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2018年05月17日

フェラーリがメルセデスを倒す方法:F1技術解説

Tech Tuesday: How Ferrari plan to topple Mercedes

昨シーズン、メルセデスと接戦を演じたフェラーリは、今年はいくつか大きな技術的進歩を遂げ、シルバー・アローを倒し、2008年以来初となるワールド・タイトルを獲得しようとしている。マーク・ヒューズとジョルジオ・ピオラが、詳しく説明する…

フェラーリは、2018年マシンであるSF71Hについて、昨年のマシンに導入した空力学的コンセプトを攻撃的に追求した。このコンセプトは、2018年の他チームのマシンに大きな影響を与えている。一方、メルセデスは、今ではユニークになった低傾斜角の空力学的理念に合わせて開発を続けている。したがって、このふたつの設計の戦いは、基本理念の戦いである。フェラーリは、彼らのテーマの最新開発が、ハイブリッド時代のすべてのタイトルを獲得してきたチームを圧倒することを期待している。

しかし、そもそも跳ね馬は何をしたのだろうか?

1. ホイールベースを延長した

フェラーリSF71HとメルセデスF1 W09のホイールベース比較図
フェラーリは、2018年のホイールベースをかなり延長し、ライバルのメルセデスと同じくらいにした
フェラーリSF71HとメルセデスF1 W09のホイールベース比較図
フェラーリとメルセデスのホイールベースの比較

昨年のフェラーリの大きなイノベーションは、サイドポッドから側面衝撃吸収構造を分離したことである。ラジエーターの吸気口が、衝撃吸収構造の上部背後にあるため、サイドポッドを後ろ寄りにすることが可能となり、エアロダイナミシストがダウンフォースを生成するためのスペースが増えた。

しかし、2017年はマシンのホイールベースがメルセデスよりもかなり短かったため、それが相殺された。そのため、SF71Hはメルセデスとほぼ同じ長さのホイールベースであるが、フェラーリの高傾斜角理念を維持している(上図参照)。

2. マクラーレン式フロント・ウィングを導入した

ホイールベースの延長によって、バージボードとアンダーフロア領域の周囲でダウンフォース生成表面が増えたが、形状とサイズを変更したバージボードとサイドポッド領域にとって、適切な場所で渦流を発生させるため、フロント・ウィングに手を加えることになった。各種のスロットやウィングの輪郭から生じるこれらの渦流は、マシンに沿った気流を活性化し、気流の速度を上げたり、必要に応じて導いたりする。

フェラーリSF71Hとマクラーレン・ホンダMCL32のフロント・ウィング
フェラーリSF71Hのフロント・ウィングは、マクラーレンの2017年マシンからインスピレーションを得たように見える
フェラーリSF71Hのフロント・ウィング
このクローズアップ・ショットは、フロント・ウィングの支柱のマクラーレン式スロットを示している

フェラーリは、SF71Hのフロント・ウィングに4つ目のエレメントを追加し、マクラーレンからインスピレーションを得たふたつの特徴も導入した。その特徴とは、最初のふたつのエレメントの内側に開けられた小さいスロットで(上図の黄色い部分)、マクラーレンが昨年のオースティンでMCL32に導入したものと非常によく似ている。これらは、マシンに対して特定かつ的を絞った渦流を生成する。

逆回転の渦どうしが近くにあると、渦の隙間から対向する空気を大きな力で引っ張るので、気流の速度を増加させる。気流の速度が大きくなればなるほど、ダウンフォースも大きくなる。また、ラジエーターに向かう気流の速度も上がるので、ラジエーターを小さくして、空力学的な混乱を減らすことができる。

またフェラーリはマクラーレンからインスピレーションを得て、ノーズ側面にスロットを配置した(右側のマクラーレンの円内図)が、これらはマシンが向きを変えようとしていても、アンダーフロアとバージボードに向かう気流を一定にする役目を持っている。

3. スロット入りウィング・ミラーを開発した

フェラーリSF71Hのサイドポッド(最初のテスト)
フェラーリSF71Hのサイドポッド(最初のテスト)
フェラーリSF71Hのスロット入りウィング・ミラー
フェラーリSF71Hのスロット入りウィング・ミラーのクローズアップ

