2006年09月04日

資本金減少決議の要件

ようやく夏休みの宿題の目処が立ちましたので,ブログの記事を更新できます。
ただ,明日の朝,早起きしなければいけないので,今日は,簡潔な記事になるようにしなければなりません。

さて,CORPLAW さんから,資本金の減少について,質問をいただきました。

「非常に基本的な質問で恐縮なのですが,資本の減少を会社法の下でも株主総会の特別決議を要求しているのはどういった理由からなのでしょうか?
 資本が計算上の数額であるに過ぎないのであれば、特別決議まで要求するほど株主に影響があるものなのでしょうか?」

資本金の減少というと,通常,債権者保護手続の方に目がむいてしまい,株主総会の決議要件の方は,あまりスポットライトが当たりませんね。

確かに,資本準備金やその他資本剰余金の資本金への組入ならば,株主にとって不利なので,特別決議が必要なのでしょうが,資本金の減少は,株主に有利なのだから,普通決議でもいいじゃないか,という立論は可能でしょう。

でも,株主にとって法的に有利であるからといって,会社の活動にとってプラスになるかどうかは別問題。

 世間一般の人は,資本金の分だけ会社の純資産が残っているから,資本金があるうちは,会社は倒産しないと誤解している人も多いですから,法律論だけ振り回すわけにはいきません。

 これまで,過去の日本の法制や欧州の資本金制度の説明に引きずられて,「資本は,会社財産を確保するための基準である」などと,やや誇大広告気味の説明がされていたため,世間一般の人のそうした誤解はなかなか解けません。

 改正の方向性として,そうした世間の信頼を確保するため,「純資産が資本金の2分の1以下になったら,解散しなければならない」という規定でも設けて,先祖帰りすればよいという考え方もありうるのですが,残念ながら,日本は,大昔に,あまり合理的な理由のないまま解散事由じゃなくしてしまっていますし,そのような改正は,現実的には極めて困難です。

 それで,昨年あたりから,私達の間では,資本金に対する正確な説明をするべきだという考えから,資本金について身も蓋もない説明をしているのですが,その程度では,世間の人の資本金に対する誤解がなくなるはずはありません。

 実際,旧商法と会社法との間で,資本充実のあり方や分配可能額の計算方法が革命的に変化したわけではないにもかかわらず(ノーマルな事例では,ほとんどの場合,旧商法と会社法では,同じ額が算出されるはずです),それが一部の人には,革命的なものと映るのは,私達が
〇駛楸發蓮で枦以外の場面においては,会社財産の確保のための基準にはならない
配当の場面においても,資本金や準備金だけが,その基準となるわけではない。
という旧商法時代から続く当たり前のことを,端的に説明しているからだと思うのです。
 それほどに「資本金は,会社財産を確保するための基準」という幻想は,根深いものがあります。

 もちろん,旧商法や会社法でも,少なくとも,「資本金に相当する財産が,(いつかはともかく,また,今残っているかどうかはともかく,)一度は会社に出資されている」という程度の信頼はありますから,法的な説明としては,「資本金を減少すると,会社に対する信頼が減少するおそれがある」というのは,嘘ではありません。

 いずれにせよ,資本金が減少すると,会社に対する信頼が事実上減少する可能性があるので,株主にとって有利とばかりはいえないのでしょう。

 また,資本金は,入札や許認可の要件とされている場合があるので,資本金の減少により,会社の事業活動に法的な影響を与える場合もあります。

 そういうことからすると,資本金の減少は,株主に法的に有利であったとしても,単純多数を採ったらすぐに変えられるようなものではなく,会社の基本的な事項として,特別決議で慎重に決めましょうというのが,今の法制なのです。

普通決議か特別決議かというのは,理論的に割り切れるようなものではなく,政策判断なので,今後資本金についての考え方が変化していけば,普通決議にするという改正があってもおかしくはないと思います。

(質問コーナー)
Q1
簿価債務超過の会社を消滅会社とする吸収合併を行う場合、簡易合併の要件を満たしていたとしても、存続会社において総会承認決議が必要となります(796条3項但書、795条2項1号)。もっとも、存続会社が消滅会社に対し貸付けを行っているようなケースでは、これを存続会社が任意に債権放棄することにより、簿価債務超過状態を解消したうえ、簡易合併を行うことは認められるでしょうか(条文上は795条2項1号に該当しないこととなりそうなのですが。)。また、同様に、消滅会社において、存続会社を引受先とする増資を行うことでも簡易合併によることができますでしょうか。
Posted by 串間海 at 2006年09月01日 01:50
A1
 どのような方法であれ,合併前に簿価債務超過を解消すれば,簡易合併をすることはできます。

Q2
 現物出資の計算に関連して、お教えください。
早速「会社法の計算詳解」を買って読んでみました。
共通支配下の取引の場合
<設例1>
現物出資財産:土地(簿価500 時価2,000)
会計処理 (借方)土地 500(貸方)資本金 500 ----計算書類規則37条1項1号ハ
 この場合には、
質問1.会社法445条2項(「給付をした財産の額」の1/2以上は資本金とする)の「給付をした財産の額」は2,000にはなりませんか?
質問2.もしそうであれば、資本金が500(<1,000=2,000x1/2)しか増えない上記の例は445条2項違反となりませんか?
質問3.あるいは「給付をした財産の額」は簿価の500と考えるのでしょうか?
質問4.「給付をした財産の額」と199条1項3号の「現物出資財産の額」とは同じ額になるのでしょうか?この例では199条1項3号の「現物出資財産の額」は2,000と考えてよいのでしょうか?
<設例2>
現物出資財産:土地(簿価500 時価20)
会計処理 (借方)土地 500(貸方)資本金 500 ----計算書類規則37条1項1号ハ
質問5.含み損のある資産の場合はこのような処理となるのでしょうか?含み損があっても財産が増加することから債権者にはプラスになりますが、不健全な処理に疑問を感じます(減損会計の洗礼は受けるでしょうが・・・)。
Posted by SHU at 2006年09月01日 14:10
A2
質問1 500になります
質問2 500になるので,445条2項違反にはなりません。
質問3 貴見のとおり
質問4 必ずしも,同じになるわけではありません。199条1項3号の価額については,株主間で合意すればいくらでもいいのです(普通は,検査役や責任のことを考え,時価以下ですが)。「給付をした財産の額」は,現物出資財産について会計帳簿に付されるべき額なので,時価評価すれば時価,簿価評価すれば簿価になります。
<説例2>
 会計基準上,簿価で引き継ぐのが会計基準として相当でないというのであれば,会計基準に問題があると主割りますが,グループ会社内においては,会社の内部取引と同様に帳簿価額を引き継ぐとする会計基準は,一理あると思います。

Q3
(1)ストックオプションとして新株予約権(無償)を発行する公開会社が特に有利か否か微妙であったため(一応)特に有利なものとして、株主総会の決議を経る場合、新株予約権の内容としての「行使条件」のうちの1つのみを総会で決議し、残余の行使条件の決定を取締役会に委任することは可能でしょうか(会社法239記,枠歡蠅靴討い襪茲Δ妨えます。)。(2)委任できない場合、取締役会が残余の「行使条件」を定めて(契約書にも記載)も、/軍予約権の内容とならず、行使の条件の登記もできませんが、このような新株予約権を発行した場合、不都合なことが起こりうるのでしょうか。譲渡制限はもちろん総会決議を経ていますし、証券も発行しません。(3)取締役会決議のみに基づく契約上の行使条件の定めは有効でしょうか。この条件を満たさない場合も、予約権は消滅するのでしょうか。
Posted by moremi at 2006年09月01日 14:35
A3
(1)募集新株予約権の内容を総会と役会で一部ずつ決定することはできません。
(2)(3)契約上の行使条件は,第三者に対抗することはできません。当事者が,その行使条件に違反して新株予約権を行使した場合に,行使自体が不適法になるのか,行使自体は有効であり,債務不履行責任が生ずるだけなのか・・。この点の法的リスクはありますね。

Q4
吸収分割において株式買取請求がされ、代金未払のとき、758条8号の剰余金の配当がされますが、このとき当該株主には承継会社株式が配当されるのですか、それともこの株主に限り現金配当をすることが可能でしょうか。
現金配当をして、なお分割会社株式について価格を決定するということですか
Posted by yt at 2006年09月01日 16:21
A4
(勘違いしていたので初出から訂正しました。)
組織再編時の株式買取請求権の効果は,一般には代金支払い時ではなく,組織再編の効力発生日に生じますが、吸収分割の場合は代金支払い時に効力を生じます。
そのため、買取請求をした株主も、代金未払時には、剰余金の配当を受け取ることができ、その分は、買取価格で調整します。

Q5
施行規則附則6条に定める記載省略が可能となる事業報告は、次の2つの要件を満たす必要があると了解しています。
1)施行日以後最初に到来する事業年度の末日に関する事業報告で 2)施行日以後最初に開催する株主総会において報告すべきもの
従って、定時総会までの間に臨時総会が開催されると記載省略不可となるのはわかるのですが、定時総会までの間に会社法319条に定める決議省略を行った場合はどう考えればよいですか?
法319条の条文は、あくまでの「決議があったものとみなす」だけで、「株主総会の開催があったものとみなす」わけではないので、臨時総会としてカウントせずに済ませてもよいのでしょうか? やっぱり総会としてカウントするのでしょうか?
Posted by greeenlemon at 2006年09月01日 22:42
A5
決議の省略は,総会の開催には該当しないと思います。

Q6
先日、同和鉱業が長期保有株主を優遇する制度をリリース
しましたが、これは株主平等原則に反しないでしょうか。
保有期間に着目して別異な取り扱いをするのはどうかな、と思います。
株主価値の視点、少数株主権の視点からご教示頂けますでしょうか。
Posted by 法務次長・課長 at 2006年09月03日 08:09
A6


Q7
簡易組織再編の場合でも、Π奮阿亮蠡海肋蔑できないと書かれていますが、会社法第785条3項によると、785条1項各号に掲げる場合は、株主への通知を省略できるとあります。また、その第1項2号では、前条第3項(784条3項=簡易吸収分割)に規定する場合、となっています。
簡易吸収分割の場合は、株主への通知は省略できると考えてよろしいのでしょうか?
それとも私の読み違いでしょうか?
Posted by tds at 2006年09月03日 10:46
A7
おっと失礼しました。[式と簡易・⊂受側と譲渡側をまとめて書いたので,ミスってしまいました。分割会社側の簡易吸収分割の場合には,株式買取請求権がありません。

Q8
公開会社(2条5号)の条文の読み方についての質問です。
非公開会社とは「全部の株式について譲渡制限を定める会社」を指し、一部の株式についてのみ譲渡制限を定める会社は公開会社に含まれるとされていますが、条文上は、一部でも株式の譲渡制限をする会社は非公開会社に当たるとも読めそうです。そこで、2条5号の条文の読み方を教えていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
Posted by ねんねん at 2006年09月03日 11:22
A8
公開会社については,記事になっているので,mさんの目次から当該記事を参照してください。

Q9
雑誌社の担当の方が、このブログを見ているのだと思われます・・・。
Posted by たきんぐ at 2006年09月01日 10:46
A9
そんな身も蓋もない・・・。

Q10
正確には「ドラエもん」ではなく、「ドラえもん」です。
Posted by 恐縮ですが at 2006年09月02日 06:45
A10
ありがとうございます。
ただ,著作権や商標権侵害にならないように配慮したつもりです(嘘)。
  

Posted by masami_hadama at 01:08Comments(84)TrackBack(0)

2006年08月27日

損失の処理

会社法の計算規定や会社計算規則が難しいという声が多いので,計算チームがすごく詳しい本を書きました。

「会社法の計算詳解 
−株式会社の計算書類から組織再編行為まで−
 郡谷大輔・和久知子 編著 細川充・石井祐介 著
 中央経済社
 5400円(税別)」

あまり売れる本ではないかもしれませんが,企業の会計に携わる担当者や弁護士,公認会計士・税理士などコアな層には,どうしても必要な本だろうということで,みんな頑張って,600頁以上にわたって,計算にまつわる問題点を説明しています。
(個人的には,組織再編関係が分かりやすくて,好きです。)
 それほど部数を刷っていないそうなので,置いている書店も限られているみたいです。
 必要な方はお早めにお買い求め下さい。
 なお,司法試験受験生や司法書士受験生には,不要かもしれません。

では,計算本出版を記念いたしましたして,経理初心者さんの計算関係の質問に詳しくお答えしたいと思います。

質問の内容は,
「子会社の中で多額の利益が上がった会社がありまして、その際、その他利益剰余金をその他資本剰余金に持っていこうとしたところ、法務局の登記で受理してもらえませんでした(2006年8月月初)。
逆のパターンであるその他資本剰余金をその他利益剰余金に持って行った場合,今回も登記を受理されないのではないでしょうか。」
というものです。

会社法プロパーの問題というより,会計基準の問題ですね。

会計では,資本と利益の峻別という命題があります。

株式会社の創世記に,「永久資本性のもと払戻しが禁止される出資財産とそれ以外を区別する」という点から唱えられたこの原則は,会計理論の発展の中で,事業年度ごとの利益を正確に表示するという機能も加えながら,現在も,生き続けています。

配当可能かどうかというだけなら,その他利益剰余金も,その他資本剰余金も配当できるのだから峻別する意味がないのではないかと思われるかも知れませんが,会社の収益力の評価という点からすると,この二つを混同するのは,よくありません。

それで,その他利益剰余金と,その他資本剰余金のやりとりは原則として禁止されています。

この観点から,経理初心者さんの会社がやろうとした,「その他利益剰余金→その他資本剰余金」はできないのです。

その逆の「その他資本剰余金→その他利益剰余金」も原則としてはできません。

しかし,例外的に「損失の処理」(452条)はできます。

ここでいう「損失の処理」は,その他利益剰余金のマイナスを,その他資本剰余金を減少することにより,埋めることです。分配可能額とは関係ありません(詳しくは,最初に詳解した計算本の266頁を見てください)。

この損失の処理が,どのような場合にできるかは,会計基準の方で定められていて,いつでもできるというものではありません。

1年に1度だけ,決算期のその他利益剰余金のマイナスを埋める限りにおいてできることになっています。

これは,会社が,期中で生じた損失を,期中にその他資本剰余金で埋めて,決算してしまうと,利益と資本が混同して,収益力が水増しされて表示されるおそれがあるからだと思います。

それで,決算期におけるその他利益剰余金のマイナスが明確になって初めて,そのマイナスを,その他資本剰余金で埋めることを認めているのです。

 この損失の処理は,手続としては,原則として,株主総会が必要であり,459条の定めがあれば,取締役会で決議することもできます。

 なお,この損失処理は,決算期後の会計処理なので,株主総会(又は取締役会)で承認する貸借対照表は,その他利益剰余金のマイナスを埋める前のものであり,当然,公告も,その他利益剰余金のマイナスのものについて行われます。


(質問コーナー)
Q1
司法試験の勉強をしている者です。会社分割と事業譲渡についてご質問があります。会社分割(2条29号・30号)では、「権利義務の全部又は一部」を譲渡することができ、「営業」概念はなくなっています。
この改正により、会社分割でなく事業譲渡を選ぼうとする場合は具体的にどのような場合でしょうか?
というのは、会社分割のほうが異議手続だけで債権者の個別の同意なく債務の移転ができるし、対価柔軟化を考えると、会社分割のほうが事業譲渡よりも賢い選択だと思うので、あえて事業譲渡を選ぶ場合が思いつかないので、ご質問した次第です。
Posted by あうん at 2006年08月25日 11:09
A1
会社分割は,事業譲渡と異なり,事前開示書面・事後開示書面の作成が必要ですし,登記も必要です。
債権者異議手続の方が個別同意よりも手続きが楽とも限りません。

Q2
4月22日付のQ10には、公開会社・非公開会社の別とともに、会社法施行と同時に監査範囲を限定する旨の定款の定めを置く旨の条件付き定款変更決議がなされているかどうかについても、明記されていませんでした。したがって、同日付けA10の前段「商法特例法の経過規定は、施行後は適用されません。」で一般的に説明した上で、非公開会社かつ条件付き定款変更決議がなされていないケースについて、補足的に後段で説明したものと読んでいました。
教えていただきたかったのは、8月18日Q3のケースであって、かつ、条件付定款変更決議がなされた場合でも、旧商法特例法26条3項の規定を受けるのかどうかということです。
『会社法施行前後の法律問題』では受けると説明されているらしいのですが、監査役の権限の拡大を伴わないにもかかわらず、18年定時総会で限定監査役が任期満了するとなると、旧商法特例法26条3項1号の趣旨の伝統的解釈とも矛盾する取り扱いに思われます。
Posted by 司法書士受験生 at 2006年08月25日 11:54

先生は「定時株主総会を待たずに、施行時に監査役は退任するので、商法特例法は適用されない」、と書かれていますが、これは、「定時総会まで退任しなければ、定時総会終結時に退任する」という意味でしょうか?

実は、今年の司法書士試験では、ゝ貍λ‘知稻‐紊両会社が、会社法施行前に資本の額を1億円超に増資し、併せて、会社法施行と同時に監査役の権限を会計監査権限に限定した場合(会社法施行を条件として、定款変更決議をしていた場合)、従前の監査役の任期はどうなるのか、ということが出題されており、この点について、5月1日に退任しないのは良いとして、定時株主総会の終結時に退任はしないのか?ということが問題になっています。
先生の4月22日の書込みでは、「商法特例法の経過規定は、施行後は適用されません。」としていることから、監査役の任期は原則どおり4年になるとも読めますし、実際、各予備校ともそうしています。ただ、「会社法施行前後の法律問題」の98頁〜105頁の説明を読むと、5月1日に退任するなどの「行為等が行われない限り」(100頁)旧商法特例法上の任期が適用されると読めるため、どっちが正しいのか?と問題になっている次第です。
ちなみに、各予備校とも、上記の監査役の任期が4年であることを前提に、定時株主総会の終結時に確実に退任する監査役がいないのに、議事録に監査役が退任すると書いてあるのは、法務省側の出題ミスとしております。個人的には、予備校の見解については半信半疑なのですが。上記の監査役の任期について、先生のご意見をいただければ幸いです。
Posted by 迷える受験生 at 2006年08月26日 00:06

A2
私の「商法特例法の経過規定は、施行後は適用されません。」という言葉の意味は,すでに述べたとおり,定款で特別の定めを設けなかった事例を前提にしたものです。
司法書士の問題が絡んでいると私は,何も語れませんが,経過措置本は,間違っていないと思います。

Q3
(A社とB社が互いに自己の株式を現物出資して互いの株式の発行を受けることについて)論理的にできないというのは、新株発行決議の時点で現物出資財産が存在しないからでしょうか?金庫株を現物出資財産とすれば、可能でしょうか?
度々の質問で、恐縮ですがご教示ください。
Posted by sakky at 2006年08月25日 17:03
A3
株式の発行も,自己株式の処分も,出資の履行をして,はじめて行うことができます。
つまり,どちらかが先に履行しなければならないので,これを同時に行うことはできません。

Q4
千問のQ359、Q319関係の質問をさせて頂きます。
新株予約権の行使条件に「新株予約権者は当社の従業員であること」との規定がある場合に、退職した新株予約権者が保有していた新株予約権は、『どの者との関係においてもおよそ新株予約権として行使されることができなくなった場合』として、会社法第287条に該当し、強行法規的に消滅してしまうのでしょうか?
それとも、会社は新株予約権の取得条項として「新株予約権の行使条件に該当しなくなったときは、当該新株予約権を取得できる」との規定を置くことで、新株予約権を消滅させずに、自己新株予約権とする余地があるのでしょうか?
Posted by ほにょ at 2006年08月25日 18:23
A4
新株予約権の内容をどのように定めるかにつきます。
当然消滅するように定めることもできれば,消滅しないように定めることもできるでしょう。

Q5
千問の記載内容全般についての質問をさせて頂きます。
以前、こちらのブログで、
「登記実務と密接に絡む上、色々な場面が想定されることから、調整も色々と必要で、色々と難航し、今に至ってしまったわけですが、ようやく調整がつきました〜」
とおっしゃってたと思うのですが、千問もそのような調整をされたのでしょうか?
つまり、千問での新見解(Q390:条件付選任決議は条件成就時に選任の効力発生→選任決議日起算、Q539:兼任禁止違反は条件付決議→就任受諾禁止、等)は登記もそのようになる、との認識でよろしいでしょうか?
Posted by たけ@千問大好き at 2006年08月25日 21:15
A5
詰めている部分もあれば,詰めていない部分もありますので,なんともいいようがないですが,登記官との意見に食い違いがある場合には,正式に相談してみてください。

Q6
過去ログを拝読しましたが、所有と経営の分離の許容性について質問がございます。
即ち、会社法では、株式会社において所有と経営の分離原則を採用する許容性について、どのように説明されるのでしょうか?
従来は、所有と経営の分離の許容性については、株主が間接有限責任しか負わない以上、会社経営から株主を遠ざけても良い、という説明が為されていたと思います。
そして、この説明は合資会社の有限責任社員が業務執行権を有していなかったことと整合性を有していたと思います。
しかし、会社法では合資会社の有限責任社員も業務執行権を有しており、「有限責任→経営に関わらせなくても良い」という命題は維持し辛くなったのではないかと思います。
また、『会社法100問』37頁2(二)の説明許容性としては根拠が薄弱であるような気が致します……。
Posted by 法科大学院生 at 2006年08月25日 22:09
A6
「経営から遠ざけることができる」という話と,「遠ざけなければならない」という話は別ですよね。法科大学院生さんは,どちらの話をされているのでしょうか。
 「有限責任社員でも,経営に関わらせなくてもよい」という命題は,今も維持されています。
 「有限責任社員は,経営に関わらせてはならない」という命題は,採用されていません。
 後者は,「有限責任だと,なぜ経営に関わってはならないのか?」という理由が全くわからず,旧法下ですら,明文の規定にかかわらず,業務執行が可能であるという見解が有力だったと思います。
 私的自治の原則のもと,出資者が定款で自らを経営から遠ざけるような機関構成を採るならば,それを尊重するのが原則。逆に,「経営から遠ざけなければならない」という制限をするのならば,その規制に対する合理性が必要です。

Q7
計算書類関係でご教示ください。
会社法435条4「株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。」これは旧商法には記載の無かった内容と考えておりますが、次の認識で正しいかご教示ください。,海海琶歛犬垢戮計算書類及びその附属明細書は、取締役が監査役及び会計監査人に提出したものという整理でしょうか。実務上、提出後、数回修正を入れますがそれを反映させた最終版という整理でよろしいでしょうか。10年保存するのは、本店に備えおく5年とは別に、計算書類作成部署(あるいは特定取締役?)が行うことを想定されているのでしょうか。10年保存するのは写しではなく取締役の捺印済のものという整理でしょうか。
Posted by くろすけ at 2006年08月26日 15:06
A7
 〆能版です。
◆_餬彡∧蹐諒歛元遡海汎韻犬任后
 計算書類に捺印は必要ありません。捺印かどうかではなく,作成したものを保存するというだけです。

Q8
取締役会設置会社で株式を消却する場合について質問させてください。178条2項では、取締役会の決議に
「よらなければならない」と規定されています。
これは 定款により決議権者を変更できないという意味だと理解しています。
では、なぜ 取締役会設置会社で株式を消却する場合取締役会の決議によらなければならないのでしょうか?個人的には (迅速性を欠くことになりますが)株主総会の決議を要してもおかしくない気がしております。
Posted by maru at 2006年08月26日 23:20
A8
「よらなければならない」とは,取締役に委任することができないという意味です。
 定款で,株主総会の決議事項にすることはできます(295条2項)。
 ただ,定款で取締役会で消却する権限を奪うことはできません。
 募集事項の決定権限を奪うことができないのと同じです。

Q9
ホームページ決算公告の実施について、改正前商法では取締役会の決議が必要であると規定されていましたが(改正前商法283条7項)、会社法では取締役会の決議が必要であるとは規定されていません(会社法440条3項)。このことから、ホームページ決算公告の実施については、取締役会の決議は必要なくなったと考えますが、それでよろしいでしょうか。
Posted by JM at 2006年08月25日 00:01
A9
原則は取締役会ですが,取締役に委任をすることはできるでしょう。

Q10
役員等の欠格事由について教えてください。
一部の会社では、8月中に監査役会を開き、選任決議の効力を9月1日に発生するものとして、中央青山監査法人を一時会計監査人に選任したと発表しておりますが、これは法律上何の問題もないのでしょうか?
問題ないとすると、千問Q539の1の,領磴両豺隋⊃堂饉劼子会社の取締役を会計参与に選任する際に、選任決議の効力を取締役の地位を退任したときに生じるものとするという期限を付けておけば、当該選任決議は無効にはならないということでしょうか?
欠格事由のある者を役員等に選任しても、選任決議の効力を欠格事由がなくなったときから発生するとすれば、有効な決議になるのかということです。
よろしくお願い致します。
Posted by パラリーギャル at 2006年08月25日 00:03
A10
「取締役の地位を退任する」ことを期限にすることはできると思います(不確定期限)。
条件だと,微妙になります。

Q12
先日書いた質問がオーストラリアの海に沈んでいるようなので再度書かさせていただきます。
\萋「募集」の概念に関してご教授いただきました(8月1日Q2)。
商事法務1741号20頁にも葉玉先生の言われるように、「株式発行手続+自己株式の処分手続=募集」という概念とありましたが、証取法に於ける「募集」とは異なる概念と書いてありました。
私の理解の間違いは、募集を、公募時に於ける勧誘行為と理解していたところにあるようです。
ところで葉玉先生、証取法上の「募集」はやはり取得申込みの勧誘先の人数で判断しているのではないでしょうか?(証取法2条3項)
A12
申し訳ありませんが,証取法の質問は,答えられません。

