「道を求める人間と、答えを求めるコンピュータは全く違うんです」

―――神吉宏充

「人間将棋 姫路の陣」(2016.11.6) 冒頭挨拶にて
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 三浦弘行「スマカン疑惑」騒動が拡がる中、将棋連盟は所属棋士・女流棋士に箝口令を敷き、個別の発言を封じた。
 腐敗した組織の行動、斯くの如し。
 全く将棋ファンの方を向いていない。

 そんな中で開かれたイベント「人間将棋 姫路の陣」(2016.11.6)。出演した神吉宏充がなかなかのパフォーマンスを見せ、ファンにはちょっとした清涼剤になったようだ。
 まず冒頭挨拶で、井上慶太・東和男両理事と共に壇上に立った神吉宏充七段が、これだけはどうしても言っておかねばと、こう発言する。

 「この二人(井上・東の両理事)が私を喋らさんようにしてますんで、今日は皆さんの聞きたいことはもう喋りませんが……。喋りません。お許しいただきたいと思います。すいません、申し訳ありません」

 こう言って神吉は両理事の横で来場者に頭を下げたのである。

 この謝罪、彼の衷心から出たものだと私は思う。
 せめてファンに頭を下げねば示しが付かない。
 楽しませるためのイベントとはいえ、まるで何も起こっていないかのように振る舞う異様さに彼は耐えられなかったのだろう。
 YouTube でこの場面を見て、私はなんだか心が熱くなった。

 ところが、「喋りません」と断言した直後、神吉流が爆発する。

 「ということで、コンピュータ、強うなったなあ」――両理事にこう水を向けたのである。
 理事の二人、笑顔で応じはしたものの、内心ギクリといったところ。
 けれどもその後の神吉宏充の言葉が素晴らしかった。

 「しかし最近の将棋見とって、コンピュータ強いけども、なんか心がないのよ、心が。心がないねん。ここ(姫路の会場)でスマホ将棋をやったって誰も来ません。人間将棋やから来る。人間はね、悪手やります。ポカから何からいろんなことやります。それを何とか取り返そうという努力をする。その努力をするとこに人生があり人間としての魅力がある。これが人間将棋でございましてね、人間は間違えるけども、道を見付け出そう、見出そうと努力する。道を求める人間と、答えを求めるコンピュータは全く違うんです」

 どうだろう。
 私は正直、感動してしまった。
 ちょっと涙腺が緩んだくらいだ。
 これは誠に立派な批評であり哲学であり人生論である。

 将棋界を揺るがす大騒動の中、なんとも素敵な言葉を聞けて本当に良かったと思った。

 人間将棋 姫路の陣(2016.11.6)YouTube

 ※ 上記のリンクで、20分頃から23分頃に神吉宏充七段の発言があります。