4日目はちょっとふるい漫画。もう10年前なのか…

Marieの奏でる音楽 (上) (バーズコミックスデラックス)
Marieの奏でる音楽 (上) (バーズコミックスデラックス)
Marieの奏でる音楽 下    バーズコミックスデラックス
Marieの奏でる音楽 下  バーズコミックスデラックス


架空の世界、ピリトという土地を舞台に、石の声を聞こえる少年カイと、工房で働く活発な少女ピッピの世界の成り立ちと創造主をめぐる冒険のお話。

この世界は自分の食べるもの以上はとらず、必要な物は物々交換で手に入れる、単純な仕組みでなりっていて、人々は争いもなく皆が平和に暮らしている。それは主人公が暮らすピリトの地に限った話ではなく、この言語や習慣のことなる様々な地方が存在しながら争いがなく、世界には完全な調和が満たされている。

そんな完全なユートピアであるはずなのに、物語ははじめから違和感を含みながらすすむ
8年前、10歳のカイの身に起きた事故と手のひらに刻まれた痣。ピッピが自ら封じ込めている記憶。理論的には動作するはずで、パーツ単位では動いているにも関わらずある一定レベルより複雑になると動作しなくなる機械。地深くに眠っている旧世界の残滓。そしてその世界を見下ろすように上空を周遊している機械仕掛の女神「マリィ」。カイにだけ聞こえるマリィが奏でる音楽。平穏だった世界が徐々にその見え方が変えていき、やがて…

というようなシナリオでもーグイグイと引っ張られる。最後まで読んでああ!と思えるのは確実。そして読み終わったらもう一度読み直すことで、別の視点から物語が見えるようになるはずなので2週は確実に楽しめる。

古屋兎丸は初期は高い画力を基にした実験的な技法を使ったマンガが多くて、最近は残酷描写が際立っている印象だけど、この作品はそういうものを土台にしてきちんとまとまっていて、古屋兎丸作品の中では異質ながら傑作。