Q13
株式の分割(183条)には基準日を定める(183条1項)のに、株式の併合(180条)では何故、基準日を定めず、効力の発生日の前日がその役割を果たす(182条)ようになっているのでしょうか?
Posted by ネットくん at 2006年08月25日 00:42
A13
株式の併合も,基準日を定めることができますし,普通は,定めるでしょう。
株式の分割に,基準日の設定を義務づけたのは,保振法・社振法等の処理上,基準日の設定が必要であることなどを総合的に判断したものです。

  
Posted by masami_hadama at 09:20Comments(91)TrackBack(0)

2006年08月12日

利益の配当と剰余金の配当

 私は、今、オーストラリアのHAYMAN ISLAND(ヘイマン島)にいます。

 ヘイマン島は、自然あふれる国立公園内の無人島にリゾートホテルを建てた島であり、ホテルのスタッフとお客さん以外には、人は住んでいません。
 南半球なので、今は冬なのですが、ここは、かなり北の方にある亜熱帯の島なので、「つめてえっ」と言いながらも、プールで泳いだり、海でカヌーを漕いだり、シュノーケリングしたりして楽しんでおります。

 クジラが潮吹く珊瑚礁の海、砂浜で遊ぶ無数のカモメ、デッキチェアで羽休めをする南国の白い鳥達。
 「楽園」の一部を間借りしている私ではありますが、現実には、奥方様とお世継ぎ様のお世話にかかりきりであり、「家庭教師」兼「ガキ大将」兼「執事」兼「ウンチの世話係」として子供達に振りまわされ、皆が遊びつかれて寝静まった後は、私の夏休みの宿題である原稿書きにいそしむという、若干貧乏性な夏期休暇をすごしています。

 さて、こういう島なので、インターネット接続環境はあまりよくありません。

 最初、部屋の電話+モデムでアクセスしようとしたら、なぜだかうまくいきませんでした。2日間アクセスできず、「まあ、仕方ないか。しばらくブログを休もう」とややにやけ顔でつぶやいたのもつかの間、本日、ビジネスセンターのLANに私のVAIOがつなげることがわかりましたので、本日から妻子の世話に加え、ブログの世話もすることにしました。

 手始めに簡単そうな質問をひとつ。

「てんこもり」さんから、剰余金の配当について質問を受けました。

「旧商法での利益の配当と会社法の剰余金の配当とでは、変わったみたいなのですが、うまく理解ができません。
 私なりに勉強はしたのですが、うまく実感としても理屈も理解できません。
 お時間がありましたら、簡単でいいのでご教示お願いできないでしょうか。」

 旧商法の「利益の配当」と、会社法の「剰余金の配当」は、会社法になって仝淑配当ができるようになったこと、回数制限が撤廃されたこと、0儖会設置会社だけでなく、監査役会設置会社でも取締役会で配当の決定をすることができるようになったこと、な配可能額の計算において、のれんの2分の1を控除するようになったこと、ハ結配当規制をすることができるようになったこと等が変わりましたが、本質的には、それほど変わったわけではありません。

呼び名は、「剰余金の配当」に変わりましたが、もともと「利益」の配当という旧商法の呼び名が、その実質を正確に表していなかっただけで、旧商法時代も実質的には剰余金の配当という部分もありました。

もともと「利益の配当」と言う呼び名は
 1事業年度で会社が稼いだ利益を配当する
というイメージを持っていますね。
 旧商法では、’枦は、定時株主総会で決めた1回だけしかできず中間配当を入れても2回しかできなかったこと、期中に新株発行がされたときは「日割り配当」をするのが一般的だったことなどから、多くの会社が、1事業年度ごとに稼いだ利益の一部を株主に還元しているというイメージを持っていたのだと思います。

 しかし、旧商法においても、安定配当という名目で、配当を毎年同額(額面株式があったころは、額面の5%)にし、利益が余れば、それを任意積立金にして、翌年以降、当期損失がでた場合などに、その任意積立金を取り崩して、通常と同じ額の配当をしていました。

 この処理は、結局「配当決議以前に会社が稼いだ利益の累計額から、配当をする」ということをやっているのですが、「その年に稼いだ利益を配当する」というイメージを持つ人にもその処理を理解しやすくするために、配当平均積立金等というような名前をつけて処理していたわけです。

 実際に旧商法でも、配当可能利益は、一事業年度ごとの利益をベースに算定していたのではなく、「創業以来の利益の累積額」をベースに算定していました。任意積立金を積み立てていなくても、配当可能利益の範囲内で配当することは自由でしたから、一般に信じられていた利益配当のイメージと、商法上のイメージは、食い違っていたのです。

また、会社法と同様、旧商法でも、資本金を減少したり、自己株式の処分をして、自己株式の帳簿価額以上の払込みがあった場合には、その他資本剰余金が増加し、配当可能利益が増加していました。

 この「その他資本剰余金」は、会社が事業を営むことによって稼いだ「利益」ではありません。元を辿れば、株主による払込金であって、これを「配当」するのは、「出資金の払戻し」以外の何ものでもありません。

 それにもかかわらず、旧商法は、このような「その他資本剰余金」の配当も、「利益配当」と呼んでいたのです。

 以上のように、実際の商法上の利益配当は
「1事業年度で会社が稼いだ利益を配当する」
という一般的イメージとは、
 〜篭醗瞥茲陵益の累積額から自由に配当できること
◆,修梁昌駛楙衢抄發眷枦できること
という2点において、異なっており、会社法は、この実態を言葉に表すため「剰余金の配当」という文言を使用することにしたのです。

「剰余金の配当」は、創業以来の利益の累積額(その他利益剰余金)と資本・準備金の減少等により株主に払戻しをすることが可能となった額の累積額(その他資本剰余金)を配当するという意味であり、事業年度ごとの利益とは何の関係もない概念です。

その事業年度で得た利益を超えて配当することも自由ですし(この点は旧商法も同じです)、の途中で何回配当しても構いません。

例えていえば、「剰余金」というのは、株主が会社に貯金しているようなものであり、いつでもそれを「配当」という形で引き出してよいものなのです。

このようなイメージで「剰余金の配当」を捉えれば、従来の「利益配当」のイメージとの違いが明確になるのではないでしょうか。

 なお、持分会社には、「利益の配当」という概念が残っていますが、これは、文字通り、「利益」=「利益剰余金」の配当であり、資本剰余金の配当は含まれません。
 その代わり、持分会社には、「出資の払戻し」「持分の払戻し」という制度があり、それによって、資本剰余金等の払戻しを行うことになっています。
 これらについては、以前の記事で簡単に説明したところです。

(質問コーナー)
Q1
施行規則3条3項2号ホ「AがBを支配していることが推測される事実が存在」とありますが、どのような事例が該当するのでしょうか?
・Bの従業員がほとんど全員Aからの出向者
・Bの本社はAの本社ビルの一室
・Bの売上げのほとんどはAまたはAの社員向け
という状況では「アウト」でしょうか?
A1
これは,一義的な正解はないです。危ないと思えば、該当するという前提で子会社性を認定した方がいいですね。私の感覚でいえば、従業員が全員Aからの出向者で,給料もAが払っているならアウト、Bの本社がAの本社ビルの一室であるだけならセーフ、売上げがほとんどA又はAの社員向けであることがAの意向によるものだとするとですかねえ。

Q2
質問:「新株予約権証券を喪失したものは、公示催告によって新株予約権証券を無効とすることができるが、除権決定を得た後出なければ、その再発行を請求することができない。」
という文章があるんですけど、無効としたのにさらに除権の意味が分からないです・・無効としたものをさらに除権するとは、どういうことなんでしょう?お手数ですが回答のほうよろしくお願いします。
Posted by ;L; at 2006年08月09日 23:27
A2
公示催告手続により除権判決がされた時点で、新株予約権証券が無効となります。「無効とした上で、除権」しているわけではありません。

Q3
 いわゆる「取締役・監査役選解任権付株式」を発行する旨の定めを定款に設ける場合,108条3項9号及び会社法施行規則19条に掲げる事項は,すべて定款で定める必要があるのでしょうか?
 つまり,会社法施行規則20条1項に列挙されていない理由が,譲渡制限株式と同じなのでしょうか?
Posted by 姫野 at 2006年08月10日 19:38
A3
取締役・監査役選任権付株式の内容は、すべて定款で定める必要があります。

Q4
清算中に、監査役の任期規定があれば、適用されますか。
任期規定を無効と解釈しますか。
監査役の任期を1年とする休眠会社で、今後も1年なのかということです。
Posted by みうら at 2006年08月10日 20:17
A4
監査役の任期を1年とする定款の定めは、無効です。

Q5
 私は、仕事がら、上場会社の株主総会に立ち会います。最近の「会社法の総会」では、会社法は剰余金の配当が「在れば」議案として付議することとしていますが、無配の場合、事業報告会社法459条の定款の定めがある場合を除き、配当に関する説明は総会の説明事項には登場しないようです。当該規定がない無配会社に対して、会社法弁護士の方々は無配に関して「特段の説明は必要ありません」とアドバイスしておられ、今までなら無配のお詫びの場面でも、会社法下では、厄介な「無配の説明」から免れることが出来ます。説明の姿勢はモラルの問題ですが、旧商法下では、株懇などの意見交換で培われた「高
せいモラル」が重視されておりました。この問題に限らず、会社法はすでに社内の「素人」法務担当者の手を離れてしまった感があり<会社法の行間を埋めるモラルが醸成されるには、時間がかかりそうです。先生のご意見をお聞かせください。
Posted by T/A at 2006年08月12日 01:23
A5
 会社法は、上場企業にも、私の実家の会社のような三ちゃん会社(父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃんにより保有され、かつ、経営される会社をいう。)にも適用されますので、法的拘束力を持つルールを厳格にしていくのは、限界があります。
 また、無配である場合であっても、無配については、株主が報告事項に関する事項として、質問することができると思いますので、「無配の説明」から逃れることはできません。
 会社法になったからといって、旧商法で行われていた株主に対する情報提供や説明を省くようなモラルしかない会社は、投資家やアナリストから、「IR活動に不熱心な会社」として烙印をおされ、その評判を覆すことは困難でしょうし、敵対的買収がかかったときに、裁判官に対し「うちの会社は、株主のことを考えて防衛策を導入しました」と弁解しても、裁判官から「ふーん。」とあざ笑われるだけでしょう。モラルは、他人のためならずです。

Q6
会社法施行規則76条4項では、社外監査役の選任議案において、在任中に会社において法令違反等の事実その他不正な業務執行が行われた事実があるときは、その事実、当該事実発生の予防のために当該社外監査役候補者が行った行為、当該事実の発生後の対応として行った行為の概要を、総会招集通知において開示することを求めていますが、何故「社外監査役」限ったのでしょうか?つまり、何故、全ての監査役に法令違反等の事実の開示を求めなかったのでしょうか?
Posted by 日本銀行金融機構局 at 2006年08月12日 03:16
A6
 384条は、監査役が議案、書類等を調査し、法令定款違反等の事実があると認めるときは、監査役が、その調査の結果を株主総会に報告しなければならないこととされています。ですから、さらに、株主総会参考書類で報告させて不正を暴く必要はありません。
 会社法施行規則76条4項は、社外監査役に選任されたものが単なるお飾りになっているかどうかをチェックするための開示事項であり、一般的には、会社の内部のことをあまり知らない社外監査役が、きちんと監査役としての機能を果たしえたのかどうかを株主に開示するものです。社外以外の監査役は、会社の内部のことをよく知っているのが通常なので、あえて記載を要求していません。


  
Posted by masami_hadama at 21:06Comments(71)TrackBack(1)

2006年07月20日

任意積立金

代理人さんから、任意積立金についての質問を受けました。

「「その他利益剰余金」に分類される『任意(別途)積立金」の積み立て、および取り崩しについて、よくわかりませんので、教えていただけないでしょうか。会社法452条で、別途積立金は、株主総会・普通決議によって、積み立てができると思います。さて、この別途積立金を減少させる場合には、どのような手続きが必要なのか、よくわからないのです。
会社計算規則181条2項2号によれば、「法第四百五十二条前段の株主総会の決議によりある剰余金の項目に係る額の増加又は減少をさせた場合において、当該決議の定めるところに従い、同条前段の株主総会の決議を経ないで当該剰余金の項目に係る額の減少又は増加をすべきとき。」は、「株主総会の決議を経ないで剰余金の項目に係る額の増加又は減少をすべき場合」にあたるということです。
,海海如◆崚該決議の定めるところに従い」とは、積み立て決議の時に、「別途積立金(過去の積み立て分を含む)は、随時、何らの決議を経ずして取り崩しできる」とか「取締役会での決議で取り崩すことができる」等、具体的に定めておくことができるということでしょうか?
△泙拭2項1号を読むと、極端な場合「何らの決議を経ずして増加又は減少させられる、と定款に定めておける」のか? と思えてしまいます。」

さて、代理人さんの質問にある「任意積立金」は、会社が
「来年以降の安定配当のために、分配可能額から、さらに、任意準備金の分だけ控除して、配当しよう」
という趣旨で、積み立てるものです。
 あくまでも、任意のものなので、もしかしたら、別の趣旨かも知れませんが、普通は、配当の範囲を制限するもののはずです。

この任意積立金は、法律上の分配可能額の計算においては、控除されませんから、仮に任意積立金を控除せずに配当したとしても、462条の責任等は生じません。

ただし、定款で、任意積立金を控除して配当するという趣旨の定めがあれば、「定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき」(963条5項2号)として、違法配当罪が成立してしまう可能性があるので、注意が必要です。実務では、任意積立金を取り崩さず、その他利益剰余金をマイナスにして配当するという恐ろしいことが行われていると聞いたことがありますが、定款次第ではお縄になりますから、ちゃんと任意積立金の減少の決議をしてくださいね。

この任意積立金の増加・減少は、452条では、株主総会の決議によって行うことができることが定められています。

しかし、会社法上、この場合にのみ任意積立金の増加・減少が生ずると限定しているわけではなく、計算規則181条2項は、株主総会の決議以外で任意積立金が増減する場合を定めています。
すなわち、1号は、法令又は定款の規定により増減が生ずる場合であり、2号は452条の株主総会決議で定めた事由により増減が生ずる場合です。

代理人さんは、この定款(1号)や株主総会決議(2号)で定める内容が、何でもいいのかということを聞いているわけですが、答えは、「何でもいい」です。

もともと、任意準備金は、会社が、任意に配当を減らすためのものなので、それをどう増減させるかについて、会社法が五月蠅く制限する必要はないので、どうぞ、任意に決めてくださいという考え方ですね。

例えば、定款や総会決議で
 「取締役会の決議で取り崩すことができる」
と定めても良いし、
 「ジャイアンツが負けた日は、任意積立金を1万円減少する」
と定めてもいい。

それは、すべて会社の自治に委ねられています。

ただし、定款で増減事由を定めている場合において、それに矛盾する株主総会の決議を行うと、内容の定款違反として決議取消事由が生ずる可能性があるので、その点だけは要注意。

あとは、自由気ままにやってください。

(質問コーナー)
Q1
 P198の上から11行目
「 (三) さらに公開会社である大会社は、監査役会又は委員会並びに会計監査人を置かなければならない(328条1項)。 」
とありますが、下線部は「委員会又は監査役会並びに会計監査人を」となるべきではないでしょうか。
Posted by edomonto at 2006年07月20日 08:24
A1
委員会設置会社は、委員会+会計監査人の会社です。
ですから、(監査役会又は委員会)+ 会計監査人を置かなければならないということでよいのです。

Q2
旧法時代の少数説として選任決議は,被選任者の承諾を停止条件とする会社の単独行為であるとする見解(鈴木竹雄・竹内明夫「会社法(第3版)」p270)があり,これによれば,代表取締役Aが任用契約の申込みをしない場合や被選任者Bの就任承諾の受領を拒絶する場合でもBが就任できることを簡単に説明できたと思います。会社法が任用契約により就任するとの考えを採っているとして,上記のような場合には,どのような取扱になるのかをお聞きしたかったのです。
Posted by 猫太郎 at 2006年07月20日 10:40
A2
鈴木先生と竹内先生に文句を言いたくはないので(笑)、コメントはやめておきます。
普通の委任契約は、代表取締役が会社を代表して行いますから、会社法上の例外が認められるかどうかですね。

Q3
取締役会で監査役がコメントするの意味は、議題に関する所感を監査役が述べたりするのです。 議題に異議を唱えるわけでもなく、単なる感想のようなことを漏らされます。
それが法383条にいう「必要があると認める場合」の「意見」や「発言」とは思えないので、議事録に残す必要があるか悩んでいました。
やはり、発言がある限り監査役としては「必要があると認めて」のものと捉えるのが素直なのでしょうか?
Posted by greenlemon at 2006年07月20日 11:56
A3
意見は、異議でなくても記載する必要があります。
正直言って、「単なる感想」と言われても、中身が分からなければ答えようがありません。
議題と関係がないならば、書く必要はないですし、関係があるのならば、書いた方がよいのではないでしょうか。リスクをとって書かないという選択肢もあると思いますが・・。

Q4
会社法施行規則101条3項7号には、取締役会議事録に署名する者として「取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主」が挙げられていますが、「株主兼取締役」とか説明のために出てきた「株主兼従業員」のように、特段、株主の立場で発言していない者であっても、株主として署名しなければならないのでしょうか?
Posted by takahiko at 2006年07月20日 17:34
A4
まず、誤解を解くと、株主は、署名する必要ありません。単に作成者が氏名等を記載するだけです。
株主として出席したのではなければ、氏名を書く必要はありません。

Q5
合併には、略式手続を除いて(784条2項)、差止請求が認められておらず、無効の訴えのみとなっています。なぜかは、略式手続に差止請求が認められる根拠が株主総会の決議が省略される点にあることを考えると、合併には株主総会の承認決議があるからだと思いました。しかし、そうすると、場面を変えて、公開でない会社の募集株式の発行について、なぜ差止請求(210条)が認められているのかがよくわかりません。公開でない会社において募集株式の発行をする場合には株主総会決議が必要だからです(199条2項)。合併と募集株式の発行で、差止請求権の有無に違いが生じるのか、教えていただけたら幸甚です。
Posted by とむ at 2006年07月20日 17:41
A5
差し止めの問題は、ご指摘の点を含めて難問ですので、そのうち詳しくお話しします。

Q6
譲渡制限株式について、定款に「相続人等に対する株式の売渡請求」ができるという条項を設けた場合、取得条項付株式に当たるのでしょうか?
Posted by 川又 at 2006年07月20日 22:43
A6
当たりません。取得条項付株式は、株式の内容として規定されるものであり、相続人等に対する譲渡制限株式の売り渡し請求とは別物です。

Q7
非公開会社が公開会社になった時点で取締役(332条4項3号)監査役(336条4項4号)は任期満了するという規定を置いた立法趣旨について教えて下さい。
公開会社と非公開会社の違いの本質から置いた規定ですか、個々の会社の「機関設計」、「任期を伸長しているか」、「監査役の権限が会計監査権限のみであるか」等の個別判断を避け、画一的に処理できるようにしたのでしょうか。
A7
公開会社と非公開会社では、任期の伸張等様々な違いがあるので、一旦、任期を終了させないと、まずい点が出てくるからです。まずいところだけ、ピックアップする計画がありましたが、複雑なルールになったので、止めました。

  
Posted by masami_hadama at 23:48Comments(53)TrackBack(0)

2006年07月18日

財源規制違反行為の効力

商事法務の1772号に「財源規制違反行為の効力」という論文を載せてもらいました。

会社法の解説や、千問や、会社法100問で、違法配当有効説を説明してきたのですが、知り合いの先生から
「なぜ有効と考えなければならないのか」
「無効と考えると、まずいのか」
ということについて、ご質問を頂くことが多いので、論文を書くことにしました。

内容は、金銭配当、現物配当、自己株式の取得のそれぞれについて、無効説と有効説の帰結を考えると、違法配当について具体的に妥当な結論を導くためには、無効説は、まずいのではないかという内容です。

神田先生や弥永先生が無効説で基本書を書かれていて、前田先生の第11版も無効説だったので、試験的には、無効説でもいいのではないかと思いますが、今回の論文を書いてみて、無効説には問題が多いように思いました。
 具体的な問題点を多々指摘しているので、無効説からの反論を期待しています。

 ちなみに、私は、立案時、計算の担当ではなかったので、担当者から最初に「違法配当は有効だ」と聞いたときは、「うそーっ?まじっ?」と思いました(笑)。
 でも、緻密に検討してみると、確かに有効説はよくできた考え方なので、有効説に寝返ることにし、寝返る過程で、いろいろ考えた結果が、今回の論文です。

 さて、本日は、他の仕事を抱えているので、いきなり質問コーナーに突入します。

(質問コーナー)
Q1
昨日のQ10に便乗して質問させてください。
7月5日に発行された前田先生の「会社法入門〔第11版〕」(有斐閣)の343頁に、「株主総会の招集の決定は、会社にとって重要な業務執行の決定であり、その招集は、業務執行であり、かつ会社代表である側面を有する。…取締役会設置会社では、株主総会の招集権者は代表取締役または代表執行役であり、その招集の決定権は取締役会にあると解すべきである。」との記述がありますが、立法者としては、このような考え方はとられていないということで良いのでしょうか。それとも前田先生と葉玉先生では、「業務執行」の意味するところが違うのでしょうか。
Posted by 権兵衛 at 2006年07月18日 17:56
A1
取締役会設置会社では、取締役会に総会の招集決定権があります(298条4項)。
総会の招集は、「取締役」が行うものです(296条3項)
代表取締役は、取締役として招集することができますが、平取締役も招集することはできます。
執行役は、たとえ代表執行役であったとしても招集することはできません。
ちなみに、私は、立法者ではありません。
業務執行と職務執行の違いは過去の記事や千問Q398を参照してください。

Q2
「株式を譲渡するには、取締役会の承認をようする」旨の株式の譲渡制限の規定がある株式会社で、取締役会において『本日より1年間、株式をAに譲渡する場合は、その譲渡を承認したものとみなす』という決議をした場合に、この決議は有効でしょうか?
Posted by 法務課1年目 at 2006年07月18日 19:03
A2
承認のみなしは、株式の内容として定款で規定する必要があります(107条2項1号ロ)。
したがって、当該決議に定めた事項が生じても、承認の効力を生じません。

Q3
公開会社であるA社が10月1日をもって、非公開会社となる場合についてです。A社は9月1日に「11月1日を申込日とする、総株主からの自己株取得の決議」を行いました。この際、157条により特定の事項を総株主に通知しなければいけませんが、158条で「公開会社は通知を公告に代えることが出来る」とされています。この場合、A社は通知をすべきでしょうか?公告で足りますでしょうか?また、定めた申込日によって、それは変わるのでしょうか。宜しく御願い致します。
Posted by 法務課1年目 at 2006年07月18日 19:03
A3
その時点で公開会社ですから、通知を、公告をもって代えることができます。

Q4
自社の従業員向けのストックオプションの付与として、取得条項付の新株予約権を無償で発行した会社が、その新株予約権を取得する際、取得と引換えに何らかの対価のようなものを交付する義務はありますでしょうか。
Posted by 外資系企業 at 2006年07月18日 19:22
A4
無対価と定めることはできます。

Q5
会社計算規則178条1項3号「最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為に際して処分する自己株式・・・」とありますが、何故「処分した」ではなく「処分する」なのでしょうか?
吸収合併契約を締結済みの場合は、その合併で「処分する」ことになっている自己株式も含める、というような趣旨なのでしょうか?
Posted by みひろ at 2006年07月16日 21:22
A5
現在形と過去形の区別は、なかなか難しいのですが、その「処分する」は「処分した」場合を指します。

Q6
Q889では、特定完全子法人について、
「当該会社が発行済株式の全部を有している株式会社または全部の持分を有している持分会社(……)」
と説明されています。
施行規則136条を読んでみたところ、上記説明の後半の「全部の持分を有している持分会社」とは1号の「持分の全部を有する法人(株式会社を除く。) 」のことだと思いましたが、「法人(株式会社を除く。)」が「持分会社」になる理由が良く分かりませんでした。
外国会社等の場合は、特定完全子法人にならないのでしょうか。
Posted by Wロースクール2年生 at 2006年07月14日 16:08
A6
持分のある法人であれば、持分会社以外でも、特定完全子法人に該当します。千問は、「中間法人等持分のない法人は含まない」という意識が強くて、典型的な場合である持分会社と書いてしまいました。すいません。
外国会社も、持分のある法人であれば、該当します。

Q7
今年平成18年度の新司民事系会社法部分と旧司の会社法部分の解説お願いできないでしょうか。
Posted by 法科大院未修一年 at 2006年07月18日 07:48
A7
時間が取れないので、今のところは無理です。
そのうち100問を改訂することがあれば、含めようかなと思っていますが、まだ相当、先の話です。

  
Posted by masami_hadama at 22:26Comments(13)TrackBack(0)

2006年07月11日

減資の効力発生日の変更

本日は、所用により、質問コーナーのみです。

Q1
449条6項ただし書にひっかかったが,その後,債権者保護手続が無事終了したとき,終了時又は効力発生日にさかのぼって,資本減少の効力が生じるのか,永遠にこの手続は失効することになるのか,です。失効することを前提に作っておられるようにも見えるのですが,文献(商事法務と専門もとい千問の道標)を確認した限りでは,効力発生日時点で債権者保護手続が終了してないなら,効力発生日の変更の必要がある,と述べておられるだけで,その後に債権者保護手続が終了してもだめという趣旨なのかそこまではいっていないか,読み切れませんでした。
Posted by ik at 2006年07月08日 15:55
A1
449条7項は、効力発生日前は、効力発生日を変更することができると規定しており、効力発生日以降には、効力発生日を変更することができません。
したがって、債権者保護手続きが効力発生日において終了していなかったら、その後、効力発生日を変更することができない結果、効力を発生さえる余地がなくなります。

Q2
同じ449条6項です。効力発生日と債権者保護手続の満了日の関係で,たとえば債権者保護手続(公告期間)が3月31日までというとき,公告期間の満了日の翌日なら安全なのはわかるのですが,効力発生日を3月31日としたら,効力発生日において債権者保護「手続が終了していないとき」にあたるのですか。民法141条は期間は末日の終了をもって満了とされています。3月31日の23:59:59から4月1日の0:00にいく一瞬かすっているようにも,すれちがっているようにも見えます。私はこれはだめじゃないか,と思ってるのですが,組織再編行為とセットでスケジューリングするとき問題になりますので,確認させてください。
Posted by ik at 2006年07月08日 16:39
A2
効力発生日を3月31日としたら、3月31日の午前0時に効力を発生しますが、その時点では債権者保護手続きが終了していないので、効力を生ずることができません。
効力発生日を4月1日にすべきです。

Q3
309条2項9号ロは,資本金の減少額が計算書類確定時の欠損額(分配可能額のマイナス分の絶対値)を超えないこととしてます。確定時に決議をしても,効力発生時まで資本金も準備金も減少しない=欠損も埋まらないので同時に欠損額の範囲で準備金の減少をしていたとすると普通決議で減資できるのでしょうか。この場合,準備金減少手続についても,債権者保護手続は資本金減少もしてるので省略できませんが,459条1項2号によって取締役会決議で準備金の減少額と効力発生日を決められるのでしょうか。449条1項2号に該当する場合にあたるのかどうか,の解釈問題だと思います。
Posted by ik at 2006年07月08日 19:34
A3
例えば、1000万円の欠損填補のための1000万円の資本金の減少と1000万円の準備金の減少を定時株主総会の日に行うと、文言上は、どちらも特則にあたりそうですが、資本金の減少額と準備金の減少額の合計額が欠損額である1000万円の範囲内である場合に特則が適用されると考えるべきでしょう。
 ただ、ikさんのように449条1項ただし書でそれを解釈すると、資本金の減少を優先することになりますが、必ずしも、その必要はないので、309条2項9号ロ、459条1項2号の趣旨から限定解釈すればよいと思います。

Q4
権利義務取締役について質問させてください。
権利義務取締役が破産手続き開始の決定を受けた場合、権利義務者としての地位は失うことになるのでしょうか。
委任の規定が適用できない以上、地位を失うと解釈することは無理があるような気もするのですが・・・。
Posted by W at 2006年07月09日 09:40
A4
確認ですが、「取締役が辞任したものの、欠員が生じていたので、なお取締役としての権利義務を有する者となった。その後、破産手続の開始決定がされた。」という事案でしょうか?つまり、取締役の時点では、破産手続きは開始していなかったという場合でしょうか?

