丸の内ビジネスマンの独り言

思ったことをつらつらと・・・

大阪高裁、CCCのMBO価格を引き上げる決定

CCCの株価、TOB価格を上回る決定
大阪地裁、ナカリセバ価格+MBOによる増加価値分配価格=649円と決定


・ 大阪地裁、カルチュア・コンビニエンス・クラブの株主が申し立てた株式取得価格を649円と決定。
・ 松田裁判長、「公正な価格」を.淵リセバ価格とMBOによる増加価値分配価格を合算して算定。
・ △料加価値分配価格、MBO実施で増大が期待される価値を買収者と反対株主で1対1で分配。

 本事案は、MBOの一環として行われたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCCという。)による全部取得条項付種類株式の取得に反対した申立人(個人株主)が、会社法172条1項に基づき、保有していた全部取得条項付種類株式100株の取得価格の決定を裁判所に求めていたもの。買収目的会社は、MBOの一環としてCCCの普通株式1株につき600円で公開買付けを実施。公開買付けの後、CCCは上場を廃止していた。
 大阪地裁第4民事部の松田亨裁判長は4月13日、本件対象株式の取得価格は、本件取得日における公正な価格であり、具体的には、)楫MBOが行われることがなければ有していたであろう価格(ナカリセバ価格)と∨楫MBOによって増大が期待される価値のうち反対株主が享受してしかるべき部分の価格(増加価値分配価格)とを合算して算定することになるとの判断を示した。
 松田裁判長は、,離淵リセバ価格は、本件取得日にできる限り近接したものとして、本件公開買付け公表前1か月間の市場価格の平均終値である469円とした。また△料加価値分配価格は、「MBO実施後の増大が期待される対象会社の企業価値を前提とした株式価値」からナカリセバ価格を差し引いた「MBOの実施によって増大が期待される価値」を1対1で買収者と反対株主に分配したうちの反対株主に分配される1株当たりの株式価値であるとした。
 そのうえで、「MBO実施後の増大が期待される対象会社の企業価値を前提とした株式価値」はDCF法による評価方法が合理的であるとして、中立的な立場であるとしたプルータスの算定結果を参照し、830円が相当であるとした。松田裁判長は、この830円からナカリセバ価格469円を差し引いた361円が「MBOの実施によって増大が期待される価値」であり、この361円を1対1で分配した180円が本件対象株式の増加価値分配価格になると指摘。
 本件対象株式の取得価格は、ナカリセバ価格469円と増加価値分配価格180円とを合算した649円となると結論付けた。
 なお、本決定は申立人・相手方の双方から抗告の申立てがなく既に確定している。

http://www.lotus21.co.jp/data/news/1208/news120824_02.html

お久しぶりです。

しばらくお休みしていますが、再開します。

この間、この国の政治は何も決められず。

マスコミは相変わらず、貶してばかり。

これでは物事よくなりません。

こんな状態なのに国民が黙っているのは、この国が豊かな証拠。

しかし、日本経済の将来性に鑑みると、豊かな日本はいつまで続くのでしょうか。

そろそろ日本国民は自国の政治について真剣に考えなければならないように思われるのは私だけでしょうか。

さて、CCCのMBOに対する株主の取得価格申立に関する裁判所の決定が公表され、波紋を呼んでいる。

なぜなら、MBOのプロセスを徹底したにもかかわらず、裁判所が価格の算定に介入してきたから。

それも、⊇蕕瓩討い錣罎襦崛加価値分配価格」を独自に算定したから。

,砲弔い董△海譴泙任虜枷塾磴蓮▲汽ぅ弌璽匹MBO等一部の例外を除いて、MBOのプロセスを徹底していれば、価格の算定に介入せず、当事者が決定した価格を尊重してきた。

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51691347.html

しかし本件では、TOB価格がCCCの株価算定者が算定したDCF法のレンジに入っていない特殊な事例であることから、たとえMBOプロセスが徹底されていたとしても、TOB価格は信用できない(いゆわる「ナカリセバ価格」と「増加価値分配価格」と合算した価格を下回っている可能性がある)とした。

