今回の挑戦者の変更については、主催の読売新聞社からもご了承を得ております。

―――日本将棋連盟

「第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について」(2016.10.12 19:25)
―――――――――――――――――――――――――――――――――

 三浦弘行をなぜ事前に救えなかったのか。
 将棋連盟執行部は救う気などまるで無かったのだろう。
 確たる証拠が無くても「竜王位挑戦権剥奪」「出場停止」をはじめから決めていたらしい。
 酷いものだ。

 では竜王戦のスポンサー「讀賣新聞」はどうだったのか?
 仮にもジャーナリストの集団である。冤罪の可能性をなぜ考えなかったのか。
 いい加減な団体がわずか数日で出した「危ない結論」である。真っ当な記者なら、「もしこれが冤罪だったら大変なことになる」と危惧するはずだ。総力を挙げて取材し、検証し、人権侵害の可能性を探る。そして世に警告を発する。それが記者の務めではないか。

 ところが、事件当初、日本将棋連盟は次のように発表した。

 「今回の挑戦者の変更については、主催の読売新聞社からもご了承を得ております」(「第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について」2016.10.12 19:25)

 この「ご了承」は「讀賣」の大失敗だった。
 三浦弘行とその家族をどん底に落とし、結果的に冤罪に荷担してしまったのだから。

 これが新聞社のやることなのか。
 人権侵害を防ぐのではなく、自ら侵害する側にまわるとは……。

 そんな「讀賣」が、二〇一七年四月三十日朝刊の社説で「将棋界の隆盛につなげたい」という社説を出している。「藤井四段快進撃」と副題されたこの文章は全六十八行。その末尾(十行)にはこう書かれていた。

 「昨年から今年にかけて、将棋界はソフトを巡る疑惑に揺れた。日本将棋連盟は、対局中に頻繁に席を外したなどとして、棋士を出場停止にしたが、不正の証拠はなかった。谷川前会長は辞任した。
 連盟では5月に全理事が改選され、新体制がスタートする。信頼回復のためにも、連盟には各棋戦の適正な運営が求められる」

 私はこれを読み、「よくものうのうとこんなことが書けたものだ」と呆れてしまった。
 まるで他人事。自戒の念がまるで無い。
 こんなていたらくではまた同じような事件が起こっても不思議ではないだろう。

 将棋に関する社説を出すなら、「讀賣」はこう書くべきだったのだ。

 「昨年から今年にかけて、将棋界では未曾有の人権侵害事件が起きた。無実の棋士が挑戦権を剥奪され、出場停止を食らい、本人と家族縁者はどん底に落とされた。そして我が社は、この冤罪を防ぐことができず、むしろ荷担してしまった。
 棋界最高棋戦たる竜王戦をこのようなかたちで穢(けが)してしまったことに対し、われわれは今慚愧の思いでいる。
 三浦弘行九段およびご家族に心からお詫びすると共に、二度とこのようなことが起きぬよう、痛切な反省の元、新聞社本来の務めを果たしていきたい」