Q5
総会も無事終わり、取締役会規則や監査役会規則を見直しております。
そこで、準備金の資本組み入れが、取締役会決議でできる、などという条項を見つけてしまいました。条文・規則のどこをどう探しても総会決議を飛ばして役会決議だけ行うことは無理だと思うのですが、私の理解不足でしょうか。
Posted by ペーペー法務員 at 2006年07月09日 11:36
A5
準備金の資本組み入れは、総会の決議事項になりました。修正してください。

Q6
会計監査人・監査役の報酬等の「等」というのは具体的に何かということですが、金銭以外の便益と考えております。飲食やゴルフの会員権の貸与などと思っていたのですが、間違っていますでしょうか?監査役の場合には具体的には何を指すのか、教示願いいたします。
Posted by ペーペー法務員 at 2006年07月09日 11:41
A6
「報酬」と「等」を区別する意味はなく、むしろ、区別しないことに本条の趣旨があります。賞与も、退職金も、飲食などの現物報酬も、職務執行の対価なら「報酬等」です。

Q7
昨日のA5について、先生のお答えに、私個人としては賛成するのですが、登記実務上は、この条文はほとんど知られていないか、あるいは知っていても「黙殺」されているのが現実だと思います。
Posted by 良之 at 2006年07月10日 00:11
A7
施行前の譲渡制限株式会社は、株式の譲渡について「株式会社」の承認を要する旨の定款変更がされていますが、その株式会社は、施行後取締役会設置会社になる結果、承認機関は、取締役会になります。そのため、登記された承認機関に変更が生じていないので、「取締役会」を「株式会社」に変更すべき義務はありません。

Q8
 商法244条5項には「謄本」を5年間支店に備え置くとなっておりますが、会社法318条3項には「写し」を5年間備え置くとなっています。
 「謄本」と「写し」とでは、何か異なるところはあるのでしょうか。
 もし、同じものだとするとなぜ用語の変更がなされたのでしょうか。
 よろしくお願いします。
Posted by どんまい at 2006年07月10日 13:57
A8
「謄本」は、書面の謄本を意味しますが、「写し」は、書面の謄本のほか、電磁的記録のコピーも含みます。

Q9
 「関連当事者との取引に関する注記」について質問させて頂きます。
 非公開会社は、計算規則129条2項1号で不要とされており、計算規則140条1項柱書で公開会社であっても非会計監査役設置会社であれば同条項1〜3号、7号を開示すればよいとされております。
 私の感覚では、計算規則140条1項の開示は大会社を想定しているように思うのですが、商事法務NO1768のP29には、「中小企業であることが想定される」となっています。
 公開会社の大会社であれば会社法328条1項で会計監査人を置くことを義務付けれておりますので、中小企業は非会計監査設置会社になり、「関連当事者との取引に関する注記」において想定されていないと思うのですが。
 私の条文解釈間違いなのでしょうか。
Posted by てんこもり。 at 2006年07月10日 16:12
A9
商事法務の記事の読み間違いです。140条1項の開示がは、「中小企業であることが想定される」非公開・非会計監査人設置会社には適用されないということを言いたい文章です。

Q10
株主総会招集通知添付書類等の修正について確認させていただきたく、お願いします。公開大会社で、監査役会設置会社の場合です。
定時総会招集通知発出時以降、その記載事項に修正すべき事情が生じた場合、修正後の事項を株主に周知させる方法を、当該招集通知とあわせて通知できる事項は、明文上、
〇温予駑爐傍載すべき事項(施行規則65条3項)
∋業報告の内容とすべき事項(施行規則133条6項)
7彁蚕駑爐瞭睛討箸垢戮事項(計算規則161条7項)
は結計算書類の内容とすべき事項(計算規則162条7項)
になっていると思います。
ということは、狭義の招集通知及び監査役会・会計監査人の監査報告については、この措置を採ることができないということでしょうか。
Posted by んーー悩ましい。。 at 2006年07月10日 16:42
A10
その措置を執ることはできません。

Q11
日本経済新聞朝刊7/8付にT社の会社法による、グループ内資本関係」見直しの記事が掲載されており、これを読んでみて、疑問が生じた為、さしつかえない範囲で教えていただけませんでしょうか。
T社は、グループを編成しており、傘下の非上場会社TW社への出資比率49%を40%未満に減らし、「T社傘下の他の会社であるTS社」が持つT社株の議決権を維持しようとしているとあります。現在、TS社は、TW社の4.8%を保有し、T社から、TS社への出資比率は、25%未満(25%近く)に抑えられています。
連結財務諸表原則上、子会社の判定では、0%以上40%未満の自己の議決権保有割合であっても、自己と緊密者で過半数の議決権を有し(TW社への議決権が、過半数を
割ることはないと推測しています)かつ、取締役会等の意思決定機関の支配等を行っていれば(実際にはほとんどの役員がT社出身者)、40%未満に減らしても、TW社は、会社法でも、T社の子会社であって、TS社が持つT社株の議決権は維持できないのではないかと思うのですが、、、
このようなことを行っても、T社には、「自己との緊密者」が何社もあり、TW社が、子会社からはずれるようなことはないのでは?と思います。以上は、公開情報をもとに考えています。
Posted by ぼけ太郎 at 2006年07月10日 19:39
A11
T社の見直しの結果がどうなるのかは分かりませんが、会社法施行規則では、議決権比率を40%未満に落としても、子会社になる場合もあります。

Q12
取締役の報酬の決定方法について質問します。
 会社法では、三百六十一条で取締役の報酬を定款または株主総会で決議するとされています。
 実務においては、株主総会で総額を決議し、個別金額は取締役会で決定しておりましたが、会社法が施行され、取締役会を設けないこととしましたので、個別金額を取締役に一任する決議を株主総会において行いたいと思います。
 取締役が自分の報酬を決定することとなりますが、この決議は会社法上有効なのでしょうか。
Posted by zeirisijimuin at 2006年07月09日 15:48
A12
 当該委任決議は有効です。
 取締役が複数いる場合には、過半数で決するのだと思いますが。
  
Posted by masami_hadama at 01:13Comments(74)TrackBack(0)

2006年05月27日

計算規則と会計基準

 最近の質問には、会計処理の問いが多いのですが、正直いって、かなり答えにくい、答えたくないものが多いんです。今日は、その理由を含め、会計基準のお話をしたいと思います。

 そもそも、会計というのは、簡単にいえば、企業が
 1年でどのくらい儲かっているか
 決算日等に、どのくらい財産を持っているか
を計算するものです。

 素人考えですと
 「毎日の取引を、きちんと帳簿につけておけばいいんでしょ」
という感じなのかもしれませんが、実際には、その帳簿への記載の仕方等について、
 商法会計・証取法会計・税務会計
という3種類のものがあって、これが、上場会社にとっては悩みの種でした。

 商法会計というのは、旧商法や会社法で定められたルールです。商法会計の主たる目的は、分配可能額の計算であり、会社の債権者の保護のために、株主に会社の資産が不当に流出しないようにすることを目的としています。

 証取法会計は、証券取引法の規制のもとに行われる会計であり、上場会社等に適用されるルールです。証取法会計は投資家保護を目的とし、そのために必要な業績利益の算定をを目的としています。

 税務会計は、税法に基づくルールであり、法人税の金額を適切に算定することを目的としています。そのため、会社が、会計処理を工夫することにより、法人税等が安くなったりしないように規定されています。

 この3つの会計は、それぞれ違う目的のものなので、本来、中身が違うのが当然なのですが、上場会社が、微妙に違う会計処理を、3つもやるのは大変です。他方、相互に変な影響を与えあうと、それぞれの会計の目的を達成できなくなる場合もあります。
 そこで、数年前から、商法会計、証取法会計、税務会計の関係を調整して、なるべく、会社に負担をかけず、かつ、それぞれの会計の目的を達成できるような工夫をしようということになっています。

 たとえば、税務会計は、会社が、費用を支出しても、税法上の損金として認めず、利益を多くして、税金を沢山取ろうとする傾向にあります。
 他方、証取法会計は、1事業年度の利益を正確にあらわすためのものですから、税法で損金として認められなかった費用でも、きちんと計算に組み込んで、利益が水増しされないようにする必要があります。
 そこで、証取法会計では、税効果会計という手法を用いて、そのような税務会計と証取法会計のギャップを埋める工夫をしているのです。

 では、商法会計(会社法会計)と証取法会計との関係では、どのような調整がされているのでしょうか。

 数年前までは、商法会計に関する規定は、証取法会計と違うところが多かったため、上場会社は、それぞれの基準に従ったものを作らなければなりませんでした。
 しかし、それでは、会社が大変なので、平成14年からは、商法会計が、証取法会計を尊重して、同じ基準を採用することにしています。

 もちろん、商法会計と証取法会計は、目的が違うので、証取法会計によって算出された剰余金であっても、それをすべて分配可能額に組み込むことが、会社債権者保護のためには妥当ではない場面があります。

 ただ、そういう場合には、分配可能額の計算において、適切な控除を行って調整し、会社債権者が害されないようにしているわけです。
 すなわち、会社計算規則は、商法会計における会計基準を独自に定めたものではなく、商法会計においても、証取法会計と同一の会計基準で、会計帳簿が作成できるように、その受け皿を用意しているものにすぎません。

 そのため
「会社計算規則だけを見ても、どのように会計処理をしていいのか、よく分からない」
という不思議な省令になっています。

 なお、証取法会計については、事実上、財務会計基準機構(ASBJ)という民間の団体が、公正な会計慣行(会計基準)を発見・開発することになっているので、法務省としては、ASBJと連絡を取り合いながら、ASBJの基準が公正な会計慣行と認められる限り、それを会社計算規則にも反映させることにしています。
 
 このような商法会計に関する政策は、「商法の方が会計基準よりも偉い」と考えている人には、屈辱感を与えることもあるようです(笑)。

 確かに、会社計算規則は、法律の委任によって定まっており、法規範として強制力を有しますし、民間団体の作成した会計基準が法務省令に違反した場合には、会社法上は、当該基準に従って会計処理をすることはできません。
 しかし、商法会計の目的が達成できるのならば、商法会計と証取法会計の乖離をなくす方が、会社の負担軽減につながるのですから、合理的に考えて、大人の対応を取りましょうというのが、現在の政策なのです。

 以上の事情から、私としては、会計処理について質問がある度、
 「会計基準に従います」
と答えざるをえないというのが実情です。
 ASBJの会計基準も、あらゆる事例に対応したものではないので、記載されていない会計処理について、「どうしていいのか、分からない」という方がいることは重々承知しているのですが、こちら側が、あれこれ言うことで、会計基準の開発作業に迷惑をかけてはいけないということもあり、少々、不明確な答えになることをお許しください。

(質問コーナー)
Q1
株式の譲渡制限の条文の中に,譲渡の承認機関と買取人指定の決定機関が含まれて一つの条文となっている場合に,そのまま登記することは可能でしょうか?それとも,買取人指定に関しては除いて登記すべきでしょうか?
A1
担当でないので分かりませんが、そのままでは、多分無理なのではないでしょうか。

Q2
 会社法2条24号の「最終事業年度」についてお教えください。平成19年3月期の株主総会を5月31日に開催し、3月末現在の株主に配当することを考えます。
分配可能額の計算にあたり「最終事業年度」がいつかが問題になりますが、次の理解で正しいでしょうか?
1、分配可能額は配当の効力発生時点で考えるとされていますが、その時点は5月31日でよろしいでしょうか?(3月末の配当基準日にはならない)
2、1、でよいとして、続けて質問します。
最終事業年度は、平成19年株主総会での議案の順序により異なると思います。
すなわち、
(1)1号議案として計算書類の承認議案、2号議案として剰余金の配当とすれば、最終事業年度は平成19年3月期を指し、
(2)議案の順序を変えて、1号議案として剰余金の配当、2号議案として計算書類の承認議案とすれば、最終事業年度は平成18年3月期を指す
と考えます。
このような理解でよろしいでしょうか?
Posted by カサブランカ at 2006年05月26日 13:30
A2
1 そのとおりです。最終事業年度末のその他利益剰余金とその他資本剰余金等の数字も使って計算しますが、その後の変動で、配当の効力発生日までの事情も加味して分配可能額が決定されます。

2 形式的には、そのようになるでしょう。ただ、順番を変えることにより、分配可能額を操作して、分配可能額を増やしたりすると、損害賠償の対象になるおそれはありそうですね。

Q3
吸収分割の事前開示事項の1つとして,吸収分割会社では,吸収分割が効力を生ずる日以降における吸収分割会社の債務の履行見込み「又は」吸収分割承継会社の債務(承継させる債務に限る。)の履行見込みに関する事項が要求されています(施行規則183条6号)。これは,なぜ「又は」とされているのでしょうか。
Posted by JM at 2006年05月24日 23:54
A3
 これは「and/or 」の「又は」と呼ばれるものです。たとえば、吸収会社がそのすべての債権・債務を分割会社に承継させた場合、分割会社に残る債務は、0になりますので、「債務の履行の見込み」を書く必要はなく、承継会社の債務の履行の見込みのみを記載します。また、吸収分割承継会社が債務を一切承継しなかった場合には、分割会社の債務の履行の見込みについてのみ記載します。このように一方しか書かない場合があるので、「又は」になっています。

Q4
 募集設立の場合の設立時取締役等による調査について教えてください。93条1項では「その選任後遅滞なく」「調査」しなければならないと規定されていますが、設立時取締役等は選任前に事前に調査したものを創立総会に報告しても構わないのでしょうか?
Posted by 司法書士受験生 at 2006年05月26日 15:04
A4
事前調査をして、設立時取締役に選任された創立総会に報告することはできます。詳しくは、千問にあります。

Q5
287条の新株予約権の消滅の件ですが、この場合は取締役会決議が必要となりますか?(276条2項の様な条文がみつかりません。)また消滅の場合には登記は必要なのでしょうか?
Posted by ネットくん at 2006年05月26日 15:06
A5
当然に消滅するので、決議は不要です。
新株予約権の数が減少するので、登記は必要です。

Q6
 ある書籍に「設立時取締役等とは、健全な会社設立のため、発起人の行為を監督し、設立手続の調査機関としての職務を負う者」との記述があるのですが、設立時取締役等は発起人の監督機関としての職務もあるのでしょうか?設立手続の調査機関としての位置づけしかないように会社法の条文を見る限り思えるのですが。(取締役会設置会社の場合は設立時代表取締役の選定義務もあるので純粋に調査機関としての職務だけとは言えないのかも知れませんが。正確に言えば、調査・設立準備機関でしょうか?)。会社法は「調査」と「監督」の文言を使い分けていますし(527条以下と533条等)、選任権者=監督権者=解任権者の一般原則?にも反しますし、設立時の損害賠償責任の際、明示されていない監督義務の任務懈怠責任を追求されるのも酷な気がするのです。会社法は設立時取締役等に調査義務だけではなく監督義務をも認めているのでしょうか?
Posted by 司法書士受験生 at 2006年05月26日 15:30
A6
 設立時取締役は、発起人を監督してはいないですね。発起人の行為を差し止めるような権限もありませんし。

Q7
子会社の親会社株式の取得について定める、会社法135条について伺います。同条第2項各号では、例外的に子会社が親会社株式を取得できる場合が列挙されています。このうち、会社分割については吸収分割(3号)と新設分割(4号)とで書き分けられているのですが、吸収分割と新設分割とでは手続・効果の面でどのような違いが出てくるものなのでしょうか。
Posted by レポーターになってしまい焦っている男 at 2006年05月26日 16:03
A7
ちょっと意味が分からないのですが、子会社の親会社株式取得を例外的に認めるという点において、特に区別すべき理由はありません。

Q8
取締役会の廃止・設置と代取の関係について質問します。
ー萃役会を廃止した場合に平取が代表権付与を原因として代取となる旨当局から説明されていますが、取締役会で代取を選定したこと自体が取締役会の廃止によってキャンセルされ、各自代表に戻るという考え方なんでしょうか?
⊆萃役会廃止を決めた株主総会で代取を選定した場合、代表権付与の話はなくなるのでしょうか?
従前の代取が取締役会廃止により資格喪失するわけではないので、特に解任等しない限り△蚤召亮圓鯊綣茲冒定した場合は代取が併存することとなるのでしょうか?
さ佞吠深茖果沼綣茖洩召糧鷦萃役会設置会社が取締役会を設置した場合、代取選定が取締役会の専決事項であることから、代取を選定し直すことが必須になるのでしょうか?
ソ樵阿梁綣茲取締役会設置により資格喪失するわけではないので、と同様、代取は併存するのでしょうか?
Posted by chigmog at 2006年05月26日 16:51
A8
 屮ャンセルされ」の意味があいまいですが、各自代表になります。
株主総会で代取を定めたら、それ以外の取締役には代表権は付与されません。
A躄颪亮饂歇‖茲世隼廚い泙垢、通常、取締役会を廃止して、その総会で代取を選定したら、それ以外の者は代表権を与えない趣旨なのではないでしょうか。
ぢ綣茲鯀定し直す必要があります。
ゼ萃役会で既存の代取と別の者を代取に選定した場合には、既存の代取は、資格を喪失すると思います。

Q9
取締役会設置会社の廃止について追加で質問があります。
5月26日のQ5の(2)において、定時総会終結後、新代取が互選で選定されるまでの間は、取締役全員に代表権が付与されることとなるのでしょうか。
また、その場合、登記にも反映させる必要があるのでしょうか。
反映させるとすると、定時総会後に代表権が付与されたが、互選によって代取に選定されなかった者の代取としての退任事由は「任期満了による退任」になるのでしょうか。
Posted by tori at 2006年05月26日 17:50
A9
互選で選ばないのならば、各自代表になると解さざるを得ないでしょうし、その後、登記するときは、一旦各自代表として登記せざるをえないと思います。

Q10
役職員向けストオクオプションを発行する予定があり、千問の発売を待ちに待ちながら準備を行っています。相殺払込方式を考えていますが、以下お教えください。
3/23のブログにて、払込をしないまま払込期日を徒過した場合、新株予約権は消滅するが払込価額の支払義務は残るとのことでしたが、今でもこの考え方のままでしょうか?この場合、従来の有利発行と同様の効果となるように、払込義務が消滅する旨割当契約で定めることを考えていますが問題あるでしょうか。
¬鯡海鯆鷆,垢戮期間の満了前に新株予約権者の死亡等により全額払込ができない事態となった場合、新株予約権は消滅しますが、その時点までの役務提供分の報酬債権は相殺されることなく残ると思います。これを金銭で支払わずに済ませることはできるのでしょうか。
4/12のtyさんのコメントで「新株予約権はいらない。金がいい」という我侭は封じることができるとありましたが、それはどのような方法でしょうか?
Posted by 法務ヘルパー at 2006年05月26日 21:27
A10
 _燭睚臀犬砲いて工夫をしなければ、そのとおりです。
◆,修譴蓮∀働基準法の問題のような気がします・・・。ただ、新株予約権の引受けに係る払込義務は生じていますからね。そこは、工夫の余地ありですよね。
 まあ、大体、分かりますが、私が言うのも、あまりよくないので、ノーコメント。

Q11
分配可能額の計算における300万円の純資産基準(会社計算規則186条6号)についてお教えください。
 6号のイでいう「資本金の額及び準備金の額」は、判定時点の額ですか、それとも最終事業年度の末日での額ですか?私は判定時点の額と考えますが、以前(4月1日 分配可能額の計算方法(基本編))では、次のような説明をしていただきました。これによれば最終事業年度の末日のように読めます。
A11
資本金の額及び準備金の額は、剰余金の配当時点です。
最終事業年度後に資本金が増加すれば、6号の額が減少する、つまり、控除する金額が減少するので、分配可能額は増加します。
私の書き方がまずかったようで、申し訳ありません。

Q12
共通支配下(完全親子会社間)の吸収分割の場合で,対価のすべてが承継会社(子)の株式(承継資産÷純資産/発行済株式総数)の場合,資本金,資本準備金の額は,445条5項で法務省令によるとなっており,この場合は会社計算規則の64条が適用になると思いますが,資本金と資本準備金の増をゼロとして,すべてを資本剰余金とすることは許されると考えてよろしいでしょうか?
また,会社計算規則66条によることもできそうですが,ただし書きの存在が不気味でふみきれません。この但書きは,どのような場合が想定されるのでしょうか?
Posted by 実務者はつらいよ at 2006年05月24日 23:23
A12
会計基準によりますが、そのとおりで結構です。
ただし書きは、会計基準でいうところの「適切」に分配できないような場合があるとすれば、ダメという程度の意味であり、あまり気にしなくていいと思います。

Q14
会社法の勉強を始めたばかりの大学生です。会社法では引用条文が多く、しかも、あちこちに散らばっているように見えます。
論文試験の際、これらの条文の位置は、ある程度、記憶しておくのがいいのでしょうか?
こんな質問をすると、「何度も条文を引いているうちに覚えるんだ!!」などとしかられるかもしれませんが、短時間で適切な条文を探す、こつのようなものを教えてください。
Posted by masamasa at 2006年05月26日 02:11
A14
会社法は、法律の中でも、条文の位置がかなり整理されているものの一つです。
まずは、章の並びがどんな発想でくまれているかを考えてもらった上で、会社法100問の条文索引で、論点が沢山のっている条文番号と見出しを100個ほど抜き出して、覚えましょう。それで、当面十分です。
  
Posted by masami_hadama at 02:32Comments(20)TrackBack(0)

2006年04月04日

連結配当規制

現行法では、配当可能利益は「純資産−(資本金+準備金)です」などと簡単に説明できていたのに、会社法になったとたん、分配可能額の計算に、資本金や準備金を使わなくなってしまい、皆さんは面食らっているのではないでしょうか。

 おまけに、分配可能額を計算するのに、会社法と計算規則の両方を見比べて、ある要素が相殺されるかどうかを、いちいち考えないといけないので、本当に面倒くさい。

 分配可能額の計算方式について、GENDOさんから、いろいろなご提案をいただいたのですが、私達も、この規定が分かりやすいなどとは思っておらず、変えられるものなら変えたいところです。が、もっと易しい書き方をすることが、大人の事情でできなかったところなので、皆さんに、頑張って条文を読み解いていただくしかありません。

 さて、分配可能額がらみで、新規に採用された制度の一つに「連結配当規制」がありますので、今日は、それについてお話ししたいと思います。

 連結配当規制は、企業結合法制の一つであり、ざくっとした説明をすれば
「親会社が黒字でも、子会社と連結したら赤字になるようになる場合には、親会社は配当することができない。」
というものです。

 最近は、企業の価値を連結ベースで判断することが一般的になってきましたから、分配可能額についても連結ベースでその限界を考えようというのが連結配当規制の基本的な発想であり、親会社が、子会社を犠牲にして、自社に利益を付け替えさせ、株主に配当できるようにするという不正は、連結配当規制の適用によって回避することができます。

 なお、この逆、つまり「親会社は赤字だが、子会社と連結したら黒字になる場合には、親会社は配当できる」というルールは存在しませんので注意してください。
 そのような、親会社の株主に都合のいいルールを作ってしまうと、配当によって、親会社の債権者が害されまくってしまいます。ですから、連結配当規制適用会社になったからといって、分配可能額が増えることはありません。

