トップ | レース結果 | コメント | 技術解説 | チーム分析 | サーキット・ガイド | 動画 | コラム | インタビュー | データ | レース動画 | レース写真 | GP恋人写真 | マシン写真動画 | 特集 | ヘルメット | テスト
2013年02月07日

F1マシンのつくり方 3: パフォーマンス

How to make an F1 car - Part 3: performance

F1の風洞

F1マシンがどうやってコンセプトからトラックでレースするのかに関するこのシリーズは、これまで基本的なコンセプトと基本的な機械部品を取り上げた。今回はパフォーマンスを見ていく。

どのシーズンであっても、チームは現行マシンの機能を知っている。あるいは少なくともマシンのあるべき姿を知っている。

ラップタイムは主にコーナリング・スピードで決まる。マシンがコーナーを速く走ることができれば、ラップタイムも速くなる。そしてコーナリング・スピードは、コーナー半ばにおけるマシンの空力学的挙動によって決まる。

だからチームは、ステアリングを固定してマシンの空力学的特性を理解する。そして現行マシンについての知識とトラック上での挙動が、次のマシンの理念に影響する。

より多くのダウンフォース、より少ないドラッグが必要であり、これは決して変わらない。F1チームが「L対D」と話しているのを耳にしたら、このことを言っているのだ。

つまり、揚力(lift)あるいは負の揚力、すなわちダウンフォースとドラッグ(drag)の比である。L/D(lift/drag)の値はできるだけ大きい方がよい。

しかし、そのためにほかのすべてを犠牲にすることはできない。マシンはその範囲内で機能しなければならない。

マシンの操縦性は非常に重要であるが、全体のダウンフォースと操縦性は両立しないことが多い。というのも、全体のダウンフォースが高くなれば、マシンは高度差に対して敏感になり、ドライブが難しくなるからだ。

マシンはブレーキング、コーナリング、加速中に縦揺れ、横揺れ、偏揺れするので、マシンの過渡的な性能は、全体のパッケージにとって非常に重要である。

そのため、マシンのパフォーマンス向上と良好な操縦性維持の間には、常に妥協がある。

マシンの空力学的パフォーマンスは、ブレーキングおよびコーナリング中の圧力中心(空力学的な力が作用するマシン上のバーチャル・ポイントであり、マシンの挙動を決める)の動きがパフォーマンスに大きな影響を与える。

ドライバーがマシンのステアリングをロックさせると、圧力中心はわずかに前後に移動する。ステアリング角度が5度変わると圧力中心が1%前に移動するが、マシンは依然としてフロント・エンドのグリップがやや足りないとしよう。その場合は、1.5%前に移動した方がよいかもしれない。つまり、圧力中心はデザイナーが扱う対象なのだ。

それは、マシンのあらゆる面についても同じである。例えば、ディフューザーにおける気流の分離方法が車高に依存するのが常にちょっとした問題であれば、デザイナーはそれをよくしようとするだろう。

チームが改善したいと思う特性はすべて仕様シートに書き込まれて、エアロダイナミシストに渡され、テクニカル・ディレクターはそのパラメータを見てマシンをさらに開発しようとする。

仕様シートはマシンのすべて(空力学的パフォーマンスからサスペンションや他のパーツの強度まで)をカバーしている。これが基礎となり、マシンが設計される。

セバスチャン・ベッテルがブラジルGPで起こした1周目のインシデントを例にとろう。彼は他のマシンと接触したが、レースを続けることができたので、ワールドチャンピオンシップに優勝した。

レッドブルでは、アクシデントにおけるサスペンションに対するすべての衝撃を計測する。マシンのパフォーマンスに対応できるサスペンション・システムをつくるのは非常に簡単かもしれないが、その衝撃に耐えられなかったら、ベッテルはワールドチャンピオンシップで優勝できなかっただろう。

つまり、レッドブルは通常の条件を越えた負荷に対応できるサスペンションを製造しており、それが最終的にワールド・タイトルにつながったのだ。

同様に、ニコ・ヒュルケンベルグのフォース・インディアがルイス・ハミルトンから首位を奪おうとして彼にクラッシュしたときも大きな衝撃があった。マクラーレンは壊れたが、フォース・インディアは壊れなかった。

