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2008年12月06日

ホンダ撤退でF1のシャンパン三昧時代は終焉へ

Formula One's champagne days are over as Honda run dry

「拝啓、F1は持続不可能になりつつある」 これはFIA会長マックス・モズレーが7月にチームに送った書簡の最初の一文である。

モズレーはちょうどロンドンの高等法務院でのプライバシー侵害訴訟に勝訴したところだった。この日はシャンペンが注文されたかもしれない。彼は個人的な苦境と経済危機にあるF1のため、シャンパン三昧の日々は終わったことを実感した。行動を起こすときが来た。F1はもはや自らをまかなえないかもしれない。

モズレーは過去5年間、超寿命エンジンから開発凍結まで各種のイニシアチブを導入してコスト削減を提唱してきた。これは世界最速のショーで繰り返し登場するテーマである。20年前、F1が前回の世界的財政破綻に見舞われ6チームが撤退したとき、F1設立者であるバーニー・エクレストンは浪費チームが好む超高価なターボ・モンスターとともに自然吸気エンジンを突然導入し、コスト削減を図った。

したがって1988年3月には、自然吸気エンジンを搭載したシーズンあたり150万ドル(1億3,948万円*)のコストのマシンが登場した。マクラーレンは、アイルトン・セナとアラン・プロストをターボのワンダーランドに連れて行くため、2,000万ドル(18億5,980万円*)を使った。2年以内にターボは禁止され、再びF1にチームが集まった。

一世代のち、F1はまた贅沢になりすぎたため、エクレストンは対応を迫られている。4日、ホンダ撤退のニュースが流れる前、チームは来週の世界モータースポーツ評議会での承認をえるべく、さらなるコスト削減対策を討議していた。ホンダのニック・フライ社長は、2009年は年間7,000万ドル(65億930万円*)の節約を予想していた。

しかしエクレストンにとっては十分ではないだろう。彼はトヨタやマクラーレンのようなチームが年間5億ドルも使うことを即刻やめさせたいのだ。エクレストンは、F1は何よりもまずスポーツであり、自動車メーカーのマーケティング活動ではないと考えている。

大規模な自動車業界に関連があるかどうかもわからない革新的技術に巨額の投資を行うことは的外れである。人々はレースを見るためにテレビをつけるのであって、エンジンカバーの下で宇宙時代のドラマが起こっていても、気づきもしないし気にもしないだろう。

自動車ファンのコミュニティは、ドライバーの重要性よりも駆動系や気流の方が優位であると考えているかもしれないが、ほとんどのスポーツファンはそういうことには投資しない。一般ファンの興味は、誰がレースに勝つのかであって、どのマシンがレースに勝つのかではない。エクレストンとモズレーはこれを理解しており、このメッセージを強調するためにホンダの撤退を利用するだろう。

スポンサーからの反論はないだろう。チームは、スポンサーの提供する何百万ポンドのおかげで、F1が提供する世界的プラットフォームに対する見返りとして向こう見ずな計画の資金が調達できるのだ。フェラーリはボーダフォンとの4年契約で1億ポンド(136億5,400万円*)のスポンサーシップを得たが、マンチェスター・ユナイテッドは同じ期間のスポンサーシップ料は3,600万ポンド(49億1,533万円*)だったので、F1の魅力はサッカーのプレミアリーグに比べて3倍も高い。

ルノーのタイトル・スポンサーであるオランダの金融会社INGは、F1との提携がもたらすブランド認知増加に対して、年間1,500万(20億4,805万円*)〜2,000万ポンド(27億3,074万円*)の契約は十分価値があると考えている。しかしこのショーはマシンがトラックを走らなければ成立しない。

2001年フォードがスチュワート・レーシングの買収を終えると、エディ・ジョーダンは彼のチームのシーズン前発表会で、F1におけるマニュファクチャラーの関与は一時的なものであることをみなに思い出させた。予言者EJは正しかった。フォードが去ったのはかなり前のことだ。そして今度はホンダ。次に撤退するのは? トヨタ?

エクレストンとモズレーは、F1を独立チームにも可能なものにすることによって、マニュファクチャラーへの依存度を低下させようとしている。これによってF1はキットカー・チームあるいは無名の「ガラジスタ」<訳注:ガレージでマシンを自作するチーム>という戦後の伝統が復活するかもしれない。ウィリアムズ帝国は、サー・フランクは適正な価格でパーツを売っていたハーロウの倉庫から始まった。

F1は危機の生き延び方を知っている。あらゆるスポーツで最も成功した興行主によって運営され、政治の天才によって管理されている。エクレストンとモズレーの唯一のミスは、チームは技術の幻想にひたり、マーケティング担当者がコア・マーケットから製品を引き離すことを認めたことである。F1はまずスポーツであり、広告プラットフォームは二の次である。トラックでのアクションがなければ夢を売ることはできない。

また、エクレストンは未開拓の市場進出による世界的拡大計画を見直そうとするかもしれない。モズレーはホッケンハイムのドイツGPの初日に文書を発表した。その後レース主催者はレースで500万ユーロ(5億9,123万円*)以上の損失を出したことがわかった。

現在の経済状況では、ホッケンハイム・サーキットへの復帰の可能性はゼロである。来年のフランスGPはキャンセルされた。シルバーストンで開催されるイギリスGPは来年が最後である。ドニントンは2010年以降レースを開催する契約を結んだが、油断はできない。

つまり、F1はその中心地から退却したのである。グランプリ・レーシングが誕生したフランス、初期の開拓者のひとつであるメルセデスの地元ドイツ、戦後F1のふるさとでありシルバーストンで初のF1ワールドチャンピオンシップを開催した英国、この3ヶ国全てがレース開催料の支払いに苦労している。

国家が支援する極東のレースのため市場価格を引き上げたエクレストンを責めることはできない。しかし政府資金が投入されなくとも観客席が埋まる国に、世界的にも大規模なF1の財布から助成金を出すのはどうだろう? バーニー、ほんの思いつきなのだが。



-Source: Telegraph.co.uk
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*日本時間2008年12月06日05:59 の為替レート:Yahoo!ファイナンス 外国為替情報


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