<連結配当規制の計算作法>
 以上のように、連結配当規制は、親会社の分配可能額の計算において、マイナス要素を増やすという制度です。何をマイナスするかというと、単体の分配可能額(aの額)よりも連結ベースで分配可能額と同様の計算をしたときの額(bの額)の方が小さい場合に、その差額を剰余金等の額から控除することになっているのです(計算規則186条4号)。
 要するに、単体ベースの分配可能額と連結ベースの分配可能額の少ない方が、分配可能額になるということですね。

a 最終事業年度の末日における貸借対照表上の株主資本の額から、次に掲げる額を減じて得た額
 イ 有価証券及び土地の評価差額金がマイナスである場合の当該マイナス額
 ロ のれんの2分の1及び繰延資産の額の合計額(資本金・資本剰余金の合計額を限度とする)
b 最終事業年度の末日における連結貸借対照表上の株主資本の額から、次に掲げる額を減じて得た額
 イ 有価証券及び土地の評価差額金がマイナスである場合の当該絶対額
 ロ のれんの2分の1及び繰延資産の額の合計額(資本金・資本剰余金の合計額を限度とする)

<連結配当規制適用会社になる方法>
 以上のように連結配当規制は、重要な企業結合法制の一つなので、パブコメ版のときは、強制してはどうかと言って意見を募ったのですが、強制には反対する意見が多かったので、計算規則では、任意の選択制になりました。

 具体的に、どうやって連結配当規制適用会社になるかというと、業務執行者が、計算書類を作成する時に、注記表に、当該事業年度の末日が最終事業年度の末日となる時後に、連結配当規制適用会社となる旨を記載すれば(計算規則143条)、連結配当規制適用会社になります。簡単ですね。

 もっとも、連結配当規制適用会社になって、分配可能額が少なくなるのは、会社や株主にはあまり嬉しくないので、こんな制度を選択制にしたら、誰も連結配当規制適用会社にならないのではないかと不安に思われるかもしれません。

 しかし、連結配当規制適用会社には、会社法及び施行規則上、次のような制度が用意されているので、子会社の管理政策上、連結配当規制適用会社になるメリットはあるのではないかと思います。

(1)連結配当規制適用会社の子会社間における親会社株式の取得が自由になる(施行規則23条12号。子会社同士で親会社株式をキャッチボールしていればいいので、親会社株式の処分先に困らない。)

(2)連結配当規制適用会社が、簿価債務超過の子会社を消滅会社等とする組織再編をする場合においても、説明義務の規定(795条2項1号)の適用がなく、簡易組織再編をすることも可能となる(796条3項、施行規則195条3項から5項。子会社の整理統合を迅速かつ簡易にすることができる)。
  
Posted by masami_hadama at 00:51Comments(12)TrackBack(0)

2006年04月01日

分配可能額の計算方法(基本編)

 昨日・今日と送別会続きで、頭がもうろうとしております。

 全盛期12人いた会社法グループも、ついに4人になってしまい、寂しさを隠しきれません。
 ただ、オシャレなお店で送別会をしたわりには、いつものように下ネタで大いに盛り上がってしまい、「今夜決めてやるぞ」と気合いをいれてやってきたデートをしているカップルに大変悪いことをしたのではないかと反省しています(どういうネタで盛り上がったかは、放送コード、もとい、法曹コードに引っかかりそうなので書き込めません)。

 会社法グループは、個性的で自由を尊ぶメンバー揃いで、外から見れば危険極りないように見えたと思いますが、それぞれが自分の役割と責任をわきまえていて、互いに信頼し合って仕事をすることができる最高のチームでした。
 狭い世界ですから、また一緒に仕事をすることがあるかもしれませんし、場合によっては、敵味方に分かれることもあるかもしれませんが、会社法の作成プロセスでボロボロになりながら築かれた信頼ですから、一生大切にしていきたいと思います。

さて、本題に入りましょう。 
 GENDOさんから、分配可能額について、次の質問をもらいました。
「会社法461条2項4号で「最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額」を減ずる旨が定められています。なぜこれを減ずる必要があるのですか?
 たとえば、最終事業年度末(決算期)の貸借対照表が次のとおりとします。
 資産10 自己株式 10(控除項目)
      資本金  10
      剰余金  10
 末日後に自己株式を10で処分したとします。その時点の貸借対照表は次のようになります。
 資産20 資本金 10
      剰余金 10
 配当可能額を算定します。
 剰余金の額−決算日以降に処分した自己株式の対価の額
 =10ー10=0
となります。
 貸借対照表からみれば、剰余金は10あるにもかかわらず、配当可能額は0になってしまいました。どこかで間違えているのだと思いますが、どこがおかしいのでしょうか?」

GENDOさんのおっしゃるとおり、どこがおかしいのですが、すぐに答えを言うのも、楽しくないので、今日は、基本的な分配可能額の計算方法を説明して、この問いに答えましょう。

会社法における分配可能額は、会社計算規則に委任されている部分が多いため、どんな風に計算するかを自分で考えていると頭がスパゲティーになります。
 このように複雑なのは、剰余金の配当を、期中に何度でも行うことができるようにしたこと等に対応するためであり、ある時点の分配可能額を計算するためには
 (1)これまでの商法のように最終事業年度の末日時点における貸借対照表をベースにした計算をした上で
 (2)その後、期中に剰余金の配当などをした場合における剰余金の変動要素の一部を足したり、引いたりする
という方法で計算します。今回は、話を単純化するために、連結配当規制を適用しない会社で、期中に組織再編等が行われていないことを前提に、(1)と(2)を説明します。

(1) 最終事業年度の末日時点における計算
 「剰余金」というと、お金みたいな言葉の響きがありますが、お金ではなく、資本金と同じように、計算上の数額に過ぎません。
 剰余金には、
 1. 株主の出資財産のうち資本金に組み入れられていない額(資本剰余金)
 2. 設立以来の利益や損失の累計額(利益剰余金)
の2種類があり、この剰余金のうちから、配当制限がかかる法定準備金を差し引いたもの、つまり
 a. その他資本剰余金 = 資本剰余金−資本準備金
   ・・資本金の減少をした場合等に増加
 b. その他利益剰余金 = 利益剰余金−利益準備金
   ・・利益が出た場合等に増加
が、分配可能なものとして、分配可能額のプラス要素になります。

 ただし、この剰余金の額は、資産価値がない資産等を前提に計算されていますから、決算期における分配可能額は、剰余金の額から、そのような空っぽの資産の金額等4つのマイナス要素を差し引いて計算しなければいけません。

 決算期における分配可能額
  = その他利益剰余金の額+その他資本剰余金の額 −(4つのマイナス要素)

 4つのマイナス要素というのは、次のaからdまでのものです。

a. 自己株式の帳簿価額(461条2項2号)
 ・・・自己株式は、資産価値がないので差し引きます。

b. 「.のれん」の2分の1+「繰延資産」から資本金・資本準備金の額を減じて得た額(ただし、その他資本剰余金の額を限度とする)
 ・・・「のれん」は、資産として計上されていますが、将来の損失の繰延べという面がありますから、割り引いて価値を評価しなければいけません。他方、「のれん」は、将来収益を得るための事実上の力であるというプラス面もありますから、「のれん」の額の2分の1だけは、差し引くことにしています。
 ・・・「繰延資産」は、資産として計上されていますが、将来の損失の繰延べに過ぎませんから、差し引きます。

c. その他有価証券・土地の評価損がある場合における当該差損額(計算規則186条2号・3号)
 ・・・資産に評価損があるから、差し引きます。

d. 純資産額中剰余金以外の額が300万円に満たない場合には、その不足額
 ・・・300万円未満で配当することができないようにするためにマイナスします。

(2)期中の変動
 (1)の分配可能額を前提にして、期中に剰余金の額の変動が起こったとき等に、分配可能額がマイナスになったり、プラスになったりすることがあります。

<マイナスになる場合>
 a..剰余金の配当をした場合における配当額(446条6号)
 ・・・剰余金の配当をすれば、その分だけ、剰余金が減りますから(446条6号)、分配可能額(461条2項1号)も減ります。

b.自己株式を取得した場合における対価額(461条2項3号)
 ・・・自己株式を取得した場合には、その対価が自己株式の簿価となり、自己株式が増えます。461条2項3号は、分配可能額の計算で、決算期ではなく、現時点における自己株式の簿価をマイナスするという規定なので、自己株式が増えた分だけ、分配可能額は減少します。

c. 剰余金を資本金・準備金に計上した場合の計上額(計算規則178条1号)
 ・・・剰余金を減らして、資本金・準備金という拘束額を増やす決定をしたのですから、その分だけ、分配可能額は減ります。

<プラス要素>
 資本金・準備金を減少して剰余金とした場合には、増加した剰余金の額(446条3号・4号)。
・・・ 資本金・準備金という拘束額を減らす決定をしたのですから、その分だけ、分配可能額は増えます。

<変動しない場合>
1 原則として、決算期から剰余金の配当時までの間の期中に、損失や利得があっても、分配可能額は変動しません。
 ただし、「臨時決算」をすれば、期中に損失が出ていれば分配可能額は減り、期中に利益が出ていれば、分配可能額は増えることになります。

2 自己株式の処分
 自己株式の処分をした場合の差益は、剰余金の額を変動させますが(446条2号)、分配可能額を計算するとき、461条2項3号と4号で、その差益を相殺しています(461条2項3号4号)。

 すなわち、期末後に自己株式の処分をした場合、461条2項1号の剰余金の額は、446条2号により計算され、期末の額から
 +自己株式の対価の額−自己株式の帳簿価額・・・(1)
変動します(446条2号)。

 また、期末後の自己株式の処分により、分配可能額のマイナス要素である461条2項3号と4号も変化していて、3号の自己株式の帳簿価額は、処分した分だけマイナスになりますから、マイナス要素は
 −(−処分した自己株式の帳簿価額)−(自己株式の対価の額)
=+自己株式の帳簿価額−自己株式の対価の額・・・(2)
の分だけ変動します。

そして、(1)の増加分と、(2)の減少分が同じ額なので、結局、自己株式の処分では、分配可能額は変動しないのです。

<説例の答え>
では、GENDOさんの説例を考えてみましょう。
 その例では、決算期の分配可能額は
 剰余金10−自己株式10=0
です。
 これに対し、自己株式の処分後の分配可能額は
 期末の分配可能額0+自己株式の処分差益0−(処分した自己株式の帳簿価額10−自己株式の対価の額10)=0
になります。
 GENDOさんは、「剰余金は10あるにもかかわらず、配当可能額は0になってしまいました。」と不思議がっていますが、期中で自己株式を処分しても、期末の分配可能額から変化はないので不思議ではありません。

 自己株式の処分により得た対価を期中に、分配可能額に反映させたければ、臨時決算をします。
 すると、461条2項2号ロにより自己株式の処分の対価をプラスするので
 期末の分配可能額0+自己株式の処分差益0+自己株式の処分の対価10−(処分した自己株式の帳簿価額10−自己株式の対価の額10)=10
となって、分配可能額が10になるのです。

 以上、基本的な分配可能額の計算方法をご紹介しましたが、ややこしくて、皆さん、読んでいて嫌になったかもしれませんね。
 でも、しょせん、足し算と引き算です。試しに、3年生の子供に
 「0+0+10−(10−10)は、なーんだ?」と聞いたら、すぐに「10!」と答えましたので、本当はそんなに難しくないんですよ。多分(笑)。
  
Posted by masami_hadama at 00:48Comments(23)TrackBack(0)

2006年03月28日

違法な現物配当

ここ2日ほど、現物配当の基本的なところをお話してきました。
今日は、応用編「違法な現物配当」についてお話しします。

現物配当も,、剰余金の配当の一種ですから、461条1項が適用され、配当財産の帳簿価額の総額は、効力発生日における分配可能額を超えることができません。

そして、分配可能額を超える現物配当が行われれば、462条により、株主と業務執行者が、会社に対し、連帯して、配当財産である現物の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います。

現物の場合、取得した時期が異なれば、取得価額が異なるため、株主が、462条の責任を負う額が、受け取った現物の帳簿価額によって異なってしまうのではないかと疑問に思われる人がいるかもしれません。
 例えば、会社が、米を1月1日に1kg3000円で、2月1日に1kg2000円で取得すると、取得時の帳簿価額が異なりますから、1月1日に購入した米を配当として受け取った株主は3000円、2月1日に購入した米を配当として受け取った株主は2000円を支払う義務を負うように見えますが、実はそうではありません。

 現物配当を行う場合には、配当財産について効力発生日において現物を時価で評価替えをした上で、時価と簿価の差額はその日の属する事業年度において損益として計上し、評価替え後の簿価(すなわち、時価)により剰余金を減少させます。

したがって

1 評価替え前の帳簿価額をベースにすれば分配可能額を超えなくても、配当財産の時価ベースで分配可能額を超える場合には、461条違反となる。

2 違法配当の場合、株主及び業務執行者は、配当時の「時価相当額」の金銭を支払う義務を負う(すべての配当財産が時価評価されるので、株主ごとに「帳簿価額」が異なるということはない)。

ということになります。

さて、突然ですが、違法配当の効果は「有効」です(笑)。

そろそろ話すのも飽きてきたのですが、違法な現物配当の場合にも、有効説の方が合理的な説明が可能だということを言いたいのです。

すなわち、仮に、違法配当が無効だとすると、本来、会社は、株主に対して、
  配当した「現物」について不当利得返還請求ができるはず
ですが、462条1項が株主に配当財産の帳簿価額相当額の
  「金銭」の支払い義務を負わせている
のですから、会社は「現物」の返還請求をすることはできません。

この点について無効説に立てば、462条を不当利得返還請求権の特則であると考えることになるでしょうが、金銭返還請求権の範囲についての特則であるというのならともかく、株主が、現物を保有している場合であっても、金銭の支払いを強制する特則というのは、他にあまり見たことがありません。

百歩譲って、462条が不当利得返還請求権の特則であるとしても、違法配当が無効であるとすれば、現物の所有権は会社に帰属しているはずですから、会社は、
  現物について所有権に基づく返還請求権を行使することができるはず
ですが、この結論は、462条1項と整合的ではありません。

したがって、結局は、配当財産である現物の所有権は、一旦配当された以上、株主に帰属すると考えざるを得ず、そのような所有権の移転の効果を認めつつ、「違法配当は無効である」というのは困難ではないでしょうか。

もちろん、民法の世界では、公序良俗違反で無効な契約でも、不法原因給付で返還義務を負わない場合には、給付を受けた者に所有権が移転するということもあるので、法律行為が無効だから所有権は絶対に移転しないとは言いませんが、公序良俗違反の場合には、未履行債務の履行を強制しないという意味があるのに対し、違法配当の場合には、無効とすることによって導かれる法的効果がないので、わざわざ無効と解する意味がないように思います。

 以上に対し、有効説に立てば、株主に配当財産の所有権が移転するのは当然であり、株主が462条で「金銭」の支払い義務しか負わないということとも整合的です。
 そして、この場合、462条は、不当利得返還請求権の特則ではなく、債権者保護のために、会社法が認めた特別の法定責任であるということになるでしょう。
 
 違法配当が、有効か、無効かというのは、説明の仕方の問題なので、無効説を採ることも可能であるとは思いますが、462条の責任との整合性や463条の文理などを考えると、「やっぱり、有効だよなあ」と思う次第です。

  
Posted by masami_hadama at 23:11Comments(67)TrackBack(0)

2006年03月27日

現物配当(2)

今日は、現物配当の2回目です。

百姓一揆さんから、次のような質問を受けました。
「会社法においては、会社がお米やお米券を株主に配るには、必ず現物配当の規定によるべきということになるでしょうか。
現在は株主優待でお米券を配っている会社も多くありますが、会社法施行後はできなくなるでしょうか。」

ナイスです。この質問を誘発するために、1回目の最初に株主優待の話をしたと言っても過言ではありません。

現物配当というのは、会社の有する金銭以外の財産を配当するものであり、株主優待制度と似ているところがありますが、完全に同じというわけでもありません。

例えば、昨日、紹介した
http://money.www.infoseek.co.jp/MnStock/yranking_yh.html
にアクセスしていただくと、一番多い株主優待は、「割引券」ですね。
 この割引券は、将来の会社が受け取るべき対価の値引きを要求する権利を株主に与えるものであり、会社の資産を株主に交付するものではありません。
 したがって、このタイプの株主優待は、現物配当にはあたりません。

 問題なのは、設問にある「お米」です。これは、会社の資産を株主に配るものですから、現物配当に非常に近い。
 「現物配当として配ったのではなく、株主優待として交付したのだ」という理屈が考えられますが、特定の株主に無償で財産をあげると、利益供与の推定が働いてしまいます(120条2項)から、「1000株に米1kg、一株主5kgまで」などという株式数に応じない割合で米を配ってしまうのはリスクが高すぎます(かといって、株式数に応じて米を配るのならば、やっていることは、現物配当と同じになります)。

 正直ベースで言えば、現物を交付するタイプの株主優待は、現行商法でも会社法でも、その位置づけはかなり微妙であり、特に分配可能額がないような場面で、このような株主優待を行えば、違法配当責任を問われても仕方がないような気がします。

 もっとも、お米を配るのを、金銭分配請求権を与えない現物配当であると構成し直すと、現行法と異なり
 1 株主総会の特別決議が必要となる
 2 株式数に応じて交付しなければならない。
という規律が適用されることになりますから、「敷居が高い」と感じる会社もあるでしょう。

 また、2については、例えば、「5株ごとに、米5kg」というような定めをすることも考えられますが、この場合には、「基準株式数」(454条4項2号)として5株を定め、5株未満の株式については、米の代わりに金銭を支払わなければいけません(456条)から、この点も現在の株主優待とは大きく異なります。

 以上のように現物を配るタイプの株主優待は、現行法でも、会社法でも、いくつかの難点がありますので、このタイプの株主優待をしている会社は、今も、会社法施行後も、一工夫する必要があるでしょう。

<株主ごとに異なる現物配当>
さて、昨日の説例に戻りましょう。

例えば、葉玉君・松本君は「米」200万円分、東洋田さんは「麦」200万円分という現物配当をすることはできるでしょうか。

このように株主ごとに財産の種類が異なる配当をすることは、株主の有する株式の数に応じて配当財産を割り当てなければならないという454条3項に違反するので、原則として、できません。

もし、同様のことをやりたければ、株主に金銭分配請求権を与え、東洋田さんにその権利を行使させた上、東洋田さんとの間で200万円の麦の売買契約を締結するのが素直でしょう。

もっとも、株式会社農天気が非公開会社で、定款で株主ごとに異なる取扱いをする定めを設ければ(109条2項)、東洋田さんだけ、異なる取扱いをすることができます(109条3項・453条2項)

<特定物の現物配当>
それでは、土地1300万円を現物配当することができるでしょうか。

特定物は、株主の有する株式の数に応じて配当財産を割り当てることが極めて困難なので、現物配当には向いていません。

もっとも、株主が1人の場合や、基準株式数の設定値が高くて、現物配当を受けることができる株主が一人の場合には、特定物でも現物配当は可能です。

では、株主が複数いる場合に、特定物を現物配当できる方法はないのでしょうか。

どうしても、私にその方法を考えろと言われれば、特定物の「共有持分」の配当ということは可能ではないかと思います。

共有持分ならば、株主の有する株式の数に応じて配当をすることができますし、共有になった後は、株主で協議して、共有物の分割等を行えばいいわけです。

この方法の応用として、3つの特定物A、B、Cがある場合に、一旦、A、B、Cの各共有持分を現物配当した上で、株主の協議により、持分を交換し、葉玉はA、松本君はB、東洋田さんはCというように分けることも考えられるでしょう。

  
Posted by masami_hadama at 22:52Comments(3)TrackBack(0)

現物配当(1)

 3月末に近づくと、株式市場では配当利回りの高い株が人気を集めることがあります。

 昔は、売買手数料が高かったし、配当利回りは低いし、配当狙いというのはうまみがなかったのですが、最近は、売買手数料が下がり、株価の値下がりによって配当利回りが高くなったことから、配当狙いの動きが多いような気がします。

 基準日の株主が、1年分(中間配当のある会社は半年分)の配当をもらえるのですから、3月に株式を買うと1か月足らずで1年分又は半年分の配当がもらえて、一見、おいしそうなんですが、基準日の3日前になると名義書換が間に合わなくなって、配当落ちと呼ばれる株価の下落があったりするから、なかなか難しい(それで、現物を買うとともに、先物を売るという一見合理性のなさそうな売買に合理性が生まれたりするわけです。)

 おまけに、最近は、株主優待が充実している会社も多いため、株主優待の内容も投資行動に影響を与えたりしています。
http://money.www.infoseek.co.jp/MnStock/yranking_yh.html
 上のサイトを見てもわかるとおり、株主優待を加えると、とんでもない実質配当利回りになる会社もあるので、個人投資家は優待ねらいの人も多いですし、一見、優待券貰っても仕方なさそうな法人株主も、金券ショップに売って裏金にするという用途に・・・・いや、きっと利益として計上しているはずです、きっと。

 このように3月下旬は配当の香り漂う季節なので、本日は、現物配当についてお話ししたいと思います。

 現行商法は、株主に対して、金銭しか配当できませんが、会社法は、金銭以外の財産(その会社の株式以外の財産)を配当することができるようになりました。
 454条1項1号を見ると、剰余金の配当をしようというときには「配当財産の種類」を決めろということになっていて、ここで、「金銭以外の財産」、たとえば、他の会社の株式・社債とか、米とかを配当することに決めれば、それが「現物配当」になります。

 例えば、農業を営む葉玉君と松本君と、法律事務所勤務の東洋田さんが、各1000万円出資して、農業関係の商品の売買を行う「株式会社農天気」(資本金3000万円・代表取締役は松本君、取締役は葉玉君&東洋田さん)を設立したとしましょう。

 そして、農天気は順調に実績を伸ばし、期末には、資産4900万円、負債1000万円、分配可能額が900万円生じたとします。

 普通は、この資産の中には、現金や銀行預金がありそうなものですが、松本君は、脳天気な人だったので、現金があるとすぐに農産物等を買ってしまい、取締役会を開いて配当議案を決めようとしたときの資産の中身は、「米1200万円、麦1200万円、新品のビニールハウス3棟1200万円、土地1300万円」で、現金が全くありませんでした。

 さて、このとき、取締役会で、分配可能額900万円のうち、金銭配当として600万円を拠出するということを決め、株主総会で承認されると、農天気は、米や麦などを売って現金を作るか、銀行や農協からお金を借りてきて、金銭配当をしなければいけません。

 でも、米や麦を一気に換金しようとすると買いたたかれるかもしれませんし、銀行等からお金を借りれば利息を取られます。

 それで、松本君、葉玉君、東洋田さんは、米を、1人200万円分ずつ配ることにしました。これが、現物配当であり、株主みんなが納得すれば、米を配って一件落着です。

<金銭分配請求権>
 ところが、東洋田さんは、ダイエットのためにご飯をいつもの半分しか食べないようにしている最中だったので、「米を200万円分も貰っても困るなあ」と思いました。
 
 そのような場合において、「現金が欲しい株主が現金を貰えるようにする」のが、「金銭分配請求権」です(454条3項1号)。

 すなわち、株式会社農天気は、剰余金の配当の決定をするときに、株主に対し金銭分配請求権を与えることを定めれば、株主である東洋田さんが金銭分配請求権を行使することにより、米ではなく、現金200万円を農天気から配当として受け取るができます。

 このように金銭分配請求権を株主に与えるときは、株主にとっては、金銭配当と同じ利益を確保できるので、金銭配当のときと同じように、剰余金の配当の決定を株主総会の「普通決議」ですることができますし(309条1項)、取締役会の決議により剰余金の配当をすることができる会社(459条1項)ならば、取締役会で現物配当を決定することもできます。

 では、金銭分配請求権を与えない場合には、どんな問題が起こるのでしょうか。

 この場合、東洋田さんは、農天気から、米200万円分を無理矢理配られてしまうことになりますから、米の置き場にも困るでしょうし、他に売ろうとしても売れないかもしれません。かといって、それを食べてしまうとダイエットが失敗してしまうという最悪の結果にもなりかねません。

 そこで、会社法は、株主に金銭分配請求権を与えない場合には、株主総会の特別決議でなければ、現物配当を決めることができないこととし、株主の保護を図っているのです(309条2項10号。取締役会の決議による現物配当もできません(459条1項4号))。

 もっとも、説例の場合、松本君と葉玉君で、3分の2の議決権を抑えているので、特別決議で、金銭分配請求権を与えない現物配当を決定することもできますが、二人とも、東洋田さんのダイエットを邪魔するような恐ろしいことをする勇気はありませんので、おそらく金銭分配請求権を与えることになるでしょう・・・(明日に続く)。
  
Posted by masami_hadama at 07:00Comments(6)TrackBack(0)

2006年02月22日

資本維持の原則の限界

 金沢に来ました。明日は、北国新聞社主催の国際会社法セミナーで講演します。
 金沢は、寒いかなと思っていたら、雪はなく、夜になっても5度くらい。わりと暖かい。
 雪が沢山あると思っていたインドシナの友人達は若干がっかりしてましたが、私が、天狗舞(有名な日本酒です)の山廃吟醸をぐいぐい飲ませてみたところ、元気回復。
 ところで、今日覚えたラオス語は、「乾杯」=「ニョ」。
 みんなで楽しく飲みながら、ニョー、ニョー叫んでいたものの、ビール飲みながら「ニョー」というのは日本人にとっては、変な液体を連想して若干微妙でした(笑)。

 さて、先週から資本金について、基本的なところを説明しています。今日は、資本維持についてお話しします。

 資本金は、バッファであり数字です。資産はお金や動産や不動産など実際の財産です。このことは、何度もお話ししてきました。

Step1 私が、設立時に100万円の現金を出資して、株式会社マルハ食品を設立し、資本金を100万円にしたとしましょう。その時点の貸借対照表は、次のようになりますね。
  資産=現金 100万円
  負債=0円
  純資産=資本金100万円
Step2 設立後、マルハ食品が、現金で80万円のカップラーメンを買いました。
  資産=現金20万円、商品80万円
  負債=0円
  純資産=資本金100万円
となります。
Step3 その後、マルハ食品がカップラーメンを100万円で売り、決算期を迎えました。
  資産=現金120万円
  負債=0円
  純資産=資本金100万円、利益剰余金(利益準備金+その他利益剰余金)20万円
 
