある意味、今でも続いている。レッドブルはエイドリアン・ニューウィを雇った。なぜそうしたか? ニューウィは何をすべきで何をすべきでないかについて数年分の情報を持っていたから、チームは彼を雇ったんだ。彼が図面を持ち込んだとは思わないが、頭の中にあらゆる知識を詰め込んで移籍した。

Q:でも境界線はどこにあるのでしょうか?
バーニー・エクレストン:止めることはできない。もしわたしが私立病院を経営していたら、最高の外科医を雇うね。他の病院で30例の心臓移植手術を成功さえた医師がいるなら彼を雇う。なぜならその能力が証明されているからだ。知識以外は持ち出せない。自分の仕事のすべてを忘れるように言うことはできない。

Q:FIAはこれに関与するべきでしょうか?
バーニー・エクレストン:関わらない方がよい。この事件が始まったとき、ロン・デニスには、盗難事件があったと警察に届けるべきだと言ったんだ。盗まれた財産を受け取ったあるいは買い取った従業員がいると通報しろってね。そのような対応をとっていれば、今年のような問題には発展しなかっただろう。

Q:この事件の教訓は何ですか?
バーニー・エクレストン:警察と法廷の問題にするべきだった。彼らの方が真実を見出す手段を持っている。

Q:ルノーはトラブルに巻き込まれていると思いますか?
バーニー・エクレストン:彼らが何をしたか、何をしなかったかについては知らない。ルノーとマクラーレンの違いは、マクラーレンは誰かが一度に図面を盗んだのではなく、一定期間に情報を得ていたことだと思う。

Q:マクラーレンは依然として2008年マシンの調査を受けなくてはなりません。来シーズン、また別のスキャンダルのおそれがあるのでしょうか?
バーニー・エクレストン:そんなことにはなってほしくない。わたしがカメラマンであれば、自分が撮影した写真の著作権を持っている。しかし何かの設計について著作権を主張できるのかどうかわからない。デザイナーとしてはイエスと言うだろうがね。

Q:1978年アロウズがシャドウのコピーをつくったとき、同じ問題が発生しました。このときはたいしたもめごともなく解決できました…
バーニー・エクレストン:今でも同じように簡単に解決できるはずだ。ロン・デニスが情報の存在を知ったとき、彼の会社では何かが進行していた。彼はトッドに電話して「いいかジャン、何か奇妙なことが起こっている。協力してくれ」と言うべきだった。彼らは会って警察に通報し、警察が捜査していればこの事件は解明されただろう。

Q:フェルナンド・アロンソは今年の負組のひとりでした。彼は自分の評判のためにプラスになることをしましたか?
バーニー・エクレストン:彼がマクラーレンに雇われたときどんな契約をしたかわからない。彼がサインした時点では、ハミルトンはF1マシンをドライブしたこともなかった。だからチームが彼に「心配はいらない。彼はルーキーで無名だ。君はワールドチャンピオンであり我々のナンバー1だ」と言ったとしたら、彼はおそらくフェラーリにおけるミハエル・シューマッハと同じ待遇を受けると思って移籍したのかもしれない。しかし彼は突然そうではないと気づく。さらに悪いことに、彼よりルイス・ハミルトンに注目が集まっていた。この場合彼は隅に追いやられたと感じるだろう。これが問題の始まりだったと思う。

Q:ハミルトン以外で印象に残った新人ドライバーは誰ですか?
バーニー・エクレストン:ポーランドの彼をずっと応援しているんだ。彼の名前はクビサ。彼は素晴らしい仕事をしている。ヴェッテルもすごくよさそうだ。弱いチームのドライバーが活躍しはじめるのはいいね。

Q:ジャンカルロ・フィジケラやラルフ・シューマッハなどのベテラン・ドライバーに別れを告げる時期でしょうか?
バーニー・エクレストン:ふたりともかなり長い間そこそこのチームにいたが、もっとよいパフォーマンスを見せることができたはずだ。競争力が劣る環境に移籍することが合理的かどうか、真剣に検討するべきだよ。彼らがチームを移籍すれば、すこしは目が覚めるかもしれない。

Q:ルノーはどうして1年であれほど後退したのでしょうか?
バーニー・エクレストン:フェルナンド・アロンソがいなくなったからだと思う。彼はフェラーリのミハエルのような存在、つまりチームにとっての原動力だった。トップドライバーはまちがいなくチームの士気を高めるし、エンジニアにも優れた情報を伝える。

