2005年03月08日

今昔きものの旅 米沢を訪ねて

これから全国織物の旅に出ます。全国の織物の産地は少しづつ無くなりつつあり、これからも少なくなることが確実になっている。失われ行く織物を資料として集めたいと考えている。私のように今と昔のきものの鑑定を仕事にしている身にとっては、早く全国を廻りたいと思う。南は石垣島、久米島、宮古島、沖縄、奄美大島、鹿児島、久留米、博多、結城
能登、小千谷、六日町、塩沢、米沢、八丈島、京都、などを廻りたい。

今回は山形県米沢市にある織物の産地を訪ねました。どうせ見学に行くならば米沢に一番良い時期に行こうと考えて、上杉神社の雪灯籠祭りが2月12日と13日に開催されているということで、まえまえから行きたいと思っていた祭りなので、仕事と偽って、カミさんと二人で行きました、本当の目的は、雪灯籠祭りと温泉と米沢牛です。
しかし、仕事として数件の織物の作家さんや工房をたずねました。一軒目は紅花紬を織っている新田さんの工房です、過去にも何度か福岡で個展をしていただきましたが私にとっても新田さんの工房は4回目です、紅花は上杉鷹山の時代、米沢の重要な産物で貴重なものでした。西の藍、東の紅花といわれ、どちらも健康によい染料として大切にされ、この藍と紅花とを合わせて染めた色が貴族だけに使うことを許された紫になるとのこと、なるほどそんな貴重なものかと感心した。2軒目は諏訪好風さん、こちらは草木染めの作家さんで、紫根染の絞りのきものを見せていただいた。三件目は白根沢織物さんこちらは米沢で最古の織物工房で上杉鷹山の時代に米沢藩の奨励で始まった養蚕で出来た絹で織り始めたとのこと、とてもびっくりした、それでは200年以上の歴史があるのですねと聞くと、息子が12代目とのこと、それにもまたびっくり、そして明治28年の全国織物大会の審査で第一等を受賞されたとのこと、当時本場結城紬が30円で白根沢さんの織物が10円とのこと、当時の久留米絣は3円と記されていた。米沢の歴史を感じたものでした。4件目は吉池織物さん、こちらは昔、白塀が延々と続く大きな屋敷でしたが、今は米沢市が買い取って吉池公園となっているそうです。こちらの工房はシナ布を織っているところでシナの木の皮を剥いて作った糸で織った生地で麻よりも飴色で強い生地です。とても貴重な生地で無地の帯で30万円くらいはするとのことにびっくり。この工房はその他に刺し子も作っておられ、その資料として収集しておられる火消しの半纏のコレクターとしても有名な方です。火消しの半纏は裏に入れ墨の柄に似た柄を染めてその上から補強の為に刺し子をしたもので、1枚が100万円を下るものはないとのことにまたびっくり。米沢の織物の旅は楽しいものでした。
それと、余計なことですが、米沢周辺はくだものでも有名な産地で紅花の新田さんの奥さんの実家はりんご農園でこんなおいしいリンゴがあるのかと思うものをつくっておられる。
その他、サクランボ、庄内柿、洋梨、桃、ラフランス、リンゴ、すべて日本一美味しい果物ばかりです、温泉もまわりにたくさんあり楽しい旅でした。
上記の産地の品物が私の処に鑑定の為、持ち込まれたエピソードも織り交ぜて語り継ぎます。

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