 この極めてデフォルメ化された事例で何を説明したいかというと

(1)出資された財産は、原則として、何に使ってもいいのだから、資本金に見合う「現金」が、会社に残っているわけではない(Step2では、現金は20万円しか残っていない)。

(2)資本金は、過去に出資した事実を表すものであるから、商売をしても変動しない。増えるのは、新株発行や組織再編等をしたときだけ、減るのは、資本金の減少手続をしたときだけ。

ということです。
<剰余金の配当>
 次に、剰余金の配当について、考えてみます。

 Step3において、現金が120万円あるからといって、株主にその全額を配当することはできません。
 「来年は、損するかもしれないのだから、配当をする場合には、バッファである資本金100万円相当の純資産を残してください」
というのが、資本維持の原則と呼ばれているもので、461条が、この資本維持の原則を実現しています。

 461条・計算規則177条の分配可能額の計算は、かなり複雑で、後日、詳しく解説しますが、思い切り、簡略化して言えば
分配可能額
 =「その他資本剰余金+その他利益剰余金」
 ―「資産としての実質がないもの、又は、なくなったものの額」(自己株式、のれん(2分の1のみ)、繰延資産、有価証券土地の評価損)
 −「決算期後に配当した額等」
 +「決算期後に資本金・準備金の減少により剰余金を増加した額」
となります。

 よちよち歩きの赤ちゃんが、いきなり4回転ジャンプしたような感じでしょうが、とにかく、先ほどの例ですと、「利益剰余金20万円−利益準備金=その他利益剰余金」を限度として、配当をすることができます。

 なお、マルハ食品は、現金を配当するのであって、その他利益剰余金を配当するのではありません。その他利益剰余金は、分配可能額という枠の要素であり、資産ではないのです。
 ただし、貸借対照表は、資産=負債+純資産となるようにバランスさせなければいけないので、例えば、10万円の配当を行い、左の資産の部から現金10万円が無くなったときには、右からも何か減らす必要があり、設問の例では、「その他利益剰余金」を10万円減らすことになります。

その結果(利益準備金の額を1万円だとすると)、次のようになります。
 資産=現金110万円
 負債=0円
 純資産=資本金100万円、利益準備金1万円 その他利益剰余金9万円

<自己株式の取得>
 その後、マルハ食品は、自己株式を取得することにしました。
 
 マルハ食品は、現金を110万円持っているのですから、もし普通の商品を買うのだったら、110万円を丸ごと使うことができます。

 しかし、自己株式を買う場合には、分配可能額による制限がかかるので、使える資産は、分配可能額、すなわち「その他資本剰余金+その他利益準備金」をベースにした金額に限定されます。
 説例だと、その他利益剰余金の9万円をベースにした金額しか代金として払えないということですね。

 このように資産があったとしても、配当や自己株式の代金としては使ってはいけないというのが、資本充実の原則であり、要するに
 資本充実の原則=「資産の使い方」の限定
ということができます

 なお、分配可能額がなくても、自己株式の代金を払うことができる例外的な場合があり、
1.単元未満株式の買取請求(192条1項)に応じて自己株式を買い取る場合
2.組織再編行為時の反対株主買取請求(785条など)、組織再編行為以外の場合の反対株主買取請求(116条1項)に応じて自己株式を買い取る場合
がこれにあたります。
 また、
3.吸収合併、吸収分割または事業全部の譲受けにより自己株式を取得する場合
4.他の会社等が行う組織再編等の対価として自己株式が交付される場合など、株式会社が不可避的に自己株式を取得する場合
も、461条の適用はありません。

 このような場面に限って言えば、債権者の保護よりも、株主の保護が優先されていて、「株主に資産を流出させる」という資産の使い方ができるのです。

<資産が流出しないタイプの行為>
さて、以上のように、会社法は、分配可能額がない場合において、旧商法では制限されていなかった「自己株式の代金」として資産を使用する方法を禁止することとしたのですが、それでも、資本維持がうまく機能しない場合があります。

 それが、資産が流出しないタイプの行為です。

 例えば、株主に対して、
1.社債を割引発行(社債の金額よりも安く発行すること、差額が利息に相当する)したり、
2. 新株予約権付社債の無償割当てをしたり
することは、資産の流出を伴わないので、461条の適用がありません。

 したがって、分配可能額がない場合でも、新株予約権付社債を無償割当てしただけでは、461条は働かず、462条の責任も生じませんし、、その後、償還金として金銭を支払うときは、社債権者にお金を支払っているに過ぎませんから、やはり461条は働きません。

 このように、これらの行為は、場合によっては、461条の潜脱に使われてしまうおそれがあるわけですが、資本維持の原則は、あくまでも資産の流出を防止するという枠組みで語られてきたので、この原則に拘る限り、どうしようもありません。

 これからの課題として、資本維持の原則を発展的に解消し、あらたな原則を構築するということは視野にいれてもよいのかもしれませんが、現在のところは、潜脱的な行為については、462条を類推適用するという方策でも採ることになるでしょう。
  
Posted by masami_hadama at 01:03Comments(4)TrackBack(0)

2006年02月21日

現物出資不足額填補責任

 みなさん、本の名前募集に沢山のご応募をいただきありがとうございました。
 応募者の中に受験生が多数混じっていて
    「お前ら、こんなことしてる暇あったら択一を解け〜」
とか、法務担当者が昼間に書き込みをしているのをみると
    「あなた、仕事した方がいいんじゃあ・・」
とか、つっこみを入れたくなる書き込みもありましたが(笑)、実は、相当喜んでいます。

 あまりの反響の大きさに戸惑いを隠せませんが、普段書き込みをされない方も自由に書き込める企画だったようで、たまには、こういうのも面白いかも。

 タイトルはかなり絞り込みましたが、出版社と打ち合わせをしなければならないので、正式に決まったら、当選者を発表します。

今日は、龍田節先生をはじめとする関西の大御所の先生方と国際会社法シンポジウムに参加しました。シンポジウムのまとめの席で、龍田先生が「葉玉さんに、あとで、外国会社との直接合併が会社法で禁止された理由を聞きたい」という鋭い指摘があったので、飲み会の席でこっそり裏話をして勘弁してもらいましたが、そのうちブログでも書きましょう。

今日は、資本充実の続きをやります。

まず、fujiさんから
「資本金はバッファだという考えにはどうも違和感があります。債権者はその会社の資本金を勘案して取引はしないでしょう。資本金はある目的によって出資者から出資されたもので、その目的と違うことには使えない、その目的がなくなった時すなわち解散の時には出資者に戻される、そういう考えの方がすっきりすると思うのですが。」というご指摘を受けました。
 確かに債権者は資本金のみを勘案して取引はしないですが、それなりに資本金を信じる人がいるのも事実です。
 しかも、資本金の減少に債権者保護手続が必要とされていたり、違法配当の責任について分配可能額の範囲内でしか会社は免除できないこととされていたりするので、資本金制度が債権者保護を目的としたものであるということは否定できないと思います。

債権者保護というのは、資本金に相当する財産が拠出されたという信頼(資本充実)と、資本金については株主に返還しないという信頼を守る(資本維持)ということです。

さて、資本充実がらみでは
「現物出資の不足額填補責任(52条)は資本充実責任じゃない」
と100問で言い切った<論点77>のを、意外に感じる人が多いようです。

でも、これまで私の説明を聞いてきた皆さんですと、これが資本充実責任じゃないことを分かっていただけますよねえ。
 えっ、分かっていただけてない?
 ・・・では、具体例で説明します。

 葉玉が、A沢さんとともに、発起人になって、靴屋を設立することにしました。
 A沢さんは、現金100万円を出資したのですが、私は、1年間掃き続けた靴(時価100円相当)について、その価額(28条1号)を「100万円」と定款に記載して現物出資し、「株式会社 臭〜ズ」を発起設立しました。

この場合、現行商法でも、会社法でも
発起人の葉玉とA沢さんが、現物出資の価額填補責任として、会社に対し「100万円−100円=99万9900円」を支払う義務を負う点は共通です(ただし、会社法では過失責任)。

ただし、資本金の額として計上すべき額が、現行商法と会社法では異なります。

 現行商法は、発行価額がベースになりますから、100円の財産であっても、「100万円」のものとして株式が発行されたら、資本金の組み込みのベースは100万円になります。「臭〜ズ」の例だと、現金100万+現物100万=発行価額200万円が資本金の原則的金額になります。
 この資本金だとすれば、確かに99万9900円は、資本金の額に実質的に不足する分を補うための責任と位置づけられますよね。

これに対し、会社法は、現物出資については時価を資本金のベースにします。
「臭〜ず」の例ですと、現金100万円+靴100円=100万100円が資本金の原則的金額になります。

 とすると、資本金に見合うだけの財産100万100円は、すでに拠出され充実しているのですから、発起人の不足額填補責任である99万9900円は、資本の充実とは無関係なお金になりますよね(履行されれば、会社の利益として計上されます)。

 ところで、資本充実責任じゃないのに、なんで不足額填補責任があるのでしょう。

 それは、株式の引受人間の不平等を是正するためです。

 A沢さんは1株1万円で引き受けているのに、葉玉は、1株を名目1万円(実質1円)で引き受けていて不公平でしょ。
 だから、発起人に一旦不足額を填補させて、後は、発起人間の求償で調整することにするのです。説例では、葉玉が負担部分100%になるでしょう。
 
 このように資本金のベースとなる額を「時価」とする以上、不足額填補責任は、資本充実責任にはなりえません。
 また、株主間の不公平の是正をするための責任だからこそ、総株主の同意によって、その責任を免除することもできるのです(55条)。

 以上のように、会社法の中では、不足額填補責任は、資本充実責任ではないということで論理一環していますから、これを資本充実責任と解釈するのは、相当無理があるように思います。

 この関連で、次の質問については、どう思われますか。
Q1 現物出資の不足金額填補責任は株主の平等確保のための規定のため、株主全員の同意で免除できますが、この場合、登記に記載されている額より実際の拠出財産の額が過少のため、資本充実がおこなわれず、債権者の保護ができないと思われますが、この場合は、債権者は発起人等を虚偽登記に関する任務懈怠により、発起人等を責任追及するのでしょうか?
A1 
 上で述べたとおり、「登記に記載されている額より実際の拠出財産の額が過少のため、資本充実がおこなわれず」というところが違いますね。

Q2 繰延資産ですが、国際会計基準ではないようなので、日本の会計基準と国際会計基準の統合の過程で、日本も繰延資産がなくなっるかもしれないですね。
A2
 そのとおりで、繰延資産はなくなるかもしれないので、私達は「従来の考えに囚われずに、冷静に創立費について考えようね」という計算規則を作っているわけです。
 ただ、まだ創立費が繰延資産として生き残る可能性もありますので、もうしばらく様子見です。

以下、資本関係について、コメントに対する答えをいくつか。
Q2 
ふと疑問を抱いたのですが、
1.「設立に要する費用」(計規74条1項2号)
2.定款に記載すべき「株式会社の負担する設立に関する費用(いわゆる「設立費用」)」(会社28条4号)
設立に「要する費用」とは、「会社の負担する設立費用」が前提となっていると思うのですが、1と2は、異なる概念なのでしょうか?
つまり、2は(一部例外(施規5)を除き)定款に記載しないと効力が生じないが、1は、発起人が(会計基準を待って)1の額として別に定めればよいのでしょうか???
A2 
 1と2は、概念が違います。
 1の計算規則74条1項2号の「設立に要する費用」は、計算規則3条により、会計基準でその内実が定まります。
 2の「設立に関する費用」は、定款に記載しなければ、発起人が会社に求償することができないものであり、印紙税等(施行規則5条)は除外されます。これは、会社法・施行規則で概念がきまります。
 したがって、1かつ2,非1かつ2、1かつ非2、非1かつ非2の4通りのパターンがありえます。

Q3 新会社法では資本金0円でも実質的債務返済能力が100億ある会社(留保利益100億円)もあれば、資本金100億円でも実質的に債務超過に陥っている会社も想定されうるわけで・・・。実質的に債権者保護にはほとんど役に立たない制度を債権者保護として捉える実益はないような気がします。それよりはむしろ、「拠出資本」「獲得利益」「他人資本(債務)」を区別するために資本制度が存在すると考えるほうが自然ではないでしょうか・・・。
by ロンリープラネットさん
A3
 現行法でも、資本金300万円で返済能力100億円の有限会社はありえますから、ご指摘は現行法にもあてはまります。
 資本金が、実質的に債権者の役に立つかどうかは、見方次第ですが、資本金だけ見ていてもあまり役にたたないというのは、すでに述べたとおりです。
ただし、貸借対照表を見た上で、資本金を「バッファ」と考えれば、それなりの役には立ちます。

Q4 発起設立の場合の預合の扱いです。払込取扱機関は返還に関する制限を対抗できる結果、預合がなされると、会社が自由に使えないお金が資本金として計上されることになる、と思われます。ところが、預合の払込も有効なのですから、虚偽登記とはいえないし、資本充実にも反し、他の発起人と不公平な気もします。預合部分を損害とする任務懈怠責任(53条)が生じるという処理になるのでしょうか? そうすると、発起人が無資力の場合、資本金と実際に出資された額の乖離は生じうるということですか
by ふにくよさん
A4 
 まず、発起設立の場合、預合いを払込みとして無効とすれば、会社は、払込取扱機関に対して、一切、払込金返還請求権を行使することができません(それは発起人の個人資産ですから)。
 これに対し、預合いを払込みとして有効とすれば、会社は、払込取扱機関に対して、払込金返還請求権を有します(会社財産になります)。だから、その返還に関して発起人との間で「制限」がついているだけで、資本は充実しています。
例えば、発起人が払込取扱機関に借入金を返済したら、その制限が取れるでしょ。預合いを無効とする説は、その場合は、どう解釈するのでしょう?
 しかも、払込取扱機関が、その「制限」を会社に対抗することができるかというのは、解釈問題であり、民法94条2項を類推適用したり、発起人には返還制限を約束する権限はないと言ったり、その制限は公序良俗に反し無効であるとしたり、いろいろな法律構成で、払込取扱機関が、その制限を会社に対抗することができないという結論を採ることができます(もともと払込金保管証明制度が採用されるまえは、そういう解釈をしていました。)。
 ですから、ふにくよさんが、「払込取扱機関は返還に関する制限を対抗できる結果」と指摘している部分は、ちょっと早合点であると思います。発起人の任務懈怠も問題になりますが、まずは「銀行にある預金を引き出す」ということが重要です。
 無効説のように、払込を無効として、資本金もその分少なく計上するのも、一つの解釈だと思いますが、せっかく払込取扱機関から返還してもらえそうな払込金を、みすみす見逃すのはもったいないですし、募集設立の際に払込保管証明に基づく責任が、単なる利益になり、株主に配当してよいということになるのは、正直まずいと思います。

 <最後に、資本とは関係のない質問>
Q5 葉玉先生は以前、今後のブログの存続可能性が必ずしもはっきりしない旨、指摘されていましたが、春以降のブログ存続可能性、および、仮に更新停止になる場合、おおよその時期としていつ頃詳細は判明しますでしょうか。
葉玉先生の良質なサイトが見られなくなる(かもしれない)ことは、ファンとして本当に残念でなりません。
by 女性ファン
A5
 えーっ。私が知りたいところです。私は一体どうなるのでしょうか(笑)。
 たぶん3月の始めころには、去就が決まると思いますが・・。
Q6
「法制局読み」のことで教えて下さい。
A6
 法制局読みといっても、読み合わせのときに、わりと適当に言っていることも多いです。
 以上は、私ならこう読むというもので、本物とは違うかもしれません。
・「明らか」であると「認め」られる
   カギめいらかカギトジであるとカギにんめカギトジられる
・含む がんむ
・限る げんる
・取扱い/取り扱い しゅきゅうい、しゅりきゅうい
・設ける せっける
・代えて だいえて
・求めた きゅうめた
・先立ち せんりつち
・行った ぎょうった
・規程 きほど
・異なる いなる
・従い じゅうい
・著しく ちょしく
・繰り返して そうりへんして
・申し込み しんしこみ
  
Posted by masami_hadama at 00:39Comments(9)TrackBack(0)

2006年02月18日

設立費用と資本充実

 月曜日に,資本金は債権者が貸借対照表を見たときに参考にするためのバッファだという話をしました。

 水曜日には,資本充実が,「発行価額」という背伸びをした額から,「払込給付価額」という正味の財産をベースにすることになったという話をしました。

 今日は,そうした資本がらみの小問を検討して,資本金への理解を深めましょう。

Q1 資本金制度は,債権者保護の制度か?

答は,YESです。ただ,問題は,どんな風に債権者を保護しているかということです。

 資本金制度は,雑に言えば
ヽ主が,資本金に見合うだけの財産を会社に出資する(資本充実)
  →株主が,財産をきちんと会社に入れないと,会社が損をしたときのバッファ・余裕にならない。

会社が出資財産を商売に使うのは構わないが,株主に返すのはダメ(資本維持)
→株主は,一旦,債権者のためのバッファとして差し出したのだから,それを株主に返したら困る。

という2つの原則を本質にしています。

 例えば,私が,所持金の1000万円を,マルハ食品の口座に振り込んで,「これを運転資金に使わせよう」と考えたとします。

 私が
 ,海里金を出資金として振り込めば,純資産と資本金が1000万円増えるので,会社の債権者はバッファが増えて喜びます。

◆,海里金を貸付金として振り込めば純資産も資本金も増えず,会社の債権者は,あまり喜びません。

 会社にとっては,1000万円の現金が使えるという点では同じでも,出資することにより債権者に安心感を与えることができるというのが,資本金制度のメリットです。

 ロンリープラネットさんが,ブログ(http://blog.goo.ne.jp/lonelyplanet_8082)に「一旦拠出されてからはその運用形態に関して法は干渉しない」と書いてらっしゃるのですが,それは微妙に誤解があります。
 先の例で,マルハ食品は,1000万円で商品を買ったり,従業員に賃金を払ったりすることはできますが,分配可能額(法律上は資本金をベースに算定される)がなければ,株主への返金だけは制限されてしまいます。この株主への返金制限が資本金制度の非常に重要な性質なのです。
 
「株主が,債権者を安心させるために,会社に対し,会社が返還義務を負わないお金を会社に出し,その金額を資本金と呼んで,債権者に開示する」という法制を,資本充実・維持の原則と名付けているのですから,資本充実・維持は,債権者保護のための制度であるのは間違いないでしょう。

すごーく基本的な話をしていますが,個別の論点を考える上で確認しておいた方がいいので,´△魘饌療にイメージしてくださいね。

 なお,,砲弔い討癲き△砲弔い討癲の祿阿呂△蠅泙

 例えば,△砲弔い討蓮っ姥橘に株主の株式買取請求権や組織再編時の株式買取請求権などは,分配可能額がなくても,株主への返金を認めているので,資本維持の原則は絶対的なものではありません。
 これは,「債権者のためのバッファは用意しているけど,特定の株主があまりにもかわいそうなときは,株主の方が優先するときもあるよ」という例外ですね。

 では,,砲弔い討蓮い匹Δ。その点を理解するために,Q2にいきましょう。

Q2 設立時の資本金の算定において設立費用を引くのは,債権者を害するか?

今回の会社法では,設立時の資本金の算出で,払込みがされた額から「設立に要した費用のうち発起人が定めた額」を控除することができるようにしています(計算規則74)。

実は,この「設立に要した費用」を控除するかどうかは,会計基準で決めることであり,計算規則は,会計基準で控除すると決めたときに引けるように準備しているにすぎません。ですから,会計基準がない現状では,資本控除できる費用はないのです。

ただ,現行商法の取扱いと違うため,今回の処理を「資本充実を害する処理で,債権者を害する」と批判されたりするので,現行法と会社法で,どちらが,どちらが債権者を害するかを考えてみます。

例えば,発起人の私が,現金100万円を出資して会社を設立しました。そのときに,公証人の認証費用等で40万円の設立費用がかかりました。設立時に残っている現金は60万円ですよね。

 このとき,現行商法は,資本金を100万円とし,それに見合う資産として,現金60万円と創立費40万円があると考えます。
 
 会計を勉強してない人は「創立費って,費用でしょう?お金を払ったんでしょう?なんで,それが資産なの?」と不思議に思います。

 そのとおり40万円は,現在,会社にはありません。
 でも,それをとりあえず資産とするのです。これを繰延資産といいます。
 なぜ,繰延資産というのが認められているかというと,会計の世界では,「1年でどれだけ利益が出たかを正確に把握する」というのを一つの目標にしているため,テクニカルな観点から,費用を資産に計上することを認めているのです。

 例えば,司法試験受験生が,年間120万円のアルバイト料を稼ぎ,その中から生活費で80万円を使い,残った40万円と親から借りたお金を足して法科大学院の授業料100万円を払ったとしましょう。
 その授業料を,その年の経費で落とすと,受験生の損益計算書は,収益120万円−費用(80万円+100万円)=60万円の赤字になります。

 しかし,仮に,それから1年で合格し,1年の修習を終え,その後,大手事務所で8年稼ぐとすれば,その授業料は,大手事務所で稼ぐための先行投資だったといえるわけです。

 その場合,弁護士としての収益のための費用である授業料を,受験生時代に全額負担するのは,「1年ごとにどれだけ利益が出たか」を正確に把握するという点ではよくありません。
 そこで,授業料100万円を10年間に分けて,費用計上しようという考えが生まれます。
 その考えに立つと,その受験生の今年の損益計算書は
収益120万円−費用(80万円+10万円)=30万円の黒字
となるではありませんか。
 お金はすっからかんで,親から借金を60万円もしているけれど,黒字・・・。

 いえ,この受験生には,資産があるのです。授業料を支払うことによってえた能力のアップ分。将来の自分への投資。それが資産となるのです。
 こういう考え方をもとに,このとき授業料の100万円を資産として計上し,その後,10年間にわたって毎年10万円分ずつ,その資産を取り崩して,費用とするのが繰延資産の考え方です。

 つまり,本当は,財産ではないのに,1年ごとの利益を正確に把握するという観点から,知恵の結晶として生まれた勘定が繰延資産なのです。

では,この創立費を繰延資産にする処理と,創立費を資本金から控除する処理は,どちらが債権者の保護につながるでしょうか?

