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17年振りに訪れたその町は、あの頃の風景をそのままに残していた・・・

そこは大分県国東半島にある小さな町で、かつて母方の祖母が住んでいた。

毎年、夏休みになると家族で訪れ、都会では経験できない田舎の生活を
楽しんだものだった。

 

海山に接し、自然環境に恵まれたその町で過ごした夏の思い出は、

都会育ちの私には「まほうのような時間」として記憶されていた。

 

二十歳の夏以来の訪問だった。思い出の中にある夏の風景と何も変わっていなかった。

変わっていたのは、あちら側ではなく、こちら側だった・・・私は、妻と息子を伴っていた。

 

一度、妻に見て貰いたかった。付き合っている頃から、
幾度となく話していた思い出の風景を!

息子に経験させたかった。幼い頃、私がここで感じた夏の時間を!

 

フェリーの往来を横に見ながら、防波堤での初めてのサビキ釣り。

小あじがたくさん釣れた。

蛸に釣り糸を切られたママ。

魚釣りに飽きた息子は、赤い灯台の周りを、買ったばかりの

赤いライフジャケットを着て、無邪気にぐるぐる回っていた。

 

遠浅の砂浜が続き、遠くに姫島が浮かぶ・・・白砂青松の美しい海岸での海水浴!

パパに摑まってのボディーボード初体験。20メートルは波に乗れてた。

潮干狩りでは、アサリやマテ貝を採り、それまで苦手だった貝の味噌汁が大好きに。

 

電灯がほとんど無く、真っ暗闇の中で始めた線香花火!

花火の灯りに寄ってきた無数の蟲に驚いた。

 

セミやトンボを虫取り網で追い駆け回し、川遊びでは、初めて素手でカニを摑んだ。 

温泉の露天風呂では、某TV局の旅番組にインタビューされた。 

テトラポットに座って、スイカにかぶりつき、種だけピュッと口から飛ばす練習。
海への小石投げ。

 

真夏の日差しを三人でいっぱい摂りこんだ!

  

夏が来る少し前に、書店で偶然見つけて衝動買いした絵本があった。

あの町の風景にそっくりの絵で、あの頃の夏と同じ匂いがした。

 

「まほうの夏」

都会に暮らす兄弟の夏休みのお話し。

お父さんもお母さんもお仕事で、今日も学校のプールとゲームと麦茶、ポテトチップス。

すっかり退屈していた二人に、田舎のおじさんから遊びに来いと葉書きが来る。

二人は都会を脱出してお母さんの田舎へ!

田舎の子と友達になった二人は、虫捕りに森へ行く。

川に落ち、ヤブカにさされ、夕立にあって、

ぐちゅぐちゅのボコボコのどろどろになりながらも、

初めての経験に不思議と気持ちよさを感じる。

夕飯はとれたての野菜、新鮮な魚、隣りの豆腐屋さんが作った豆腐。

自分でもびっくりするくらいたくさん食べれる。

そして海水浴、魚釣りとドキドキ楽しいことばかり。

真っ黒になって都会へ帰る。

 

都会では体験することの出来ない、田舎ならではの魅力が存分に描かれています。

都会に住むお父さんから息子さんへ、読んであげることをオススメします。

 

私もあの頃、「夏休みはここにあるんだぁ」と感じていました。

そして、絵本の中の男の子と同様、都会の自宅には帰りたくなくて・・・

 

帰路の車中、「まだ居ときたかったぁ」と泣きべそを掻き続けた息子を

宥める妻は大変でしたが、私にとっては大満足の瞬間でした。

 

自宅に戻り 普段の生活が始まってしまうと

この夏、あの町で過ごした時間は、夢だったのではないかと

思われる瞬間もあり、まさに「まほうの夏」となりました。