妻も一緒に泣いてくれたそうです。

―――塚田泰明

「われコンピュータ将棋と引き分けたり」(「新潮45」2013年6月号)より
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 二〇一三年四月十三日、第二回電王戦で「Puella α」と対戦した塚田泰明九段。
 執念の入玉将棋で引き分けに持ち込んだのだが、終局直後、「投了も考えたか?」という記者の質問に、「自分からは……」と言った途端、突然涙が込み上げてきた。

 この様子がニコニコ生放送で視聴者に流される。
 塚田の妻は女流棋士・高群佐知子である。
 涙する夫の姿が映し出された瞬間、パソコンの前で自分も貰い泣きしてしまったらしい。

 結婚前、塚田と高群は親しい友人にすら交際を隠していた。
 ところが、二人で極秘の沖縄旅行をしていたとき、台風で帰りの飛行機が欠航。予定されていたテレビ棋戦の収録(塚田は対局、高群は記録係)を二人揃ってキャンセルする羽目に。
 世に言う「南の島事件」で、これで二人の交際が発覚。後、結婚に至る。

 そんな二人なのだが、電王戦の対局後家に帰った塚田を、高群はどう迎えたのだろうか。

 「見てたわよ」
 「どうしてなのか、突然涙が出てきちゃってねえ」
 「うん、私も貰い泣きしちゃった」

 というような夫婦の会話があったに違いない。