2017年10月

明確な対局拒否発言が報道されても長期間否定しなかった渡辺明(三浦弘行冤罪事件・25)

「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない」

―――渡辺 明

「産経ニュース」(2016.10.21)より
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 二〇一六年十月二十一日、衝撃的な報道があった。
 三浦弘行が竜王位挑戦権を剥奪され世間が騒然としている中、「産経新聞」がWebサイトでこう報じたのである。

 「さらに今月3日の対局でたびたびの離席と不自然な指し手に疑惑を抱いた渡辺明竜王(32)が、〈疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪(はくだつ)されても構わない〉と、連盟幹部に強く対応を求めていたことを(島朗常務理事が報道陣に)明らかにした」

 私はこれを読み、非常に危険なものを感じた。
 はっきり言って、これは対局拒否以外の何物でもない。
 棋士がそんなことを言うものなのか!
 そして、そんな言い草が棋界で通ってしまうものなのか?

 いやいや、これまで熱心に応援してきた渡辺明がこんな暴言を吐くわけがない。
 私の信ずる渡辺明だったら、きっとこう発言するはずだ。

 「三浦九段にソフト不正の疑惑が出ており、実は私も疑っています。しかし、どんな相手とでも戦うのが棋士の務め。幸い、今度の竜王戦七番勝負には金属探知器の導入が決まっており、不正の余地はありません。三浦さん、人間同士、正々堂々、お互い力を振り絞って戦いましょう」

 渡辺がこう言ってくれれば、この七番勝負は空前の盛り上がりを見せたはずで、三浦にとっても潔白を訴える格好の場になっただろう。
 ところが――

 渡辺明はこの「対局拒否発言」を長らく否定しなかった。
 ようやく釈明らしきものを自らのブログに載せたのは、報道から四ヶ月目の二〇一七年二月十三日。
 曰く、「発言された方のせいにしたくなかったので、10月からずっと否定せずにいました」。

 ふざけるんじゃない!
 馬鹿も休み休み言いたまえ。
 「発言された方のせいにしたくなかった」などというのは二の次三の次ではないか。ブログという場があるのだから、こういうのは報道された直後にはっきりと否定すべきなのだ。何を勘違いしているのか!

 ただし、渡辺が二〇一七年二月十三日に否定したのは「タイトルを剥奪されても構わない」の部分であって、「疑念がある棋士と指すつもりはない」発言については触れていない。

 なんだ、結局「対局拒否」はしたのか!

 この釈明により私はますます渡辺明という人物の性格に疑問を深めたのである。
 世紀の冤罪事件を主導した責任を取らず、タイトル剥奪の世論を恐れて、今になって「剥奪されても構わないとは言っていません」と弁明する。
 いかにも小人物。
 私は改めて自分自身に問いかけたのである。

 こんな奴をなぜ今まで一生懸命に応援してきたのか!
 三浦弘行ではないが、私には人を見る目が全く無かった。



十月二十日は将棋界にとって屈辱の日。ちょうど一年前、「週間文春」に「スマホ不正」のデタラメ記事が載った。(三浦弘行冤罪事件・24)

将棋「スマホ不正」全真相
渡辺明竜王独占告白「放置すれば竜王戦がなくなる」
羽生善治三冠「限りなく黒に近い灰色」
「私は三浦弘行九段にスマホ遠隔操作を教えた」核心証言

―――「週間文春」2016年10月27日号(10月20日発売)
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 二〇一七年十月二十日、第三十期竜王戦七番勝負が開始された。
 この番勝負、「永世七冠」を目指す羽生善治が渡辺明に挑戦することで大きな注目を集めている。

 ところで、ちょうどこの一年前に何があったか?
 例の「週間文春」(2016.10.27号)が発売されたのが正に十月二十日だったのである。
 中村徹記者による記事の冒頭にはでかでかと次のような文字が並んでいた。

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将棋「スマホ不正」全真相
渡辺明竜王独占告白「放置すれば竜王戦がなくなる」
羽生善治三冠「限りなく黒に近い灰色」
「私は三浦弘行九段にスマホ遠隔操作を教えた」核心証言
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 「週間文春」はその翌号でも、『将棋スマホ不正 三浦弘行九段「反論文」のウソ』と題する記事を出し追い打ちをかけている。

 かかるデタラメにより三浦弘行はカンニング犯として世間に喧伝されたのである。連盟執行部は彼の竜王位挑戦権を剥奪し、三ヶ月の出場停止処分を下していた。
 世間からの大バッシングの中、幼い子供を抱える彼の妻は、「発狂しそうだ」と夫に訴えたという。

 だが、三浦弘行の潔白が明らかになってからも、これらの記事に対し「週間文春」からの謝罪は未だ一切無い(中村記者ものうのうと将棋の仕事をしているらしい)。
 また、こんな無茶苦茶な記事に協力した棋士もまったく酷いものだった。
 更に加えて、久保利明・渡辺明の妄想と千田翔太の非科学的データを信じ、一人の棋士を「殺そう」とした連盟執行部のなんと野蛮だったことか!

 この事件は三浦弘行にとって最大の屈辱だったが、むしろ、無実の棋士を抹殺しようとした理事たちこそ、「われわれはこんなとんでもないことをしてしまったのだ」と、その屈辱を噛み締めるべきなのである。
 また、久保利明や渡辺明にとっても、これは人生最大の屈辱であるはずた。「妄想により一人の棋士をどん底に陥れてしまったことに対してはお詫びのしようがない」と責任を取って然るべきではないのか。

 十月二十日。
 「週刊文春」に「スマホ不正」の記事が出た日。
 この日を忘れてはならない。
 こんな醜態を再び繰り返さぬために、十月二十日を、将棋界における「屈辱の日」として記憶すべきである。



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