10日目はファンタジー。

竜の学校は山の上 九井諒子作品集
竜の学校は山の上 九井諒子作品集

勇者が魔王を討伐した後の世界で、それでも日々が続く世界の中に生きる人々と、もはや役割を終えて異物となってしまった勇者たちの話だったり、村の繁栄のために山の神様に村の若者を神様に嫁がせようとするも神々に断られしまう話だったり、"猿人"と呼ばれるふつうの人間と、半人半馬の"馬人"が共に暮らす現代の話だったり、古今東西のお伽話をまとめたような嗜好のある短篇集。

設定はどれも一捻りしてあるけど、出てくるキャラクターはどこか弱さを抱えた至極人間味のあって、ああこれは現実にはない設定をしながら、至極現実の話をしているんだと感じさせられる。不思議な設定と人の日常の悲喜劇の短編ということで星新一の短編もすこしだけ連想した。

一つ一つの短編それぞれいいものだけど、何度か読み返してみると個人的には「代紺山の嫁探し」で、自分たちに福を招かせようとして神様を利用しようと画策する、ステロタイプに悪役的な位置にあった村長が最後にたどりつくある念と、それに相対するような風景の美しさがぐっと心に残る。

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)
九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

最近出たこちらの短編もおもしろし。自分の中で新刊が出たら無条件で買う人のリストにがっちり入った短篇集でした