年末年始に読みたい5巻ぐらいで終わるマンガ Advent Calendar 2012

オーディナリー± (サンデーGXコミックス)
オーディナリー± (サンデーGXコミックス)


つい先日あふれる原作愛が感じられる見事な最終回を迎えたヨルムンガンドというアニメがあるんですが、こちらはその作者高橋慶太郎がヨルムンガンドよりも前に描いていた短編。

ヨルムンガンドと同じように血煙と硝煙でむせかえるようなマンガ。ただあちらが部隊単位でのスペシャリストの戦闘が主だたっが、こちらはたった一人の戦闘が主。

学校とそこに属する人間の間で芽吹く悪を、文部省が擁する非合法工作が武力で制圧する、というマンガらしい設定。主人公はそんな正体を伏せながら学生として学校に通う少女、的場伊万里で、彼女は特出した技能をもち、一度仕事になれば感傷も懊悩ももちあわせていないかのように圧倒的な戦闘能力を発揮しひとつの武力として任を果たすが、一方私生活では周りに溶け込めず真っ当な道をあることができない自分に嫌気がさしている。

みんな目が死んでるとかいわれちゃうぐらい生気ない登場人物がテーマとよくあっていて読んでいてゾクゾクする。

今連載している高橋慶太郎の最新作デストロ246では準主役級の位置で伊万里が再登場してる。ヨルムンガンドが成功するまで単行本化もされずずっと塩漬け状態だった作品だけにこれは嬉しい。

S60チルドレン 1 (イブニングKC)
S60チルドレン 1 (イブニングKC)

S60年、たびたび噴火する不気味で巨大な桜島が見える小学校に通う、大人たちが考えるよりも大人で、子どもたちが思っているよりも子どもな、小学生たちのはなし。

子どもたちが主人公で、キャラクターは2頭身で描かれているのに、雰囲気はどこか暗い部分が見え隠れして読んでいてドキドキしてしまう。(そしてそれは実際に主人公とその弟に振りかかるある事態として結実する)

主人公とそのクラスの友人の間にある微妙なパラーバランスとか、親しい友人に感じる距離感だとか、いちいちああこんな感じだったなぁと思い出してしまうほど、子どもの頃の視点が丁寧に描かれていて、理性ではわかっているのに恐怖だったり欲望だったりにあっさり負けてしまう特有のエピソードが心に刺さる。

作者はガンのために30歳の若さで逝去しているためこれがきちんとした連載デビュー作で絶筆。 この人の作品、もっともっと読んでいたかった。

青い車 (CUE COMICS)
青い車 (CUE COMICS)

今まで読んで一番面白かったマンガ、自分のオールタイム・ベストとして上げるときにいつも選んでいる一冊。あくまで「自分にとって」のインパクトの話なので全員がそうだとは思わないけど、中学の終わりか高校の頃だったかにこれを読んで、ぶん殴られたような衝撃を受けて、こんなマンガをもっとたくさん読みたい、いろんなマンガを読もうと思った決定的な一冊だった。

今まで自分が読んできてたどんなマンガとも違った、静かなどこにでもある風景があって、こういうマンガが存在していいのか、ということを強く感じたのを憶えている。現実とは明らかに断絶した世界にあったはずのものが、突如自分の地続き、すぐそばに存在しているように感じられるようになった瞬間だった。

表題の「青い車」は、生まれついての障害によって人生に対してどこか一拍おいたようなシニカルに見える態度をとる青年リチオと、交通事故でなくなったリチオの彼女の妹が、彼女の思い出とともになくなった彼女に花を手向けにゆく話。

よしもとよしともは遅筆で有名で、実際一つ一つのコマ、その中のキャラクターの視線にすら推敲に推敲を重ねて作っていると聞いたことがある。そんな風にして生み出された作品だからこそ、何度読んでも色褪せない、高い強度のマンガになっているんだろう。

この先もきっと何度も読み返すことになると思う、そんなマンガ。

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