SF71Hのきれいな空力学的ディテールは、オープンなスロットつきのウィング・ミラーである。このミラーを通る気流は、マシンの空気抵抗を減らすだけでなく、より効果的にハロー周囲とエンジン・エアボックスに空気を導く。

4. 改良ボディワーク・チャネルで優位に立った

2016年のフェラーリSF16-H
2016年以降、フェラーリは極端な「コークボトル」形状と気流チャネルを利用し、マシン後部とダウンフォース生成ディフューザーに向かう気流を改善している。しかし、2018年はこのチャネルは閉じられている

SF71Hのホイールベース延長は、前車軸を前寄りにしただけでなく、後車軸を後寄りにしているので、新たな課題は、長くなったサイドポッド表面を通る気流を活性化させ続けることである。気流が中央ディフューザーの外側表面に到達したときに、その速度を最大限にすることが重要である。なぜなら、ダウンフォースを生成する、すなわちリアのグリップを高めるのがこの領域だからだ。

フェラーリは、2016年マシン(上図)に、それを助けるためにサイドポッドに隣接する下部ボディワークに、5cm深さのチャネルをつくり、その後も使い続けている。平面図で見て、極端な「コークボトル」形状でサイドポッドを絞り込むことで、その一部を段差のある中央フロア・セクションの内側に入れることができた。そこは、(アンダーボディのダウンフォースを制限するために)規約によってフロアを5cm下げるよう規定されている。

フェラーリSF71Hのボディワーク・チャネル
ボディワーク・チャネルの位置(右)とそこを通過する気流(左)

今年は、この規約のおかげで、ギアボックスの片側で、閉鎖した外部ボディワーク・チャネル(上図の黄色い部分)を形成する可能性が生まれ、テストではライバル・チームの注目を集めた。

この開発は、ディフューザーの外側表面(アンダーフロアからディフューザーを通ってくる気流と相互作用する場所)の気流を加速するのに役立つ。これがなぜ重要なのかと言うと、アンダーフロアを通る気流を速くすれば、そこの気圧が低くなるので、マシンを地面に押しつけるのが難しくなるからである。ディフューザー上部を通過する気流を適切にするのは、ディフューザーを通過する気流速度を最大限にするための重要な部分である。

チャネルから出た気流は、ディフューザー失速の開始遅延に重要な役割を果たすだろう。なぜなら、低速ではマシン後部が上がり、ダウンフォースが低下するからである。ディフューザーが失速する速度が遅くなればなるほど、マシンはより大きな傾斜角(すなわちフロア角度)で走ることができ、速度範囲全体においてフロア下の陰圧、すなわちダウンフォースが増える。  

フェラーリSF71Hの後部から見た時のボディワーク・チャネルを通る気流
SF71Hの後部から見た時のボディワーク・チャネルを通る気流

2016年と2017年のフェラーリでは、そのチャネルはディフューザーの後ろ4分の3あたりからオープンだった。しかしSF71Hでは、フェラーリは気流がボディワークに沿って長く付着するように事実上の屋根をつけた。チャネルが継続的に存在していることは、上面から見た時のボディワークの開口部から明らかである。このチャネルがディフューザー本体に到達すると、トンネル状の出口が形成される。

チャネルを可能にするとてもタイトなコークボトル・セクションをつくるには、エンジンとラジエーターを含む付属部品を、きわめてタイトにパッケージングする必要がある。機械部品の信じられないほど高密度のパッケージングは、マシンのあらゆる領域を最大限にするためには、マシンのすべてのパーツを統合しなければならないかを示している。

フェラーリは、高傾斜角コンセプトが、メルセデスの低傾斜角アプローチよりもさらなる利得のポテンシャルがあり、延長したホイールべースの強化された空力学的ポテンシャルのおかげで、その利得へ近づくことができると期待している

SH71Hはメルセデス・キラーになるだろうか? マラネロの全員がそう願っている。

フェラーリSF71H 技術解説

-Source: The Official Formula 1 Website


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