開業して間もないころですが、とある患者さんが来院しました。
ピシッとした背広を着て、ちょっと見は商社マンか公務員といった感じの人です。


「関節が痛いんだが」


傲然とした口調で言いました。


私のほうは大切な患者さんですので、


「どこの関節ですか?」


と丁寧に聞きました。


するとこの方、困ったような顔をして


「関節といったら関節だ」


さらに傲然として言います。


「ええ、ですから、どこの関節でしょうか?」


「・・・・・・ここだ」


といって膝を指差しました。


その後はまぁ、順調に進みましたが、どうして最初から素直に「膝が痛いんだけど」と言えなかったんでしょうね?


思うにこの方、「関節」という言葉にずいぶんと重々しさを感じていたのではないでしょうか。
つまり専門用語を自在に操る、みたいな。


ほとんどの方はご存知かと思いますが、関節というのはそれはそれはたくさんあります。いったいいくつあるのか、昔習ったような気もしますが忘れました。数百はくだらないと思います。
それを漠然と「関節が痛い」といわれても・・・。


背骨と背骨の間もすべて関節になってます。背骨と肋骨の間も関節になってます。数えるのがめんどくさいけど、背骨の辺りだけで40くらいはあるんじゃないかな?


背骨で思い出しましたが、背骨のことを
脊髄=せきずい」
という人も多いです。


脊髄というのは背骨の中を通っている神経組織のことですので、背骨のことをいいたいのであれば
脊椎=せきつい」
という言葉を使ったほうが正解です。


でも一番こちらにとってわかり易いのは、背中が痛いなら「背中のこの辺がこういうふうに痛い」というように言って頂くことです。
腰が痛いなら「腰のこの辺がこういうふうにすると痛い」というように。


こちらが知りたいのは、どこが痛い、ということ以上に、どういうふうに、どうした時に、どのように、という情報なのです。


患者さんが無理して専門用語を使うと、かえって分かりづらいことになりますので、なるべくわかり易く、普段使っている言葉で説明していただきたいと思います。


専門用語というのは一つの言葉にそれぞれ定義があり、専門家同士で話すときに使う便利な言葉なのであって、それが使えるからといってカッコイイ〜とか、学識がある、などということにはなりません。


私なんぞもずいぶんと忘れている言葉もありますし、知らない言葉もあります。定義を間違って覚えているものもあるかもしれません。


それこそ恥ずかしいことですけどね〜