棋士として、「初代永世竜王」の称号にふさわしい振る舞いをしなければならない。

―――渡辺 明

『勝負心』(文藝春秋、2013年11月)
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 『勝負心』の最末尾のこの言葉を、当時の私は、渡辺応援団の一人として、極めて素直に読んだものである。
 まだ二十代だが大したものだ、と。

 そして、出版から三年が経ち、三浦弘行冤罪事件が起こった。
 首謀者は初代永世竜王・渡辺明であった。

 「棋士として、〈初代永世竜王〉の称号にふさわしい振る舞いをしなければならない」

 ああ、今となってはこの言葉、皮肉以外の何物でもなくなってしまった。

 いったい、この事件で渡辺は何をしたのか。
 アマゾンのレビュアーによればこうである。

 ・三浦に3連敗
 ・一派や知り合いの記者を使い不正疑惑の噂を広める
 ・連盟に不正疑惑記事を書かれると大変な事になると話を持ち込む(ただし自分がリーク元である)
 ・知り合いの文春記者に疑惑情報をリーク
 ・千田率や離籍率等の捏造データを準備する
 ・あいつを降ろさなければ竜王戦に出ないで大変な事にしてやると連盟を強要(論理が逆転)
 ・秘密会議に羽生を呼びつけなんとか言質をとりつけその後の根拠とする
 ・大変な事になりました(第三者を装う)
 (伊奈めぐみ著『将棋の渡辺くん(1)』講談社、2015年 へのアマゾンレビューより)

 このレビューに、二〇一七年五月十日現在、251人が賛意を示している。大変な数だ。
 渡辺明の「振る舞い」の実態に人々は呆れ返り、そして怒っているのである。

 一方で私が重視したいのは、初代永世竜王のこの「振る舞い」により、「棋界最高棋戦」たる竜王戦が泥を塗られたことである。
 罪を無理矢理でっち上げ、正規挑戦者からその権利を奪ってしまったのだから、とんでもない人権侵害だ。これ以上の不祥事はない。
 竜王戦の歴史に最悪の一ページを残してしまったのである。

 しかし、こういう事態を黙って受け入れている讀賣新聞もだらしないではないか。
 いや逆に、人々は讀賣になにやら共犯の臭いを嗅ぎ付け、不信感を募らせているのだ。

 だから、もし私が讀賣の責任者ならば、即刻、渡辺明から永世竜王称号(および現竜王位)を剥奪するだろう。
 理由は極めて明快で、「初代永世竜王にあるまじき振る舞い」をして棋界最高棋戦に傷を付けたから。

 そうして、しかる後に、三浦弘行と丸山忠久の二人を暫定チャンピオンに認定し、統一タイトルマッチ七番勝負を改めて実施する。

 讀賣はファンの大喝采を浴びること必定である。