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2008年01月25日

F1の空力学考察

What do we understand by aerodynamics in F1?

エアロダイナミクス
F1では空力学ほど熱心に討議される話題はない。「汚れた空気」や「バージボード」などのような表現が、「オーバーステア」や「アンダーステア」などのF1専門用語と同じように使われている。解説者が「衝突のためドライバーの『リア・ディフューザー』がわずかに損傷を受けたので、彼のレースは台無しになった」と言うのを何度も聞くことだろう。

しかしそれは実際どういう意味なのだろう? 我々はF1を空力学的に本当に理解しているのだろうか? そのような小さな影響が成功と失敗を分けるのはなぜだろう? これらの質問に答えるため、ホンダレーシングF1空力学部門のリーダー、ジョン・オーエンの専門的知識を借りることにしよう。

簡単に言うと、空力学は空気の流れと、空気が動いている物体とどのように反応するかを扱うものである。風車も飛行機も空力学の実践である。初期のF1では、チームはマシンを流線型にすることにしか興味を持っていなかった。言い換えると、空気の流れの抵抗、すなわちドラッグを減らそうとしていたのである。マシンのドラッグが減ると、空気を押して進むために必要な力が少なくてすむので、より速く走るのだ。

この傾向は1960年代まで続いたが、F1チームはダウンフォースという現象に気づき始めた。エンジニアは、タイヤに対する下向きの圧力を上げることにより、タイヤと路面との間の摩擦が増加し、グリップが増えることを理解し始めた。これは、接着性は下向きの負荷にほぼ比例するからである。エンジニアはグリップが増加するとマシンはコーナーを速く回れるだけでなく、ホイールスピンをすることなく大きな力を路面に伝達できることを学んだ。

ダウンフォースの生成は、昔からあるふたつの法則、エネルギー保存の法則とベルヌーイの法則(流速が上がれば圧力が下がる)に依存する。

オーウェンは「F1は、飛行機の翼の背後にある原理を逆転したものだ」と説明する。「簡単に言うと、F1のウィングは、空気がウィングの上の表面より下の表面で速く流れるよう設計されている。これによって、下の表面より上の表面にかかる圧力が増加する。この圧力の差が下向きの圧力、すなわち『ダウンフォース』を生み出す」

机の上でペンを動かしてみよう。斜めに力を入れればペンは簡単に動くが、下向きに圧力をかけて動かそうとすると難しくなるだろう。つまりペンのグリップが増加するのだ。これはF1のタイヤに対するダウンフォースの効果を模倣しているのだ。

この比較的単純なコンセプトは、ダウンフォースとドラッグの関係によって複雑化する。意図的に気流を混乱させてマシンの流線型を損なった場合、ドラッグが生じるが、ドラッグはマシンの直線でのパフォーマンスを低下させる。1960年代、F1チームは可動ウィングを採用してこの問題を回避した。コーナーではこのウィングの仰角が増加してダウンフォースを生み出し、直線ではドラッグを最小限に抑えるために仰角が低下する。

しかし間もなくF1規約は可動空力学的パーツの使用を禁止した。それ以降、F1チームとドライバーは、ダウンフォースとドラッグの最善の妥協案を見つけなければならなくなった。直線で速くコーナーで遅くても無意味であるし、その逆も無意味である。だからこそ、モナコなど曲がりくねったサーキットでは高ダウンフォースのセットアップ、モンツァなどの流れるような高速サーキットでは低ダウンフォースのセットアップが採用され続けている。

1978年ロータスは、デザイナーのピーター・ライトが「地面効果(グラウンド・エフェクト)」の空力学を発見して、この難問を実質的に解決したと考えた。地面に非常に接近させてマシンを走行させ、マシン下部の気流を制御することで、ロータスはドラッグを大幅に増加させることなく、ダウンフォース・レベルを劇的に増加させることができた。

