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2008年02月10日

ホットショット! - 熱画像カメラの可能性

Hot shots!

熱画像カメラが手頃な価格になったおかげで、レースマシンのパフォーマンス解析における躍進が到来するのだろうか? 本誌 "Racecar" はそれを調べるテストを行った。

タイヤ1本につき、何ヶ所の温度を図ればよいのだろうか? RMLのスタッフは「外側、中央部、内側」の3ヶ所だと言う。それ以上のタイヤ温度情報があれば役に立つだろうか?「タイヤが冷えてしまう前に4つのタイヤそれぞれで3つ以上の計測値を得ることはできないから、役に立たない」 これは常識であり、それが変わることはなかった、これまでは。おそらく。IRISYS社の低価格熱画像カメラがこれらをすべて変えるかもしれない。チームは4本のタイヤを急いで回ることなく、数秒以内に12ヶ所の温度を記録することができるかもしれない。熱画像カメラを利用すれば、各タイヤについて10ヶ所の温度をただちに測定し、その後ラップトップ・コンピュータで確認することができる。

この技術の有用性は、シルバーストンのあるクラブレース中に実証された。このとき、スプレッドのシングルシーターには、たぶんパイロメータであれば見逃したであろう右リアタイヤに奇妙な冷点が生じていた。各種レースマシンや高温および低温の物体について、他の試験も行ってみた。例えば、レース直後のロブ・バーリーのフォード・エスコートWRCのエンジン室を画像化したところ、ターボチャージャーは周囲のものより100℃以上熱かった。カップに入った不適切に熱い紅茶でさえ判断することができたが、もっと本格的なテストが必要であった。

フランスのドリオ・アソシエーツ・モータースポーツ(DMAS)が、GP2とA1GPマシンのタイヤとブレーキに関して、通常のプローブタイプのパイロメータと熱画像カメラの直接比較テストを申し出てくれた。チームエンジニアのひとりは「状況をすぐに見ることができる画像が得られるのはいいね。プローブを使うと数値しかわからない」とコメントした。この熱画像カメラが競技に利用できることが明らかになったので、競争心が芽生えてきた。「触ることも近づくことさえなくライバルのタイヤがどうなっているかがわかれば、GP2などのシリーズでは素晴らしいだろう」 本誌がその日のはじめに行ったテストでは、あるチームのガレージの裏に行き、数メートル離れてとがめられることなく温度を測定したのである。IRISYS社の代表者(兼フォーミュラVeeレーサー)のアンディ・ウッドヴァインは、「-10℃から300℃までは正確なので、希望する場所の温度のスナップショットを撮ることができる」と主張する。

DMASが運営するA1チーム・フランスのマシンについて、直接比較テストを開始した。APレーシングのニック・オルセンが、マシンのブレーキ・ディスクの温度を従来のタイヤ・プローブで計測したところ、260℃であった。熱画像カメラは約100℃低い160℃を記録した。ウッドヴァインの主張はやや楽観的だったようだが、オルセンは答えを知っていた。「カーボン・ディスクは黒体なので問題ないだろう。しかし輝くスチール・ディスクの場合、200〜300℃違うことがある。だから今回はプローブを使った方がいい。問題は放射率だ。表面が黒い場合は大丈夫だが、光沢のある表面については、パッドに汚れがあるかどうかで反射が変わり、ディスクを回すだけで200℃の差が生じる。プローブの場合は放射率に影響されない」

念のために説明すれば、放射率とは表面から放射されるエネルギーの比率であり、表面の反射性によって変動する。非常に光沢のある表面はエネルギーの98%を反射し、2%しか吸収しないが、(タイヤのように)黒い表面はエネルギーの98%を吸収して、2%しか反射しない。

