ニセ竜王が退治されて、めでたし。めでたし。

―――ブルーベリー(将棋ファン)

「一公の将棋雑記」の読者コメント(2017.12.8)より
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 二〇一七年十二月五日、第三十期竜王戦が終わった。
 七番勝負第五局に勝利し、羽生善治が竜王位を奪取。
 同時に永世竜王称号を得て「永世七冠」となった。
 歴史的快挙に世間は沸き立ち、国民栄誉賞も内定、「羽生フィーバー再び」という感じである。

 そんな中、あるブログ記事にこんなコメントが載った。

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 去年の竜王戦は不愉快でしたが
 今年は愉快!痛快!スカッとジャパン。
 ニセ竜王が退治されて、めでたし。めでたし。
 羽生永世竜王。おめでとうございます。」
   (「竜王の品格」と題された読者コメント。「一公の将棋雑記」2017.12.8 より) ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 私はこれを読み、ハッとした。
 そうか、渡辺明は一年間「ニセ竜王」だったんだ。
 そう気付かされたのである。

 振り返ってみると、ブルーベリー氏が言うように、一年前の竜王戦七番勝負は本当に不愉快だった。
 正規挑戦者・三浦弘行を無理矢理「イカサマ棋士」に仕立て上げ、その挑戦権を剥奪。丸山忠久を代理挑戦者として番勝負は強行されたのである。
 これこそが正にイカサマではないか!

 しかし一方、この丸山代理挑戦者の発言は誠に素晴らしかった。

 「三浦九段との対局で不審に思うことはなかった。一連の経緯には今も疑問が残っている」
 「発端から経緯に至るまで(連盟の対応は)疑問だらけです」
 「僕はコンピューターに支配される世界なんてまっぴらごめんです」

 三浦弘行がこの言葉にどれだけ励まされたことか。
 そしてファンの多くがこの言葉に快哉を叫んだのである。

 「よし、丸山よ、こうなったら三浦の敵(かたき)を取ってくれ、渡辺明を竜王位から引きずり下ろしてくれ!」

 私もそう思って応援したものだ。
 だが、二〇一六年十二月二十二日、最終第七局で丸山が投了する姿を生放送で観て、私はがっくりとうなだれる。

 「ああ、これが冷たい現実というものなのか……」

 まるで正義が悪に返り討ちにされたかのように感じたのである。

 それから一年。
 羽生善治がついに「ニセ竜王」を「退治」。
 「めでたし、めでたし」となったわけだ。

 「永世七冠」の偉業もさることながら、溢れる報道の中、記者が決して触れようとしない重要な一点、「悪の成敗」という観点でこの番勝負を捉えた人が多数いたということを忘れてはならない。