 設立時に現金が60万円しかないというのは,どちらも同じです。

 しかし,現行法ですと,資本金100万円ということになりますから,債権者は,現実に100万円が拠出されたと思うでしょう。債権者の信頼は,裏切られますか,守られますか。

 それに対し,新会社法・計算規則の考え方で,40万円を全額資本控除すると,資本金は60万円になります。
 債権者は,現実に60万円が拠出されたと思うでしょう。債権者の信頼は,裏切られますか,守られますか。

新会社法・計算規則の考え方が,資本充実の原則に反する,債権者を害するという批判が,非常に的はずれであると言うことがわかっていただけると思います。

 他にも資本充実がらみの小問を用意していたのですが,繰延資産で紙数を取りすぎました。
 続きは,来週の月曜日に。土曜日曜はお休みです。
  
Posted by masami_hadama at 02:08Comments(79)TrackBack(1)

2006年02月16日

発行価額と払込価額

 私が、商法を勉強し始めたとき、商法の先生から、「資本充実の原則というのは、資本金に見合うだけの財産が現実に拠出されなければならないという原則のことだ」と言われました。

 それで、私は、長い間、株式会社には、資本金に見合うだけの財産が、必ず「現実に拠出されている」のだと思いこんでいました。

 ところが、勉強が進んでくると、それが一種のフィクションだということもとわかりました。このことを、現行商法の設立手続を見ながら、説明しましょう。

 現行商法では、設立時における株式の発行は、大雑把に言えば、次のような手順で行われます。
…蟯召如∪瀘時に発行する株式の数を定める。
  ex.設立時に200株発行すると決める。

発起人が、株式の発行価額を決める。
  ex.1株5万円と決める。

H起人が自分でどのくらいその株式を引き受けるか決める。
  ex.発起人が自分で50株を引き受けると決める。

ぁ´,之茲瓩真瑤粒式の全部が引き受けられていない場合には、残りの株式を引き受ける人を募集する。
  ex.募集して、3人の引受人が、全部で90株引き受ける。

ァ´い琶臀犬靴討眩管瑤引き受けれないときは、残りについては発起人が引受担保責任を負う。
  ex. 50株+90株=140株は引受人が決まったので、残り60株を、発起人が引受担保責任で、引き受ける(=払込み義務も負う)。

Α^幣紊如■横娃鯵瑤琉受け先が決まったので、発起人は、自分で払込みをし、引受人に払込みをさせる。払い込まない引受人がいたら、発起人が払込担保責任を負い、代わりに支払う。

 以上のように、\瀘時に発行する株式200株について、すべて引受人が決まり、発起人の定めた発行価額5万円の全額が払い込まれるから、 澂△濃蚕个気譴觧駛楸癸隠娃娃伊円が、現実に拠出されるんだと説明されています。

 でも、この説明って、少し誤魔化しが混じっていて、この説明における資本充実は、発起人が引受担保責任や払込担保責任を負い、最後の尻拭いをするからこそ、初めて実現されるわけです。

 例えば、発起人が、無資力だったら、どうでしょう。

先ほどの例で、発起人は、合計50株+60株=110株を5万円で引き受けていますから、550万円の払い込みをしなければいけません。
 しかし、発起人が、無資力なら、無い袖は振れないから、払えません。
 そのため、資本金1000万円に見合うだけの財産は現実に拠出されないということになります。
 
 それで、現行法は、資本充実の原則を実現するために、設立時に発行する株式について全額の払込みをした証明書を添付しないと、設立の登記ができないという商業登記法の手続規定で、なんとか資本充実を実現しようとしているのです。

 もっとも、資本充実を商業登記法で実現するというのは、言い換えれば、手続さえパスできたら、資本充実を実現しないまま、設立することがができるということを意味します。

 例えば、次の3つの場合は、「現実の拠出がされない」場合です。

仝醜塰,任蓮発起人が「預合い」や「見せ金」をしたら、払込みは無効だが、その場合でも、払込金保管証明書は手に入るから、登記はできる。この場合も、資本金は、発行価額ベースで算定されて1000万円となる。払込みが無効な株式については、発起人等が払込担保責任を負うが、発起人等が無資力ならば、資本金に見合うだけの財産は拠出されない。

発起人が、払込みをしていないのに、払込金保管証明書を偽造して、登記をした場合も、,汎韻犬如発起人等が無資力ならば、資本金に見合うだけの財産は拠出されない。

H起人が時価よりも著しく高い価額で現物出資をした場合、「発行価額」は、定款で定めた現物出資財産の価額をベースに算定されるので、資本金も、時価より著しく高い価額をベースに算定され、その額で登記される。この場合、発起人等は、不足額の填補責任を負うが、発起人等が無資力ならば、資本金に見合うだけの財産は拠出されない。

 ´↓のように、現行商法における資本充実の原則は、正確に言えば、「定款で定めた設立時発行株式×発行価額をベースに算定された資本金に見合うだけの財産をなるべく拠出させるように、発起人等に頑張らせる原則」です。
 皮肉を込めていえば、現行商法の株式会社は、発起人等が担保責任を果たせるだけの資力を持っているかどうかが重要である「人的会社」なのです(笑)。

まあ、定款と発起人の決定により「資本金」が決まってしまうので、資本金と現実の拠出に乖離が生じるのは仕方が無いのですが、そうした事実に目をつぶって、資本充実の原則を説明するのは、あまり親切ではないような気がします。

 これに対し、新しい会社法においては、資本金の額を「発行価額」ではなく、金銭出資の場合には、「払込価額」(現実に払込みが行われた額)をベースに、現物出資の場合は、定款で定めた価額ではなく、「時価」(給付価額)をベースに算定します。

その結果、上記の,らまでについては、次のような処理になります。
“起人が無効な払込みをした場合、無効な分については、資本金に算入されず、客観的には、有効に払込まれた額だけが資本金となる。したがって、資本金に見合うだけの財産が現実に拠出されている。なお、無効な分を算入した資本金を登記した場合には、虚偽登記で、公正証書原本等不実記載罪が成立する。また、それで、債権者を害すれば、発起人等は損害賠償責任を負う。

発起人が、払込みをしていないのに、払込金保管証明書を偽造して、登記をした。この場合でも、客観的には、払込みをしていない部分は資本金に算入されず、現実に払い込まれた分だけが、資本金となる。払込みをしていない部分について資本金に加えて登記したら、虚偽登記で、,汎韻現萢になる。

H起人が時価よりも著しく高い価額で現物出資をした。この場合でも、客観的には、時価をベースに資本金を算定する。時価を超える部分を資本金に算入して登記すれば、虚偽登記で、,汎韻現萢になる。

会社法の考え方ですと、´↓とも、資本金は、現実に拠出された財産(払込金額や現物出資財産の時価)で満たされています。現実に拠出された財産だけを資本金に算入するから、当然です。

 現行商法のように、背伸びして、現実に拠出「すべき」資本金の額を定めると、それが充たされない場合が出てきますが、会社法のように、ありのままの姿、つまり、拠出されたものだけを資本金にすると、そこに差は出てきません。

 そして、ありのままの姿を公示すべきであるというルールをとれば、水増しして資本金を公示した場合は、みんな虚偽登記で発起人等に民事刑事の責任を追求することになります。

会社法が採る「払込・給付価額」ルールにより、ある意味、完全に資本充実の原則が実現したということもできますし、逆に、現行商法のように背伸びをしなくなったので、資本充実の原則は無くなったということもできるかもしれません。

 もちろん、現行商法と会社法と、どちらが債権者保護のために優れているかというのは、一長一短だと思います。

 会社法でも設立の登記のときに払込を証する書面を提出させ、定款で定めた最低出資額の払込があるかどうかをチェックしますので、その点は、現行法とあまり変わりはありません。

 ただ、払込のない分を資本金として公示することを認めた上で払込担保責任を負わせる現行商法よりも、払い込まれた分だけ資本金として公示するべきであるという会社法の方が、より「資本が充実」しているのは事実ですし、株式の発行と無関係に虚偽の増資の登記をした場合との整合性は会社法の方が優れています(これは、現行法でも虚偽登記とせざるをえません)。

 また、会社法には、引受・払込担保責任はありませんので、その点、現行商法の方が債権者の保護に厚いようにも思いますが、会社法でも、資本金の水増し登記には、任務懈怠責任が生じるのですから、実質がそれほど変わるとは思いません(仮に会社法で、払込担保責任を残したとしても、少なくとも過失責任化されたと思いますし。)。公正証書原本等不実記載罪が成立しやすいという点では、会社法の方が、現実に拠出されていない財産を資本金に算入することを抑止する力は強いかもしれません。

 いずれにせよ、会社法が「払込・給付価額」ルールを採用し、かつ、引受・払込担保責任を廃止するというルールを採用した以上、そのルールを前提に設立をめぐる論点を整理する必要はあると思います。

 そのあらわれの一つが、既にお話した「預合いが、払込みとして有効か」という論点です。資本金の算定についての新ルールに対する理解が深まったところで冷静に考えると、「預合いによる払込金について、払込みを無効として発起人に返還するより、払込みを有効として会社財産とし、かつ、資本金による拘束をかける方が合理的だ」と思いませんか?
  
Posted by masami_hadama at 00:51Comments(9)TrackBack(0)

2006年02月14日

資本金・資産・純資産(2)

<資本金は、バッファに過ぎない>
(1)で述べたように、資本金、資産、純資産は、似たような言葉でありながら、全然意味が違います。会社が、実際に、債権者に対する債務を履行できるかどうかは、資本金の額とは全く関係がなく、債務に見合うだけの「資産」があるかどうか、言い換えれば、「純資産」が0円よりも大きいかどうかということが重要なのです。

 では、資本金というのは、何のための制度なのでしょうか。

 資本金は、株主が過去に出資した額をラインとして、配当したら、純資産がそのラインよりも下回るような場合には、その配当を禁止するための制度です。
 例えば、株主が1000万円出資したのならば、原則1000万円というラインを引きます(=資本金)。そして、純資産が1000万円を超えるまでは、株主に配当することができないし、純資産が1100万円に増えたら、100万円だけは配当できるようにする。そういう制度が資本金の制度です。資本金という言葉よりも、配当制限ラインという言葉の方がふさわしいかもしれません。

 ところで、純資産が1000万円ある場合、債務者に全額弁済しても、なお1000万円余っているのだから、株主に配当してもよさそうなものです。株主に配当することで純資産額がマイナスになるときに、その配当を詐害行為取り消し権を行使して、取り戻せば十分なのではないでしょうか?

しかし、会社の資産状況を表すBSには、いくつかの限界があるので、事はそう簡単ではないのです。

1 資産には、現金ばかりではなく、商品や建物等いろいろなものがあります。例えば、商品である食料品が賞味期限間近になったり、保有している建物の構造計算書が偽造だったりすると、BSに載っている価格と客観的価値の間に差が出来てしまいます。
 債権者としては、この減損リスクを、ある程度見込んで置かないと、債務を完済してもらえない可能性があります。

2 BSでは、決算期(3月末が多い)時点での会社の純資産しか分かりません。
 債権者が取引をするのは、その決算期の後ですから、決算期に、純資産が1000万円あったとしても、その後に取引で2000万円の損をしてしまうと、取引や債務の履行時には、純資産がマイナス(債務超過)になってしまいます。
 このように債権者としては、決算期後に会社が損をするるリスクも、ある程度、みこんでおく必要があります。

1や2のように、BSを見ただけでは分からない純資産減少のリスクを回避するためには、株主への配当禁止のラインを、「資産=負債」のラインに設定するよりも、少し余裕をもって、「資産−α=負債」のラインに設定する方が安全です。

 このαが資本金であり、言い換えれば、資本金は、債権者のためのバッファ、余裕、余力のようなものなのです。
 株式会社では、株主が出資した額をバッファとし、かつ、株主がこのバッファの中の財産を個人財産に戻してはいけないこととされているのです。

このような理解をしていただければ、資本金0円の会社を、資産がない会社であるとか、債務超過の会社であるとか、勘違いすることはなくなります。

資本金0円の会社というのは、決算期のBS上の純資産額が、現在の実際の純資産額よりも低いかもしれないというリスクについてバッファがなく、債権者が、そのリスクを全面的に負っている会社なのです。

他方、資本金1000万円の会社は、1000万円の範囲内で、債権者は、そのリスクを免れることができます。

例えば、資本金1000万円の会社で、BS上の純資産額が3000万円あった場合、2000万円は、株主に配当されてなくなるかもしれませんが、BS上1000万円の純資産は確保されているので、資産が陳腐化していたり、いろいろな要因で資産が目減りしたとしても、その額が1000万円の範囲内であれば、債権者は全額の弁済を受けることができます。

他方、その会社のBS上の純資産額が300万円しかなければ(700万円分の資本の欠損)、債権者にとっては、資本金の額にあまり意味はなく、
「期末のBS上の純資産―現在の客観的な純資産>300万円」
の場合には、全額を弁済してもらえません。
「期末のBS上の純資産―現在の客観的な純資産=<300万円」
ならば、債権者は、債権を全額を弁済してもらうことができます。

 分かりやすくするために、ちょっと乱暴な説明をしたところもありますが、資本金の役割について、理解していただけましたでしょうか。

 以上は、基本編で、現行商法でも、会社法でも、大した違いなないところです。
 次回は、資本金について、現行商法から、会社法で考え方が変わったところをお話しします。
  
Posted by masami_hadama at 00:31Comments(2)TrackBack(0)

資本金・資産・純資産(1)

日曜日の「会社法の基本原則」という講演会には、300人以上の方に来て頂きまして、ありがとうございました。会場に入りきれず、同時ビデオ会場まで設営されていたと聞いて驚くばかりです。

 若干、マイナーかなと思いつつも、受験生に誤解されがちな資本原則を中心に説明したところ、思いの外好評でしたので、何回かに分けて、ブログでも紹介したいと思います。
 
会社法の改正に絡むところも多々ありますが、まずは基本的な誤解を解くところから始めます(今日は、プロの方は特に目を通さなくてもよいかも)。

 会社法の勉強を始めると、最初に、「資本に見合うだけの財産が現実に拠出されなければならないという資本充実の原則は、債権者保護のために必要不可欠である」と教わります。
 そのため、初学者は、株式会社には、資本金に相当するお金がいつもキープされているものと勘違いしてしまうようです。

 そして、こういう人に限って、最低資本金制度が撤廃されたというと、「資本金もないような会社は、お金がないんだから商売することができない」とか、「資本金のない会社は、債権者に金も払えない」とか、若干的外れな批判をしがちです。

 これらの誤解は、「資産」と「資本金」を混同しているということに基づきます。

誤解1 資本金0円の会社は、商売をやろうと思ってもやれない。

 例えば、資本金0円、資産0円の株式会社葉玉塾という会社があるとします。こんな会社であっても、私が、葉玉塾に、当面の運転資金として、1000万円を貸し付ければ、「資産1000万円 負債1000万円 資本金0円」の会社になります。
 この資産の1000万円を使って、東京国際フォーラムを借りて、A沢さんという会社法の権威を講師として呼び、「絶対安全確実な敵対的買収防衛策を教えます。民事局の保証付」という題で、1人10万円の代金で講演させれば、1000人は聞きに来るでしょう。
 この場合、葉玉塾の資産は1000万円から1億円になり、債務は1000万円のままですから、葉玉塾には9000万円の利益が出ます。
 このように資本金0円であったとしても、資金を借り入れしたり、商品を掛けで仕入れたりすれば(商品を先に渡してもらって、代金の支払いは、翌月の月末とすること)、商売は、いくらでもやれるのです。
 というか、資本金なんかに頼らずに、お金を借りたり、買掛金で商品を仕入れたりして商売するのが、ごくごく一般的なのです。
 
誤解2 純資産が0円の会社は、債権者にお金を払うことができない。

 大間違いです。先ほどの葉玉塾を見てみましょう。私が最初に1000万円貸し付けたときの葉玉塾の財産状態は
「資産=現金1000万円 負債=借入金1000万円 資本金=0円」であり、純資産は、「資産1000万円 ― 負債1000万円=0円」です。
 この状態で、葉玉塾は、私に1000万円の債務を履行できますか?
 完全に返済することができますよね。だって、現金1000万円の資産がありますから。
 つまり、純資産0円の会社でも、債権者に対する債務を完全に履行することができるのです。誤解を恐れずに言えば、純資産0円の会社というのは、形式的には、債務を完全に履行することができる、債務者にとっては安心な会社なのです(ちょっと誇張があります)。

誤解3 資本金100億円の会社は、10円の債務を支払うことができる。

 資本金が100億円だろうと、100兆円だろうと、10円の債務すら支払うことができない場合があります。
 資本金は、その株式会社に過去に100億円の出資があったことを示しているだけで、現在、資産がいくらあるかを示すものではありません。
 例えば、私が、100億円を出資して、
「資産100億円 負債0円 資本金100億円」の葉玉塾を設立し、葉玉塾は、その旗揚げ企画として、「会社法世界ツアー by A沢」を企画し、代表取締役の私が、息子から10円借りて、公衆電話でA沢さんに出演依頼をしたところ、A沢さんが快諾してくれたとしましょう。
 そして、葉玉塾が、100億円をかけ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、南極大陸で、会社法講演会を実行したところ、うっかり通訳をつけ忘れたため、観客が暴動を起こし、チケット代の返還や損害賠償などで100億円の損失が出たとします。
 この場合、葉玉塾は、初年度でいきなり「資産0円 負債10円 資本金100億円」の会社になってしまうのです。

このとき、息子がやってきて「パパ、この前貸した10円早く返してよ。商事法定利息でお願いね!」と言ってきたとしても、資本金100億円の葉玉塾は、資産が0円であるために、息子に10円の返済すらできません。

 資本金については、「資本金の額に見合うだけの財産を会社に確保するための制度」と説明されるため、100億円の資本金のある会社は100億円の資産があると誤解されやすいのですが、本当は、資本金は、過去に出資されたという事実しか示していないので、登記を見て「この会社は、資本金が大きいから、安全だ」と考えるのは、大きな間違いなのです。
 会社が、現在、どのくらいの資産を持っているのかを知りたいならば、資本金なんかを見るよりも、毎年作られる貸借対照表(バランスシート・BS)を見て、純資産がプラスか、マイナスかを調べた方がよっぽどマシです。  
Posted by masami_hadama at 00:30Comments(1)TrackBack(0)

2006年02月11日

施行規則・計算規則(計算・総会手続関係)

 本日は、同僚の郡谷さんと一緒に、大阪会館で省令の説明会をしてきました。会場にぎっしり、600人くらいのお客さんがいて、ちょっとびっくり。
 月曜と火曜は、読売ホールでやるんですが、そこも1000人ずつがあっという間に予約で満杯だったそうです。商事法務さんから「大きな会場が取れなかったので、同じ会場で二日連続、同じ内容を話してください」と言われました。

 こういうシチュエーションで、一日目の最後に、『では、続きは、明日やります。』なんて言ったら、どうなるんでしょうか(笑)。
 私には、任務懈怠責任が成立しそうですが、講演会は入場無料なので、損害が生じないのではないかと思います、きっと。

 ところで、私達が、こうした講演で相当稼いでいると誤解している人がいるようですが、実は、これらの講演は、全部、「タダ」なんです。法務省にも、私達にも、お金は入ってきません。一種の行政サービスとしてやっているものです。

 大昔は、こういう講演をやるとウン十万円も貰っていたという時代もあったという風の噂が聞こえてきます。でも、今の世の中、そう甘くはないんです。

もし、このブログを見て、「民事局付検事になれば、かなりお金が稼げるらしい」と勘違いして、検事を目指す受験生がいるといけないので、「検事はお金のために仕事をやるのでない。」と強調しておきます。ちなみに、私は、正義のためではなく、趣味で検事をやっています。

 ここ2日間ほど、受験には、ほとんど関係なさそうな、会社法施行規則一言コメント特集をやっています。
 受験生は、今頃は択一で苦しんでいるころでしょうから、今週は憲民刑に専念していただき、会社法施行規則の読み直しを迫れている可哀想な法務担当者向けに、今日も、省令一言コメントをやりましょう。
 今日は、計算書類の監査等のところです。
 なお、今日の解説する部分は、パブコメ版からあまりにも変わっていて、一つ一つ違いを説明する気力がありませんので、ざっとした説明をします。

1 計算書類の種類(規則91)
BS,PLのほか、株主資本等変動計算書、個別注記表を作ろうというものです。

2 表示の原則(規則89)
 2項は、外国語による計算関係書類の許容。親会社が外国法人だったりすると、この方が便利です。
 3項は、「BS,PS,株主資本等変動計算書、個別注記表は、全部で一体的なものであり、別々に作らなくてもいい」ということです。だから、個別注記表に記載すべき事項をBSの注記に書いたりしても、OKです。

3 株主資本等変動計算書(規則127)
 会社法は、期中に、何回でも剰余金の配当をしてもいいということになりましたので、期中に、株主資本がどんな風に動いたか分かりやすく表示しましょう、というのが、株主資本等変動計算書の発想です。ASBJに、ひな形がでているので、それを見た方がイメージがわきます。
 
4 注記表(規則128〜144)
 リースの注記について、定量的なものを計算書類の作成段階で書くのは、時期的に難しいという声に応え、定性的なもので足りることになりました。

5  監査スケジュール(計算153−158)
 通知期限が大事です。通知期限までに会計監査報告、監査報告を通知しないと、監査したものとみなされちゃいます。

 それから、特定取締役、特定監査役というのが目新しい。要するに、会計監査報告や監査報告の通知のやりとりを担当する取締役、監査役のことです。定義は、条文に書いてありますが、監査役会と監査委員会は、独任性の違いによって、定まり方が違うので注意が必要です。
 
8 会計監査人の内部統制(計算159,155)
パブコメ版からいろんな事項が減りました。監査法人だけではなく、個人の公認会計士もいるということに配慮して、法人を前提とした規定を抜きました。

10 招集の決定(規則63)
 集中日が「特に理由があるとき」だけの開示になりました。
 招集通知にに、合併等の組織再編の議案の概要を載せることになりました。

11 書面投票・電子投票(規則66)
 電子投票に承諾した株主には、特に書面をほしがらないならば、書面を送らなくていいということが書いてあります。
 また、ある株主が書面投票・電子投票を二重に行使した場合の対応を決められるようにされています。

12 株主総会参考書類(規則73)
 3項4項で、他の書面と重複記載になる場合に、省けるようになりました。

13 社外役員についての株主参考書類(規則74)
 会社の不祥事のうち重要でないものは、開示不要になりました。
 他社の不祥事は、会社が知っている重要なものだけが開示の対象となります。

14 WEB開示(規則94・規則133,計算161,162、同附則5)
 今回の目玉のWEB開示。
 要するに、本来、株主に書面で送らなければならないようなことを、会社のインターネットホームページで開示することにより、書面で書かなくてよいことにするものです。
印刷代が節約でき、かつ、スペースに制約がないので、いろんなことが書けます。
 大事なところなので、Q&A方式で説明します。

【問】
 インターネットで開示することにより,株主に提供する株主総会参考書類・事業報告・計算書類・連結計算書類への記載を省略することができる事項は,どのような事項か。
【答】
1 施行規則では,株主に提供しなければならない株主総会参考書類,事業報告,計算書類のうちの個別注記表,連結計算書類に記載又は表示しなければならない事項の全部又は一部について,一定の要件を満たしたインターネットによる開示(WEB開示)の措置をとることにより,株主への提供に代えることを可能としている(施行規則94条,133条,計算規則161条,162条)。
2 当該措置を採るためには,定款に当該措置を可能とする旨の定めを設けなければならない。
 また,株主総会参考書類に記載すべき事項については株主総会参考書類にWEBのアドレスを記載し(施行規則94条2項),それ以外の事項については,アドレスを株主に通知しなければならない(施行規則133条4項,計算規則161条5項,162条5項)。
3 WEB開示の措置をとることにより株主の提供に代えることが可能となる事項は,〃彁蚕駑爐里Δ糎鎚銘躓表,連結計算書類に記載又は表示しなければならない事項の全部及び株主総会参考書類及び事業報告記載又は表示しなければならない事項であるが,次の事項については,株主総会参考書類や事業報告への記載を省略することができない。
(1)株主総会参考書類
 ゝ聴
◆〇楾垉則133条3項1号に規定する事項((2)の,らい泙任了項)を株主総会参考書類に記載することとしている場合の当該事項
 株主総会参考書類に記載しなければならない事項のうち,WEB開示の措置をとることについて監査役又は監査委員が異議を述べた部分
(2)事業報告
 ヽ式会社の現況に関する事項(施行規則120条1項1号から8号まで)
◆ヽ式会社の会社役員に関する事項(役員報酬等)(施行規則121条1号から5号まで及び8号)
 株式会社の株式に関する事項(大株主の氏名等)(施行規則122条1号)
ぁヽ式会社の新株予約権等に関する事項(施行規則123条1号及び2号)
ァ〇業報告に表示しなければならない事項のうち,WEB開示の措置をとることについて監査役又は監査委員が異議を述べた部分
4 なお,WEB開示は,株主に対して書類を提供しなければならない株主総会の招集通知を発出する時から,当該株主総会の日から3ヶ月が経過するまでの間,継続して行う必要がある。

なお、WEB開示は、定款変更が必要なので、今年の総会では使えません。
そこで、経過措置で、新法による総会手続をする場合でも、社外役員とか今回充実させた部分は、書かなくていいことにしてます。
新法でやる方が楽かもしれないので、法務部の人は旧新のどちらでいくか、判断が必要です。

とりあえず、以上。本の執筆のしあげの関係上、明日あさってブログ休みます。
来週からは、また普通の記事に戻しましょう。
日曜日は、法学館の渋谷で、明日の法律家講座というのをやります。
会社法の基本原則について話す予定です。

ではでは。
  
Posted by masami_hadama at 01:09Comments(16)TrackBack(0)

2006年01月25日

実質債務超過会社の吸収合併(2)

実質債務超過の論点は、みんなモヤモヤするところのせいか、いくつもの質問やご意見をいただきました。ikさんやE.Kさんのご意見と、私の意見は、かなり共通するところがあり、より分析的に説明した方がいいと思いますので、今日は補足することにします。

昨日もお話ししましたが、実質債務超過会社の吸収合併で、一番問題なのは「実質債務超過」という言葉のあいまいさです。それと関連して、「のれん」という概念の多義性も話を複雑にしています(ikさんやE.Kさんのコメントにも、2つの「のれん」がでてきますよね)

最初に、実質債務超過の定義として、2つの仮説を立てます。
A説 のれんを計上し、資産の再評価をしても債務超過であること
B説 消滅会社が、その債務の全部の支払いをすることができないこと

A説では、簿価に二つの要素、 屬里譴鵝廚鉢∋饂困虜読床舛魏辰┐燭發里任后
一見、これは、会計っぽい定義なのですが、実は会計とは何にも関係のない概念です。

 ,痢屬里譴鵝廚蓮会社法・計算規則でいう「のれん」とは別の概念である「営業権」(法的な権利ではない経済的事実関係)のことを指します。
 これは、会計の世界では、自己創設のれんとして資産として認められないものです。

 なぜ認められないかというと、自己創設のれんは、会社の自己判断によるもので客観性が担保できないからです。

例えば、株式会社葉玉商店の社長の葉玉さんが、「うちは、簿価債務超過ですが、この千代田区一帯にお得意さんを1000社も抱えていますから、それを時価評価すると、2億円くらいの価値はありますよ」などと言って、資産の部に「営業権 2億円」なんて勝手につけるのは困ります。

 EKさんは「商法の時代、時価評価すれば債務超過でない場合は、これを正確に計算する手間をかけなくても、登記の際に、適当に「営業権」を計上すれば、登記は通った。これは、「実質債務超過」ではありません。」とコメントされています。
 A説で言えば「資産の再評価」の問題ですが、それを「営業権」という勘定科目にするのもどうかという気がしますし、「時価評価したら債務超過になってしまった場合でも適当に営業権を計上すれば登記できてしまう」という状態でもあったということは、「簿価債務超過は合併させない」というルールは機能しなかったということにもなります。

 このように「営業権」(消滅会社ののれん)は
 「簿価」債務超過の会社の吸収合併は認めない
というルールのもとで、合併をするために簿価債務超過を回避するものとして機能していました。

 しかし、先ほども申しましたように、この消滅会社の「営業権」は会計の世界では認められないもので、結局、A説のように、営業権を加えた上で、実質債務超過かどうかを判断するというのは、もっぱら法律の解釈の問題です。

 では、「営業権」は、法律上、どのような基準で評価するのでしょうか。
 ご存じの通り、そのような基準は、何もありません。

 E.Kさんのおっしゃるように「営業権」の経済的な評価手段として、割引キャッシュフロー等色々な方法はあります。

 しかし、それは営業権又は株式の「取引の参考資料」としての基準です。
 合併の無効という法的な効果につながる財産の評価を、公正な会計慣行とは異なる基準で、算定しようというのならば、明確で一義的な基準を提示しなければ、法的な安定性は図れません。
 例えば、「割引キャッシュフローによる営業権(又は株価)の評価は適切である」という考えは、比較的最近のものだり、それを裁判で採用してくれるのかどうか、算定の前提となる将来のキャッシュフロー予測や割引率を裁判所がどう考えるのかは、それこそ、予測できず、思いもよらないところで、合併無効とされるおそれがあります。

 しかも、「実質債務超過はダメ」というルールを作るのならば、合併の登記の申請で、法務局に対し、実質債務超過でないことを証する書面を提出させ、法務局で、それを判断して、登記させるかどうか決めることにするのが筋であり、それでは混乱は必至でしょう。

また、「実質債務超過でないこと」を要求する説は、「簿価債務超過」で、かつ、実質債務超過というところを考えがちですが、実は、「簿価は債務超過じゃないけれど、実質は債務超過である会社も合併できない」というルールも採用することになり、これでは、どんな場合も、消滅会社の資産の再評価と営業権の算定をしない限り、安心して合併することができない(算定したって、安心はできないですが)ということになります。

