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2019年07月04日

オーストリアでの冷却要求がメルセデスの脅威を無力化した理由:F1技術解説

How cooling demands neutralised Mercedes’ threat in Austria

メルセデスの2台:2019年F1オーストリアGP

オーストリアでは、メルセデスが今シーズン初めて優勝を逃しただけでなく、優勝はレッドブルとフェラーリの間だけで争われた。

このレースでは両チームともマシンを改善したが、競争力の変動の主な理由ではないだろう。メルセデスが非常に不完全な状態で走らざるを得なかったのは、とても具体的なトラックの状況とコンディションが主な理由だった。それは、ほぼ完全に熱と標高の組み合わせに関係していた。

レッドブル・リンクはオーストリアのシュタイアーマルク州にあり、標高は660mである。この標高では、空気中の酸素含有量が低いため、いずれにしろ冷却力が低下する。しかし、週末中の気温が34〜36度の場合、全体的な影響はもちろん大きくなる。

比較的短いストレートが特徴のトラック・レイアウトと、冷却してくれる直線があまりないのに、いつものような加速を強いられるエンジンがそこに加われば、熱波の中のレッドブル・リンクがどんな難問になるかが明らかになる。

これはメルセデスにとって、機械的部品のボディワークへの収納方法のため、特に問題となった。一般論として、冷却部分はダウンフォースを犠牲にするので、エアロダイナミシストからは必要悪と見なされている。マシンを設計するとき、チームはカレンダーのあらゆるサーキットの包括的な冷却要求に基づいて計算を行う。

セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、ルイス・ハミルトン(メルセデス):2019年F1バーレーンGP
メルセデスは今年、バーレーンのように冷却が重要なトラックで苦戦している。

バーレーン、オーストリア、ハンガリー、メキシコは常に最も要求が高いので、チームはこれらの要求をマシンの標準的ボディワークにどのように組み込むか、そして冷却がそれほど重要ではない他のトラックでよりよい空力学にするために、これらのトラックで空力学をどれほど妥協するかを決めなければならない。これら4つのトラックでひどく弱くなるのを受け入れることで、17のトラックでマシンの空力学的効率を上げることができるのなら、試してみる価値は十分あるだろう。

当然、実際の計算はそれよりかなり複雑になり、シミュレーションでは、ふたつのアプローチそれぞれについて、各トラックでのパフォーマンスがどの程度影響を受けるかが正確に測定されるだろう。

また、先頭でクリーン・エアの中を走ることを想定しているチームは、レースの大半で確実に渋滞の中を走っているチームに比べると、冷却面でより多くの妥協をすることになるだろう。メルセデスW10の構造から、メルセデスはオーストリアほど冷却が厳しくない大半のトラックに対して特に空力学を積極的に最適化したように見える。つまり、これらの高温のトラックでは、これほど極端ではないマシンよりも、ボディワークの開口部を増やさなければならないだろう。

メルセデスはコックピット後ろのボディワークを開放した:2019年F1オーストリアGP
メルセデスはコックピット後ろのボディワークを開放した。
2019年06月29日
F1オーストリアGPフリー走行3回目
レッドブル、フェラーリ、メルセデスの新しい通気孔

オイルと水のラジエーターの冷却には、(サイドポッド先端に収納された)冷却空気用の吸入口と、各種の排気口が必要となる。排気口は主にマシンの後部、通常はエンジン・カバーの基部(底部)、トップ・サスペンションの下にある排気管の両側にある。ラジエーターの上のコックピット両側に追加の排気口を開けることもできる。排気口を大きくすればするほど、吸気口から引き込まれる空気が速くなり、冷却効果が高くなる。

しかし排気口を大きくすれば、空力学的に混乱が起きる。メルセデスは、通常のトラックでの空力学的パフォーマンスを最大限にするために、非常にタイトなマシン後部に機械的部品を詰め込んでいる。しかし、そのため彼らはオーストリアではフェラーリやレッドブルよりも多くの排気口を開けざるを得なかった。3台のマシンについて、リア・サスペンション・ラインの上にある追加の排気口面積を比較すると、それがかなりよくわかる。

追加の吸気口領域は、マシンの側面から後部タイヤの内側とディフューザー外壁の間の領域へと下降しているので、非常に敏感な領域内の気流を乱すことになる。さらに、排気される空気は高温で低密度なので、ダウンフォース誘導に役立つような圧力差を生じるほど有効ではない。

フェラーリSF90のフロント・ノーズ:フェラーリはオーストリアで、ノーズ側面下に水平スプリッタを追加し、ノーズ裏側にある一連のベーンを強化した
フェラーリSF90のフロント・ノーズ:フェラーリはオーストリアで、ノーズ側面下に水平スプリッタを追加し、ノーズ裏側にある一連のベーンを強化した。

しかし、冷却レベルを極端にしても、メルセデスのドライバーは、エンジンへの負荷を最低限にするために、他のドライバーよりも多くリフト・アンド・コーストをしなければならなかった。レース中の重要なポイントでいつもは戦略的に使用される高いエンジン・モードも使えなかった。

対照的に、フェルスタッペンは長時間、ホンダの最も攻撃的なエンジン・モードを使うことを許され、彼もフェラーリのドライバーも、コーナーに向かってリフト・アンド・コーストをする必要がなかった。したがって、これらのマシンはメルセデスよりもかなり攻撃的にレースをすることができたのだ。

レッドブル・ホンダRB15のフロント・ノーズ:レッドブルは地元レースに新しいノーズとフロント・ウィング・エンドプレートを持ち込んだ
レッドブル・ホンダRB15のフロント・ノーズ:レッドブルは地元レースに新しいノーズとフロント・ウィング・エンドプレートを持ち込んだ。

しかし、フェラーリもレッドブルも、空力学的に改良した開発部品を搭載していた。レッドブルは新しいノーズとフロント・ウィング・エンドプレートを持ち込んだ。フェラーリはノーズ側面下に水平スプリッタを搭載し、ノーズがシャシーと合流する場所の裏側にある一連のベーンを強化して、バージボードに向かう気流をさらに明確化した。だがこれは、選択された冷却レベルの違いにとっては、2次的な意味しかないだろう。メルセデスのライバルは、少なくともハンガリーとメキシコについては、期待を持って楽しみにすることができる。

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リフト・アンド・コーストを何度もやらざるを得ず、エンジンのオーバーヒートを防ぐためにすべてのエンジン・モードを使うことができなかった。だからまともなレースができなかったし、レースの大半で温度を管理しなくてはならなかった。そのため防御も攻撃もとても難しくなった。

メルセデスW10技術解説
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レッドブル・ホンダRB15技術解説

-Source: The Official Formula 1 Website



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