その上で、「ナカリセバ価格」は、TOB公表前1ヵ月間の市場価格の平均値とし、「増加価値分配価格」(◆砲蓮◆MBOの実施によって増大が期待される価値を買収者と反対株主に分配したうちの反対株主に分配される1株当たりの株式価値」であり、「MBOの実施によって増大が期待される価値」は、「MBOの実施によって増大が期待される対象会社の企業価値を前提とした株式価値から、ナカリセバ価格を差し引いたもの」であり、「MBOの実施によって増大が期待される価値」の分配については、原則として、買収者と反対株主に対し、それぞれ1対1の割合により分配するのが相当とした。

具体的には、「ナカリセバ価格」は、469円。
「MBOの実施によって増大が期待される対象会社の企業価値を前提とした株式価値」は、最も中立的な立場にあるCCCの第三者委員会の株価算定者が算定したDCF法の中間値である830円。
「MBOの実施によって増大が期待される価値」は、830円−469円=361円。
「増加価値分配価格」は、361円÷2=180円。
したがって、いわゆる「公正な価格」は、469円+180円=649円。
TOB価格が600円だから、49円高く算定したことになる。

これまでの裁判例のように、「増加価値分配価格」は単に他事例のプレミアムを参照するというバカげたことをせず、DCF法を利用したことは評価できる。

しかし、なぜプロセスを徹底したにもかかわらず裁判所が価格の算定に介入するのか、「ナカリセバ価格」と「増加価値分配価格」と合算した価格なのか、「ナカリセバ価格」は市場価格で算定しているのに「増加価値分配価格」はDCF法を利用しているのか、説得力がある説明がなされているとは言い難い。

CCCは本決定に抗告していないことから、本決定は確定しているが、

http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65804188.html

少なくとも本決定の射程は、プロセスを徹底したとしても、TOB価格が対象会社の株価算定者が算定したDCF法のレンジに入っていない場合には、裁判所が事後的に価格の算定に介入してくること。

株主に補償する「公正な価格」は、裁判所が裁量で算定でき、TOB価格やスクイ−ズアウト価格に縛られる必要はないが、本決定によって、対象会社の株価算定者がDCF法のレンジを無理やり買収者が提示したTOB価格に入れるという行動にでないことを祈っている。

なお、対象会社のリーガルアドバイザーは、プロセス重視を掲げてきた西村あさひの太田弁護士のようであるが、

http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65804683.html

抗告もさせてもらえず、彼の心中を察すると心苦しい。

インテリジェンス株式買取価格決定申立事件抗告審決定(金融商事1354号14頁以下)


組織再編行為自体により当該当事会社の企業価値が毀損された等の場合、裁判所が算定する「公正な価格」は、当該組織再編の効力発生日を基準日として、当該組織再編がなければ当該株式が有していたであろう客観的価値であり、過去の裁判例は、当該組織再編の公表前の一定期間の終値の市場価格の平均値としていたが、

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51678191.html

それのみならず、当該公表後における市場全体・業界全体の動向その他を踏まえた修正をして、当該基準時の客観的価値を算定した初めての裁判例が公表された。

平成20年7月1日、インテリジェンスはUSENに株式交換されることを公表し、同年7月10日、同年9月30日を効力発生日として株式交換契約を締結し、同年8月28日、株主総会の決議をした。

しかし、株主はこれに反対し、買取請求をしたが、協議が調わなかったことから、裁判所に価格決定の申し立てを行っていた。

株主は、1株につき11万712円や7万7500円を主張、会社は1株につき4万3250円を主張していた。

東京地裁は、当該株式交換の公表前の1ヶ月間の終値による出来高加重平均値である1株につき8万7426円と決定した。

しかし、東京高裁は、インテリジェンスの株価は、平成20年当初から概ね下落し続けていること、マクロ経済の悪化等の市場の一般的価格変動要因による影響は当該公表後も引き続き継続し、これによる当該株価への影響をうかがわれることから、当該公表後における市場全体・業界全体の動向その他を踏まえた修正を加える等して、当該株式交換の効力発生日の客観的価値を算定する方が、当該公表後の一定期間の市場株価の平均値をもてって算定するよりも、合理性の程度が高いとした。

