
中京シゲブラザーズのお一人、
吉田シゲさんの作品。
東部戦線のティーガー戦車の情景です。
比較的コンパクトなベースに見せ場いっぱい、盛りだくさんの情景になっています。
この方も毎年メキメキ腕を上げておられて、今年はこんなスゴイ作品を見せてくれました。
ティーガーはどことなくバーリンデンの手法を思い出させる、グラデーションのキレイな冬季迷彩になっています。
白塗装は単調にならないよう、いろんな色味の変化を付けられているのですが、その変化がなめらかで落ち着いた雰囲気です。また細部工作もたいへん丁寧な、ハイレベルな作品でした。
手前の破壊されたT-34は、錆びて朽ちた状態ですが、こちらも同様の手法で塗装されています。実に様々な錆色のバリエーションで塗られているのですが、その変化は滑らかで目に優しい印象を受けます。どうもこの辺が吉田シゲさんの持ち味のようです。

このような変化に富みつつも荒っぽくない、滑らかなグラデーションを持った作品は、ヨーロッパのモデラー(特にちょい昔のベルギー人のモデラー)の作風を思い出させます。ベースの地面や崖、そこに生えた木の根を使用したと思われる草木なども、リアルなだけでなく、どことなく「高級感」を感じさせる仕上がりでした。
シゲさんによると、この情景にはさらに橋の下に爆薬を仕掛け、それを起爆するタイミングをうかがうロシア兵を、背後の崖の上に配置する予定だったとのこと。アイデアはメチャクチャ面白いのですが、しかしこの距離ではロシア兵も自爆することになり、ちょっと無理があったと思います。無くて正解だったと思いますよ。そのアイデアはまた、別の機会に拝見させてください。

こちらも中京シゲブラザーズのメンバー(?)、おなじみ
水野シゲさんの情景作品。
水野シゲさんは、情景作品を3品も出品されていました。
中京AFVの会は、一応コンペティション(コンテスト)になっていまして、公平さの確保のため作品カードに作者名は書かれていないのですが、誰が見ても「これは水野さんだな」と分かる作品でした。
破壊されたフンメル自走榴弾砲の情景、「
残骸のある風景」。
タイトルからも情景の構図からも、絵画的表現を強く意識されているのが伝わってくる作品です。
作品を見ていると、私の脳内にいろいろと妄想が広がります。
思いますに、強大な火力と長い射程を持つ150ミリ榴弾砲を装備した「フンメル」は、ドイツ陸軍で最も強力で、最も貴重な戦力であったと思います。それがヤラレたのは、もうそれだけで大ショックなのですが、片面から見ると「ひょっとしたら傷は浅いかも、まだ修理可能かも」との淡い期待を抱きます。

しかし反対側を見ると、ハラワタ飛び散っていて、もうメチャクチャ。それを見てヘナヘナと力が抜けるような、ガックリ感を受けます。
しかも情景のレイアウトから察するに、このフンメルは撃破されたときには移動中、というか敵から逃げようとしていたのではないかと思われるのです。なぜならこのフンメルは射撃に相応しくない斜面にあり、その地面は道路ではないただの草地で、そこをよじ登ろうとしていたからです。
あと一歩で斜面を登りきって、より走行に適した平地に出られたかもしれないのに・・・、或いは敵が航空機であったなら、木の陰に隠れてやり過ごすことができたかもしれないのに・・・チャンスまでほんの少しのところで、貴重なフンメルが撃破されてしまった、運の悪いサラブレッドを道づれに・・・そんなやりきれないストーリーが思い浮かびます。
そして見ている私も「これはヤラレた」と、やりきれない気持ちになったりするわけです。
AFVモデラーであるからこそ、伝わってくるストーリーがそこにあります。

こちらは「
破壊されたヤクトティーガー」の情景。
フンメルとヤクトティーガー、ドイツ軍にとってどっちがより貴重だったかと聞かれれば、私は迷わず「フンメルに決まってるだろ」と思いますが、いずれも貴重な戦力であったことは間違いありません。
こちらのヤクトティーガーもバックリやられているわけですが、分厚い前面・側面装甲板を残して、比較的装甲の薄い天板部分が吹き飛んでいるのが、またやりきれなさを感じさせます。

