恋ふ森野郎の研究日誌

こうもり博物館とその周辺で起きる活動報告です。

台風一過

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風の強い台風で、かなり木が倒れたり枝が落ちたりしましたが、森にすむコウモリはどうやり過ごしたのか、見に行ってみました。
やはりこんな悪天候の時には、安定した構造物に逃げ込むのが良い手段のようで、ふだん洞穴に入ってこない個体も、穴の奥で休んでいたりしました。
天候で行動が変わることも、ままありがちなのです。
それにしても急に気温が下がって、いきなり初冬のようですが、まだまだコウモリたちは活動しています。

部分白化個体

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やはり変異個体を見るなら若狭ということで調べてみると、白化の出現割合は中部地方の中では飛びぬけて高く、近畿の中でよく出現する調査地と比べても高い割合を示していました。
致死的な突然変異なら生まれてきてすらいないでしょうから、生存に問題は生じていないのでしょう。
これが多発しているのは、既に固定された部分が遺伝して毎年の繁殖で子供が供給されることで年々増加しているのか、興味深いところです。
もしそうなら、この地方で見られる白化個体には血縁関係があるなんてことになってしまいます。
今後も白化個体の繁殖状況や分散を追跡していきたいと思います。

冬の使者

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山では今年最初の雪が積もったと便りが届きました。
そんな頃になるとやっと里に姿を現すコウモリがいるのです。
夏の間は山の高い場所では比較的多く姿を見たチチブコウモリが降りてくると、いよいよ冬が近づいた気がします。

ホワイトノーズ

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長野県のコウモリ生息地モニタリングを続ける中で、ねぐらの天井にぶら下がったまま死んでいる個体がありました。
これは先月には見られなかったものなので、この1ヶ月内に起きたという事になりますが、春先に見られるような冬眠の失敗でもなく、まだ寒くもない今、いったい何が起きたのでしょうか。
鼻先が白くなってコウモリが大量死するというホワイトノーズ症候群というのが数年前に海外で流行したことがありますが、実は大量死ではなく少しばかり死んだものの鼻先が白くなるのは、日本、その中でも中部や近畿では割と普通のことなので、特に驚くことではないのですが、それにしても時期的に原因が分からないと不安が募りますね。
こうした事がどれくらい起きるものなのか、理由に特別なものがないのかどうか、そんなことを考える上で、通常状態の観測を続けることが必要なのです。
それが普段から事件や事故や開発計画などが何もなくても、各地のモニタリングを続けていく意味だったりします。

少し帰る

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9月の終わりに長野県の出産育児コロニーのあった場所から、一度はほとんどいなくなったノレンコウモリのメス集団でしたが、少数個体がもう一度現れました。
やっぱり小集団に分かれてオスのねぐらを巡っているのでしょうか。この時交尾可能年齢のオスは1頭だけ、あとは今年生まれた幼獣ばかりなので、逆ハーレム状態です。それは他のオスねぐらでも起きていることなので、それが普通なのかもしれません。
まだまだ繁殖行動の様式もはっきり分かっていないコウモリが多いので、もっと観察例を増やしていきたいと思っています。

秋だけ現れる

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現在おこなっている捕獲調査では、その方法の特性上、何が捕まるかは網にかかるまで分かりません。
珍しいものだけ選りすぐって捕ることができないのが、張り網の難しいところです。
普通種に区分されるコウモリも捕れてしまうわけですが、それでも貴重な記録になるものがあります。
モモジロコウモリは分布も広く、個体数も多いほうですが、個々のプロフィールに目を向けると、興味深い履歴がある個体が捕れました。この10年来、捕まったのが3度目の画像の個体は、一年中定期的な調査をしていても、この生息モニタリング地点に現れたのは、秋の10月、11月だけなのです。
もちろん網をくぐり抜けるもの、上空を飛び越えて行ってしまうものもあるので、必ずしも100%の捕獲率ではないのですが、おそらく、夏は別の場所で暮らし、秋に山へ来るのだろうと考えています。
そんな暮らしで、これまた年齢は少なくとも10歳以上というモモジロコウモリが、富山県で見つかった今週でした。

地域差

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北陸におけるコウモリ移動についての研究をしていて、他生息地との間に行き来が確認されず、どことの関連性があるのかまだ分かっていない生息地があります。そんな場所でも、コウモリは長生きで、10歳以上のユビナガコウモリが見つかったりはしているのでした。
そんな、福井県北部の孤立しているかのように見える生息地で観察していて、調査チームの全員が気付いた事がありました。
「ここでは部分白化個体が全然見られませんね」
そう言えばそうです。嶺南のユビナガコウモリには、あごの下や首環状に毛の色が白い変異個体がしばしば発生するのが見られますが、嶺北に位置するその生息地にいるものには、全然見られませんでした。
孤立しているが故に維持されているのか、石川や富山と言った、北陸の中でも北方系の個体群に属するからなのか、何かしらの違いがありそうな結果が垣間見られました。
秋の調査を、雪が積もるまで続けていく予定です。

ささやき声

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ウサギコウモリは大きな耳で声を聞くためか、自身が発する声量は大きくないと言われます。
そんな声を聞いてみると、声質やタイプとしては、他のコウモリと似たようなものでした。
ところでこの個体は、捕獲された記録がほとんどない福井県では珍しく、8年経って再捕獲されたものでした。やっぱりウサギコウモリは10年くらいは普通に生きるコウモリのようです。

自主避難の有効性

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今年の初夏、夏、秋とおこなってきた福島県のユビナガコウモリ調査の集計がだんだん出来てきました。大きく目立ったのは、震災5年前とは性比が大きく変わっていることでした。
その原因として一番に考えられるのは、メスは出産と子育てをおこなうために、夏には既知情報で考えれば日本海側の山形や新潟の方へと移動していくからなのではないかということです。それがたまたま結果的には人間で言う自主避難行動になり生き残ったが、内陸にとどまったり、または夏の生活圏を太平洋側へと移動したもの(その多くはオスであったり若いメスであったり)は生き残れず、帰還することができなかった結果、現在では個体群の規模が大きく縮小し、生きて帰ってきたメスやその子によって主に構成された可能性です。
もちろんこれは体の小さい動物であるコウモリの話ですが、せっかく100km離れた内陸で難を越えた後に、もう100km離れたかどうかで明暗が分かれたのかもしれないというのが、とても考えさせられます。
それにしてももう5年経っていても個体数が回復していないのを見ると、やはり震災は大きい被害があり、自然にまかせた復興にはとても時間がかかるものなのだなあと感じます。
また、冬眠明けの5月くらいまではオスもメスも福島県内で過ごしていたと考えられますが、地下というのは避難場所として、非常にいい場所なのかなと思えました。

雌の秋旅

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奈良県のノレンコウモリ生息地で、一年中いつ行ってもオスが一頭だけしか住んでいない場所があります。いったい一頭だけでいて、どうやってメスと出会って繁殖していくのだろうかと不思議に思いつつ、毎年見守っていましたが、その答えがやっとわかりそうな観察結果が得られました。
これまで単独の若いメス個体は見つかっていたのですが、今回ついに繁殖経験のあるメスがオスの元へとやってきていたのです。それも複数で。
もしかしたら出産子育てコロニーで大きな一つのノレン玉を解消した後、小グループに分かれてオスのいる場所をたどって飛んで歩いているのかもしれないと示唆するような結果です。
去年、別の場所で観察された行動では、春や夏に周辺に分散して住むオスが秋だけ一か所に集まるということがありましたが、そこへメスがやって来るといったメイティング様式の可能性が考えられます。
ますます秋の観察が興味深くなりました。冬眠するまであとしばらく、更に力を入れて観察していきたいと思います。
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