フェラーリは鈴鹿でアップグレードを元に戻したのか?:F1技術解説
Were Ferrari held back by their own upgrades in Suzuka?
日本GPでのフェラーリの予選は、Q3を始めるときに他のチームのようにスリック・タイヤではなく、インターミディエイト・タイヤを選んだことが大きな話題になっていたが、これはフェラーリが土曜日に向けて実際どれほど競争力があったかをわかりにくくする効果があった。
金曜日の夜に最近のふたつの「アップグレード」を取り外したところ、両ドライバーとも、マシンは前日に比べかなりよくなったと報告した。このアップグレードとは、シンガポールで導入された新しいリア・ウィングと、ソチで導入された新しいフロント・ウィングと関連パーツによって、傾斜角を最大限活用できるように配置された新しいリア・サスペンションだった。
ベッテルとライコネンは鈴鹿の金曜日に使ったシンガポール仕様のリア・ウィングを外すことを選んだ。
セバスチャン・ベッテルもキミ・ライコネンも、金曜フリー走行中はマシンに全く満足していなかった。フェラーリの開発ドライバー、ダニール・クビアトは、マラネロのシミュレータで旧仕様と新仕様を連続比較し、旧仕様の方がよいと報告したとされる。日本の金曜夜に、新しいパーツはふたつとも取り外され、古い標準的なパーツに交換されたことは、チームの最近の開発プログラムが失敗していることを示唆している。
シンガポールで導入されたリア・ウィングは、エンドプレートのフラップの下側よりも低い位置に、マクラーレンに似た大きな側面スロットがあり、外側にあるフラップの上と下の間の気圧差を下げる、すなわちピーク・ダウンフォースを下げるような角度がついていた。
フェラーリSF71H:シンガポール仕様のウィング詳細。マクラーレンに似た通気孔(赤矢印)。
フェラーリはなぜダウンフォースを下げようとしたのだろうか? マシンがコーナーに入るときに、ダウンフォースのピークがやや下がっても、スムースでより漸進的なかたちでダウンフォースを最大化するという考えだったのだろう。これはマクラーレンがシーズンを通じて使っているエンドプレートのコンセプトであり、メルセデスが今年かなり早くから採用し、さらに開発し続けている。しかし、フェラーリがこれを使ったのは初めてで、ソチの週末から鈴鹿の金曜日まで使い続けた。3人のドライバーは全員、意図した通りに機能していないとフィードバックした。実際に予選とレースで使用されたのは、標準的なエンドプレートをつけたシルバーストン仕様のリア・ウィングだった。
フェラーリSF71H:ソチ使用のフロント・ウィング
しかし、ソチで導入されたフェラーリのフロント・ウィングとノーズ下のガイドベーンの広範囲のアップデートはマシンに残っていた。このウィング(上図)は、あまり攻撃的でない輪郭のメイン・プレート(1)、エンドプレートの外側の複雑で攻撃的なフットステップ・エリア、余分なアウトウォッシュ・フィンが特徴である。
ウィングの下端が、外端に向かって上向きに弧を描き、顕著な渦流誘導アーチを形成する(3)。このアーチによってフロント・ホイールとサイドポッドの間の空気が回転して生成する渦流は、より大きく、より強力になる。これらの回転する渦流は、より速く、ウィング上の気流を引き寄せ、タイヤを通過し、ボディの横を下り、ダウンフォースを増加させる。これらの周囲で発生する圧力も、ラジエーターとフロアに向かう気流によって、ボディの外側を下りる気流を分離するのを助ける。
レッドブルやメルセデスに似た新しいスロット入りガイドベーン(2)は、アンダーフロアに向かう気流を増やす。この変更の組み合わせは、理論的に傾斜角を大きくすることができるので、アンダーボディのダウンフォースが増加する。
傾斜角が大きくなると、フロント・ウィング自体は、より攻撃的に空気と向かい合う。おそらくその理由により、ウィングのメインの中心部分(フロント・ダウンフォースを直接生成する部分)が、以前よりも攻撃的ではない輪郭になっているので、失速する傾向が低下する。マシンが傾斜すればするほど、ウィングの中心部とエンドプレートの間のコントラストが大きくなる傾向がある。というのも、エンドプレートは主にタイヤ周囲、すなわち、余分のアウトウォッシュ・フィンとエンドプレート・フラップ(5および6)の空気をできるだけ速く加速させるのに利用される。そのため、傾斜角が大きくなると、エンドプレートの設計は攻撃的になり、メインの輪郭は攻撃的ではなくなる。
フェラーリはソチの最終セクターでメルセデスに対してラップタイムの60%を失った。
このフロント・ウィングとともに導入された新しいリア・サスペンションの詳細は不明であるが、新しい空力学によって実現可能になった大きな傾斜角により、高くする必要があるリアの車高を活用するために、わずかに異なるピックアップ・ポイントを必要とする可能性が高い。ソチでは、フェラーリがメルセデスに対してほとんどのタイムをロスしていたのは、セクター3だった。彼らは、セクター3でリア・タイヤの温度を管理下に置くことに苦労していた。ラップタイム差60%以上が、ターン16とターン18の間で発生しており、1周の終わりには、タイヤの温度が高くなりすぎていた。
前回フェラーリが同じように苦しんだのはバルセロナだった。そのときは、気流を改善するためにリア・サスペンションを交換すると、リア・タイヤの扱いに悪影響があった。最近導入されたリア・サスペンションが、ソチと鈴鹿の金曜日のタイヤ問題の原因ではないかと思われる。ベッテルとライコネンは、土曜日はマシンがかなりよくなったと報告したが、タイヤ選択のミスがその改善を隠してしまった。
これらは、機械的プログラムと空力学的プログラムが、いかに複雑に関連させなければならないか、そしてフェラーリのようにリソースを持つチームでさえ、いかに簡単に不意打ちを食らうかというよい例である。
フェラーリSF71H 技術解説
-Source: The Official Formula 1 Website
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