Q:日本の2チームはどうして失敗したのでしょう?
バーニー・エクレストン:彼らは日本から指示を受けているが、そんなことは無理なんだ。ヨーロッパと日本では時差が大きいし、一般教養も異なっている。彼らは勇敢であるより待機することに満足している。日本人は何事においてもおそろしく保守的なんだ。F1では保守的ではやっていけないと思う。

Q:ホンダは期待はずれのシーズンに対応するためロス・ブラウンを獲得しました。トヨタも同じようにするべきでしょうか?
バーニー・エクレストン:もちろん。でも誰を雇うべきか? ロスのような人物はそう多くはない。しかしトヨタが本当はどれほど優れているのか誰も知らないと言わざるを得ない。おそらくトヨタはいいマシンを持っているのだろう。ドライバーがマシンを最大限活用できないだけかもしれない。もしわたしがトヨタの人間なら、ミハエル・シューマッハのようなドライバーに頼んで3日間マシンをテストしてもらうね。そして意見を聞くんだ。

Q:アロンソはどうでしょう?
バーニー・エクレストン:いいね。2005年と2006年のルノーを見ればいい。フィジケラだけでは彼らのマシンがいかに優れていたかはわからなかっただろう。

Q:一観客として、今年の最高のグランプリは?
バーニー・エクレストン:モナコは常にトップだね。なぜならモナコだから。モナコ以外では「いいレースだった」と言えるグランプリはほんの少しだった。

Q:コンストラクターとカスタマー・チームの定義について討論が行われていました。他チームからマシンを買うことは許されると思いますか?
バーニー・エクレストン:カスタマー・チームがどういうものかわかっている。それが認められるべきだとは思わない。マニュファクチャラーに対して自チームだけで戦うのが怖いからといって誰かから完全なマシンを買ってそれで参戦するようになると、グリッドにはいずれ4台のマクラーレンと4台のフェラーリが並ぶことになり、大問題になるだろう。チャンピオンシップが危機に瀕しているのなら、互いに助け合わなくてはならない。我々は初心に戻ってコンストラクターから始めるべきだ。コンストラクターでなければ、F1に参戦するべきではない。自分のマシンを設計・製造する義務がある。

Q:来年はすべての電子的ドライバー補助装置が禁止されます。これはレーシングを助けるでしょうか?
バーニー・エクレストン:難しいな。大きな問題はタイヤが少し柔らかいことだ。タイヤかすがたくさん発生するので、週末の終わりにはレーシングラインがひとつになってしまう。したがってドライバーはそのラインの上でつながることになる。唯一の例外は雨だ。どのラインでもドライブできるようになるんだ。だから雨が降ると最高のレーシングになる。ドライバー補助装置の禁止がこのような状況を変えるかどうかはわからない。レース主催者が土曜夜にトラックを掃除して雨のようなコンディションを作り、タイヤ・メーカーがもっと硬いタイヤを供給すればよいと思う。タイヤのグリップは減るかもしれないが、マシンのメカニカル・グリップを上げればよりよいレーシングができるだろう。

Q:来年はヴァレンシアとシンガポールで新しいグランプリが開催されます。この2戦には何を期待していますか?
バーニー・エクレストン:特にシンガポールはナイトレースなので面白くなるだろう。ヴァレンシアも素晴らしいと思う。あの会場はすごい。

Q:年間20戦になるのでしょうか?
バーニー・エクレストン:何とも言えないね。それを考えるのはチームだ。チームはレース運営費がまかなえるほどお金をもらっていないのだ。もちろんNASCARのように36戦したいとは思わない。まあ18戦が妥当な数だろう。

Q:つまりヨーロッパのレースが減るということですね…
バーニー・エクレストン:マニュファクチャラーの市場のある場所、マニュファクチャラーが将来自動車を販売しようとする場所で開催する。F1は大きな自動車ショールームだ。インド、おそらくロシア、韓国でもレースをすることになるだろう。

Q:アメリカGPを失ったことは残念ですか?
バーニー・エクレストン:アメリカはヨーロッパに匹敵する大きな大陸だ。ヨーロッパと同じ影響力をもつためには、アメリカで8戦するべきだ。1回のグランプリではF1の人気を高めることはできない。

-Source: The Official Formula 1 Website
-Mobile: Amazonモバイル


アクセスランキング 10日間
    アクセスランキング 30日間

       誤字脱字誤訳誤変換その他間違いご指摘お願いします
      名前:
       
       

      ↑このページのトップヘ