そして、当該「修正」は、マーケットモデルによる回帰分析を用いることが合理的手法であるとした。

したがって、当該回帰式を用いて株式交換の公表後の株価を補正し、この補正された株価による株式交換の効力発生日の前日からその1ヵ月間の平均値をもって算定した価格、1株当たり6万7791円とするのが相当であるとした。

株価に影響がなかった時点と基準日との間に市況変動の考慮をする見解は学説上では有力であったが、

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51691313.html

公刊物に登載された裁判例はなかった。

上場会社の株式にもかかわらず、開示時点と効力発生時点の間の市況の変動に係る差異を考慮せず、当該組織再編の公表前の一定期間の終値の市場価格の平均値として算定していたいたこれまでの裁判例は論外であったことから、ようやく妥当な判断がなされた。

今後もこのような判断がなされて欲しいが、このような判断がなされた背景には、会社側が統計に詳しい鑑定人を選んだから。

会社や株主が適切な主張をした場合とそうでない場合とで結果が変わらないようにして欲しいものだ。

葉玉=郡谷大輔「会社法見直しへの提言」MARR2010年12月号10頁以下


MARR2010年12月号で、会社法の立法に関与し、現在は弁護士をしている葉玉氏と郡谷氏が、会社法の改正について対談をしていた。

このブログで再三触れている株式買取請求権について、郡谷氏は以下のとおり述べている(18頁以下)。

・上場会社の買取請求権には、制度自体に欠陥がある。

・市場価格があり、これが変動している株式について買取請求権を行使すると、市場売買とは別の公正な価格で買い取ってもう権利、いわばプット・オプションのようなものだが、これをただで持ちながら、市場売買ができるという制度になっている。

・したがって、上場会社の株式を持っていて、買取請求のイベントが起きたときに、買取請求権を行使しないという判断は、理屈だけから考えるとありえない(経済合理性だけを考えれば、行使しておいて損はない)。

・しかも、裁判所に価格決定の請求をすると、6%の金利がつく。

・すなわち、だらだらと主張を続けているだけで、今、世の中にあるほとんどの金融商品よりも高い金利で運用できる制度になっている。

・それから、TOBが始まった後、株価が下がったところで株付けするケースもある。

・すなわち、安心してサヤが抜ける。

・さらに、買取請求は自己株取得にかけられているすべての規制が適用除外になっている。

・すなわち、株式を買い集めた大株主のエグジット方法として買取請求権を使うという例も出ている。

・買取請求の現実の使われ方、立法事実をよく調べていただいた上で、手当てしなければならないことは何かを検討して欲しい。

また、葉玉氏は、以下のとおり述べている。

・簡易組織再編の場合も、買取請求権を認めている点を見直すかどうかポイントになる。

・上場会社の場合、簡易合併や簡易株式交換で、買収側の株主総会決議を経ないで行う再編が一般的だが、この場合、組織再編の効力発生日の前日までに株式を取得した株主は誰でも株式の買取請求ができることから、公表後の株価の変動と予想される買取価格とのサヤ抜きをやるため、発表した上場会社の株を取得するケースが実際に起こっている。

・そこで、最近では、株式買取請求権の基準日を設けて、その基準日後の取得者には買取請求を認めないという対応も出ているが、一般的ではない。

・差止請求については、弊害がないかを考えなければならない。

・わずかな株しか持っていない株主が組織再編という大きな会社の経営判断について、事前に仮処分で差し止めを求めるというのは、やはり社会的に見てあまりに弊害が大きすぎる。

