トップ | レース結果 | コメント | 技術解説 | チーム分析 | サーキット・ガイド | 動画 | コラム | インタビュー | データ | レース動画 | タイヤ | レース写真 | GP恋人写真 | マシン写真動画 | 特集 | ヘルメット | テスト
2020年12月04日

ロマン・グロージャンのクラッシュ、炎からの脱出、そしてバーレーンの奇跡:F1バーレーンGP ブランドルのコラム

F1 column - Martin Brundle: 2020 Bahrain GP

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP

マーティン・ブランドルは今回のコラムで、ロマン・グロージャンの恐ろしいクラッシュで起きたこと、彼の命を救った安全対策と勇敢な対応、そして学ぶべき教訓を振り返る。

映画「大脱走」でスティーブ・マックイーンがトライアンフTR6トロフィーで戦時中のフェンスを飛び越えようとして失敗した場面は、まさに象徴的で永遠のイメージになったが、日曜夜のバーレーンでは、間違いなくあらゆる意味で「大脱走」を上回った。

スティーブ・マックイーンの映画「大脱走」 - トライアンフTR6トロフィー

ロマン・グロージャンは、幸運の耐火性ソックスを履いていたに違いない。彼が、ハースF1マシンでスープ缶のように開けたガードレールを飛び越えたときに、片方のソックスがはっきりと見えた。

あの事故は、スタートが遅かったヴァルテリ・ボタスが中段に後退したとき、グロージャンより前にいた他のドライバーたちが必死に順位を上げようとして互いに接触したことがきっかけだった。

グロージャンは前方で脅威と機会を見て取り、本能的に、右端の空いたコースで彼らを抜こうとした。トラックを横切る劇的な動きだったが、不運にもダニール・クビアトのフロント・ホイールと接触した。

ハースは急角度で右に向かい、クビアトは無線でグロージャンを罵ったが、それもバックミラーで火柱を見るまでだった。

ロマン・グロージャン、クラッシュ火災:2020年F1バーレーンGP

F1マシンの最低重量は746kgであり、レース・スタート時には100kgの燃料が搭載されている。さらに、油圧流体やブレーキ材料などの消耗品の余裕も含まれている。したがって、850kgの物体が、時速137マイル(約220km)、40度の角度でガードレールにぶつかった。ガードレールそのものもは緊急車両や回収のためのサービス用通路をつくるために、トラックに対して角度がついていた。

トラックが建設されて以来16年間、レース使用のガードレールがそのままあったのだろう。しかし、この会場はあらゆる意味できちんと整備されている。三層の障壁であっても、何らかの破損なしに、この種の貫通エネルギーに抵抗できたとは思わない。

障壁はもう少し移動させておくべきだったかもしれないが、本質的な生存性が問題になるほど、ピーク衝撃荷重は非常に高かったはずである。

クラッシュしやすいエリアには、通常、強靭な材料のコンベアベルトでまとめられたタイヤ・バリアが設置されることが多い。あるいは、特殊なTecProまたはSaferバリアを複数の層にして、制御された方法で衝撃を大幅に緩和することもできる。だが、昨年のメキシコでのボタスや、2015年ソチでのカルロス・サインツのように、マシンはそれらのはるか奥に埋もれてしまうことがある。

しかし、こういった対策はすべて、コーナーやブレーキング・ゾーンの中や周囲に設置される傾向があり、グロージャンはストレートでクラッシュした。軟らかい障壁は、最初はマシンを引き込み、その後トラックに跳ね返すかもしれない。そしてこのサーキットの両側に6.6マイル(約10辧砲両稱匹鮑遒譴弌△修離灰好箸亘賃腓砲覆襪世蹐Α

燃え尽きたグロージャンのF1マシン
燃え尽きたグロージャンのF1マシン

トラックを横切る彼の軌跡、時間、重量、速度が重なって大きなクラッシュになったが、マシンの設計とトラック設備は、このようなエネルギーを吸収するために最善を尽くすのみで、100%安全にはならない。

数メートル以内に53Gの減速をして、ガードレールとその支柱の一部を通過したのに、彼がどうして意識を保っていたのか、理解できない。

マシンが真っ二つになり、燃料タンクとバッテリーが、高温のターボやその他の部品とともに爆発すれば、必然的に瞬時に火の玉になる。

ノーズ、シャシー、ハロー、ロールオーバー・フープが、マシンを止めるために膨大な負荷を受ける間、マシンはドライバーを保護した。フロント・ホイールの三重のテザー(ロープ)は、極細スパゲッティのようになったが、少なくとも他の部品とともに、巨大なエネルギーの一部を分散させるのに役立った。

ERSバッテリーパックは熱暴走を始め、沈静化するまでに時間がかかった。

燃え尽きたグロージャンのF1マシン
燃え尽きたグロージャンのF1マシン

ロマン・グロージャンが気を抜かなかったという事実が、間違いなく彼の命を救った。

破損した部品のために、彼は最初、ハンドルを外すのに苦労した。そしてレース後にドライバーがマシンから出てくる様子を見てわかるように、ヘルメットとHANSデバイスを装着したままヘッドレストを外し、無線とドリングのチューブに対応するのは、マシンが水平状態で、さらにパニックになっていない時でも、かなり難しいものだ。