1983年シーズン開幕時に「地面効果」マシンは禁止されたが、FIAの懸命の努力にもかかわらず、現在までその基本的原理はエアロダイナミシストの思考の大半を占めている。オーウェンは「マシンの下を通過する気流を加速することで、巨大な掃除機で吸うのと同じ効果が生まれ、マシンが下に押しつけられる」と説明する。「だから、我々は車高をできるだけ低くしているのだ。鳥が水面近くで簡単に飛べることもこれで説明できる」

マシン下の気流は、リア・ディフューザーによって一部制御される。リア・ディフューザーは、最近のあらゆるグランプリマシンのリアに取り付けられている、複雑な形状をした装置である。マシンの下を通過する空気の速度が上がれば、生成されるダウンフォースも大きくなるので、このディフューザーのデザインは非常に重要である。

これがグランプリ・マシンに最も大きな違いをもたらすとは、ほとんど気づかれないだろう。オーウェンは「奇妙に聞こえるかもしれないが、現在のF1における空力学的成功は、ボディ下の気流をいかに制御するかで決まる」と語る。

バージボード(フロント・ホイール背後に設置された垂直の板状構造物)など、最も目立つ空力学的付加物の一部は、実際はアンダーボディを管理するべく設計されている。オーウェンは「バスタブの栓を抜いたときを想像してほしい。低圧の領域が生まれ、表面の水が吸い込まれていくだろう」と説明する。「これは渦と呼ばれている。バージボードはほぼ10個の渦を生み、その渦がマシンの下に入る。これによってマシン下部に低圧の領域が生まれ、ダウンフォースが増加する」

フロント・ウィングのエンドプレートも同様の役割を担っている。「これらのプレートは4〜5個の渦を生み出し、フロント・タイヤと空気の相互作用を管理する」

グランプリ・マシンのタイヤは、依然としてエアロダイナミシストの悩みの種である。「非常に切り立った形状をしているので、乱気流をたくさん生み出す。エンドプレートやバージボードなど、マシンに取りつけられる部品の多くは、これら乱流がマシンの下に入り込むのを防ぐために設計されている」

当然のことながら、フロント・ウィングはマシン全体の空力学的コンセプトの鍵である。「空気は最初にフロント・ウィングに当たるので、空気がマシン全体にどのように流れるかをウィングが決定する。このとき不可避的に問題が生じる。空気がリア・ウィングに到達するまでには、フロント・ウィングでの速度より約30%遅くなっている。リア・ウィングは、フロント・ウィングやアンダーボディよりかなり効率が悪い。言い換えれば、ダウンフォースが上がるとドラッグも増加する」

ここ何年も、FIAはマシンが生み出すダウンフォース量を低下させようとしており、かなり成功している。オーウェンは「自由にできるのであれば、少なくとも今より2倍のダウンフォースをすぐに生み出すことができるだろう」と語る。

しかし、FIAがダウンフォース低減を熱心に進めるにつれ、チームはますます手の込んだデザインを導入している。最新の風洞と計算流体力学(CFD)技術により、細部に至るまでとてつもない注意が払われるようになった。「今では、以前より複雑な形状を簡単に製造できるようになった。細部を少し変更すればマシンのダウンフォースを10〜20%減らすことができるが、そのような違いは熟練の専門家でなければ見分けられないだろう」

細部への配慮にとりつかれているF1において、エアロダイナミシストは誰よりも強迫観念にとりつかれている。技術と精巧さを別にすれば、空力学は世界で最も優秀な頭脳のいくつかを消費する黒魔術のようなものである。「ダウンフォースにおける10%の改善は1周当たり1秒の短縮に相当する。それを達成するのが我々エアロダイナミシストの仕事である」とオーウェンは締めくくった。

-Source: F1 Technical
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+参照
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markzu at 16:54│Comments(1)F1技術解説-全般 

コメント

1. Posted by フジノコ   2008年01月26日 19:29
うわー、知りませんでした。
特に「現在のF1における空力学的成功は、ボディ下の気流をいかに制御するかで決まる」
というのはイメージとずいぶん違い驚きです。
上から押さえつけるのではなく、下で吸い付かせるというイメージなんでしょうか??まぁ何にせよすごいです。

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