・少数株主が不満であるならば、価格の問題で解決しましょうとうのが今の法制度であることから、それを組織再編という大枠の効力に結びつけるのは問題。

いずれも大手法律事務所に所属していることから、会社サイドの立場での見解であるものの、買取請求権制度の弊害を端的に指摘しているものと思われる。

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東京高裁、サイバードHDのMBO価格を引き上げる決定(商事1915号59頁)

株式価格決定申立事件で唯一会社の主張が認められていたサイバードHDのMBOであるが、高裁が地裁の決定を覆した。

原決定は、会社が第三者委員会を設置し、公正なプロセスを経ていたことから、株主の主張を退け、会社が主張していた1株当たりの6万円としていた。

しかし、(商事法務のニュースによると)高裁は、たとえ会社が第三者委員会を設置していたとしても、第三者委員会が選任したFAや弁護士がいずれも会社が選任したアドバイザーであり、たとえ会社が情報開示を周致したとしても、MBOはその構造上強圧性が全くないと評価することはできないとのこと。

その上で、日経新聞の記事を参照しつつ、平成19年におけるTOBのプレミアムの平均値は20%台の半ばであり、平成20年はこれが大幅に拡大しており、中でもMBOのプレミアムが高くなっていることから、プレミアムは少なくとも20%を下ることはないとのこと。

結果、会社の主張は認められず、当初の客観的価値に20%プレミアムを上乗せした6万1360円としたとのこと。

社外役員の議論と同様、第三者委員会を設置すれば、公正なプロセスと認定するのではなく、第三者委員会が独立性を有しているか否か判断したのは理解できる。

しかし、これも社外役員の議論と同様、日本は米国と違い、第三者委員会のマーケットはなく、成り手が少ない。

そのようなマーケットを創出することなく、米国のルールをもってきたとしても、結局誰も使えない。

今後は、第三者委員会を設置する案件はなくなるだろう。

また、会社が情報開示を周致したとしても、MBOはその構造上強圧性が全くないといってしまったら、元も子もない。

裁判所は、プロセスが公正でなければ価格に介入してくるが、この理由を見る限り、価格に介入したいからプロセスにケチをつけているように思われる。

その上で算定したプレミアムは、論外である。

サイバードHDのTOBは、平成19年11月1日に公表されているが、なぜ平成20年のプレミアムを参考にしているのか?

マネジメントはTOB価格を決定する際、将来のマーケットも予測しなければならないのか??

全く意味不明である。

これが裁判所のネガティブ・チェックであれば、

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51659412.html

しないほうがましである。

高裁といえば、東京地裁の8部と違い専門性はなく、また、出世が閉ざされた高齢の裁判官が多いことから、感情的な判断がなされることが多く、「高裁リスク」といわれているが、それにしても酷い。

もっとも、サイバードHDのTOB前の株価の推移を見ると、低位で推移していることから、もう少し高い価格でTOBをすべきであったことは明らかである。

だからといって裁判所がこんな理由をいってしまうと、TOB前の他社事例のプレミアムを見てTOB価格を決定しておけばよくなり、株式価値の算定は意味をなさなくなる。

サイバードが負けたのはやむを得ない。

しかし、悪しき「理由」を今後に残さないため、サイバードは最高裁に上訴して欲しいものである。

もっとも、1360円しか引き上げられていないことから、どれほどメリットがあるか分からないが・・・。

それにしても、裁判所は今後も、神田教授らが提唱する理論とは程遠い運用を続けるのだろうか。

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51691329.html

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神田秀樹「株式買取請求権制度の構造」商事1879号(2009年)4頁以下


東大の神田教授は、株式買取請求権に損害の填補という機能があることを以前から指摘していたが、この論稿によって改めてそれを指摘している。

株式買取請求権は、以下の機能があるという。

①部分解散による株主の退出の機会を保障する機能

②資本多数決に基づいて忠実義務違反の組織再編行為がなさえたことによって反対株主が被った損害の填補を一定の範囲で認める機能

そして、「①は常に認められ、②は損害が認定できれば認められる」という。

その上で、上場株式の買取価格ついて、「①の場合は、原則として算定基準時である行使時の株価を基礎とするとしているが、②の場合は、組織再編の決議と相当因果関係のある損害の額を算定しなければならない」という。

