先日の天ぷら。スタンバイしたのにフラれたちくわ。冷蔵庫で泣いている。
不遇を託ったモノを今度は主役に抜擢し、陽の目を見せなきゃならない。
それが図らずも蔑ろにした罪滅ぼしだ。天ぷらになろうとしてなれなかった不幸なちくわに対する真っ当な扱い。
ちくわにも魂がある。自称“料理人”のオレ。すべての食材に感謝することから美味しい料理は生まれるのだ。
いつもの店、いつものレジ、いつものMちゃん、いつもの下ネタトーク。
「昨日吉*行って来たんさぁ!ふたつやったぜ!」
「すごい!あははははっ!」
昨日から浸水させた昆布4切れと煮干し6尾。弱火でゆっくりじっくりダシを摂る。
紀文のちくわ2本、あぶらげ5枚、こんにゃく1丁、鹿児島産新じゃが1袋6個。
切る。新じゃがは皮が薄くてラクに剥ける。
昆布も煮干しも入れたままドサッと材料投入。
しばし煮る。味付け。九重みりん、ヤマサ醤油、カップ印三温糖。味見。かなり薄味。ミリンと醤油追加。それでも薄味。
煮物は薄味が好き。ダシの効いた薄味をたっぷり具に含ませるのが好み。
ここまでが昨日の仕事。
数時間後、冷めた。気になってフタを開ける。食べてみる。各1個ずつ。
「うまい!」
ちくわが甘みアリ。本場鹿児島の薩摩揚げみたいに甘い味付け。どうしてもこれを天ぷらにしたくなった。
甘めの煮汁、ドンピシャ。薄いと思ったが冷めたらちょうど良い。
じゅわっと味が染みたあぶらげ。
芋とこんにゃくは明日に期待。
一日経った。冷蔵庫で冷え冷え。食ってみる。
「うまい!」
一晩経過してジュンッと味が染みた。4つともうまい。特に新じゃが。
煮物を熱くした。メシが炊けた。
「うまい!」
だが熱々より冷え冷えの方がおいしい。
煮物は冷めてゆく過程で味が入る。冷たいヤツがベストの状態なのだ。温めるとせっかく具に入った味がツユに放出されてしまう。
甘さしょっぱさ濃さ加減は最適。だからご飯のオカズには物足りない。
2合メシとラーメンどんぶり山盛りの煮物。ハラもまぁるく膨らんだ。(2017.4.21)