「まずは、対局中に電子機器を取り扱うのは禁止にしたほうがいいですね」

―――三浦弘行

海堂尊との対談(『ドキュメント電王戦』徳間書店 2013年)より
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 二〇一三年四月二十日、順位戦A級在籍棋士として三浦弘行は「GPS将棋」と戦い、破れる。
 それからしばらくして彼は医学博士・海堂尊と対談した。

 ここまで強くなったコンピュータ将棋と、将棋界はこれからどのように対峙していくのか、将棋はこの先どうなっていくのだろう――そう海堂が尋ねると、三浦弘行はこう返したのである。

 「まずは対局中の電子機器を取り扱うのは禁止にしたほうがいいですね」

 これに対して海堂は、「トイレに行って、ネットでコンピュータと次の一手を検討する棋士が出てくると(笑)。大学入試みたいですね。携帯はオフにしてくださいみたいな」と笑いながら応対するのだが、三浦はいたって真面目であった。

 「すでに現実の問題になっているので、検討は必要ではないかと考えています」

 つまり、渡辺明が理事会にモバイル機器のチェック態勢をつくるように要請したのとほぼ同時期に、三浦弘行も「現実の問題」として電子機器使用禁止の制度化を訴えていたわけだ。

 その男が、それから三年後の二〇一六年秋、対局中にスマートフォンの遠隔操作でカンニングをしていたのではないかという疑惑をかけられる。
 告発の先鋒として動いたのが渡辺明であった。
 
 共に将棋界の将来を思い、今のうちにモバイル機器の使用禁止制度をつくるように主張した二人。
 しかし連盟は遅々として動かず、今日、二人のうちの片方が告白者になり、もう片方が疑惑の矢面に立たされている。

 なんという皮肉であろうか。