具体的な算定方法は、たとえば以下のとおりという。

①決議直前の時点での企業価値を算定し、それと決議後における企業価値との差額を算定する
(決議直前時点の企業価値を算定するため、当該決議よりも前の時点であって当該決議の影響を受けていないと考えられる特定の時点(当該組織再編計画公表時点)における株価を使用する場合、当該組織再編計画公表後における株価の変動の影響を調整する)

②公表前後の株価の下落をもって損害の額と一応推定した上で、公表以外の事由による株価の変動を除外する

③当該決議時以降の株価の下落をもって損害の額を算定する場合は、当該決議以外の事由が株価の下落に与えた影響を除外するような調整をする

理論的にはたしかにそうだろう。

しかし、近時の裁判例を見ると、裁判所は、一定期間の終値の平均値をとる方式を採用しており、それ以上の踏み込んだ算定はしてない。

理論と運用は相当に乖離しているのが現状である。

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江頭憲治郎「上場会社における株式買取請求権の『公正な価格』」金融・商事1353号(2010年)2頁以下

テクモ事件について、今度は早大の江頭教授が判批。

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51678191.html

上場会社について、大多数の裁判例は、市場価格を基礎として買取価格を算定いているが、江頭教授は、

「それを前提にすると、すなわち、市場価格に基づかない、独自の株価観に基づく買取価格を主張しても裁判所は認めないとすると、株主は以下のいずれかの理由でその権利を主張するほかない」とする。

①組織再編行為自体により当該当事会社の企業価値が毀損された(いわゆる「マイナスシナジー」が発生した、すなわち、当該組織再編行為をしたこと自体が誤りであった)

②企業価値を毀損しない組織再編行為ではあるが、その条件(株式移転比率)が当該株主側に不利であり、株主がもとの株式価値を償う対価を得ていない(判旨のいう「株式価値の毀損」)

③組織再編行為から生じるシナジーの分配が適正でない点において当該株主に不利である

そのうえで、

「①の理由に基づくときは、当該組織再編がなければ、当該株式が有していたであろう市場株価が買取価格であるが、②③の理由に基づくときは、組織再編行為の存在は前提とし、適正な条件でそれが行われた場合に当該株主が取得したはずの対価相当額が買取価格となる(シナジー含みの両社の株主価値の和を再配分する形で算定するはず」

「もっとも、株主は①か②③か明らかにしなければならないわけではないから、裁判所はそのいずれか高い価格を買取価格とせざるを得ない」

東京地裁の決定は、①②③のいずれの場合であっても、当該株式が有していたであろう市場株価とすべきと述べているが、これは「誤り」と指摘している。

また、太田氏と同様、本件株式移転の公表時にテクモの株価がストップ安に暴落したこと等から、本件株式移転がテクモの企業価値を毀損するものであったと推認するのは「早計」と指摘している。

なぜなら「組織再編行為の当事会社にとって、当該組織再編行為が同社の経営に及ぼす影響の疎明は容易でも、株価の動きの原因の疎明は容易とは限らない」から。

さらに、当該株式が有していたであろう市場株価も、本件株式移転の公表前1ヵ月の終値の出来高加重平均値としているが、「株式移転の影響を排除できるとされた時期と基準日との間に、本件のような相当な間隔がある場合、基準日までの間に当該株式の市場価格と相関関係が認められる指標(たとえば、日経平均やTOPIXのみならず、GDPや失業率等の相関関係が立証できるもの)が変動していれば、その変動を反映させ、調整するのが理論的」と指摘している。