マクラーレンはこれを見て、こう言いたかったかもしれない。「そう、確かにあれは事故だった。我々の半分のサイズのチームのマシンに乗ったドライバーは走り続けた」

だから、このことを考慮して正しい妥協をしなくてはならない。なぜなら強度を高める部品は重量を増やし、パフォーマンスを低下させるからだ。正しいバランスの問題である。

仕様シートをまとめるスタッフは、すでにマシンがどのようになるかの展望を持っている。

しかし、その目標を達成するのは簡単ではなく、簡単だとすれば仕様シートは十分な要求をしていないことになる。

F1の風洞

風洞
マシンの空力学は、マシンの最終的なパフォーマンスを決定するが、チームが新マシンを設計するとき、以前のマシンのパフォーマンスをベースにして目標を設定する。

シーズンが進むと、ドライバーから、最初のターン・インのとき、フロント・タイヤが十分グリップしないとか、ステアリングが一度ロックするとアンダーステアがひどくなるとか、リアが神経質だとかといった不満が何度も出るだろう。

デザイナーは、なぜそれが起きるのか、それを修正する解決策が何かを証明しようとするだろう。

昨年のフェラーリを例に挙げると、長いストレートの終わりのブレーキング中にマシンのリアが神経質になった。これは、気流がディフューザーから素早く再付着しなかったからだった。彼らはおそらく新マシンでは、ディフューザーの気流が再付着する車高にもっと配慮するだろう。

そのため、チームはL/Dを高めることでマシンのパフォーマンスを上げようとするが、同時にパフォーマンスを制限するこれら操縦特性を改善しようとする。

風洞と計算流体力学プログラム(CFD)でマシンを設計する際に、大手チームは小規模なチームに比べ、この妥協が得意である。彼らは解決策を見出すための人員が多いのだ。

しかし、正しいコンセプトをまとめることは、出口がわからないまま環状交差点に入るようなものである。

大手チームはすべての出口を試すことができ、そうすることによって正しい解決策を見出し、目的地に到着することができる。小さいチームはひとつを選ばざるを得ない。正しい出口を選べば、目的地に到着できる。しかし間違った出口を選べば、大きな代償を支払うことになる。

マシンを設計するときにエンジニアがしているのは、最高の結果を得るために、マシンの所定の部品についてできるだけ多くの組み合わせを試すことである。

シャシーのフロント下にあるターニング・ベーンのような単純な部品でも、製造が承認されるまでに約50のバリエーションが作られる。チームはまた、その部品が、マシンの残り全体の気流の動きにどのような影響を及ぼすかも考慮しなくてはならない。

異なる車高とステアリング角度のマシンについて、CFDで様々な設計をシミュレーションし、それを理解することは非常に難しい。風洞でそれを行うのも大変な作業であるが、少なくともCFDよりも実際的な環境ではある。

風洞モデルが用意できると、一度の稼働でそれをすることができる。

モデルを使って、車高のシーケンスと、横揺れと偏揺れ、ステアリンのシーケンスを行う。チームが使用している新しい50%あるいは60%の風洞は、このように洗練されているのだ。

風洞は、理路整然とした空力学的パッケージをつくるために利用されるツールにすぎない。テストした部品を理解する手順のなかで作業を続けることが重要である。

激しい戦いのなかでは、時間のかからないL/Dの値だけに集中し、ステアリングのロックや横揺れ、偏揺れなどをおざなりにしがちである。しかし、そうすると、すぐに泣きを見ることになるだろう。

 by ゲイリー・アンダーソン(聞き手:アンドリュー・ベンソン)
-Source: bbc.co.uk

F1マシンのつくり方
1:コンセプト設計の段階 2:シャシーの製造とクラッシュ・テスト 3:パフォーマンス 4:マシンの詳細部分の設計と性能決定に最も重要な部分 5:F1のシーズン前テスト

+関連記事
2007年02月11日
F1のダウンフォース - エアロダイナミック・グリップ
2007年02月12日
F1のエアロダイナミクス:風の科学
2008年01月25日
F1の空力学考察
2008年02月12日
F1の必需品:風洞
2008年09月11日
エアロダイナミクス
2008年12月18日
風洞の解説 by ジョン・トムリンソン(ウィリアムズ)
2009年07月20日
レーシングにおける空力学
2010年01月01日
ニック・ワース(ヴァージン) 「CFD(計算流体力学)技術を紹介したい」
2011年01月10日
F1の風洞効率を改善する粒子画像流速測定法(PIV)
2011年02月19日
トヨタ・モータースポーツの風洞は高速・高性能自動車の設計を助ける: PIV
2011年04月28日
ディンプル加工の空力学的表面はドラッグを抑制できるか?
2011年05月03日
ニコ・ロズベルグとロス・ブラウン、空力学を解説: 動画


markzu at 19:39│Comments(0)F1技術解説-全般 



今日+昨日アクセスランキング
    10日間アクセスランキング
      30日間アクセスランキング

         誤字脱字誤訳誤変換その他間違いご指摘お願いします
        名前: