マルカドブックス

東海地方を縦横無尽、全国各地に神出鬼没の取材・執筆・編集事務所@西三河より、 読んだ本のことでも書いてみるシリーズ。

ヨンダホ0299~遊廓成駒屋

聞書き 遊廓成駒屋
神崎宣武/ちくま文庫

聞書き 遊廓成駒屋 (ちくま文庫)
神崎 宣武
筑摩書房
2017-01-10


 昭和52年、名駅での待ち合わせの合間にたまたま中村遊廓跡を散策していた民俗学者の作者が、取り壊し作業中の元遊廓「成駒屋」に遭遇する。解体屋のオッサンに頼んで撤去される道具類を全部貰い受け、それを機に中村遊廓の調査を開始。遊廓時代を知るソープランド経営者の老婆のもとへ足繁く通って粘り強く聞き取り調査を行い、中村遊廓の実像を克明に浮かび上がらせた…のが本書である。
 これはものすごい名著だ。東海圏で遊廓話に興味のある人は必読の一冊であろう。平成元年に刊行された本書をなぜ今になって文庫化したのかよくわからないが、さすが筑摩である。
 どこを取っても興味深い話ばかりだが、娼妓に入れ込んである楼に転がり込んでしまったテキヤの老親分の思い出話は特によかった。なんでもその娼妓が結核にかかり、金銭的にも精神的にも「私なりに一生懸命ミツコに尽くしたのでございますよ」という。

「黄疸にシジミがきくと聞けば、名鉄電車に乗って三河湾に面した一色という町まで、一日おきにシジミを買いに参りました。そして、黒田病院の廊下にコンロを置いてシジミ汁をつくり、ミツコに飲ませたのでございます」

 馴染み深い三河線の意外な乗客の意外なドラマにグッと来た。

20170322-1
本書で「名古屋中村遊廓の跡は現在、新旧混然としてまことに奇妙な雰囲気を呈しているのである」と書かれているが、元本の刊行から30年近くたった今もまだそんな感じ。遊廓時代の建物が何軒も残っており、風俗店、下宿屋、グループホームなどに活用されている。
(名古屋市中村区寿町 2010.05.31)

ヨンダホ0298~バイエルの謎

バイエルの謎 日本文化になったピアノ教則本
安田寛/新潮文庫



 子供向けのピアノ教則本「バイエル」を作った作曲家、フェルディナント・バイエルとはいったい何者だったのかを、音楽研究者が探ったノンフィクション。
 バイエルは謎の多い人物で、これまでその生涯はほとんど明らかにされず、実在すらも疑われていたという。音楽に疎い私なんぞは、バイエルが人の名前だということを本書で初めて知ったくらいだ。
 筆者はドイツに何度も渡り、バイエルの版元である音楽出版社や、バイエルが生まれた町を訪ねて調査を重ねてゆく。各地を回れどもそこで得られる情報はほんのわずか。もどかしい、けれど楽しい、謎解き旅行の醍醐味が全編から溢れ、音楽に疎くてもワクワクする展開である。
 数年に及ぶ作者の執念の調査でも、バイエルの生涯の全貌は靄がかかったようにしか判明しなかったのだけれど、それでも充分楽しませてもらった…と思ったら、エピローグに衝撃のオチが!

20170228-1
叔母の指導でバイエルってる当時1歳児。
(2012.06.04)

ヨンダホ0297~忘れ物が届きます

忘れ物が届きます
大崎梢/光文社文庫



 数年前、三河某市の図書館で借りた「砂 文明と自然」という本を、知多半島のどこかに忘れてきたことがあった。どこに置いてきたのかさっぱり思い出せず、たまたまその図書館に勤務していた友人にもしこのまま出てこなかったらどうすべきか相談したところ「そういう場合は自己申告で弁償だねェ」と言われて頭を抱えた。ところが何日かたってその友人から連絡があり「検索してみたら返却になってるよ」という。ええッ、どうゆう事!?
 というような日常の不思議を解き明かしていくミステリー。

20170306-1
忘れものを取り扱っています。
(名鉄名古屋本線西枇杷島駅 1995.05.30)

砂
マイケル・ウェランド
築地書館
2011-07-29

どこかに忘れた本。

ヨンダホ0296~アウトサイダー

アウトサイダー 陰謀の中の人生
フレデリック・フォーサイス/角川書店

アウトサイダー 陰謀の中の人生
フレデリック・フォーサイス
KADOKAWA
2016-12-28


 10代の私が夢中になって読んだ(もう内容は忘れたが)「ジャッカルの日」「オデッサファイル」「第四の核」「ネゴシエイター」等の作者、フレデリック・フォーサイスの自伝。これは面白い。10代で五か国語をマスターし、イギリス空軍に入隊してパイロットになり、除隊して国際政治のジャーナリストになり、そして大作家になるというドラマチックな人生。凄いねどうも。
 50代になって最初の妻と離婚した後、資産運用を任せていた投資会社の社長に騙されて破産した、というくだりには笑った。だが、その節の締めの一文がヤラシイ。「また小説を何作か書いてお金を取り戻すのだ。わたしはそれをした」。
 90年代初頭、「騙し屋」「売国奴の持参金」「戦争の犠牲者」「カリブの失楽園」とフォーサイスの新刊が角川書店から四か月連続で発刊され、いつもは文庫しか買わないのに興奮してつい単行本四冊をまとめ買いしたことがあったが、あれはそういうことだったのか。

20170227-1
昔の角川文庫の海外作品はこのようなカバーデザインだった。

20170227-2
でもってジャンルごとにこのようなアイコンが付されていた。私は冒険・スパイのジャンルばかりを買っていた。「今、おもしろさ充実!」というキャッチコピーが80年代ぽい。

ヨンダホ0295~回想私の手塚治虫

回想 私の手塚治虫~『週刊漫画サンデー』初代編集長が明かす、大人向け手塚マンガの裏舞台
峯島正行/山川出版社



 およそ6~7割は副題どおりの本である。
 わたくし、大人向け手塚マンガは好物なのだが、著者が編集長だったとき漫サンで連載していたという「人間ども集まれ!」だけは、絵柄もストーリーも好みに合わなかったのでしっかり読んだことがない。いい機会なのでアマゾンで買おうかな、と…。

20170214-1
大人向け手塚マンガで私が一番好きなのは「陽だまりの樹」。


手塚の大人マンガ志向については、本書とともに「チェイサー」4巻を併せて読むと面白い。
livedoor プロフィール
記事検索
ギャラリー
  • ヨンダホ0299~遊廓成駒屋
  • ヨンダホ0298~バイエルの謎
  • ヨンダホ0297~忘れ物が届きます
  • ヨンダホ0296~アウトサイダー
  • ヨンダホ0296~アウトサイダー
  • ヨンダホ0295~回想私の手塚治虫
  • ヨンダホ0294~横綱
  • ヨンダホ0293~パリの国連で夢を食う
  • ヨンダホ0292~ザ・サン
マルカドブックス