これは吉村氏も指摘しているとおり、マーケットモデルを用いれば算定可能である。

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51670658.html

以上のとおり、江頭教授も東京地裁の決定は「いくつかの疑問点がある」とのこと。

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太田洋「テクモ株式買取価格決定申立事件東京地裁決定の検討〔下〕」商事1908号(2010年)47頁以下


テクモ株式買取価格決定申立事件。

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51671021.html

西村あさひ太田洋弁護士が、商事法務に「判批」を掲載。

〔上〕商事1906号53頁以下においては、近時の裁判例、たとえば、あおなみ建設事件、三共生興事件、日興コーディアルグループ事件、ノジマ事件、TBS事件、協和発酵キリン事件、インテリジェンス事件、学研ホールディングス事件が整理されているが(60頁)、本稿では本決定の批判がなされている。

本決定においては、テクモ株式が、テクモとコーエーの共同株式移転による経営統合発表(2008年11月18日)後に下落していることをもって、本件株式移転によってテクモの企業価値の毀損があったと判断している。

しかし、太田弁護士が指摘するとおり、「上場会社同士の経営統合事案において、統合比率等の条件が公表された場合、相対的に株式時価総額が小さい会社(本件のテクモもそうであった)の株価が、統合の相手方会社の株価に統合比率を乗じて計算される理論株価「さや寄せ」される現象はしばしばみられる現象であり、当該理論株価が統合条件公表前の株価よりも大幅に低ければ、株式時価総額が相対的に小さい会社の株価は、表面的には「急落」する」ことは、よくある(48頁)。

また、本決定においては、最近の東京地裁民事第8部の決定を踏襲し、1か月間の市場株価の終値を各取引日の出来高で加重平均して得られた価格(終値出来高加重平均価格)を用いるべきであると判断している。

しかし、太田弁護士が引用する弥永教授の論文(ジュリ1399号113頁)で指摘するとおり、「株式市場における偶発的な要素の除去という目的を実現するために出来高加重平均という考え方を採用するのであれば、終値出来高加重平均価格ではなく、証券取引所で成立した売買価格を当該成立した売買価格ごとの出来高で加重平均した数値(売買高加重平均価格:VWAP)を用いるのが、より首尾一貫しているし、終値が偶発的事情によって左右されやすいという問題を解消することもできる」(52頁)。

このような裁判所の判断を鑑みると、今の裁判所に上場株式の客観的価値を判断する能力はないと言われてもおかしくない。

株式買取価格決定申立事件は、非訟事件であることから、裁判所の職権により価格を決定する。

したがって、当該裁判所に上場株式の客観的価値を判断する能力がなければ、専門家の意見を積極的に聞けばいい。

しかしそれはせずに、当事者の主張のみから判断しているいわゆる「当事者主義的な運用」をしているのが現実である。

当該事件は、争訟性が強いことから、当事者主義的な運用にせざるを得ないかもしれない。

もっとも、近時の裁判例を鑑みると、その当事者も上場株式の客観的価値を判断する能力があるとは到底思えない。

それは自業自得といわれればそのとおりであるが、それではいつまで経ってもおかしな判断がなされ、ひいてはおかしな判断に実務が左右されてしまう。

現に、M&Aのセミナー等では、「効力発生日前1か月間の終値出来高加重平均価格を見ておけば、怖くない」と乱暴なことをいう弁護士もいる。

裁判所のみならず、当事者の法務アドバイザーである弁護士も含め、法曹関係者が上場株式の客観的価値を判断する能力を高めないと、実務は混乱するばかりである。

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オリコン事件の結末とSLAPP禁止の規制

以前、お伝えしたオリコン事件だが、

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51351247.html

TBSの「報道の魂」でその結果が触れられていた。

結局、オリコンは請求を取り下げ、烏賀陽氏が勝訴したようだ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%BB%E7%83%8F%E8%B3%80%E9%99%BD%E8%A3%81%E5%88%A4