この情景には5体のフィギュアが入れられています。
服装も武器もバラバラ、5人のうち2人は将校で、緊張感のあるポーズが大戦末期の雰囲気を出していますね。
戦闘中のフィギュアを入れたことで、フンメル情景のような叙情的な虚無感は後退しましたが、そこが見る者をほっとさせるような気がします。

「
パンターブンカー」の情景。
モチーフはベルリンでの写真でしょうか。石畳や道標が市街地ベルリンを意識させます。
散乱した空薬莢や、エンジンの無い弾痕だらけのパンター戦車が、刀折れ矢尽きるまで戦い、果てた姿を感じさせます。
この無残な姿のパンター戦車と対照させるように、脇には身なりの良い紳士が配置されていて、これまた見る者にいろいろな想像をかきたてさせます。

彼はこれから職場に向かうのでしょうか(戦争と日常の対比)、大きな荷物を持っているので難民かも(加害者と被害者の対比)、或いは終戦直後で避難先から帰ってきたベルリン市民?(オブジェとしての戦争と戦後の対比)・・・いろいろと妄想は尽きないのですが、こうやって想像をめぐらせている自分に「あぁまた水野さんにヤラレているな〜」と思うのでありました。

というわけで今年の中京AFVの会では、水野さんの情景作品を3品拝見できました。
このような水野さんの、常に一モデラーとして出品される姿勢には、ほんとに頭が下がります。
水野さんはとっくに「日本を代表する世界的モデラー」なのですが、決して「大先生様」にならず、未だに「在野の一モデラー」のスタンスを堅持されているんですね。
そしてバリバリと作りまくってくれています。これが最も重要なところで、水野さんレベルにあっても、未だに毎年巧くなっているんです。
また水野さんは、たいへんなアイデアマンで、尽きない泉のように湧き出るアイデアを、どんどんカタチにして見せてくれます。
やはり模型はどんどん完成させて、結果を確認する繰り返しが、上達の秘訣と思います。頭の中で考えてるだけじゃダメなんですね。
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AM誌を読む機会のある海外モデラーから、たまに水野さんの作品について聞かれます。
「シゲユキミズノはいったい何者なんだ?
スゴイ作品を次々に発表している。
しかし彼の作品が海外誌に掲載されないのは、日本人の秘密主義なのか?」と。
そういえばちょい昔、ロベルトからメールが来て、「今まさにやろうと思っていたアイデアを、ミスターミズノにヤラレてしまった。先を越されてしまった以上、この作品の発表は日本では控えるべきだろうか?」と相談されましたよ。
「ぜひともそのアイデアをロベルトスタイルで実現して欲しい、ミズノさんはきっと大喜びだろう」と言っておきましたが、果たしてどういうカタチで仕上げてくるか、たいへん楽しみです。
模型誌掲載の写真によって、ミズノ作品は海外モデラーにもインパクトを与えているわけですが、「中京AFVの会」ではそれを直に見れるのですから、私たちは実にラッキーです。
「中京AFVの会」の出品作品のクオリティは年々向上していますが、そこへの水野さんと彼の作品の貢献はすこぶる大きいと思います。

実際、なんとなく程度なんですが、他の方の幾つかの作品では、水野作品の空気を感じました。
それは別に水野さんの塗装法や、クラッシュモデルの製作法を真似るということではなくて、見る者に分かりやすいレイアウト法だったり、ボリューム感のある瓦礫の盛り方だったり、さりげないアクセサリーの配置だったりします。
でも考えてみれば、これは水野さんの作品だけに限らないですね。
「中京AFVの会」に出品された全ての作品が、お互いに影響を与え合っているわけですから。
その中にあっても、雑誌にたびたび登場する水野さんの作品を、直に見れるインパクトは大きく、他の出品者を力強く元気づけていると思いました。