ふたつ目の奇跡は、サバイバル・セル(コクピット)がほぼ無傷だったので、特に腕、脚、足に骨折がなく、グロージャンが抜け出せたことである。シャシーはガードレールから十分離れていたので、彼には抜け出す余裕があったが、彼が意識を失っていれば、炎の中、短時間で彼をマシンから引き出すのは不可能だっただろう。

その頃には、グリッド最後尾からスタートしたメディカル・カーが現場に到着していた。幸い、現場はレースが始まって3つめのターンで、それほど離れていなかったので、イアン・ロバーツ博士は車から飛び降りると、爆弾としか表現できないものに勇敢に向かって行った。

メディカル・カーのドライバーのアラン・ファン・デル・メルヴェは、機転を利かせて消火器をつかみ出した。この消火器はガードレールを飛び越えたばかりのグロージャンに効果的にかけた。

救出劇に重要な役割を果たしたのは、車列が去り、メディカル・カーが停止したあとトラックを横切ったセイヤー・アリ・タヘル伍長だった。彼は持参の消火器で、コックピット周囲に安全な空間を作り出したように見えた。

ガードレールの反対側にいたもうひとりのマーシャル、ジョン・マシュー軍曹も活躍した。ふたりともバーレーン民間防衛隊の隊員で、翌朝、タヘルは軍曹に、マシューは上級曹長に昇進した。

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP
メディカル・カーが到着してすぐドアが開いた、また、消火器を持って走っているタヘル伍長はコースの真ん中まで来ている。ガードレールの反対側ではマシュー軍曹がすでに消火を始めている。

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP
タヘル伍長が消火を始めると同時にロバーツ博士も横に、グロージャンがいるのを確認した。

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP
ロバーツ博士が、コクピットから抜け出そうとしているグロージャンを助けようと近づいたが、強烈な熱さで一歩下がる。

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP
ロバーツ博士、グロージャンがガードレールの上に乗るまで待っている。

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP
グロージャンがガードレールに足をかけたと同時にロバーツ博士が左腕を持って引っ張り、炎からの脱出を助けた。

ロマン・グロージャン、炎からの脱出:2020年F1バーレーンGP
ファン・デル・メルヴェ、生還したグロージャンにすぐに消火剤をかける。

メディカル・カーチームは、主に負傷したドライバーのためにレースに参加しているが、彼らは明らかに、救助活動にも関与する態勢も整えている。だが、オープンフェースのヘルメットでこのような現場に加わることは、通常予想されていないことを示している。ふたりとも、華々しく勇敢な仕事ぶりだった。

2020年に、三層のドライバー・オーバーオールの耐火性が改善された。暑苦しいと感じるドライバーもいたが、今では感謝しているだろう。グローブは、ハンドルにある無数のコントロール、クラッチ、ギアシフトのレベルを感じ取れる必要があるが、いずれさらに保護機能が高められるだろう。

同様に、どちらかというとスリッパに似た耐火性のレーシングブーツも、狭いペダル・エリアに収まり、ドライバーのために感触とフィードバックを与える必要がある。ドライバーは、ブーツがあまりに面倒になるのを嫌がるだろう。

繰り返すが、このようなコックピットを作り上げたFIAとチームにおめでとうと言いたい。今後数ヶ月以内に、今回の事故から結論と対策が生まれることは間違いない。

ガードレールを修理する間の長い休憩時間にドライバーを観察するのは興味深かった。当然、多くのドライバー、特にモーターレーシングの火災や、これほどひどいマシンの破損を見たことがない若手ドライバーは、ショックを受けていたようだった。成功を収め、財産や家族を持つ年上のドライバーたちは、現状を分析していたことだろう。

感心なことに、彼らは全員、マシンに戻ると全力を出した。ロマン・グロージャンは皮膚の火傷という代償を払ったし、精神的なダメージも負ったと思うが、ありがたいことに生き延びた。多くの気づきがあるだろう。

このような事故は、ドライバーたちが闘士であり、F1があらゆる点で印象的であることを全員に思い出させてくれる。

マーティン・ブランドルのF1コラム
F1バーレーンGP
part 1 | part 2
2020年11月30日
F1バーレーンGP決勝
2020年11月30日
グロージャン、炎からの脱出 - 動画:F1バーレーンGP
2020年12月02日
「クレイジー… あんな火災は見たことがない」メディカルカーチーム、グロージャンのクラッシュ現場について:F1バーレーンGP
2020年11月30日
ロマン・グロージャン「ハローは最高、あれがなければここにいなかっただろう」:F1バーレーンGP
2020年12月02日
ロマン・グロージャン「ニキ・ラウダのことを考えた、死ぬと思った」 F1バーレーンGPのクラッシュ火災で
2020年12月03日
ロマン・グロージャン、退院 - バーレーンでのクラッシュで3日間入院
2020年12月04日
グロージャン「命を救ってくれてありがとう」 - バーレーンGPの救助者と感動の再会 - 写真と動画




2日間アクセスランキング
    10日間アクセスランキング
      30日間アクセスランキング


         誤字脱字誤訳誤変換その他間違いご指摘お願いします
        名前:
         
         

        ↑このページのトップヘ