もちろん、「実質債務超過でないこと」を要件とすることが、債権者や株主の保護に役に立つということであれば、知恵を絞るのもいいのすが、昨日の記事でも書いたように、この問題は、債権者や株主の保護とは、直接の関係はないのです。

 以上の消滅会社の「営業権」という意味の「のれん」に対し、計算規則の「のれん」は、「存続会社が拠出した財産の時価−消滅会社から入ってきた財産の時価」という差額で、存続会社側のBSに計上されるものです。
 これは、「合併当事者が合意した条件である以上、その差額には何らかの経済的価値があるだろう。だから、「のれん」として計上しよう。もし、存続会社の予測がはずれて、その価値が幻想だったら、あとで減らしましょう」という考え方です。

 私は、この考え方は法的にも一理あると思います。
 浅田真央ちゃんのスケート靴でも分かるように、財産の価値は多様です。
 くまさんのコメントにあったように「子会社を当面の損失覚悟で救済して、その代わり子会社関連の取引関係等を維持するほうが、親会社にとって得策だという判断」も経済実態にあった判断であり、許容すべきでしょう。
 また、「消滅会社には資産は何もなく、キャッシュフローもない。しかし、優秀な人材が揃っていて、吸収合併した方が、個人ごとにヘッドハンティングするよりも、ずっとコストがかからない」という目的で行う合併も合理的です

これらの経済的利益は、会計基準でも評価されず、株式や営業権の価値の評価方法でも図れませんが、実際には強いニーズがある大きな利益なのです。

したがって、「簿価債務超過」だろうが「実質債務超過」だろうが、合理的な当事者が評価した消滅会社の財産的価値を尊重した上で、株式やその他の財産を交付することができると解した上で、株主や債権者の保護は、株式買取請求権や債権者異議手続で図れば十分だと思います。

この株主保護という点について、 ikさんが「合併比率の不公正は合併無効事由にならないわけですが,これって合併承認決議の取消事由にもならないという理解ですか」という質問をされています。

 特別利害関係人が議決権を行使して、著しく不公正な決議がされた場合に該当するならば取消事由になるでしょうが、むしろ、株主については、「公正な価格」での株式買取請求権で保護されると考えた方がよいでしょう。

次に、B説(消滅会社が、その債務の全部の支払いをすることができないこと)について簡単に説明します。

この見解の問題は、債権者異議手続が何のために行われるのかを説明することができないということです。
           
債権者保護手続きは、平成9年に改正があって、存続会社が異議を述べた債権者に弁済等をしなければならないのを原則としつつ、「ただし、当該吸収合併をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない」(799条5項ただし書)という限定がつけられています。

つまり、債権者に支払うことができる限りは、会社は、弁済等をする必要がないのです。

では、ここで問題です。
「存続会社が、合併前は、支払能力があるのに、吸収合併をすると、債権者に支払うことができなくなる場合はどんな場合でしょう?」

答は、存続会社が、消滅会社の財産を包括承継したために、存続会社の資産が目減りする場合、すなわち、消滅会社の財産が実質的債務超過の場合です。

このように799条5項ただし書は、B説でいうところの実質債務超過会社を吸収合併することを前提としている条文であると考えられ、この批判はA説にも該当します。

ということで、私は、やはり、簿価債務超過・実質債務超過の会社を吸収合併し、対価として株式や他の財産を交付することができると考えるのが、もっとも会社法に適合的であり、また、合理性・法的安定性に優れていると思います。
 そして、資本金や資本準備金の増加については、その論点とは関係なく、淡々と、計算規則で計上すればよいのです。

 HSさんやとしこさんの質問にも文中で答えたつもりですが、いかがでしょうか。
  
Posted by masami_hadama at 00:06Comments(77)TrackBack(0)

2006年01月24日

実質債務超過会社の吸収合併

堀江さんが逮捕されて思わずテレビの特番に目が釘付けになりました。
このブログは、客観的には存亡の危機にあるかもしれないのですが、将来どうなるかは、ライブドアの幹部が小菅に行った今は、誰にも分からないことかもしれません。

誰にも分からないと言えば、実質債務超過という言葉も、よく分からない言葉です。

改正前の商法では、「実質債務超過の会社を吸収合併することはできない」というのが通説だったわけですが、会社法は、簿価債務超過の会社の吸収合併を認めることにしており、私は、実質債務超過の会社の吸収合併も認められると解釈しています(論点<681>)。

実質債務超過を、どう定義するかは難しい問題ですが、イメージとしては、会社の資産を時価評価しても、(さらに、営業権とよばれる経済的価値ある事実関係を足しても)、債務の方が多いような場合をいうことになるでしょうか。

従前、実質債務超過の会社を吸収合併することができないとされる理由は、大きく言えば、3つあったように思います。
1 存続会社が負の財産を承継すると存続会社の株主や債権者を害する。
2 存続会社が承継するのは、負の財産なのに、資本を増加させるのは、資本充実の原則に反する。
3 存続会社が、負の財産の承継に対して株式を発行するのは論理的にできない。

 このうち1は、反対株主の買取請求権や債権者異議手続があるのだから、それで処理すれば足りるし、存続会社が、合併前に消滅会社に出資をして債務超過を解消すれば、合併することができるのですから、実質債務超過会社の吸収合併は、債権者や株主を害するというような話ではないと考えざるを得ません。

 そのようにして合併すれば、存続会社が出資した財産は消滅会社から存続会社に包括承継され、元に戻ってくるわけで、合併後の資産と負債を見る限り、実質債務超過のまま合併したのか、一旦、出資してから合併したのかは、何の違いもないのです

(むしろ、一旦、存続会社が出資して消滅会社の資本を増やすと、そこで登録免許税等のコストがかかりますから、余計なことをせずに、最初から実質債務超過のまま、合併した方が債権者や株主にとって有利です)。

 次に2の存続会社の資本金の増加との関係は、省令が固まらないときちんとしたことをいえません。
 ただ、パーチェス法をとっても、持分プーリング法をとっても、消滅会社の財産の客観的価値を超える資本金の増加は認められるのですから、「資本の増加額に見合うだけの財産が現実に拠出されなければならない」ということは、実質債務超過の会社の吸収合併を否定する理由にはなりません。

 何より、合併後、存続会社の資本金の増加額を「0」にすることもできるので、そのような場合には、資本充実の原則は全く無関係ということになります。

 最後に、3の「負の財産の承継に対して株式を発行する」ということですが、私は、これも債務超過会社の吸収合併を否定する理由にはならないと思います。

 まず、会社法では、対価を株式以外の財産とする合併や無対価合併も認められているので、そのような合併では、3の問題は起きません。

 例えば、現金交付合併の場合、存続会社にとっては、消滅会社の財産を現金で購入したのと実質的には同じです(単に包括承継だというだけです)。

 この場合、「負の価値のものに現金を払っていいのか」という問題は生じますが、それは、株式会社が寄付や債務引き受けをしているのと同じであり、当然、負の価値のものに現金を払うことはできると考えます。
 したがって、実質債務超過会社を、株式以外の対価又は無対価で吸収合併することは、可能です。

 では、対価が株式の場合は、どうでしょうか。

 会社法でも、無償で第三者に株式を発行することや、まして「債務」を払込みして(会社に債務を引き受けさせて)、株式を発行することはできません。株式は、出資をした者に交付される権利ですから、出資をしない者には交付できないのです(株主無償割当を除く。)。

 しかし、債務超過である事業(資産と負債の固まり)を会社に承継させるということは、債務のみを承継させたり、何の財産も会社に出資しないことと同義でしょうか?

 事業の中には、通常、資産が含まれますが、この資産の評価は、人それぞれです。

 例えば、1足3万円のスケート靴でも、浅田真央ちゃんが履いたスケート靴ならば、30万円出しても買いたいという人がいます。萌えている秋葉系なら100万でも出すかも知れません。そして、「浅田真央」くらいになれば、その30万円という価格は、公正な価値として評価されるような気がします。

 ところが、葉玉が、そのスケート靴を30万円で買って、自分で履いてしまったら、そのスケート靴の公正な価値は暴落し、3000円になります。
(「そもそも、履けないだろ!」というツッコミをお願いします)。

 ところが、ところが、新・会社法100問を買ったフィギュアファンの中には、「これは、浅田真央と、葉玉匡美という、通常では考えられないコラボレーションが実現した靴である。そこに希少性がある」と考えて、そのスケート靴を150万円で買う人もいます。
(「ない、ない!」というツッコミをお願いします)。

 このように資産価値には、主観的な価値というものもあり、しかも、例えば、そのフィギュアファンが靴を買った後、「葉玉匡美が史上初の10回転ジャンプに成功した」という凄いニュースが流れると、その靴は、市場でも300万円で取引されるようになることもあるのです。

 そうなったら、その人は「先見の明がある人」ということになり、企業で言えば、「カリスマ社長」と呼ばれるでしょう。

 しかも、譲り受ける財産が事業である場合には、ノウハウ、取引先等との関係、雇用関係等の人的資源なども、経済的には大きな価値を持ちます。
 現行法でも、これらを合併時に「のれん」という名で資産化し、「簿価債務超過だが、のれんを足せば、実質債務超過ではない」等と言うことで合併を有効とするわけですが、のれんの客観的評価自体が非常に難しいのに、「のれんがあるから実質債務超過ではない」と言うくらいならば、最初から「実質債務超過」という概念を捨てればいいのにと思うのは、私だけでしょうか。少なくとも会社法の組織再編の会計処理における「のれん」は、もっとドライな概念だと思います。

 このように資産、特に、事業には、主観的な価値がある以上、単に債務のみを承継するときと、事業を譲渡するときとを同列に取り扱うことはできません。

 存続会社が、「消滅会社の資産の真の価値は、客観的な価値よりも高い」と判断したとすれば、客観的には債務超過の事業であったとしても、その存続会社にとっては、価値のある財産が出資されたと評価すべきであり、それに対して、株式を発行することは論理的にも、実際上も、問題はないと思います。

 もちろん、その資産価値の評価に誤りがあれば、取締役の任務懈怠責任の問題は生じますが、それは、例えば、ライブドアの株式を購入した会社と同じ問題です。


 実質債務超過の話は、情緒的になりがちで、あまり好きな論点ではありません。

 しかし、私は、実質債務超過という、要件すら不明確で、事実認定上も極めて困難な概念を合併の無効要件とすれば、簿価債務超過の会社の吸収合併を認めた意味を没却すると思いますし、合併する会社に、合併前の出資など無駄な手続きをすることを強制するだけで、百害あって一利なしだと思っています。
  
Posted by masami_hadama at 00:52Comments(72)TrackBack(0)

2005年12月26日

資本金の減少

 昔昔「資本を株式に分ける」という考え方があり,商法改正が繰り返されるうちに徐々にその考え方が後退し,ついに,会社法で100%離脱することになりました。

 例えば,比較的最近まで
 〇駛楸發鮓詐するときは,株式の数も減少しなければならない場合がある(額面株式があった時代)
株式の数を減少させるために資本金を減少しなければならない(平成13年までの株式併合は資本減少等の場合にしかできなかったし,会社法改正前の株式の消却も資本減少等の場合にしかできなかった)
いう法制がありました。

 しかし,一連の商法改正で,額面株式が廃止され,株式併合は,株主総会の決議さえあれば,特に理由がなくてもできるようになり,会社法で,株式の消却が自己株式の消却に限定された結果,今では,資本金の減少も,株式の数の減少も,お互いの数字を気にせずに,自由にできるようになったのです。
 
 こういう時代になると,資本金の額の減少の無効の訴えって本当に必要なんだろうかという疑問が生じてきませんか?

 唐突なようですが,設立無効の訴え,新株発行無効の訴え等会社の組織に関する訴えは,基本的には,株式の増減や株主総会の議決権に関するものばかりです。
 発行された株式が無効だと,株主総会の決議に瑕疵が生ずるので,「瑕疵があっても,とりあえず有効にして,株主総会の決議が揺らがないようにしよう」というのが,組織に関する訴えの基本的な考え方ですから,株式がらみの会社の行為ばかりになったのでしょう。

 そうした組織に関する訴えの中で,資本減少の無効の訴えや準備金減少の無効の訴えは,少し浮いて見えていました。

 確かに,資本減少や準備金減少が無効だと,配当可能利益が増えないため,違法配当になる場合があり,「違法配当になると多数の利害関係人に影響を与えるから瑕疵があってもとりあえず有効にすべきである」と言われたりしていたのですが,それは実はレトリックに過ぎません。

 利益配当(剰余金の配当)が多数の人に影響を与えるというのならば端的に「利益配当無効の訴え」を作るべきなんです。
 しかし,現行商法にも会社法にもそんな訴えはなく,粉飾決算(例えば,資産の水増しをして純資産を実際よりも多く見せる方法)によって,配当可能利益があるように見せかけて配当すると,その配当は当然に無効となり,株主に返還義務を生じさせることになります。

 だから,利益配当を形成訴訟によらずに無効とすることなど,現行商法は屁とも思っていないんですね(少し下品な表現になりました)。

 とすると,資本減少の無効の訴えという類型がある本当の理由は,
,つて資本と株式が連動していたという沿革的なもの
⊂λ‐紂こ式の併合・株式の消却の要件として資本減少が必要な場合があり,資本減少が無効になると株式の併合や株式の消却が無効となることがあった(その結果,株主総会の決議に影響が及ぶ場合がある)
というあたりだろうと思います。
 
 それで,「資本金の減少が株式の消却の要件ではなくなった会社法の改正を契機に「資本減少無効の訴え」を無くすべきではないか」という疑問にぶつかったのです。

 しかし,
〇駛楸發粒曚登記事項となっていて,その登記を信頼して株式を取得した者等を保護すべきという考えはありうるだろう
∋駛楸發粒曚大会社の要件になっていて,形成訴訟によらずに無効とした場合,会計監査人の設置義務違反や内部統制システムの決定義務違反等につながることを考えると,株式に関係のない事項であっても,形成訴訟にする合理性はあるだろう
と考え,資本減少無効の訴えは,会社法でも維持することになりました。

 これに対し,準備金の減少は,大会社の要件と関係ありませんし,準備金は登記事項ではなく,欠損填補の場合には債権者保護手続きもされないので,提訴権者が準備金の減少の事実を知らないまま提訴期間が経過するおそれがあるので,準備金の減少の無効の訴えは,裁判を受ける権利の保護の見地から,もはや維持できないということで,廃止されてしまいました。

 今までは,資本金と準備金って,兄と弟みたいに似たような取扱いをしてきたわけですが,ふと目を覚まして,よく見てみると,兄の資本くんは世間の皆様にアピールしているイケメンボーイで,弟の準備金くんは世間に隠れて生きるオタクなんだから,「なんでも同じに扱っていたのは,ちょっと,おかしかったね」という感じです。これからは,兄弟の個性の違いで勝負してもらいましょう。

 なお,資本金の減少の無効の訴えは生き残りましたが,現行法のように無効判決に遡及効があると,無効判決により遡及的に大会社に戻ってしまうような会社が出るという問題があるので,会社法では,無効判決の効力が将来効に変更されました。
 以前から,「資本減少の無効判決は,将来効にすべきである」という立法論がありましたので,結論としては,その立法論を採用したことになります。ただ,その立法論は,「株式の併合が遡及的に無効になるとまずいから」という理由だったので,その理由づけ自体は今では使えない理由になっていますが・・。
  
Posted by masami_hadama at 00:06Comments(16)TrackBack(0)

2005年12月23日

設立時の資本金

 以前,資本金の額は0円でいいという記事を書いたとき,「設立時から0円でいいかどうか」については,法務省令をお楽しみに!ということにしていました。

 この度,計算省令案10条で,ついに「設立時の資本金0円」がベールを脱いだので,今日は,そのあたりに関する話題を書きます。

 計算省令案10条は,資本金の決定のベースとなる「払込み又は給付をした財産の額」(会社法445条1項)について,

―仍颪気譴榛盪困良床然曄櫚発起人の報酬・設立費用等の額

という計算式で算出することにしています。

  櫚△,0かマイナスになった場合には,資本金は0円になります。
 
 この計算式は,3つほど見るべきポイントがあります。

(1) 現物出資について,定款に記載された価額(28条1号)ではなく,給付日の価額(時価)でしか評価しない。
(2) 発起人の報酬や設立費用等(いわゆる創立費)に関する会計上の処理を合理的に行うための前提条件を整備している。
(3) 発起人の報酬や設立費用等が高額である場合,純資産がマイナスの状態で株式会社が設立されることを前提としている。

(1)は,いわゆる「資本充実の原則」の考え方の変化(もしくは,従来の資本充実の原則の廃止?)に伴うものといえるかもしれません。
 現行商法ですと,「現物出資財産について定款で定めた額」をベースに資本の額を決定し,その財産の価額が不足する場合には,その資本の額に見合うような財産を拠出させるために発起人等に担保責任を課しています。
 しかし,会社法では,最初から現物についての適正な評価額の範囲でしか資本金の額に組み入れられません。定款に定めた額よりも低い価額だったとしても,最初から低く資本金を設定しているので,発起人等の担保責任も,「資本金に見合うだけの財産を拠出させるための責任」ではないということになります。
 現行商法は発起人等が無資力だったりすると,いつまでたっても資本は充実しないので,資本金が債権者に対する空手形になるおそれがありますが,会社法のやり方ですと,充実したものだけが資本金として公示されるので,現行商法よりも債権者の保護に役立ちます。

(2)は,現行商法施行規則のように創立費を繰延資産とするのか,それともしないのかというような問題であり,公正な会計慣行に委ねるにあたって,いろいろと工夫しているのです。この創立費の扱い(さらに新株発行費の扱い)を合理化するために,資本金0円の場合が生じてしまうんですね(詳しくは,またどこかで)。

(3)は,設立当初から債務超過(純資産がマイナス)の会社を認めることができるか,という問題です。この点について,法務省令はYESと答えているんですね。
 初心者は,債務超過というと「お金がない」というイメージを持つんですが,債務超過の会社だって,実は「アナタよりずっとお金を持っている」場合も多いんです。
 例えば,資産100億円,負債110億円の会社は,債務超過ですが,100億円の資産を運用して,お金もうけをすることができます。
 したがって,設立当初から債務超過でも,会社の事業は十分やれるわけです。

 しかも,設立後に,会社が損をして,債務超過になったとしても,解散事由にはならない(債務超過では会社は死なない)ので,「債務超過の会社は,生まれてきてはいけない。」というルールを作る合理的な理由を見つけるのは困難です。

 設立時の現物出資財産が不当に高く評価されていたり,設立時に借金して購入した事務所建物が某建築士のもので,いきなり地震で崩壊したりすれば,即,債務超過になってしまうわけで,堅いことをいわずに,債務超過のままの設立を認めてあげましょうというのが,法務省令案の立場であるわけですね。

株主が1円以上(外国通貨だったらもっと安いかも)出資しなければならないというルールがあるにもかかわらず,債務超過や資本金0円で出発する会社がありうるというところが,現行商法の常識に拘ると奇異に映るかもしれませんが,そこは,革命が起きたということで,おおらかな気持ちで見守ってください(笑)。

*連休中,家族で阿蘇山に旅行にいきます。阿蘇山にインターネットがあるかどうか不明ですが,この前,研修に行った山奥よりも,ずっと山奥なので,ここ2日ほど音信不通になるかもしれません。
 更新しなくても,警察に捜索願いを出さないように御願いします。
  
Posted by masami_hadama at 01:00Comments(90)TrackBack(0)

2005年12月05日

社外取締役の開示と独立取締役

 大阪で省令の解説会を終え,ようやく帰ってきました。私は,会社法施行規則案と内部統制システム省令案の説明で1時間半という割り振りだったのですが,会社法施行規則等でベールを脱いだ裏技の説明を少し織り交ぜはしたものの,早口で概要を説明するだけで結構時間を食いました。
 解説会の後,一緒に解説会をやった郡谷さんと,ヒルトンホテルの地下のお好み焼き屋で大阪の味を大いに満喫した後(もちろん自腹),新幹線で東京へ・・。
 昔の公務員なら,同じ満喫するにしても,解説会で一財産稼いだあと,晩秋の京の旅館で一泊して,あんなことも,こんなことも満喫できたのだろうと妄想するのですが(笑),昨今の公務員は,解説会も通常業務の一環で,おいしい役得は何もなく,しかも,大阪だと強制的に日帰りで,「休日を取って大阪で遊んでいきたい」と言っても許してくれず,自腹でお好み焼きをかき込むのが精一杯というのが現実です。検事志望の方はそういうもんだとあきらめてください。

 さて,ここ3日間ひたすら開示というものについてお話ししてきましたが、今日は、今回の法務省令案の目玉の一つである、事業報告における「社外取締役」開示の充実についてお話しします。

 アメリカ好きの専門家の多くは,「日本の「社外取締役」というのは「社外」の範囲が広すぎる。業務執行者からの独立性に乏しい。「独立取締役」の選任を義務づけるべきである。」という意見をお持ちのように思います。

 それは、それで一理あるものの、本当に「独立取締役」ならば,株主の利益を守ってくれるのでしょうか。

 「社長の愛人も,大学の友達も独立取締役」と揶揄されるように,「独立」自体には大した意味はありません。具体名は避けますが,「独立取締役」に該当する社外取締役でも,裁判所が違法だと判断した買収防衛策に全面的に賛成したこともありましたし,独立取締役が株主の利益に寄与しているという実証的なデータも見たことがありません。

 私は,結構ロマンチストでありますが,どうも「独立取締役」には夢を見ることができないようです。刑事事件をやっているときに企業の腐敗を沢山見てきたせいで,「取締役の身分にどれだけ形式的な要件を付加しても,無駄。」というイメージが焼き付いているのかもしれません。

 他方,私は,「人は自分の行動を公表されると,その範囲内で正当な行動を取ろうとする」という人間の知恵にはリアリティーを感じます。公表される方にとっては息苦しい知恵ですが,「恥」を知る人間をコントロールするには極めて有効な手段です。

 今回,会社法施行規則案は、社外取締役を含む社外役員について、事業報告による開示を充実させています。
 たとえば、78条3号は、「社外役員が当該株式会社又は当該株式会社の特定関係事業者の業務執行取締役、執行役若しくは業務を執行する社員又は使用人の三親等内の親族その他これに準ずるものであるときは、その事実」を事業報告に記載を要求し、これにより「独立」の程度が開示されることになります。

 また、78条4号および5号は、
 四 各社外役員の当該事業年度における主な活動状況(次に掲げる事項を含む。)
  イ 取締役会への出席の状況
  ロ 取締役会における発言の状況
  ハ 当該社外役員の意見により株式会社の事業の方針又は事業その他の事項に係る決定が変更された場合にあってはその内容
  ニ 当該事業年度中に当該株式会社において法令又は定款に違反する事実その他不当な業務の執行が行われた事実があるときは、各社外役員が当該事実の発生の予防のために行った行為及び当該事実の発生後の対応として行った行為

 五 社外役員と当該株式会社との間で法第四百二十七条第一項の契約を締結しているときは、当該契約の内容(当該契約によって当該社外役員の職務の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあっては、その内容を含む。)

と規定し、社外役員が具体的に会社でどのような役割を果たしているかを事業報告に記載するようにしているのです。
 つまり、取締役会で何の発言もしない社外取締役ばかりいる会社や,社外取締役の言うことに全く耳を貸さない会社があってもいいけれども、それならば、ちゃんとそのことを事業報告に書いて株主に知らせなさいということですね。

 もちろん,法務省令案は,現在,パブコメ中なので,いろいろな意見をお聞きした結果,「やっぱり,社外取締役がかわいそうだから,この規定は止めました」とかいうことになるかもしれませんが、私は、実際に、この規定が施行されれば、社外取締役の役割に大きなスポットライトがあたるのではないかと思います。
 
 ガバナンスに「正解」というものは存在しないのですが、「独立取締役さえ選べばよいという制度」と,「社外取締役がどれだけ会社の経営に影響を与えているかを開示する制度」とは,どちらがガバナンスを強化する上で有効に機能するか、どちらがより独立性の高い活動を行うか、可能ならば実証的に比較してみたいところです。
 
  
Posted by masami_hadama at 23:05Comments(84)TrackBack(0)

事業報告・監査報告・会計監査報告

3夜連続の開示特集になりますが,今日は,事業報告・監査報告・会計監査報告についてお話しします。

上場企業の総務法務関係の部署にとって,定時株主総会はいわばメイン・イベント。いわば,和泉元彌vs佐々木健想の試合みたいなものです。現場において,さわやかな戦いぶりを見せて盛り上がるようにしつつも,シナリオどおり勝つべきものが勝つように工夫しなければならないという点でもよく似ています(失言です。忘れてください。)
 さて,上場会社の定時株主総会では,株主に,役員の選任議案と剰余金の配当議案を承認してもらうことが重要ですが,会社法は,株主が,その議案をきちんと判断できるようにするため,総会の2週間以上前に送られる招集通知と一緒に,次のような書面も送るようにしています(上場会社なので,会計監査人設置会社です)。

1 株主総会参考書類
 招集通知に記載された議題や議案を判断するために参考になる事項が記載されたものです(株主総会等に関する法務省令11条〜)。
 例えば,取締役の選任議案を提出するときは,候補者の氏名,生年月日,略歴,保有株式数,他の会社等の代表者か,特別利害関係等があるか,社外取締役か等が記載されています。

2 計算書類
 貸借対照表と損益計算書等です。

3 事業報告
 業務執行者が作成する報告書です。
 株式会社の状況に関する重要な事項,株式会社の現況,会社役員,株,新株予約権等に関する事項が記載されています(会社法施行規則案76条〜)

4 会計監査報告
 会計監査人が作成する報告書です
 監査の方法及びその内容,計算関係書類が当該株式会社の損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見等が記載されています(監査省令案15条)。

