エイドリアン・ニューウィの秘密日記: ルイージを愛するがゆえに
The Secret Diary of Adrian Newey Aged 53?: For The Love Of Luigi
信頼できる親愛なる日記よ、「日記」という単語を削除して、もっと適切なフレーズ「たまにしか書かないメモ」に書き換えなければならないと思っている。
前回わたしがこのパリッとした白い羊皮紙に文字を書いたのは4月のことだ。そのとき日記は表紙にクルサードが載っていた古い "F1 Racing" 誌の下に隠れていた。それ以来日記は目につくところにあったのだが、シュトゥットガルトの卑劣な奴ら(メルセデス)を相手にした我々の素晴らしい闘いのため、書くことができなかった。
だから、後世に残すためにわたしの最新の沈思黙考を記録しようと思うと、グリュイエール・チーズを入れ過ぎた濃い魚のスープのように、罪悪感が肩に重くのしかかっている。最近オフィスでは物事がスムーズに進んでいない。少なくとも、ワイルドなオーストラリア人が2013年末にヘルメットを脱ぐと発表してからは。(正直なところ、キャリアの終わりになぜ何かを脱がなくてはならないのか、わたしにはわからない。マシンを木にぶつけない限り、グローブやヘルメットを脱いだりする必要はないのに... 技術的な話をすれば、マークはル・マンのヘルメットをかぶる)。
反抗的なわたしのパーソナル・アシスタントのジャナは、ウェバーに会えなくなるという悲しみに気が動転している。ときどき製図板から彼女の方を見ると、彼女が彼のことを考えているのがわかる。なぜなら両手で頭を抱えて「なぜ、なぜ、なぜ...?」と繰り返しつぶやいているからだ。チームを離れるのがセバスチャンならば、オフィスのなかで大騒ぎしていたことだろう。
セバスチャンに対する彼女の反感が、すべてベッテルのせいなのか、あるいは「ドラッグストアのブロンド」と密かに呼ばれている有能な広報アシスタントのブリットに対する嫉妬と関係があるのか、わたしにはわからない。わたしにわかっているのは、まだトゲが残っており、マークが引退することを聞き、あれが彼の最後のシーズンの唯一の優勝だったかもしれないとわかると、セバスチャンがマレーシアで「優勝を盗んだ」ときに彼女が感じた怒りが高まるばかりだった。
シートに座るドライバー候補に関しても、彼女はやはり否定的だ。ダニエルのことは「笑いすぎなので、おめでたい人間かもしれない」と考えている。そして彼女はマクラーレンに在籍したことがあるので、マクラーレンのモーターホームでキミのビールザーバーを担当している女性を知っている。ブラジルではフィンランドのビールを入手するのがとても難しいが、口数の少ないライコネンは扱いにくい客であり、例外を認めなかった。彼の友人はフィンランドのグランジ・バンドのローディのように見える。ジャナは彼のことを「プレミアリーグのサッカー選手並みのタトゥーをしているが、脳みそは半分しかない」と考えている。とても面白い。
フェルナンドのマネージャーが、ハンガリーで我々のところに来てシートの話をしたとき、ジャナはかなり元気になり、「男の子のお尻をペンペンできる誰か」について不適切なアナロジーを使った。残念ながら、政治的な理由でフェルナンド・アロンソの獲得はご破算になった。以前も言ったと思うが、クリスチャンとルカ・ディ・モンテツェモロのとの間にはコミュニケーションのチャネルがあり、クリスチャンはかつてマラネロへの移籍が噂されたこともあった。
その後、わたしはこの噂は、フェラーリの広報担当ルカ・コラジャンニが記者に「2014年ベッテルのスクーデリア移籍」という筋書きに沿った噂を流した結果だとわかった。ルカ・ディ・モンテツェモロはフェラーリで仕事をしていなかったら、バチカン銀行に就職していたか、テレビ・ドラマの「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」に出演していただろう。
しかし、彼らは電話で話をしているし、クリスチャンはいつかフェラーリのボスとしてルカの後継者になるという野心を抱いていると思う。彼の大きな問題は、イタリア人ではないことだ。彼は名前をクリスチアーノ・ディ・ホルネルとかに改名しなくてはならないかもしれない。ルカ・モンテツェモロはかつて雑誌に、威厳がありそうなので名前に「ディ」を追加したことを認めており、あるウェブサイトなどはさらに一段階進めて、彼のことを常にルイージ・モンテスマと書いている。超面白い。
もちろん、アロンソがチームに来れば素晴らしいだろうが、クリスチャンは才能あるミスターと契約して、将来の仕事のチャンスを危険にさらすだろうか?
わたしに関しては、最近のグランプリ週末の多くの時間を、ニキ・ラウダと大きな茶色の封筒を避けるために使っていることを告白しなくてはならない。ブラックリーには馬鹿馬鹿しいほど大勢のテクニカル・ディレクターがいるにもかかわらず、シュトゥットガルトの卑劣な奴らにとってはまだ十分ではないようで、彼らのオファーはますます馬鹿馬鹿しくなっている。最新のオファーは年俸200万ポンド(3億円*)、プラス、ファクトリーが用意したクラシックカー、1955年メルセデス300SLRによる2014年ミッレ・ミリア参戦だった。さらにコ・ドライバーとしてキャロル・ヴォーダマンがつく。
わたしは数字に関するキャロルの才能と、ちょっとした車好きであることは称賛しているが、称賛できるのはそこまでだと明言してきたと思う。そしてわたしは、自分の技術チームを離れたくはないが、フライアウェイ・レースでも、わたしに製図板を持たせるので、少しうんざりすることもある。先日、チームのひとりがわたしに「エイドリアン、三角定規が鼻先にあると機内食が食べにくいですね」と言っていた。さらに、人類に貢献するわたしの大きなエンジニアリング・プロジェクトはまだ製造段階に達していない。
プロトタイプのESVM1は製造されているが、いくつかの初期問題がある。その背後にあるアイデアは、この新しい5:2の一時的なダイエットによって刺激されたものだ。ガールフレンドが5:2を試していて、いいことがたくさんあると言うのだ。1週間のうち2日間は、600カロリーしか食べない。つまり断食だ。そして断食のときにカロリーを避ける最もよい方法は、栄養豊富な低カロリーのスープをとることだ。そこでアイデアがひらめいた。ESVM1(エリート・スープ自動販売機)は、異国風でスパイシーで低カロリーのおいしいスープを各種調合するのだ。
大きな問題は、現時点ではタイミングよくカップが出てこないことだ。オーダーメイドの地元産の材料はちゃんと調合されるのだが、カップが正しい位置に出てこないので、スープの全体的パッケージの品質低下を招いている。とても厄介だ。
先日、クリスチャンが自動販売機の側面をたたいているのを見つけた。彼がわたしを見て、額のしわに気づくと「エイドリアン、この販売機のマシンの問題を知っているだろう」と言った。
わたしは「いや、調べたが...」と答え、クリスチャンが工学的解決策を思いついたのかと、ややまごついた。
彼はゆっくりと笑顔になって「ダウンフォースが十分じゃないんだよ」と言った。
-Source: Planet F1
Planet-F1の「Off On F1」は、お遊び記事
*日本時間2012年08 月20日22:49 の為替レート: 1ポンド=152.225174円
markzu at 23:14│Comments(0)│F1お遊び記事
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