2011年04月29日

シリカ、シリコン、シリコーンの違い ~その2;本章~

早い話、wikiなんかで調べてもらえれば分かるのですが、wikiの説明は細かくてよく分からないという人向けに大雑把に説明してみようと思います。

1.共通点
 シリカ(silica)、シリコン(silicon)、シリコーン(silicone)は、いずれもケイ素(Si)を有しています。
 なお、ケイ素は、炭素のように4本の腕を持っており、他のケイ素と結合できるし、酸素や炭素などの原子とも結合することができるので、多様性のある化合物を形成し、ややこしくなる原因となっています。

2.相違点
 ・シリカ
 ケイ素と酸素の結合を含む一般的に固形状の化合物の総称。ケイ素の4本の腕に酸素が結合し(シロキサン結合)、その酸素に別のケイ素がというようにケイ素と酸素とのシロキサン結合が三次元的に広がっている基本構造を有しています。身近なところでは、ガラス、砂、乾燥剤として使用されるシリカゲルなど硬い化合物をイメージすると分かりやすいです。食品添加物としても認められていて、商品の原材料欄に二酸化ケイ素って記載されているのは、このシリカのことです。

 ・シリコン
 ケイ素の4本の腕が他のケイ素と結合したケイ素原子で構成される黒色の固形状の化合物の総称。身近なところでは、パソコンのCPUなどに使用されていますが、現物を見たことがある人はあんまりいないです。純度99.9999・・・%など高純度にしたものは、半導体として使用され、特に半導体シリコンなどと呼ばれています。シリコンは、割れる、欠けるなど非常に脆い物性を示す固形物で、私もよく割りました。
 一般的に「シリコン」というと、経験上このケイ素原子から構成される化合物を指すことが多い気がします。
 ちなみに、たかが無機物をあんなに純度を上げられるのか?と思う人は、化学工学の蒸留について調べてみると出てくると思います。

・シリコーン
 ケイ素と酸素の結合を含む一般的に液状、ゴム状の物質の総称。シリカの親戚みたいなもので、ケイ素の4本の腕のうち2本に酸素が結合し、その酸素にケイ素が結合し、そのシロキサン結合が鎖状にずらぁっと伸びている基本構造を有しています。そして、ケイ素の残りの2本の腕は炭素と結合して途切れていたり、別の鎖の酸素などと結合し架橋していたりするため、液状やらゴム状やら樹脂やらという物性を示します。
 つまり、このようにシリコーンは基本的に鎖状の化合物なのですが、鎖の長さや架橋の多さなどで、液状、ゴム、樹脂といった異なる形態をとることができるわけです。
 ですから、単にシリコーンといっても、種々の形態があるので、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂などと区別されたりするわけです。また、シリコーンは、シリコンと呼ばれることが化学系では多く、上記半導体などに使用されるシリコンと混同されがちです。(日本の化学系の人は、大抵シリコン樹脂、シリコンゴム、シリコンオイルなどと呼び、さらにそれが一般化しつつあるため(すでに一般化している?)、あまり馴染みのない人からすると「???」となってしまうわけです。)
 最初にシリコーン(silicone)を命名した人が先の発展を深く考えず安易に付けたため(?)、このような混乱が現在も続いているわけです。
 参考:シリコーンのトップメーカーである東レ・ダウコーニング株式会社のHP「シリコーンの基礎知識」
http://www.dowcorning.co.jp/ja_JP/content/japan/japanproducts/products_lecture_lecture_toph.asp

3.まとめ
 分かる人には分かってもらえたであろうと思いますが、分からない人にどこまで伝わったか少々疑問ですw
3者は、似て非なるものですので、特許の明細書を読み書きするときや翻訳するときなどにはご注意ください。化学系の明細書では、シリコーン(silicone)のことを平気でシリコンと書いていることが多いと思いますので。
 以上のように、ずらずら書いてしまいましたが、文字で読むより化学的な構造式を見たり、現物を触って体感する方が分かりやすいです。



maruchan_73 at 12:51コメント(2)トラックバック(0)業務日記  

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コメント一覧

1. Posted by なおすずかけ   2011年05月12日 00:20
「シリコンは、割れる、欠けるなど非常に脆い物性を示す固形物で、私もよく割りました。」というくだりを見て、「あぁそうなのか!」と思いました。
 私は大学院までGaAs系化合物半導体を扱っていたので、就職してSiを最初に劈開したときに、「あれ、結構力いるな」と思ったものでした。
 そういえばかつての共同研究者は逆で、Siの検査ばかりやっていたときに、偶々GaAsを扱ったそうですが、その人はそのGaAs試料を割ってしまったそうです。曰く「Siに比べてずいぶん簡単に割れますね」と(カーボンテープで試料台に留められていた試料をはがすときに割ってしまったそうです)。
 こういう分野による常識の違いというのは特許事務所に入ってから色々知った気がします。
2. Posted by さいこきねしす   2011年05月17日 10:36
なるほど。それまで扱ってきた材料によって感覚が異なるってことですね。
今回はSi系材料間での概略的な比較なので、そのような表現になっています。
私は、感光性樹脂の硬化性等の評価のときに、シリコン半導体を使用していましたが、硬化後のレジストを剥がすときに力が入ってしまい両端が欠けてしまうということがしばしばありました...
GaAs系化合物半導体はさらに脆いものなのですね。扱ったことがないので、勉強になります。

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