烏賀陽氏は勝訴したものの、訴訟費用は自己負担、訴訟期間中は仕事が激減。

事実上は負けたともいえるだろう。

そんな烏賀陽氏。

SLAPPが起こらないよう、活動をしているという。

「訴える権利はある」

「しかし、訴える権利を悪用する権利はない」

「これは、弱い者が強い者を訴えるときは問題にはならないが、強い者が弱い者を訴えるときに問題となる」

新銀行東京から元行員に対するSLAPPと同様、いつSLAPPが起こってもおかしくない現状。

SLAPP禁止の規制がさらに議論されることを望みたい。

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森田果「会社訴訟における統計的手法の利用」商事1910号(2010年)4頁以下

会社法学の実証研究が止まらない。

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51670658.html

今度は、東北大の森田果教授が、テクモ株式買取請求事件を題材に、株主による株式買取請求が妥当か否か、統計的手法も用いて実証している。

テクモ株式買取請求事件とは、スクエアエニックスからTOBを開始されたテクモが、これに反対し、コーエーと共同株式移転による経営統合を実行した際、株主であるエフィッシモから株式買取請求をされた事件。

エフィッシモは、テクモに対し、スクエ二がテクモ実行したTOB価格(1株920円)での買取も求めたが、テクモは株式移転に伴う上場廃止前1カ月間の終値平均値(1株620円)での買取を主張。

協議が整わず訴訟となった。

森田教授は、テクモ側で意見書を書いたらしく、それがベースとなっている。

東京地裁は、テクモ株式が、テクモとコーエーの共同株式移転による経営統合発表(2008年11月18日)後に下落していることをもって、本件株式移転によってテクモの企業価値の毀損があったと判断している。

この判断自体、株式市場を全く理解していない「おかしな」判断だが、なぜ「おかしな」判断かは、実証研究をするとよく分かる。

東京地裁が、テクモとコーエーの共同株式移転による経営統合発表(2008年11月18日)後のテクモ株価の下落をもってテクモの企業価値の毀損があったと判断したのは、その直前約半年間のテクモ株価の上昇を通常の株価変動の範囲内と判断したことによるが、そもそもエフィッシモは、テクモとコーエーとの経営統合交渉開始発表(2008年9月4日)後、テクモ株を買い増しており、これがテクモとコーエーの共同株式移転による経営統合発表(2008年11月18日)直前約半年間のテクモ株価の上昇に影響している可能性があり、また、テクモとコーエーの共同株式移転による経営統合発表(2008年11月18日)後のテクモ株価の下落に影響を及ぼしている可能性がある。

この点、エフィッシモがテクモ株式を買い増しを開始した2008年10月28日以降のテクモ株価の変動が、果たして「異常な急騰」かポイントとなる(13頁)。

これをマーケットモデルを使って分析している。

その結果、2008年10月29日から11月18日のテクモ株価は、非常に稀に起こり得ないような「異常な急騰」を見せている(14頁)。

したがって、「この期間にテクモ株価に影響を与えるような事情と考えられるのが、エフィッシモによるテクモ株式の大量の買集めしか見当たらないのであれば、反対の反証がエフィッシモ側からなされない限り、この「異常な急騰」は、エフィッシモによるテクモ株式の買集めによったものと推認するのが妥当」であり、「この「異常な急騰」を考慮に入れず、株式移転比率を決定したことは責められるべきではないし、その結果、株式移転比率の公表直後に、株価の比率と移転自比率の乖離に基づく、テクモ株価のさや寄せによる株価の下落が生じたことは、テクモの企業価値の毀損を示すものではないことになる」とのこと(14頁)。

なお、訴訟でのやり取りで、エフィッシモの代理人が、イベントスタディにおいて、「イベントウィンドウを推定ウィンドウの中に含めてしまう」統計解析のミスを犯していることも指摘されている等、イベント・スタディの基礎的な知識も書かれている。

会社訴訟を統計的に分析したい方は、是非一読いただきたい。

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吉村一男「MBOと少数株主利益−MBOにおける少数株主は十分に補償されているか」企業会計62巻10号(2010年)83頁以下