そしてオルセンは、熱画像カメラは最初思われていたほど信頼できないことを説明した。「キャリパーは大丈夫だろう。光沢のない灰色をしているのでよい結果が得られるだろう。測定する対象の表面によって抵抗率を変更しなければならないが、そのカメラでそんなことができるのかい?」 「キャリパーについては、抵抗率は1.1だ。ただし、放射率が1より大きくなることはないから変だよね。レイテック社のスタッフに放射率が1以上になることがあるのかって質問してみたら、1.1は素晴らしい数値だという返事だった。これは放射率ではなく、おまけの数値のようなものだ」

これに対してウッドヴァインは、カメラで放射率を調整することは可能であり、実際にとても簡単であることを証明した。そしてマシンのキャリパーに対する信頼性を実証した。

オルセンのパイロメータは、キャリパーの温度を78℃と計測したが、カメラは最高温度は81℃であることを示した。テスト中のカメラの精度はプラスマイナス2℃であることを考えれば、ぴったりである。さらに精度の高いカメラもあるが値段が高い。

しかしタイヤはまさに無反射性であり、熱画像カメラが本領を発揮する。オルセンのプローブではA1チーム・フランスの右リアタイヤは約34℃、カメラ画像による温度は33℃であった。タイヤについても精度は問題なく、実質的にはデジタルカメラなので、撮影した画像をすべて保存することができる。

A1チーム・メキシコ(DAMSが運営)のマシンの比較テストでも、熱画像カメラは同じように好調で、パイロメータよりも速く正確な温度を、さらに有益な方法で提供した。マシンのタイヤ・ブランケットが取り外されると、ウッドヴァインはリアタイヤを撮影した。その結果、タイヤの端は均一に暖められていたが、中央部分では不均一な部分があり、ブランケットがタイヤ表面にしっかり接触していなかったことが示唆された。マシンが3周走行すると、両リアタイヤの熱分布が比較的均一になったことがわかり、熱画像カメラはまたもやプローブを凌駕した。

もちろん、ライバルのタイヤ温度を知ることは、A1グランプリ、GP2、あるいはF1などのシリーズと非常に関連が深い。そして 本誌がアプローチしたF1チームのいくつかが熱画像カメラに興味を示したのも当然だろう。しかし、この結果が公表されることについてF1チームが不満を抱いたことも当然である。ライバルチームがチームのガレージの前に立って、マシンの近くに来ることもなくタイヤの温度を計測することを想像してみればよい...

ウッドヴァインは「カメラは固定焦点レンズを使っているので、距離が長くなると視野が広がる。5mの距離では1ピクセルの『熱点』は計測表面の11cmに相当する。しかしピクセル内の領域を小さくすれば、つまり対象に近づけば精度が増す。0.5℃差でも温度の違いがわかる」と説明した。

シルバーストンでテストした熱画像カメラは大きなポテンシャルを示したが、IRISYS社のエンジニアやソフトウェア開発者は、レーシングチームと協力して、モータースポーツにおける一般的な表面について一連の放射率測定値を開発すれば、本当に利益につながるだろう。そうは言っても、事情通のレースエンジニアなら現在の熱画像カメラでも活用することができるだろう。

となると、残る疑問はひとつである。ではなぜみんなが使わないのか? 答えは簡単、正確な熱画像カメラは、これまで妥当な価格範囲から外れていたのだ。しかし、我々がテストしたのと同様のIRISYS社のカメラは約1,000ポンド(20万8,894円*)で入手できる。確かに高品質のプローブよりは高価であるが、金額に見合うだけのことはある。高い機能性、速くて綿密な測定値、即時分析、そしてもちろんライバルの偵察。値段の問題を除けば、これは必ずチーム・キットの次なる必需品となるだろう。本誌はこの装置のテストを続け、メーカーに協力してモータースポーツ仕様のバージョンを開発するかもしれない。

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サーモグラフ

-Source: Racecar engineering
-Mobile: Amazonモバイル

+参照
IRISYS社 公式サイト
熱画像カメラ パンフレット

*日本時間2008年02月10日22:59 の為替レート:Yahoo!ファイナンス 外国為替情報





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