松江に来たからにゃ“宍道湖七珍”を食わなきゃならない。シンジコシッチン。前から決めていた。
ネットで決めた“てれすこ”は雑然として賑やかな店らしい。しかも全席喫煙可。
昨日、カウンター15席だけの“川京”に変更。オヤジじゃなくて女将だ。完全禁煙が嬉しい。
店を選ぶ時、最近は禁煙席があるかどうかが重要な要素だ。
タクシーで向かう。街は異様に静か。死んでるみたいだ。すぐに着いた。
外観はごちゃごちゃしている。6時ちょうど。戸を開けようとしたら解錠しガラガラ開いた。
「あっびっくりした。電話くれた方ですか?」
「青木です」
入店したらこっちがビックリ。雑然としている。異様な散らかりよう。
白木のしっとりしたカウンター割烹を予想した。
ところが、大酒飲みが集う一杯呑み屋の様相を呈しているではないか!
川京って上品な名前と相容れない。名は体を表さなかった。
着席。おやっ、コバエが飛んでいる。衛生管理は大丈夫か?右視界に異物感。
おわっ!カウンターをでっかい蜘蛛が走り回っている。蜘蛛は怖い、嫌い。でも意を決してお手ふきで払う。
「お料理はどのようにいたしますか?」
「群馬から来たので島根のうまいモン出してください!」
「まぁ群馬から!遠かったですねぇ~コース料理にしましょうか?宍道湖七珍と他にも少しずつ色々お出しできますので」
「宍道湖七珍を食べたかったんですよ~」
「まぁそうですか!」
キリンクラシックラガーで突きだしを食い「うまい!」などと言いながら日本一周ジマンを始めた。
客の気配。「タナカです」
耳障りなぎゃーぎゃー声だ。老夫婦と息子(40歳?)の3人連れ。いっぱい空いてるのにオレの近くに座りがやった。
3人なのに1人前しか注文しない。
「1人前で3人でも大丈夫ですよね」
「は、はい・・・」
セコい注文が終わるとあり得ない発言。
「宍道湖ナナチンってなんやの?」
「奉書焼きってなんや?」
「宍道湖って淡水が混ざっとるの?」
婆さんがやかましい声を張り上げる。せっかく島根に旅に出たんだからそのくらい勉強してこいよ。ぜひこれを食べたくて来ているヒト(オレ)もいるんだぜ。つまらない質問で面白い日本一周ジマンの腰を折らないでくれ。
最初の料理。あれっ、向こうに先に出しやがった。ムカつくぜ。
カメの手って貝がふしぎな形。特にうまくない。バイ貝も凡庸な味。これだ!って鮮烈さがない。
「ずずずずっ!じゅるじゅる!ちゅっぱちゅっぱ!チューチュー!ぐっちゃぐっちゃ!」
この3人は一体人間なのか?山か沼に棲息する醜い動物がエサを漁りまくる音響。キモチ悪い。
しかも婆さんが「こんなグロテスクなもんよう食わん!」とわめいている。
土地のモノを食いたくて来たんじゃないのか?
残念そうな女将の表情。
気色悪くて帰りたくなった。
しじみも向こうが先。またもや面白くない。
ぜんぜん旨味がない。味が抜けている。
刺身を食って決心した。
生ぬるくてうまくない。石鯛もカンパチも歯触り悪く旨味もない。
熟成させた柔らかさではない。えっ!と思う食感だ。
「お腹一杯になっちゃった。会計してください」
「えっ!・・・ではお出しした分だけ戴きます」
驚く四十男。
1万円を預けトイレで放尿。
「体調に気をつけて・・・ではこれで・・・」
「ごちそうさまでした」
40分で帰ったら悪いと思ったが、これ以上居られない。耐えられない。
店を出てからオツリを見る。8,100円もある。
「1,900円!!!」
安い。安すぎるぜ。
高くてもいいからキリリとうまいヤツを静かな環境で食べたかった。
だが後日考えると・・・
料理の途中で数皿食っただけで帰る失礼な客のカネなんかもらいたくない!けどタダでは納得しないだろうから少しだけもらっといてやれ!ってことかもしれない。
ホテルに帰って宮崎のSAで買った黒豆きんつばを食べる。
あの時なぜ甘い物を買ったのか?きっと疲れていたのだろう。
塩味が効いてうまい。3個食ってハラも舌も収まった。(2015.5.14)