井上光太郎教授の「TOBと少数株主利益」をはじめ、昨年の私法学会で会社法制の実証研究が取り上げられて以降、

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51522711.html

会社法の学者が研究に実証分析を採用するケースが多い。

そのような中、MBOについて面白い実証研究があった。

吉村一男氏の「MBOと少数株主利益」企業会計62巻10号(2010年)83頁以下。

MBOといえば、マネジメントがTOBによって自らの会社の株式を買い取る取引であることから、TOB価格が不当に低く設定され、MBOによって株式を売却する少数株主は十分に補償されていない「可能性」があると言われている。

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51659412.html

しかし、その「可能性」が正しいか否かは必ずしも実証されていない。

この論文は、いわゆるプレミアムのみならず、TOB前における対象会社の株価の値上がり率から株価指数である東証株価指数(TOPIX)の値上がり率を差し引いた超過収益率(Market Adjusted Return、MAR)、プレミアムとMARを合算したMAR Adjusted Premium(MAP)を用いることによって、MBOによって株式を売却する少数株主が十分に補償されているか否かを判断している(84頁)。

従前の論文や裁判所は、結果であるプレミアムばかりを論じていたが、これにTOB前の株価パフォーマンス指標であるMARや、プレミアムとMARを合算した指標であるMAPも考慮している点が興味深い。

仮説は多岐にわたることからすべて紹介できないが、面白かったのは、少数株主からTOB価格を巡る訴訟が提起された3件(レックス・ホールディングス 、サンスター 、サイバード・ホールディングス )のMBO(係争MBO)におけるTOBは、それ以外のMBOにおけるTOBと比べ、プレミアム、MAR、それらを合算したMAPが低いかを分析した結果(86頁、87頁)。

プレミアムやMARが非常に低いのは感覚的に予想できたが、プレミアムとMARを合算したMAPを見ると、レックス・ホールディングスのMBOが一番低く、その次がサイバード・ホールディングスのMBO、4番目に低いのがサンスターのMBOであり、係争MBOが下位を独占している(87頁)。

すなわち、「係争MBOは、プレミアムは付加したものの、それによって十分に補償されていないことから、それに不満にを感じた少数株主が訴訟を提起した可能性があることを示唆している」(87頁)。

このようなデータを鑑みると、係争MBOの少数株主が怒るのも無理はないことが分かる。

その他、ファンドが関与したMBO、株価算定書が開示されていないMBO(非開示MBO)、経産省のMBO指針で指摘されている、利益相反の程度が高いと言われているマネジメントの株式保有比率が高い企業のMBO等が分析されている。

その結果、「MBOにおけるTOBは、株価が相対的に低い時に実行されているものの、係争MBO、非開示MBO、利益相反の程度が高いMBOを除き、それを補うほどのプレミアムが支払われており、結果として、MBOにおける少数株主は十分に補償されている可能性がある」とのこと(90頁)。

このような結果を鑑みると、一部の経済紙がいかにいい加減なことを書いているか、すなわち、3件しかない係争MBOを取り上げて「MBOは悪」とレッテルを貼っているかが分かる。

また、詳細な記載は省略されているが、上記井上論文で触れられていた「強圧性」についても分析されており、「MBOは強圧性を受けている可能性が低い」とのこと(90頁)。

日本のMBOを対象とした実証研究は決多くないことから、興味がある方は一読を。

なお、上記伊藤論文は、たとえ取締役がMBOのプロセスを公正に行ったとしても、裁判所は価格に口を出すべきと述べているが、

http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51659412.html

吉村氏は、「客観的価値については、少なくともマーケット・モデルを用いて算定する等、経済学に基づく分析結果を裁判過程で積極的に採用し、会社と株主の双方に目配りしたバランスのとれた運用にする必要がある」と述べている(91頁)。

日本の裁判所に「客観的価値」や「プレミアム」を算定する能力があるかは疑問であるが、客観的価値は算定可能であることから、一理あるかもしれない。

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