文化学院公認 マロニエ文化連合会 公式ブログ

文化学院で新たに発足した文化的芸術サークル「マロニエ文化連合会」の日々の活動記録。

きれいな風貌―西村伊作伝―

  
2,415円(定価)

文化学院の創立者である西村伊作の伝記が、新潮社から黒川創さん
著で発売されました。

幼年期に両親を濃尾地震で失い。
青年時代には大逆事件で叔父を失い、不敬罪で公判中に終戦の日を迎える――紀州生まれの文化学院創設者、西村伊作は、類まれなセンスと豊富な財力を理想の実現のために用いながら、「ああ言えば、こう言う」のつむじ曲がりな精神と、そのしなやかな思想を生涯貫いた。自由と芸術を愛した知られざる人物像を甦らせる第一級の評伝。


  「自由」の淋しさと、すがすがしさ                                   

                            中野 翠


 二十代の頃、お茶の水の出版社に勤めていたことがあった。
感じのいい喫茶店があちこちにあり、「喫茶店病」の私は表通り
ばかりではなく閑静な横道も楽しく探索していた。そんな中で
文化学院をみつけ、(行ったこともないのに)パリのリセのような
たたずまいの学校だなと見とれた。
 その後しばらくして、文化学院が自由の気風にあふれた、
実にユニークな学校であることを知った。西村伊作という人が、
政府からの援助も受けず誰からの寄付も受けず、独自の
教育課程の実現をめざして大正末期に作った学校で、その教師陣は
与謝野晶子・寛、山田耕筰、戸川秋骨、有島生馬……といった
そうそうたる顔ぶれ。当然、授業料は高くつき、おのずから生徒には
裕福な子弟が多かったという。私の知人のお母さんは、昭和の初めの
「モガ」を代表するような人だったが、やっぱり文化学院の出身者
なのだった。
 黒川創さんの『きれいな風貌』は、そんな文化学院を創設した
西村伊作についての評伝であり、一代記でもある。広い視界を
持ちながら、細部の彫りも深く、たぶん「決定版」と言って
いいような本になっている。
 タイトルの「きれいな風貌」とはズバリ、西村伊作のことなのだ。
伊作という名前はクリスチャンであった両親が旧約聖書中の「イサク」
の名にちなんで命名したという(ちなみに次弟はマルコにちなんで真子、
末弟はスティーブンにちなんで七分(しちぶん)である)。
名前だけではない、容貌も日本人離れした美しさで「異人さんのよう」
と言われたという。
 和歌山県の新宮で生まれ、ある事情から、その地方で名だたる
山林家だった母方の家督を七歳で引き継ぐ。絵を描き、写真にも凝り、
住宅設計家としても独自の世界を切り開いた。「虎皮みたいな毛皮の
オーバーコート」を着て、懐中にピストルを忍ばせ、日本にまだ
ほとんどないモーター・サイクルにまたがって東京まで
出かけた青年時代。見た目ばかりではなく、
やることもカッコイイのだった。
 何しろ資産家だからなあ、金持ちだからなあ、とばかり思って
いたのだが、今回『きれいな風貌』を読んで、我ながらそんな理解の
浅さに恥じ入った。いやー、そんな単純な自由人ではない、
一筋縄ではいかない、もっと微妙にして強靭なバランスを持った
自由人なのだった。
 今回、かなりのページ数がさかれているが、伊作が父とも兄とも
慕った叔父の大石誠之助は大逆事件で死刑にされてしまった人である。
伊作自身、戦時中は文化学院の教育方針を守るために半年も牢獄に
囚われた。両親からはキリスト教を仕込まれ、青年時代はアナーキスト
人脈にも触れ、戦時中はファシズムに苦しめられた。しかし、伊作は
どんな信仰にもイデオロギーにも心酔し切ることはなかった。
 黒川さんはこう書いている。「西村伊作は、『ああ言えば、こう言う』
のツムジ曲がりで、飽きずに一生を通した人である」。
「いわば、水に溶けきらない粒子のように、この日本という社会の
なかで、伊作は生きた。彼の場合、逆風のなかだけでなく、
たとえ順風が吹くときがあっても、
まわりの社会や集団のなかに、『自分』が解消して終わるということ
がない」。「彼は、どのような大義においても、
殉教を称えようとしない人だった」……。
 いそうでいない人ではないか? 
とりわけ最後の一言は私の胸にしみる。
あらゆる意味での「殉教」を拒まずにはいられない体質
というか生理というか。それは、もしかして淋しいことではないか。
多くの人は、大げさに「殉教」などと意識することなく何かを信じ、
「殉教」しているのだ。
 伊作は二十四歳で渡米した時、現地の人から、「お前は何者か、
クリスチャンか、ナショナリストか、ソシアリストか」と問われ、
I am only a freethinkerと答えたという。
「自由」の淋しさと、そしてすがすがしさを追い求めずにはいられ
なかった男の生涯。九人の子どもを持ちながらも、彼は最後の
最後まで、自分を徹底したFreethinkerと考えていたと思う。
同じ「ツムジ曲がり」でも、あやふやな私とはだいぶ違う、
とまぶしく思った。

               (なかの・みどり エッセイスト)






黒川創

クロカワ・ソウ


1961(昭和36)年、京都生れ。同志社大学文学部卒業。
2000年(平成12)~2001年『もどろき』が芥川賞および
三島由紀夫賞候補に、
2002年『イカロスの森』が芥川賞候補、2005年『明るい夜』が
三島賞候補、
のちに京都水無月大賞受賞。2009年『かもめの日』で読売文学賞
受賞。その他の小説作品に『若冲の目』『硫黄島 IWO JIMA』、
評論に『国境』『リアリティ・カーブ』など。鶴見俊輔・加藤典洋との
共著に『日米交換船』がある。



黒川さんは先日の文化学院創立記念日にゲストで迎えられ、
伊作の孫である立花利根先生との対談という形で西村伊作に
ついて講演していただきました。

夏の夜の夢

先日、明治大学のアカデミーコモンでシェイクスピアの
「夏の夜の夢」を鑑賞しました。毎年、文化プロジェクトと題して
シェイクスピアの作品を上演していて、なにからなにまで大学生によって作られていて、とても完成度が高く、プロなみの演技を披露している。

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クリスマスパーティーにて演奏

12月17日に行われるクリスマスパーティーでマロニエ交響楽団として演奏することになりました。

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