5 監査報告
 監査役(監査役会)が監査の作成する報告書です。
〃彁惨愀現駑爐隆萄佐愀
 会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときはその旨及びその理由,会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項,監査役の監査の方法の概要等(監査省令案15条)が記載されます。
∋業報告の監査関係
 監査の方法及び内容,事業報告及びその付属明細書が法令又は定款に従い株式会社の状況を正しく示しているかどうかについての意見等が記載されています(監査省令案23条〜)。

さて,以上のように,どんな書面が株主に送られるかを理解すると,決算期後の各種の手続は,これらの書面を作るのが第一次的な目的であるということも分かります。
 逆説的にいうと,監査報告や会計監査報告を作成するために,監査役や会計監査人は,その記載事項となっている事項について監査するのです。

 学生さんや受験生は,株主総会までの手続きについて面倒くさいとか,実務くさくて面白くないといって,勉強したがりませんが,そう面倒くさい話ではありません。
 学校生活に例えて言えば
ゞ般骸更埃圈並緝充萃役等)による計算書類・業務報告の作成=期末試験で,学生が答案を作成する
会計監査報告・監査報告=先生が答案を採点する
3主総会での選任決議=職員会議で,期末試験の成績に応じて,その学生を進級させるか,落第させるか,退学させるかを決める。
という感じです。
 
 具体的に,会計監査人設置会社の監査の手続について,(1)計算書類関係(会社がこの1年でどのくらい儲けたか等)と,(2)事業報告関係(会社がどのような事業を行ってきたか等)に分けて説明します。

(1)計算関係書類関係
 〃荵惨後,業務執行者が計算書類を作成(435供
 会計監査人が計算書類を監査後,会計監査報告を作成(436供
 4萄彩鬚会計監査報告を受け取り,監査報告(計算関係書類の監査部分)を作成(436供法舛修隆萄困蓮げ餬彜萄鎖佑隆萄困諒法の適正性等が主。

(2)事業報告関係
 〃荵惨後,業務執行者が事業報告を作成(435供
 監査役が業務監査後,監査報告(事業報告の監査関係)を作成

以上の2つの監査が終了した後,取締役会の承認(436掘砲鯑世董し彁蚕駑燹せ業報告,監査報告,会計監査報告が株主に提供されることになるわけです。

ちなみに,会計監査報告や監査報告で,計算書類や事業報告等が不適正だと指摘された場合,取締役会には,2つの選択肢があります。

1 会計監査報告等の意見を無視して,そのまま承認する。
 この場合,439条が適用されないので,株主総会で計算書類の承認を得なければなりませんし,株主に対し,計算書類等が不適正だという意見が伝わるわけで,普通,業務執行者や取締役は,株主総会で苦労するはずです。
 しかし,ワンマン社長だったりすると,「どうせ俺は大株主だし,多数派だから,会計監査人から何を言われても,株主総会では議案は全部通るはずだ。」と思って,そのまま株主総会に突入することもあります。

2 会計監査報告等の指摘を見て,承認しない 。
 取締役会が承認しないと,計算書類や事業報告を株主に提供できませんから(437),業務執行者は,不適正だと言われた計算書類等を意見に従って作り直すことになるでしょう。
 その場合,訂正した計算書類について,もう一度,会計監査人や監査役による監査が必要であり,その上で会計監査報告,監査報告も作り直さなければいけません。
 もっとも,この訂正後の監査については,最初の会計監査報告や監査報告で指摘されたとおりに訂正されたのであれば,それほどの時間は必要ないはずですので,監査役や会計監査人の承諾があれば,監査期間をぐっと短縮して,株主総会の招集手続をなるべく遅らせないようにすることもできます。

 なお,計算書類,事業報告,監査報告,会計監査報告は,5年間は,本店に備え置いて,株主,債権者に開示されます(442条)。
 業務執行者にとっては,期末試験の答案を5年間も掲示板にさらされるようなものですが,その業務執行者や会社の状況を知る上では,よいい資料になります。

  
Posted by masami_hadama at 00:53Comments(26)TrackBack(0)

2005年12月03日

会社情報の開示

 株式会社は,―衢と経営が分離しているため,株主が会社の情報を必ずしも十分知ることができない,株主が間接有限責任しか負わないので,会社債権者が会社の財産に関する情報等を知る必要性が強い等の理由から,様々な情報開示制度が整えられています。

 もっとも,一言で「開示」と言っても,情報の種類によって,(1)どんなときに(2)誰に対して開示するかは違うわけで,その違いを理解することが,各種開示制度の趣旨を理解する上で重要だと思います。

 ここでは,代表的な開示制度を(1)常時開示されているか(常時),特定の行為が行われるときだけ開示されるか(適時),(2)株主・債権者等誰に対する開示かに分類して,簡単に説明します。

1 常時+一般(公示)
 株式会社の登記は,法務局に行けば,誰でもいつでも見ることができます。
 仝示事項を広げると,その事項を変更する度に登記しなければならなくなり,会社のコスト負担が大きくなる,会社の利害関係者以外に知らせる必要がない情報もあるということで,必要最低限の情報が登記によって開示されています。

 また,貸借対照表等の公告(440)は,毎年一回行われ,誰でも見ることができます。官報や新聞紙は図書館等で過去の分を見ることができますし,電子公告は5年間継続開示しなければならないので,常時開示の一つに分類してみました。
 貸借対照表は,会社の直近の財産状況を示す最も基本的な資料なので,債権者だけではなく,これから株式会社と取引をしようとする人も見れるように配慮されています。
 なお,合同会社は,間接有限責任社員しかいませんが,貸借対照表の公告義務はありませんから,間接有限責任=決算公告というわけではありません。

2 常時+株主及び債権者
 定款(31),株主名簿(125),計算書類,事業報告,付属明細書(442),会計参与報告(378),株主総会議事録(318)の備置き及び閲覧等です。
 いずれも会社の基本的な情報ですが,会社の内部ルールであったり(定款),変更が頻繁にあったり(株主名簿),毎年必ず作らなければならないものであったり(計算書類等,株主総会議事録)であることから,登記をする必要はないが(コストをかけなくてすむ),利害関係者は,いつでも見ることができるようになっています。
 計算書類は,公告されるので,誰にでも見せてよさそうなものですが,公告は要旨で足りるので,閲覧の方がより詳しい情報を見ることができますし,事業報告や付属明細書は,公告の対象になっていませんので,そのような詳しい情報は,会社に具体的利害関係のある債権者だけが見れるようにしているわけです。

 ただし,上場株式を発行している会社等は,投資家保護の見地から,証券取引法により,EDINET等で計算書類や事業報告等の情報が誰でも見れるようになっています(会社法では,連結計算書類は,株主総会の時以外に開示されないのですが,EDINET等ではいつでも誰でも見ることができます。)
 計算書類,事業報告の内容については重要な割に,学生や受験生の関心が薄いので,会社法を勉強している人は,一度,自分の知っている会社(例えば,ソニーとか,トヨタとか)の有価証券報告書を見てみるといいと思います。
http://info.edinet.go.jp/EdiHtml/main.htm

3 常時+株主
 会計帳簿(432),取締役会議事録(371),監査役会議事録(394)の閲覧請求権は,一定の要件を満たした株主だけが見ることができます。営業秘密に関わることが書かれているので,債権者に見せるのは適当でないからです。同じ議事録でも,株主総会議事録は,債権者が見れるところが,所有と経営の分離って感じで面白いですね。

4 適時+株主及び債権者
 吸収合併等を行う前に開示される吸収合併契約等(782等)や,その効力発生後に開示される吸収合併等に関する書面(801等)は,株主も債権者も閲覧等をすることができます。
 組織再編は,債権者にも大きな影響を与えるので,その内容を知る手段を与えているのです。ただ,その内容は,結構,量があり,通知するとなると莫大なコストがかかるので,希望者に閲覧等を認めるという開示手段がとられています。

5 適時+株主
 会社の行為が行われる場合に,株主のみに通知がされる場合がありますが,これは,次の3つのタイプに別れます。

 仝告で代替できるタイプ
 株式引受人の募集(201条・差し止め請求権の保障),株式買取請求が可能であること(116,469,株式買取請求権の保障),取締役等による責任の一部免除(426,異議権の保障)等の株主の権利を保障するための通知や単元変更(195)等株主の権利についてのみ影響を与える事項の通知があります。
 この通知は,「文句のある株主に権利行使の機会を与える」という趣旨であったり,単に事実の通知であったりするので,通知の代わりに,公告で代替することができます。

◆仝告で代替できないタイプ
 ,醗曚覆蝓こ式の割当をうける権利の付与(202),現物配当時の金銭配当請求権(454),株主総会の招集通知(299)は,すべての株主の権利を与えるものであるので,その情報を確実に株主に認識さえるため,公告では代替できないこととされています。

 公告しかできないタイプ
 基準日公告(124)は,株主名簿に記載されていない者に名義書換の機会を与えたりするためのものなので,通知で代替することはできません。

6 適時+株主及び質権者
 会社の行為が,質権者の権利にも影響を与える場合には,登録株式質権者に対しても,情報を伝える必要があります。
 仝告「かつ」通知のタイプ
 株券廃止(218),株券提出(219)の場合,公告と通知を両方しなければいけません。
 通知は,株主名簿に書かれている人に伝えるためには一番確実な方法です。
 公告は,株主名簿に書かれていないが,株式を取得した人や略式質権者に,名義書換をするチャンスを与えることができます。
 株券廃止や株券提出が必要な場合には,質権者の第三者対抗要件の具備方法を変更しなければならないので,通知と公告の両方をやらなければならないわけです。

◆…銘里鮓告で代替できるタイプ
 取得条項付株式の取得事由の発生(170),株式併合(181)等は,株主及び株式登録質権者に通知しなければいけませんが,公告で代替することができます。事実の通知に過ぎないし,株券の回収が必要な場合には,,盥圓錣譴襪里如こ主や質権者の保護に欠けるところはないからです。

 通知を公告で代替で代替できないタイプ
 株式無償割当の事後の通知(187)は,公告で代替することができません。すべての株主に権利を与えるものであり,また,登録株式質権者は,無償割当てされた株式について特別の権利を与えられている(152)からです。

7 適時+債権者
 債権者保護手続(449,627,789等)は,公告し,かつ,知れている債権者に通知しなければなりません。本当は,全債権者に通知した方がいいのですが,知れていない債権者には通知しようがないので,公告も併用しなければならないこととされています。

以上の他にも,いくつかの開示方法がありますし,会社法では,有価証券報告書等の提出会社について,会社法の開示を省略する制度もありますが,基本的な考え方さえ覚えておけば,開示についての条文は読みやすくなると思います。

  
Posted by masami_hadama at 01:24Comments(4)TrackBack(0)

2005年11月25日

違法配当

 現行商法からコペルニクス的転回を遂げた「違法配当」についてお話しします。
 違法配当といっても,総会決議を欠いた配当ではなく,分配可能額を超えた配当のことです。
 本では問86の論点<650>で一番詳しく説明していますが,立案担当者がどう悩んで,こんな結論に至ったのかを知ってもらいましょう。

 さて,この違法配当は,現行商法では,100人に聞けば,100人とも「無効」と言います。
 しかし,会社法は,違法配当を「有効」としてしまいました。
 以前も書きましたが,463条1項が「効力を生じた日」という文言を用いている以上,有効と解釈する以外はありません。

 ただ,このことは,法制審終了後,立案の過程において,「どうやったら,剰余金の配当と自己株式の取得について統一的な財源規制を課すことができるか」ということを真剣に詰めた結果生まれた解決策でしたので,あまり世に認知されないまま,今日に至っております。

 「違法配当を有効にするなんて,株主を甘やかしている」などとおっちょこちょいな考えをしないでください。
 むしろ今回の会社法は,違法配当を受け取った株主に現行商法以上に重い責任を負わせたものなのです。

 現行商法は,「違法配当は無効だ!どうだ,すごいだろ」と威張っている割には,善意の株主に甘いんですよね。現行商法では,会社が,株主に対して配当を返してもらうためには,不当利得返還請求権を行使することになるわけですが,善意者に対する不当利得返還請求は,現存利益に限定されているのです(民法703条)。
 資本維持だとかいっていながら,株主の返還義務を制限して,債権者よりも株主を優先させるなんて,なんと債権者保護に薄い制度なんだろう(笑)。

 まして,自己株式の取得のときなんかひどいですよ。だって,会社は取得した株式をそのまま株主に返すのに,株主は,浪費したお金は返さなくていいんですから。
 上場会社等では,株主に対する返還請求は現実性が少ないと思われますが,中小企業では,経営者や奥さんが株式を持っていて,剰余金配当名目で強制執行免脱をされないようにするためにも,株主に対する返還請求を強化する必要があります(会社法では,現物配当もできるようになりましたからね)。

 そして,ここからがポイントなんですが,違法な自己株式の取得について財源規制をかける上で一番困ったのは,現行商法のように違法配当は無効で,不当利得関係になると解すると
 株主は,会社から譲渡した株式を返還してもらうまでは,金銭の支払いを拒むことができる(同時履行の抗弁)
ということなのです。
 読者の中には「会社が株主に株式を返せばいいじゃん」と軽く考える方もいるかもしれませんが,会社が違法配当を受けた株主に金銭返還請求をするはずがありません。
 現実的には,会社債権者が,会社の株主に対する債権を差し押さえたり,債権者代位権を行使したりして,取り立てるしかないわけで,その際,会社債権者が,会社が保有している自己株式を株主に提供することはできませんから,株主から同時履行の抗弁権を主張され,あえなく撃沈,お金をとれなくなってしまうのです。

 そこで,会社法では,「違法配当は無効→不当利得」という今までのやり方を捨て,違法配当を「有効」として,会社・株主間の関係は不当利得の問題ではないことを明らかにした上で,株主は,善悪をとわず,交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭の支払い義務を負う(462条1項)こととしたのです。
 こうすると,会社からの請求に対し,株主は同時履行の抗弁を対抗することができなくなるだけでなく,支払うべき金銭は現存利益ではなく,受け取った金額全額となります。
 しかも,仝淑配当を受け取ったとしても,お金で返さなければなりませんし,⊆己株式の取得の場合に至っては,自己株式を返してもらってないにもかかわらず,とりあえず,代金全額の支払いを会社にしなければならないこととなっています。
 現行商法とは比べものにならないほど,株主に厳しいでしょ。

 ただ,さすがに株主が全額会社に支払ったときには,取得した株式を返還しなければ不公平ですから,そこは,民法422条を類推適用しようというのが,新・会社法100問の立場です。

 以上の論理展開は,商事法務の解説には書きましたが,商事法務の解説以前に出版された本の中には,会社法でも剰余金の配当は無効であるということを前提とした記述もありますので,その点は注意が必要です。

 なお,ある大学の先生から「今日,授業が終わったら,学生がやってきて,葉玉さんの本を見せながら,『先生,今のところ間違ってますよ』と指摘されました。」と言われました(汗)。学生の皆さん,大学の先生に私達の本の内容との食い違いを聞くときは,もっと謙虚な態度でお願いします。
解釈は人それぞれであり,新・会社法100問の見解は,唯一絶対の神のお告げではありません。
 ただし,違法配当の効果についてだけは,有効と解するほかないのではないかなあ,というのが本音です。
  
Posted by masami_hadama at 22:49Comments(79)TrackBack(2)

2005年11月23日

質問集 計算

Q 資本金0円で出資できますか。
A できることになる予定です。ただし、出資は1円以上必要です。どういう場合かは、法務省令のパブコメにご期待を。

Q 分配可能額を超える違法配当の効力が有効であるという根拠について、461条1項柱書の「その効力を生ずる日」の文言から、違法な剰余金分配は有効、と読むのは大変難しかったです。
A 461条1項で読むのが分かりにくいということであれば,463条1項の「その効力を生じた日」の方がわかりやすいでしょうか。「効力を生じた」んだから,分配可能額を超える配当は有効としか読めないですよね。 わかりやすさの点からすれば,そちらの方がいいような気がしますので,第二刷がでるときには,訂正しましょう。 ご指摘ありがとうございました。
  
Posted by masami_hadama at 08:59Comments(60)TrackBack(0)

2005年11月22日

資本充実の原則

 今晩は,ボジョレーヌーボーを2本開けてしまい,頭のねじが3本ほど緩んでいるので,あまり頭を使わない8問の「資本三原則」のうち,資本充実の原則について話します。

 会社法の勉強をはじめると,資本原則を習って,それがすごく大事なことのように教えられます。そして,「資本の充実」の本当の意味もわからないまま,「資本の充実っていうのは債権者保護のために絶対必要だ」と思いこむようになるのです。
 このような状態になることを,私は「資本教に入信した」と表現しております(笑)。
 私は,資本金が,現実の世の中で,債権者保護に役にたっている場面をこの目で見たことがないので,資本教には入信しておらず,詐害行為取消権の特則という程度に考えています。
 
 さて,そういうちょっと冷めた目で,資本充実の原則(資本金の額に相当する財産が現実に会社に拠出されなければならないという原則)を見てみましょう。

 以前もお話ししましたが,資本充実の原則は,大昔に存在した「定款で資本金を定め,その資本金に見合う株式を発行しなければならないという法制」では,その位置づけは明確でした。
 定款で資本金を定めるという点が資本確定の原則で,その資本金に見合うだけの株式について引受人を見つけ,払込みをさせて,株式を発行するのが資本充実の原則です。
 ところが,授権資本制の採用により,資本確定の原則が放棄されると,資本充実の原則がとたんに不明確になってしまいました。
 現行商法では,株式の発行価額の総額が資本金となるわけですから,素直に考えれば,「株式の発行→資本金」という流れなのに,資本充実の原則は「資本金→株式の発行」という逆の流れの説明だから分かりにくいのは当然です。
 ここで,「資本充実の原則は,なくなったよ」とか「変わったよ」とか言ってくれたらよかったのですが,そうもいかず,一時期の商法では,「設立時に発行する株式総数」を定款で定め,かつ,一株の発行価額を5万円以上とする難しい法制度を採ることにより,資本充実の原則があるということになっていました。
 「設立時発行株式総数×5万円を計算すれば,資本金の原則的金額がでるから,定款から資本金の最低額が決まっているということができる」
→それに見合うだけの数の株式を発行しなければならない。
→その株式の発行にあたっては,払込みがされなければならない。
という感じの説明ですね。

 でも,冷静に考えてみると,定款で設立時発行株式総数を定め,その引受けや払込みを強制しているだけであり,別に「資本金」を表に出す必要はないのです。おまけに,発行価額が5万円以上でなければならないという制限が廃止されてしまいましたから,現行法では,定款からは資本金がいくらになるか,ちっとも読み取れなくなっているのです(最低資本金制度によってなんとか最低額だけは分かりますが)。
 それなのに,従来の資本充実の原則の定義のままで,条文を説明しようとするから,初学者は,資本確定の原則とごっちゃになったり,理解困難になったりするわけですよ。

 しかも,多くの本で,引受人に対して,現実の払込みをさせることを「資本充実」だと言いきってしまうので,いよいよ資本充実の意味が分からなくなります。
 現実の払込みをしなくても,会社が引受人に対して払込請求権をもっていれば,会社の債権者は困りません。会社の資産が,現金なのか,債権なのかの違いに過ぎないわけです。そりゃあ,債権は債務者の資力によって価値がかわるのですが,一旦,払込みをした後,会社はそれを貸し付けることだってできるわけですから,現金か債権かにこだわる実益は何もないのです。
 実際,現行商法では,引受人が払込をしないと,発起人等が払込担保責任を負うわけですが,それだって発起人等に対する債権にすぎないわけで,「現実に払い込まないと資本充実を害する」というのは,なんか,おかしな話なのです。
 引受人が,現実の払込みをしなければならないのは,株主の責任について間接性を確保するための方策に過ぎず,資本充実の原則とは関係ないという方がよほどわかりやすいと思いませんか。
 
 それから,引受・払込担保責任についても,本の12問で書いたような理由で,会社法では廃止され,今や,従来の資本充実の原則は見る影もありません。

 よく考えてください。資本金が増加すればするだけ,剰余金の配当を制限することができるのですから,配当制限という機能だけ見れば,出資された財産の額にかかわりなく,資本金は大きければ大きいほど,債権者に有利なのです。

 しかし,資本金には,登記を通じて,一般人に対し,「この会社は,一旦は,資本金の額に相当する財産が出資されたんだよ(今は,減っているかもしれないけどね)」とアピールする効果があるので,その効果を確保する必要もあるわけです(でも,ここで保護されるのは,現在の会社の資産に対する信頼ではなく,過去の出資に対する信頼にすぎないんですよね。)

 そこで,どんな法制度を整えれば,その効果を確保することができるかを考えると,皆さんもすぐに「出資された財産の額が資本金の額になる」というルールさえ作れば必要十分だということに気がついていただけるのではないでしょうか。

 というわけで,本では,以上の理解を前提に,資本充実の原則を従来の意味から変容させて,まだ資本充実の原則はあると説明しています。
 ただ,ここまで来てしまうと「それって条文をそのまま説明しているだけで,「資本充実の原則」なんて言わなくてもいいんんじゃないか」という疑問も生ずるでしょう。まあ,そうなんですよ。「廃止」と言おうが,「変容」と言おうが,説明としてわかりやすいのは何かってだけで,実は大した問題じゃないんですね。

 ここらへんは,新会社法100問の著者でもある郡谷さんと岩崎さんが,商事法務の特別解説で書いているので,それを読んでもらいたいところですが,その特別解説は,レイザーラモンHG並に過激なので(会社法100問の答案より過激です),純真な受験生が影響を受けるとまずいかも。
  
Posted by masami_hadama at 07:59Comments(4)TrackBack(0)

資本金は、0円でいいのか?

それにしても,今日は,突然,訪問者が増えてますね。
どこかの検索エンジンにでもひっかかるようになったのでしょうか?
まあ,お客様が多いことはいいことですので,疑問のある方はどんどん質問してください。

さて,今日は,よく聞かれる質問ベスト3「資本金は0円でいいのか?」についてお話しします。

答えは,YES つまり,資本金を0にすることができます。
法律で最低資本金を設けていないのですから,0にすることを否定する根拠は何もないので,文理上,当然で0にできるのです。

ところが,この問題,会社法を勉強しはじめた人は,わりとすんなり受け入れてくれるのですが,ずっと昔から会社法を知っている人は,しっくり理解してくれません。そういう歴史派の人は
『資本金が0になったら,株式がなくなってしまい,どうやって会社を運営するんだ?』
と思っているのです。

太古の昔(ちょっと言い過ぎ),一株の額面は固定され,しかも,定款で資本を決めて,それにより,株式の数が決まるという時代がありました。
例えば,1株の額面が5円と法定されているとすると,まず,定款で10万円という資本の額を決め,そうすると,10万÷5=2万株の株式を発行しなければならないというような時代があったんですね
 このルールの下では,「資本金=株式の額面総額」となり,一株の額面は固定ですから,資本金の額と株式の数は連動することになります。
 そして,このような「資本金を株式で分ける」というルールでは,資本金が0円だと,株式の数も0になり,「一体,どうやって株主総会を開くんだあ?取締役を選任するんだあ?」などという疑問がわいてくるわけです。

ところが,次の時代には,定款で資本を決めるというルールが変更され,定款では「設立時に発行する株式の数」を決め,株式の「発行価額の総額」を資本とする制度になりました。
 つまり,「資本→株式の数」という流れから,「株式の数×発行価額→資本」という逆の流れになったわけです。
しかし,そのようになっても,額面株式は残り,しかも
「資本金>=額面総額」
という関係を保たなければならないという,ほとんど合理性のないルールが採用されていたために,事実上,額面株式しか流通していなかった日本では,
 額面株式(額面5万円)が存在する
 →その額面以上に資本金がなければならない。
 →資本金が0になることはない
という頭になってしまっていたのです。

さらに,時代が進み,額面株式もなくなってしまいましたが,そのころには,「最低資本金制度」というものができてしまい,資本金0円ということはありえない状態でした。

そして,時代は,現代,会社法の時代。最低資本金制度は廃止され,資本金の額は,原則として,設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額(445条1項)となりました。今や額面株式もありません。

株式を発行して,金銭の払込み又は現物出資がされるときこそ,株式の数も,資本金の額も増加しますが,それ以外には,両者の増減に,何の関係もありません。

資本金は,剰余金の配当等を制限するための計算上の数額であり,株式の数は,会社に対する実質的所有権をどのような割合で区分するかという問題なので,その機能が全く違うのです。

そこで,いわゆる設立や新株発行以外の場面では,とことん資本金と株式の数の関係を切り離し,会社が,目的に応じて,それぞれの機能を調整できるようになっているのです。

資本金の額は,資本金の額の減少の手続で減少しますが,そのときに株式の数は減少しません(447条)。準備金の額を減少して資本金の額を増加させることができますが(448条),株式の数は増えません。

逆に,株式の分割・株式の無償割当てをして株式の数を増やしても,資本金は増加しないし,株式の併合,消却をして株式の数を減らしても,資本金は減少しません。

したがって,このような制度のもとでは,資本金の減少手続により資本金が0円になろうとも,株主は,ちゃんと存在し,株主総会を開いて会社を運営していくことができるのです。

 なお,設立時には,1株以上の株式を発行しなければならないので,最低1円の出資は必要です。
 そのため,設立時には,結果的に,資本金が1円以上でなければならないようにも思われますが,そこら辺は,ちょっと検討中であり,今しばらく答えは留保してきましょう。

 なお,太古の昔,定款で定めた資本金から株式の数が定めていた時代には,その資本金に見合うだけの株式を発行して払込みをさせなければならないというルール(資本充実の原則)は,文字通りの原則だったのですが,時代が移り変わり,発起人等の引受・払込担保責任もなくなった会社法の時代になっては,
 
 定款や登記等何らかの形で資本金が定まり,それに見合うだけの財産を会社に拠出させる

という意味での資本充実の原則は廃止されました。
 ここは,よく理解して欲しいところなので,詳しくは,新会社法100問で勉強してくださいね。
  
Posted by masami_hadama at 07:51Comments(60)TrackBack(0)