
アンダーカレント アフタヌーンKCDX
銭湯を営んでいる主人公。しばらく前に突如一緒に働いていた夫が失踪し、失意のままに休業していた銭湯の営業を再開するところからはじまる。町の人には気丈にも大丈夫だといっていつもどおりの生活をしようとするが、ふと一人になったときに冷たい想像のなかに沈んでしまう。
夫がいなくなり人手不足になった銭湯に、働き口を求めて口数の少ない男が訪れる。町の人の話では、どこで働いてもいいというわけではなく、この銭湯で働くことを望んでいた様子なのだが、そんな表情はおくびにも出さない。住み込みで働く事になったその男はどうやら悪い人間ではなさそうだがどこまでも真意が掴めない。
友人の提案で失踪した夫を探すために、だらしのない探偵山崎と知り合う主人公。山崎に、夫の何を知っているかと聞かれ答えに詰まってしまう。とりわけ仲が悪かったわけでもない、普通の日々を送っていたはずなのに、なぜ失踪したのか。そもそも夫とはどんな人間だったのか…
街並みなどのロングショットが印象的で、冷たい空気感だったり、巨大な世界の中のある一部分を切り取って見せているのを感じさせる。セリフはあくまで補助的で、そういったロングショットとか登場人物の視線の動きとか、行動とかで話が進むので、ダイアローグとかセリフを中心に見てしまうとわかりづらく感じるかもしれない。
豊田徹也のマンガで特徴的なところは、登場人物のマンガ的に誇張されたキャラクター性が抑えられているところで、登場人物はキャラクター性や、物語に与えられた役割を演じてるんではなくて、もっと不可解で不確実な人間性に基づいて行動している。そこがひどく現実的で生々しい。
淡々と進む物語の中で、ふっと笑わせてくれる探偵山崎や、近所にすむ胡散臭い爺さんサブ爺が、締めるところできちっと締めてくるのがいい。
たまにすごく読み返したくなるマンガのひとつ。
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